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審決分類 審判 全部申し立て   E06B
管理番号 1028424
異議申立番号 異議1998-72579  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-05-19 
確定日 2000-11-29 
異議申立件数
事件の表示 登録第2562305号「ライナ-付戸当りパッキング」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2562305号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。
理由 〔1〕手続の経緯
本件実用新案登録第2562305号の請求項1に係る考案は、平成3年3月28日に実用新案登録出願され、平成9年10月31日に実用新案権の設定登録がなされ、その後、伊藤廣美より実用新案登録異議の申立てがなされ、当審において取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成11年4月5日に訂正請求がなされ、さらに訂正拒絶理由通知がなされたものである。

〔2〕訂正請求について
1.訂正の内容
訂正請求の趣旨は、実用新案登録第2562305号の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、以下のとおりである。
a.実用新案登録請求の範囲の記載を、「家屋等の開閉部における開口枠体に固着し戸、扉等の開閉体と弾接させて密封を保持する取付け部10と中空シール部5及びライナー15からなるゴム製のパッキングであって、前記取付け部10は硬質でかつ横断面が略筒の中空をなす取付け部本体と、その取付部本体の両側部上下部に夫々突設された軟質リップ7と、硬質リップ8とをそれぞれ備え、前記取付部上面10aには、軟質で略円弧状の中空シール部5が突設され、その中空シール部5の内周壁面の長手方向には、その内周方向に波形状を呈するように湾曲した凹状部と、湾曲した凸状部とが交互に連続して形成され、前記取付け部下面10bは前記パッキングの嵌込み時の扉との閉時設定高さを調整可能にする硬質ライナー15を切離し可能に一体成形したことを特徴とするライナー付戸当りパッキング。」に訂正する。
b.明細書の段落【0005】の記載を、「【課題を解決するための手段】本考案は上記の目的を達成するために、家屋等の開閉部における開口枠体に固着し戸、扉等の開閉体と弾接させて密封を保持する取付け部10と中空シール部5及びライナー15からなるゴム製のパッキングであって、前記取付け部10は硬質でかつ横断面が略筒の中空をなす取付け部本体と、その取付部本体の両側部上下部に夫々突設された軟質リップ7と、硬質リップ8とをそれぞれ備え、前記取付部上面10aには、軟質で略円弧状の中空シール部5が突設され、その中空シール部5の内周壁面の長手方向には、その内周方向に波形状を呈するように湾曲した凹状部と、湾曲した凸状部とが交互に連続して形成され、前記取付け部下面10bは前記パッキングの嵌込み時の扉との閉時設定高さを調整可能にする硬質ライナー15を切離し可能に一体成形したことを特徴とする。」に訂正する。

2.訂正の適否
(1)訂正の目的等について
訂正aは、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とし、訂正bは、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、しかも実質的に実用新案登録請求の範囲を変更し、又は拡張するものではない。
(2)独立実用新案登録要件について
(2-1)訂正後の請求項1に係る考案
訂正後の請求項1に係る考案(以下、「訂正考案」という。)は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。(上記「1.訂正の内容」のa.参照。)
(2-2)引用刊行物の記載事項
当審で通知した訂正拒絶理由に引用した刊行物1、2及び3に記載された事項は、以下のとおりである。
刊行物1:実願昭53-71794号(実開昭54-173529号)の マイクロフィルム(異議申立人が提出した甲第5号証。)
刊行物1には、
「この考案は開口枠の竪枠または柱等の変形に対して随時、対応できる障子戸の戸当り装置に関する。」(明細書2頁4?6行)、
「この考案は……障子戸の竪框における開口枠の竪枠との当接面部に障子戸の進退方向に移動調整できるように戸当り部材を設けることによつて、障子戸の竪框と、開口枠の竪枠との間に生ずる部分的な隙間を確実に密封して室内の気密性を図る……戸当り装置を提供することを目的とする。」(同2頁17行?3頁5行)、
「この考案を図示する一実施例によつて説明する。(第1図,第2図および第4図)戸当り装置1は障子戸の竪框2における柱3との当接面部に、上下に通してリップ溝条部4を形成し、このリップ溝条部4に、上下に通して戸当り部材5を挿嵌して構成されている。戸当り部材5は硬質性合成樹脂を素材とし、リツプ溝条部4に挿入可能に形成された基部6と、軟質性合成樹脂を素材とし、基部6側部より開口枠を構成する柱3側に突出して形成された当接部7とから…形成されている。」(同3頁6?17行)、
「第3図はこの考案の変形例を示すものであり、戸当り部材5に代えて戸当り部材11を取付けたものである。戸当り部材11は軟質性合成樹脂を素材とする当接部12と、硬質性合成樹脂を素材とし、当接部12基端部に形成された一対の脚部13とから形成されている。そして、リップ溝条部4底面部との間にライナー8を介在してリップ溝条部4に挿嵌できるようになっている。」(同4頁14行?5頁2行)、
「ライナー8,9は薄板状の片10を複数接離自在に貼設して形成されており、リップ溝条部4の長手方向の適位箇所に複数個介在されている。そして、このライナー8,9の厚みを変えることによつて戸当り部材5は障子戸の進退方向に移動調節可能となっている。」(同4頁2?7行)、
「リップ溝条部に複数個の戸当り部材をそれぞれ障子戸の進退方向に移動調整可能に挿嵌されているので開口枠の竪枠の変形によつて生ずる竪枠と障子戸の、竪框との間の部分的な隙間を確実に密封することができる。よつて室内の気密性を計る」(同5頁8?13行)の記載がある。
以上の記載及び図面、特に第3図からみて、刊行物1には、「障子戸の竪框に取り付け、開口枠と弾接させて密封を保持する当接部12基端部と当接部12及びライナー9からなる合成樹脂製戸当り装置であって、当接部12基端部は硬質の当接部12基端部本体と、当接部12基端部本体の両側に突設された硬質の脚部とを備え、当接部12基端部の上面には、軟質の当接部12が突設され、当接部12基端部下面には戸当り装置の嵌込み時の開口枠体との閉時設定高さを調整可能にするライナー9を取り外し可能に設けたライナー付き戸当たり装置」が記載されていると認める。

刊行物2:実願昭61-180679号(実開昭63-85708号)の マイクロフィルム(異議申立人が提出した甲第3号証。)
刊行物2には、
「この考案は,例えば,建築物の外装壁材間に形成された目地をシールするための目地材に関するものである。」(明細書1頁15?17行)、
「目地材の高さ調節部材を目地の不定形状に応じて適宜除去することで、これの外シール舌片の目地外はみ出しが防止できてシールが確実に行える」(同4?6行)、
「目地主体1aは,ゴム,合成樹脂などの可撓性材料からなり」(同8頁15?16行)、
「この考案の目地材1は,該支柱部3の目地2挿入側端3aに,目地2の形状不定に起因する前記外シール舌片5の目地外はみ出しを防止するための高さ調節部材8を破断可能な連結部材9を介して1乃至複数個連設し押出成形により一体に形成したものである。」(同3頁20行乃至4頁5行)の記載がある。
以上の記載及び第1図?第4図からみて、刊行物2には、「目地をシールするための目地材であって、目地材のはみ出しを防止するための高さ調節部材8をゴム等からなる目地主体に破断可能に一体成形した目地材」が記載されていると認める。

刊行物3:実願昭54-92446号(実開昭56-10797号)のマ イクロフィルム(異議申立人が提出した甲第4号証。)
刊行物3には、
「中空長筒状のパツキング部(1)を有する戸当りパツキング等において、上記パツキング部(1)のパツキング面(2)の対側内周面(3)に、連続する断面鋸歯状或いは波形状の凹凸条部(4)が長手方向に延在していることを特徴とするパツキング。」(実用新案登録請求の範囲)、
「本考案は復元力の優れたパツキングに関する。」(明細書1頁11行)、
「本考案に係るパツキングは第2図に示す如くパツキング面(2)の一部分に加わつた、或いは集中した力により生じるパツキング面(2)の不必要なシワやへこみ(6)はその一部分対側の凹条部(4a)を拡開させ隣接の凸条部(4b)を変形させる力へと作用するがその凹凸条部(4)の復元力により反発され、また、その凹条部(4a)、凸条部(4b)の変形は隣接の凹条部(4a)、凸条部(4b)の変形、更にはこの凹条部(4a)、凸条部(4b)の隣接の凹条部(4a)、凸条部(4b)の変形と云うように次、次に凹凸条部(4)の変形へと普及していく作用をするがこれら変形せんとする凹凸条部(4)の全ての復元力により反発されるので不必要なシワやへこみがパツキング面に生じる虞れがなく、極めて優れた復元力を有する」(同3頁4?19行)の記載がある。
以上の記載、並びに第1図及び第2図からみて、刊行物3には、「軟質で略円弧状の中空長筒状のパッキング部1を有する戸当りパッキングにおいて、中空長筒状のパッキング部1の内周壁面の長手方向に、内周方向に波形状の凹条部と凸条部を交互に連続して形成した戸当りパッキング」が記載されていると認める。
(2-3)訂正考案と刊行物1記載の考案との対比
訂正考案と刊行物1記載の考案とを対比すると、刊行物1記載の考案の「当接部12基端部」、「脚部」及び「戸当り装置」は、それらの機能に照らし訂正考案の「取付け部」、「リップ」及び「戸当りパッキング」に相当し、刊行物1記載の考案の「当接部12」と訂正考案の「中空シール部」は、シール部である点で共通するから、両者は、
「家屋等の開閉部における密封を保持する取付け部とシール部及びライナーからなるパッキングであって、前記取付け部は硬質取付け部本体と、その取付部本体の両側部に突設された硬質リップとを備え、前記取付部上面には、軟質のシール部が突設され、前記取付け部下面はライナーを設けたライナー付戸当りパッキング」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1
訂正考案は、家屋等の開閉部における開口枠体に固着し戸、扉等の開閉体と弾接させる戸当りパッキングであるのに対し、刊行物1記載の考案は、障子戸の竪框に取り付け、開口枠と弾接させる戸当りパッキングである点。
相違点2
訂正考案はゴム製であるのに対し、刊行物1記載の考案は合成樹脂製である点。
相違点3
訂正考案では、取付け部本体は横断面が略筒の中空をなしているのに対し、刊行物1記載の考案では、取付け部本体は中空ではない点。
相違点4
訂正考案は、取り付け部本体の両側部上下部に夫々突設された軟質リップと、硬質リップとをそれぞれ備えているのに対し、刊行物1記載の考案は、取付け部本体両側に突設された硬質リップを備えている点。
相違点5
訂正考案では、取付け部下面はパッキングの嵌込み時の扉との閉時設定高さを調整可能にする硬質ライナーを切離し可能に一体成形したのに対し、刊行物1記載の考案では、取付け部下面は開口枠体との閉時設定高さを調整可能にするライナーを取り外し可能に設けた点。
相違点6
訂正考案では、シール部が、略円弧状の中空シール部で、その中空シール部の内周壁面の長手方向には、その内周方向に波形状を呈するように湾曲した凹状部と、湾曲した凸状部とが交互に連続して形成されているのに対し、刊行物1記載の考案では、シール部がそのような構成を備えていない点。
(2-4)上記相違点の検討
相違点1について
戸当りパッキングを、家屋等の開閉部における開口枠体に固着し、扉等の開閉体と弾接させることは、本件登録実用新案の出願前周知の技術事項である(例えば、実開昭59-160790号公報、実開昭60-15581号公報、実願昭60-90421号(実開昭61-206074号)のマイクロフィルム参照。)から、刊行物1記載の考案に、この周知の技術事項を採用して訂正考案のようにすることに、困難性は認められない。
相違点2について
パッキングをゴムで形成することは、本件登録実用新案の出願前周知の技術事項であり(例えば、実願昭54-119950号(実開昭56-36893号)のマイクロフィルム参照。)、刊行物1記載のパッキングを訂正考案のようにゴム製とすることは、当業者が設計上適宜行う材料の変更にすぎない。
相違点3について
訂正考案のように取付け部本体を横断面が略筒の中空にするのは、材料の節約等を考慮して、当業者が設計上必要に応じ適宜行う事項にすぎない。
相違点4について
戸当りパッキングの取付け部の両側に複数のリップを設けることは、本件登録実用新案の出願前周知の技術事項であり(例えば、相違点1で挙げた周知例の文献参照。)、また、パッキングの取付け部に硬質リップと軟質リップの両方を形成することも、同様に周知の技術事項である(例えば、実願昭58-2307号(実開昭59-110252号)のマイクロフィルム、実願昭59-99333号(実開昭61-14146号)のマイクロフィルム、実開昭55-60559号(実開昭56-160122号)のマイクロフィルム参照。)から、刊行物1記載の考案に上記周知の技術事項を適用し、特に、両側部上下部に夫々軟質リップと、硬質リップを設け訂正考案のようにすることは、当業者がきわめて容易になし得たことである。
相違点5について
目地をシールする目地材ではあるが、目地材の高さを調節する高さ調節部材(訂正考案の「ライナー」に相当する。)を、目地材の端部に破断可能に一体成形することは、刊行物2に記載されている。また、訂正考案の「パッキングの嵌込み時の扉との閉時設定高さを調整可能にする」との構成は、相違点1の構成を採ることに伴って備わるライナーの構成を表現したにすぎない。そして、刊行物1記載の考案と刊行物2記載の考案は、共に、建物における隙間を密封(シール)する部材の高さ調節という点で課題が共通するから、刊行物1記載の考案におけるライナーに刊行物2に記載された、目地材の高さを調節する高さ調節部材を目地材の端部に破断可能に一体成形するという技術事項を適用し、訂正考案のようにすることは、当業者がきわめて容易になし得たことである。
相違点6について
刊行物3には、略円弧状の中空長筒状のパッキング部1(訂正考案の「中空シール部」に相当する。)の内周壁面の長手方向に、内周方向に波形状の凹条部と凸条部を交互に連続して形成した戸当りパッキングが記載されており、上記凹条部と凸条部は波形状であるから、訂正考案と同様に湾曲した凹条部と湾曲した凸条部であるといえる。そして、刊行物1記載の考案と刊行物3記載の考案は、共に、戸当りパッキングに関するものであるから、刊行物1記載の考案におけるシール部である当接部12の構成として、刊行物3に記載された上記パッキング部1の構成を採用し訂正考案のようにすることは、当業者がきわめて容易に想到し得たことである。
そして、全体として、訂正考案の奏する効果も、刊行物1?3記載の考案及び周知の技術事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとは認められない。
したがって、訂正考案は、刊行物1?3記載の考案及び周知の技術事項に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法3条2項の規定により特許を受けることができないものである。

(3)まとめ
以上のとおり、訂正考案は、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるから、本件訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則9条2項の規定により準用され、同附則10条1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法120条の4第3項で準用する同126条4項の規定に適合しないので、認めることができない。

〔3〕実用新案登録異議の申立てについて
1.本件考案
本件実用新案登録第2562305号の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。
「家屋等の開閉部における開口枠体に固着し戸、扉等の開閉体と弾接させて密封を保持する取付け部と中空シール部及びライナーからなるゴム製のパッキングであって、前記取付け部は硬質取付け部本体の両側に軟、硬質リップがそれぞれ突設してあり、前記軟質中空シール部は該取付部上面に突設されており、これの内壁面の長手方向には、その内周方向に波形状を呈するように順次凹凸を形成し取付け部下面は前記パッキングの嵌込み時の扉との閉時設定高さを調整可能にする硬質ライナーを切離し可能に一体成形したことを特徴とするライナー付戸当りパッキング。」

2.引用刊行物の記載事項
当審で通知した取消理由に引用した刊行物1(訂正拒絶理由に引用した刊行物1と同じ。)、刊行物2(同じく刊行物2と同じ。)及び刊行物3(同じく刊行物3と同じ。)には、以下の事項が記載されていると認める。
刊行物1
「障子戸の竪框に取り付け、開口枠と弾接させて密封を保持する当接部12基端部と当接部12及びライナー9からなる合成樹脂製戸当り装置であって、当接部12基端部は、硬質の当接部12基端部本体の両側に硬質の脚部が突設してあり、軟質の当接部12は当接部12基端部本体の上面に突設されており、当接部12基端部下面は戸当り装置の嵌め込み時の開口枠体との閉時設定高さを調整可能にするライナー9を取り外し可能に設けたライナー付き戸当たり装置」

刊行物2
「目地をシールするための目地材であって、目地材のはみ出しを防止するための高さ調節部材8をゴム等からなる目地主体に破断可能に一体成形した目地材」

刊行物3
「軟質で中空長筒状のパッキング部1を有する戸当りパッキングにおいて、中空長筒状のパッキング部1の内壁面の長手方向に、内周方向に波形状を呈するように順次凹凸を形成した戸当りパッキング」

3.本件考案と刊行物1記載の考案との対比
本件考案と刊行物1記載の考案とを対比すると、刊行物1記載の考案の「当接部12基端部」、「脚部」及び「戸当り装置」は、それらの機能に照らし本件考案の「取付け部」、「リップ」及び「戸当りパッキング」に相当し、刊行物1記載の考案の「当接部12」と本件考案の「中空シール部」は、シール部である点で共通するから、両者は、
「家屋等の開閉部における密封を保持する取付け部とシール部及びライナーからなるパッキングであって、前記取付け部は硬質取付け部本体の両側部に硬質リップが突設してあり、前記軟質シール部は該取付部本体の上面に突設されており、取付け部下面はライナーを設けたライナー付戸当りパッキング」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1
本件考案は、家屋等の開閉部における開口枠体に固着し戸、扉等の開閉体と弾接させる戸当りパッキングであるのに対し、刊行物1記載の考案は、障子戸の竪框に取り付け、開口枠と弾接させる戸当りパッキングである点。
相違点2
本件考案はゴム製であるのに対し、刊行物1記載の考案は合成樹脂製である点。
相違点3
本件考案は、取り付け部本体の両側に軟、硬質リップがそれぞれ突設してあるのに対し、刊行物1記載の考案は、取り付け部本体の両側に硬質リップが突設してある点。
相違点4
本件考案では、取付け部下面はパッキングの嵌込み時の扉との閉時設定高さを調整可能にする硬質ライナーを切離し可能に一体成形したのに対し、刊行物1記載の考案では、取付け部下面は開口枠体との閉時設定高さを調整可能にするライナーを取り外し可能に設けた点。
相違点5
本件考案では、シール部が中空で、これの内壁面の長手方向には内周方向に波形状を呈するように順次凹凸を形成したのに対し、刊行物1記載の考案では、シール部がそのような構成を備えていない点。
4.上記相違点の検討
相違点1について
戸当りパッキングを、家屋等の開閉部における開口枠体に固着し、扉等の開閉体と弾接させるることは、本件考案の出願前周知の技術事項である(例えば、実開昭59-160790号公報、実開昭60-15581号公報、実願昭60-90421号(実開昭61-206074号)のマイクロフィルム参照。)から、刊行物1記載の考案に、この周知の技術事項を採用して本件考案のようにすることに、困難性は認められない。
相違点2について
パッキングをゴムで形成することは、本件考案の出願前周知の技術事項であり(例えば、実願昭54-119950号(実開昭56-36893号)のマイクロフィルム参照。)、刊行物1記載のパッキングを本件考案のようにゴム製とすることは、当業者が設計上適宜行う材料の変更にすぎない。
相違点3について
戸当りパッキングの取付け部の両側に複数のリップを設けることは、本件考案の出願前周知の技術事項であり(例えば、相違点1で挙げた周知例の文献参照。)、また、パッキングの取付け部に硬質リップと軟質リップの両方を形成することも、同様に周知の技術事項である(例えば、実願昭58-2307号(実開昭59-110252号)のマイクロフィルム、実願昭59-99333号(実開昭61-14146号)のマイクロフィルム、実開昭55-60559号(実開昭56-160122号)のマイクロフィルム参照。)から、刊行物1記載の考案に上記周知の技術事項を適用し、特に、両側部上下部に夫々軟質リップと、硬質リップを設け本件考案のようにすることは、当業者がきわめて容易になし得たことである。
相違点4について
目地をシールする目地材ではあるが、目地材の高さを調節する高さ調節部材(本件考案の「ライナー」に相当する。)を、目地材の端部に破断可能に一体成形することは、刊行物2に記載されている。また、本件考案の「パッキングの嵌込み時の扉との閉時設定高さを調整可能にする」との構成は、相違点1の構成を採ることに伴って備わるライナーの構成を表現したにすぎない。そして、刊行物1記載の考案と刊行物2記載の考案は、共に、建物における隙間を密封(シール)する部材の高さ調節という点で課題が共通するから、刊行物1記載の考案におけるライナーに刊行物2に記載された、目地材の高さを調節する高さ調節部材を目地材の端部に破断可能に一体成形するという技術事項を適用し、訂正考案のようにすることは、当業者がきわめて容易になし得たことである。
相違点5について
刊行物3には、略円弧状の中空長筒状のパッキング部1(本件考案の「中空シール部」に相当する。)の内周壁面の長手方向に、内周方向に波形状の凹条部と凸条部を交互に連続して形成した戸当りパッキングが記載されており、上記凹条部と凸条部は波形状であるから、本件考案と同様に湾曲した凹条部と湾曲した凸条部であるといえる。そして、刊行物1記載の考案と刊行物3記載の考案は、共に、戸当りパッキングに関するものであるから、刊行物1記載の考案におけるシール部である当接部12の構成として、刊行物3に記載された上記パッキング部1の構成を採用し本件考案のようにすることは、当業者がきわめて容易に想到し得たことである。
そして、全体として、本件考案の奏する効果も、刊行物1?3に記載された考案及び周知の技術事項から、当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとは認められない。
したがって、本件考案は、刊行物1?3に記載された考案及び周知の技術事項に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件考案は実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、本件考案の実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。
したがって、本件考案の実用新案登録は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則9条7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令205号)3条2項の規定により、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-10-06 
出願番号 実願平3-27213 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (E06B)
最終処分 取消    
前審関与審査官 七字 ひろみ  
特許庁審判長 幸長 保次郎
特許庁審判官 鈴木 公子
藤枝 洋
登録日 1997-10-31 
登録番号 実用新案登録第2562305号(U2562305) 
権利者 化成工業株式会社
愛知県大府市横根町坊主山1-64
考案の名称 ライナ-付戸当りパッキング  
代理人 中村 敦子  
代理人 池田 敏行  
代理人 岡田 英彦  
代理人 岩田 哲幸  

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