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審決分類 審判 全部申し立て   F16F
管理番号 1028421
異議申立番号 異議1998-74872  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-09-28 
確定日 2000-10-10 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2568160号「回転ダンパー」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2568160号の実用新案登録を取り消す。
理由 I.手続の経緯
実用新案登録第2568160号の請求項1に係る考案は、平成5年12月8日に実用新案登録出願され、平成10年1月9日にその実用新案登録の設定登録がなされ、その後、大島 信久より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年2月16日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年6月8日に手続補正書が提出されたものである。
II.訂正の適否についての判断
1.補正の採否
補正は、訂正請求書の(3)訂正事項について、訂正事項eとして、「e.本件実用新案登録公報第2頁第4欄第7行乃至第9行を次の通り訂正する。【0009】粘性固体としては、粘性が高くロータ4の回転時に攪拌されることで該ロータ4の回転を制動する制動効果を発揮するシリコンゲル、すなわち、JIS K 2220による針入度が40?90程度で、-40℃の低温環境下乃至90℃の高温環境下の温度領域、並びに10万回程度のロータの連続回転、ロータの正逆回転等において、夫々安定したトルク特性を発揮するシリコンゲルが挙げられる。」を追加することを含むものである。
ところが、シリコンゲルが、「JIS K 2220による針入度が40?90程度で、-40℃の低温環境下乃至90℃の高温環境下の温度領域、並びに10万回程度のロータの連続回転、ロータの正逆回転等において、夫々安定したトルク特性を発揮するシリコンゲル」であることは、訂正請求書により訂正するとした「願書に添付された明細書又は図面」に記載されておらず、さらに、これらから直接的かつ一義的に導き出せるものではないので、この補正は、訂正請求書の要旨を変更するものである。
したがって、訂正請求書の要旨を変更する事項を含む補正は、平成6年法律第116号附則第9条第2項において準用する特許法第120条の4第3項でさらに準用する特許法第131条第2項の規定により採用することができない。
2.訂正の内容
(1)訂正事項a
実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載を下記のとおりに訂正。
【請求項1】皿形ハウジングと、該皿形ハウジングの底盤上で回転する制動板部、及び該制動板部の中心から起立する回転軸部とからなるロータと、該ロータの回転軸部の外周に嵌装着されたOリングと、前記皿形ハウジングの内部を上から塞ぐキャップと、同皿形ハウジングの内部に内在させた制動部材とで構成された回転ダンパーに於いて、前記制動部材がロータの回転により攪拌されて併合し合いロータの回転を制動するシリコンゲルからなる粘性固体で、該粘性固体を皿形ハウジングの内部に封入したことを特徴とする回転ダンパー。
(2)訂正事項b
明細書の「課題を達成するための手段」の欄の記載を訂正事項aに合わせて訂正。
(3)訂正事項c
明細書の「作用」の欄の記載中の、「粘性固体」を「シリコンゲルからなる粘性固体」と、「ロータの回動を制動」を「ロータの回動を制動し、ロータの回転トルクを調整」と訂正。
(4)訂正事項d
明細書の「実施例」の欄の記載中の、「ロータ4の回動を制動」を「ロータの回動を制動する、すなわちロータ4の回転トルクを調整」と訂正。
3.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは実用新案登録請求の範囲の減縮に該当し、訂正事項bないしdは明りょうでない記載の釈明に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
4.独立実用新案登録要件の判断
(1)訂正明細書の請求項1に係る考案
訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「本件訂正明細書の考案」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されたとおりのもの(訂正事項a参照)である。
(2)引用例
特開平5-52232号公報(以下、「引用例1」という。)には、「回転ダンパー」に関する考案について記載されていて、その明細書及び図面にの記載からみて、次のような考案(以下、「引用例考案1」という。)が記載されていると認めることができる。
「皿形ハウジング10と、該皿形ハウジング10の底盤上で回転する制動板部21、及び該制動板部21の中心から起立する回転軸部22とからなるロータ20と、該ロータ20の回転軸部22の外周に嵌装着されたOリング41と、前記皿形ハウジング10の内部を上から塞ぐキャップ30と、同皿形ハウジング10の内部に内在させた制動部材21とで構成された回転ダンパーに於いて、前記制動部材21がロータ20の回転により攪拌されてロータ20の回転を制動するシリコンオイルなどの粘性流体42で、該粘性流体42を皿形ハウジングの内部に封入したことを特徴とする回転ダンパー。」
(3)対比・判断
本件訂正明細書の考案と引用例考案1を対比すると、引用例考案1の「シリコンオイルなどの粘性流体42」及び本件訂正明細書の考案の「シリコンゲル」は共に粘性物質とみることができるから、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
皿形ハウジングと、該皿形ハウジングの底盤上で回転する制動板部、及び該制動板部の中心から起立する回転軸部とからなるロータと、該ロータの回転軸部の外周に嵌装着されたOリングと、前記皿形ハウジングの内部を上から塞ぐキャップと、同皿形ハウジングの内部に内在させた制動部材とで構成された回転ダンパーに於いて、前記制動部材がロータの回転により攪拌されてロータの回転を制動する粘性物質で、該粘性物質を皿形ハウジングの内部に封入したことを特徴とする回転ダンパーである点。
<相違点>
粘性物質について、本件訂正明細書の考案では、ロータの回転により攪拌されて併合し合いロータの回転を制動するシリコンゲルからなる粘性固体としているのに対し、引用例考案1では、ロータ20の回転により攪拌されてロータ20の回転を制動するシリコンオイルなどの粘性流体42となっている点。
次いで、この相違点について検討する。
<相違点の検討>
本件訂正明細書の考案と同じ技術分野である「慣性ダンパ」において、「ダンパ作用をする粘性液体に変えて、シリコンゲルからなる粘性固体を用いること」が、特開昭63-225744号公報(以下、「引用例3」という。)及び特開平1-98731号公報(以下、「引用例4」という。)に記載されているように従来周知の技術的事項であって、該引用例3及び引用例4の記載されているシリコンゲルは、本件訂正明細書の考案のシリコンゲルと同じように、ロータの回転により攪拌されて併合し合いロータの回転を制動するものと認められる。
また、シリコンゲルの特性についても、作用する力の大きさ、必要なダンパ作用及び使用環境等の通常の設計において考慮する事項を勘案して、適宜選択できる程度のことと認められる。
してみると、この相違点に係る本件訂正明細書の考案の構成は、引用例1に記載された考案において、「ダンパ作用をする粘性液体に換えて、シリコンゲルからなる粘性固体を用いること」により、当業者がきわめて容易に想到できたものと認められる。
したがって、本件訂正明細書の考案は、上記引用例1並びに上記引用例3及び引用例4に記載されるような周知の技術的事項に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるので、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができない考案である。
なお、実用新案権利者は、平成11年6月8日付けの意見書において、引用例3及び引用例4に記載された慣性ダンパーは、振動吸収用のダンパであって、ローターの回転を制動する回転ダンパーとは、その特性が根本的に異なる旨主張しているが、回転ダンパーにおいても、軸と質量体の相対回転を粘性と塑性変形により制動しているものであって、両者のシリコンゲルの機能は共通していると言うべきであるから、同権利者の主張は採用することができない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正を認めることができない。
III.実用新案登録異議申立てについての判断
1.本件登録考案
権利者が請求した訂正は、上記II.で説示のように、認めることができないものであるから、本件実用新案登録第2568160号の請求項1に係る考案(以下、「本件登録考案」という。)は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次とおりのものである。
【請求項1】皿形ハウジングと、該皿形ハウジングの底盤上で回転する制動板部、及び該制動板部の中心から起立する回転軸部とからなるロータと、該ロータの回転軸部の外周に嵌装着されたOリングと、前記皿形ハウジングの内部を上から塞ぐキャップと、同皿形ハウジングの内部に内在させた制動部材とで構成された回転ダンパーに於いて、前記制動部材がシリコンゲルからなる粘性固体で、該粘性固体を皿形ハウジングの内部に封入したことを特徴とする回転ダンパー。
2.引用例に記載された考案
取消理由通知で引用した実公平5-17462号公報(以下、「引用例5」という。)には、「回転ダンパー装置」に関する考案について記載されていて、その明細書及び図面の記載からみて、次のような考案(以下、「引用例考案5」という。)が記載されていると認めることができる。
「円形の底壁4aと円筒形に立上った周壁4bから成るハウジング4と、該ハウジング4の底壁4a上で回転する内側ロータ7、及び該内側ロータ7の中心から起立する内外回転軸6とからなる内外回転軸6と内側ロータ7の組立体と、該組立体の内側ロータ7の筒壁7bの上縁の環状段部29に嵌装着されたOリング10と、前記ハウジング4の内部を上から塞ぐキャップ5と、同ハウジング4の内部に内在させた制動部材とで構成された回転ダンパー装置に於いて、前記制動部材がシリコンオイル等からなる粘性オイルで、該粘性オイルをハウジング4の内部に封入したことを特徴とする回転ダンパー装置。」
3.対比・判断
本件登録考案と引用例考案5とを対比すると、引用例考案5の「円形の底壁4aと円筒形に立上った周壁4bから成るハウジング4」は本件登録考案の「皿形ハウジング」に相当し、同様に、「底壁4a」は「底盤」に、「内外回転軸6」は「回転軸部」に、「内外回転軸6と内側ロータ7の組立体」は「ロータ」に、それぞれ相当すると認めることができるから、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
皿形ハウジングと、該皿形ハウジングの底盤上で回転する制動部材、及び該制動部材の中心から起立する回転軸部とからなる回転体と、該回転体の上側周囲に嵌装着されたOリングと、前記皿形ハウジングの内部を上から塞ぐキャップと、同皿形ハウジングの内部に内在させた制動部材とで構成された回転ダンパーに於いて、前記制動部材が粘性物質で、該粘性物質を皿形ハウジングの内部に封入したことを特徴とする回転ダンパーである点。
<相違点>
(1)制動部材について、本件登録考案では、回転する制動板部となっているのに対し、引用例考案5では、回転する内側ロータ7となっている点。
(2)回転体について、本件登録考案では、制動板部及び該制動板部の中心から起立する回転軸部とからなるロータとなっているのに対し、引用例考案5では、内側ロータ7及び該内側ロータ7の中心から起立する回転軸部(内外回転軸6)とからなる組立体となっている点。
(3)Oリングの嵌装着態様について、本件登録考案では、ロータの回転軸部の外周に嵌装着されたOリングとなっているのに対し、引用例考案5では、組立体の内側ロータ7の筒壁7bの上縁の環状段部29に嵌装着されたOリングとなっている点。
(4)制動部材について、本件登録考案では、シリコンゲルからなる粘性固体となっているのに対し、引用例考案5では、シリコンオイル等からなる粘性オイルとなっている点。
次いで、これらの相違点について検討する。
<相違点(1)について>
制動部材の形状は、従来より、粘性物質の性状や作用する力の大きさ等を考慮して適宜選択されているものであって、制動板部とする程度のことは、当業者にとって格別困難なことと認めがたい。
してみると、この相違点(1)は、当業者が実施に際して通常行う設計的事項の微差にすぎず、格別なものではない。
<相違点(2)について>
回転体の相違は、制動部材の形状の相違に基づくものであって、該制動部材の形状の相違は、上記相違点(1)の検討において説示のように当業者が実施に際して通常行う設計的事項の微差にすぎないものであるから、この相違点(2)も格別なものではない。
<相違点(3)について>
Oリングは、相対回転を伴う間隙において、内容物の流出や外部から流動物が進入するのを防止するために広く慣用されている手段であり、回転軸部の外周に嵌装着されることも従来周知のことであるから、この相違点(3)は、当業者が実施に際して通常行う設計的事項の微差にすぎず、格別なものではない。
<相違点(4)について>
本件登録考案と同じ技術分野である「慣性ダンパ」において、「ダンパ作用をする粘性液体に変えて、シリコンゲルからなる粘性固体を用いること」が、特開平1-227651号公報(以下、「引用例2」という。)、特開昭63-225744号公報(以下、「引用例3」という。)及び特開平1-98731号公報(以下、「引用例4」という。)に記載されているように従来周知の技術的事項である。
そして、引用例考案5のダンパ作用をする「シリコンオイル等からなる粘性オイル」を「シリコンゲルからなる粘性固体」に換えることは、上記周知の技術的事項である「ダンパ作用をする粘性液体に変えて、シリコンゲルからなる粘性固体を用いること」を引用例考案5に適用することにほかならず、これによりもたらされる効果も当業者の予測を越えるものとは認められない。
してみると、この相違点(4)で摘記した本件登録考案を特定する事項は、引用例考案5及び従来周知の技術的事項に基づき、当業者がきわめて容易に想到できたものであって、この相違点(4)は、格別なものではない。
したがって、本件登録考案は、本件の出願の前に頒布された刊行物である引用例に記載された考案(引用例考案5)及び従来周知の技術的事項に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められる。
4.異議申立てのむすび
以上のとおりであるから、本件登録考案は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
したがって、本件登録考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。
異議決定日 1999-08-06 
出願番号 実願平5-65583 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (F16F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 岩谷 一臣  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 西村 敏彦
佐藤 洋
登録日 1998-01-09 
登録番号 実用登録第2568160号(U2568160) 
権利者 株式会社渡辺製作所
埼玉県春日部市中央1丁目19番11号
考案の名称 回転ダンパー  
代理人 中村 盛夫  
代理人 早川 政名  
代理人 細井 貞行  
代理人 長南 満輝男  
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