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審決分類 審判 全部申し立て   B64C
審判 全部申し立て   B64C
管理番号 1028428
異議申立番号 異議2000-73623  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-09-18 
確定日 2000-12-25 
異議申立件数
事件の表示 登録第2603637号「航空機の飛行制御装置」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2603637号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.本件考案
実用新案登録第2603637号(平成5年11月8日出願、平成12年1月14日設定登録。)の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、その実用新案登録請求の範囲第1項に記載されたとおりの
「操縦輪に連結されたメカニカル系統を介し舵面を操舵する手動操縦系統と、前記操縦輪の操舵量を電気信号に変換するセンサを介しオートパイロット装置に入力し舵面を自動で操舵するコントロールホィールステアリング方式の操縦系統を備えた航空機の飛行制御装置において、前記舵面とは前記メカニカル系統を介して連結されていないミニスティックを設け、前記ミニスティックの操作量を電気信号に変換して前記オートパイロット装置に入力し、前記オートパイロット装置の指令信号によりアクチュエータを介して舵面を操舵するようにしたことを特徴とする航空機の飛行制御装置。」
であると認める。

2.申立ての理由の概要
実用新案登録異議申立人川崎重工業株式会社は、甲第1号証(「川崎重工技報」113号1992年4月、第89?95頁)、甲第2号証(「川崎重工技報」117号1993年4月、第38?47頁)を提出し、本件請求項1に係る考案は、甲第1号証記載の考案または甲第2号証記載の考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号の考案に該当し、その実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してなされたものであるから、実用新案登録を取り消すべき旨、主張しており、さらに、甲第3号証(特公昭55-15357号公報)、甲第4号証(特公昭55-15358号公報)、甲第5号証(特公昭55-15359号公報)、甲第6号証(特公昭55-45438号公報)を提出し、本件請求項1に係る考案は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができず、その実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してなされたものであるから、実用新案登録を取り消すべき旨、主張している。

3.各刊行物の記載
3-1.甲第1号証の記載
甲第1号証には、「FBW研究機」について、
(ア)「さらに、FBW研究機には前記第(1)項に述べたFBW操縦システムをコンプリートに搭載し3重システムのうち2系統に故障が検出されシステムから切離された場合は残り1系統で作動が可能(3重2Fail Operational)な安全性を付与していることに加えて図11(b)に示す次の安全対策が施されている。
○1 機械式操縦装置とFBW操縦システムの作動を同期させてから両者を結合するシンクロナイゼーション機能
○2 FBW操縦システムがシャットダウンした場合にFBW用油圧アクチュエータをバイパスモードにする機能
○3 FBW操縦システムの接続・切離しをコントロールする(電気式の)機能が故障した場合にも、機械的に同システムを切離すための緊急FBW切離索
○4 FBW操縦システムの作動状況と故障状況判断を研究機に同乗するオペレータがモニタするためのモニタテストユニット(MTU)の搭載。なお、MTUは故障記録も行う。」(「川崎重工技報」113号1992年4月、第92頁右欄第4行?第93頁左欄第4行)と記載され、
(イ)図11(b)には、「BK117 FBW研究機の操縦系統構成」として、「スティック(ペダル)」は、「機械式リンケージ」を介して「HYD UNIT」、「メインロータ」に連結され、また「切換機構(油圧クラッチ)」を介して「HYD UNIT」に連結されている旨の記載があり、
(ウ)同じく図11(b)には、「飛行制御計算機FCC」および「アクチュエータ制御計算機MACC」は、「FBWアクチュエータ」を制御し、このアクチュエータは、「切換機構(油圧クラッチ)」を制御している旨の記載があり、
(エ)同じく図11(b)には、「4軸サイドスティックコントローラ」および「1軸サイドスティックコントローラ」を設ける旨の記載があり、
(オ)同じく図11(b)には、「4軸サイドスティックコントローラ」および「1軸サイドスティックコントローラ」の出力は、「アクチュエータ制御計算機(MACC)」に与えられる旨の記載があり、
(カ)図11(a)には、「BK117 FBW研究機の操縦系統構成」として、「サイドスティック」を設ける旨の記載があり、
(キ)「FBW研究機は母機(BK117-P5)の耐空性を損なわないことを基本方針に製作された。すなわち、図11(a)に示されるとおり、
○1 飛行試験は2名のパイロットにより行うこととし、1名は安全パイロットとして左側に、他1名はFBWシステムの評価パイロットとして右側に搭乗するように構成されている。
○2 安全パイロットは、FBW操縦システムの作動をモニタすることにより、必要時には随時FBW評価パイロットをオーバライドして操縦できることとし、そのために、安全パイロット側にはFBW緊急ディスエンゲージ・スイッチが設けられている。
○3 FBW操縦システムがディスエンゲージされた状態では母機の機械式操縦装置への作動に影響がないように構成されている。つまり、FBW操縦システムは接続機構を介して既存の機械式操縦装置にパラレルに接続されている。」(上記技報第92頁左欄第24行?右欄第3行)と記載され、
(ク)「(ii)FBW関連機器の開発
システムを構成する主要な機器は、国内の主な機器製造会社で新規開発され、・・・飛行試験供試体としての適合性が実証された。
主な新規開発機器は次の通りである。
○1 メインロータ・アクチュエータ制御計算機(MACC)
○2 飛行制御計算機(FCC)
・・・
○8 モニタテストユニット(MTU)」(上記技報第91頁左欄第30?43行)と記載され、
(ケ)「この不安定性を解決するために、かつては多くのヘリコプタが図3に示すような機械的なジャイロを装備していた。その後、電子技術の発展とともにこれらの機械式ジャイロは図4に示す電気式、いわゆるSAS(Stability Augmentation System)に置き代えられた。SASは機体のダンピングを増加することによって安定性を補償するシステムであり、」(上記技報第88頁右欄第10?15行)と記載され、
(コ)図4には、「電気式安定増大装置(SAS)」について、「操縦桿」に連結されたメカニカル系統を介し、「ブレード」を操作する「アクチュエータ」を操作する手動操縦系統と、「センサ」の信号を「コンピュータ」に入力し「ブレード」を操作する「アクチュエータ」を自動で操作する操縦系統がある旨、記載されている。

3-2.甲第2号証の記載
甲第2号証には、「BK117 FBW研究機」として、
(サ)「FBW操縦システムは母機の有する耐空性を損なわないことを基本方針とし、母機の既存の機械式操縦装置にパラレルに、FBW操縦システム接続機構を介して搭載した(図5参照)。」(「川崎重工技報」117号1993年4月、第41頁左欄第15行?18行)と記載され、
(シ)「FBW操縦システムは次の安全対策のもとに図6に示すように母機の機械式操縦系統にパラレルに結合し搭載した。
○1 FBW操縦システムのエンゲージ後に、操縦系統の作動範囲が拘束されることを防止するための、両システムの作動位置を同期させてから結合するシンクロナイゼーション機能の付与
○2 FBWアクチュエータの暴走監視機能と、暴走検知時にアクチュエータを緊急停止し、バイパスモードに移行させる機能の付与
○3 FBWアクチュエータがバイパスモードに移行した際に母機のフィールスプリング力によって急激に操縦系統が動かされることを防止するための、FBWアクチュエータ・バイパスモード時のダンピング機能の付与
○4 サイドスティックセンサ他各種センサへの研究機母機の固有振動数の影響を除去するためのフィルタの搭載
○5 電源瞬断防止対策のための母機電源系統改修
○6 FBW接続機構のクラッチ(電磁バルブコントロールによる油圧クラッチ)の開放時間制御のためのオリフィスの装着
○7 FBW緊急カットオフ・スイッチ(電気式)と索を用いた機械式機構によるFBW緊急切離し装置の2重装備」(上記技報第第41頁左欄第29行?第42頁第8行)と記載され、
(ス)図6には、「BK117 FBW研究機の操縦系統構成(2)」として、「スティック(ペダル)」は、「機械式リンケージ」を介して「HYD UNIT」、「メインロータ」に連結され、また「切換機構(油圧クラッチ)」を介して「HYD UNIT」に連結されている旨の記載があり、
(セ)同じく図6には、「飛行制御計算機(FCC)」および「アクチュエータ制御計算機(ACC)」は、「FBWアクチュエータ」を制御し、このアクチュエータは、「切換機構(油圧クラッチ)」を制御している旨の記載があり、
(ソ)同じく図6には、「3軸サイドスティックコントローラ」および「1軸サイドスティックコントローラ」を設ける旨の記載があり、
(タ)同じく図6には、「3軸サイドスティックコントローラ」および「1軸サイドスティックコントローラ」の出力は、「アクチュエータ制御計算機(ACC)」に与えられる旨の記載があり、
(チ)図5には、「BK117 FBW研究機の操縦系統構成(1)」として、「サイドスティック」を設ける旨の記載があり、
(ツ)「(1) FBW操縦システムの構成
上記の方針のもとに開発したFBW操縦システムは、図2に示すように構成され、次の通り特徴付けられる。
○1 4軸フルオーソリティ・ディジタルFBW方式
○2 高度多重管理;3重2Fail Operational(PFCS)
;2重1Fail Operational(AFCS)
・・・
(i)PFCS
PFCSの核は3重のアクチュエータ制御計算機(ACC、東京航空計器(株)製)から成り、・・・
(ii)AFCS
AFCSには2重の飛行制御計算機(FCC、日本航空電子工業(株)製)があり、」(上記技報第39頁右欄第1行?第40頁左欄第5行)と記載されていいる。

3-3.甲第3号証の記載
甲第3号証には、その全文および全図面から見て、「姿勢ジャイロ101」および「対気速度センサ103」を含む「機体姿勢制御系A」と、「対地速度センサ121」、「速度設定器124」および「距離設定器143」を備える「飛行距離及び対地速度制御系B」と、「電波高度計168」および「高度設定器171」を備える「高度制御系C」と、水平速度制御のための「サイクリックピッチアクチュエータ」と高度制御のための「コレクティブピッチアクチュエータ」とから成る「作動系D」とを含む構成が記載されている。

3-4.甲第4号証の記載
甲第4号証には、その全文および全図面から見て、「対地速度センサ1」、「速度設定器4」からなり、その制御信号をサイクリックピッチアクチュエータに送る速度制御装置が記載されている。

3-5.甲第5号証の記載
甲第5号証には、その全文および全図面から見て、「姿勢ジャイロ101」および「対気速度センサ103」を含む「機体姿勢制御系A」と、「対地速度センサ121」、「速度設定器124」および「距離設定器143」を備える「飛行距離及び対地速度制御系B」と、「電波高度計168」および「高度設定器171」を備える「高度制御系C」と、水平速度制御のための「サイクリックピッチアクチュエータ」と高度制御のための「コレクティブピッチアクチュエータ」とから成る「作動系D」とを含む構成が記載されている。

3-6.甲第6号証の記載
甲第6号証には、その全文および全図面から見て、「姿勢ジャイロ101」および「対気速度センサ103」を含む「機体姿勢制御系A」と、「対地速度センサ121」、「速度設定器124」および「距離設定器143」を備える「飛行距離及び対地速度制御系B」と、「電波高度計168」および「高度設定器171」を備える「高度制御系C」と、水平速度制御のための「サイクリックピッチアクチュエータ」と高度制御のための「コレクティブピッチアクチュエータ」とから成る「作動系D」とを含む構成が記載されている。

4.各刊行物記載の考案との対比および判断
まず、甲第1号証記載の考案と対比するため、甲第1号証を参照すると、上記(ア)?(カ)(ク)の記載から、甲第1号証のものは、「スティック(ペダル)」に連結された「機械式リンケージ」を介して「HYD UNIT」、「メインロータ」を操作する「機械式操縦装置」と、「メインロータ」とは「機械式リンケージ」を介して連結されていない「4軸サイドスティックコントローラ」および「1軸サイドスティックコントローラ」を設け、「4軸サイドスティックコントローラ」および「1軸サイドスティックコントローラ」の操作量を電気信号に変換して「アクチュエータ制御計算機MACC」に入力し、「アクチュエータ制御計算機MACC」の指令信号により「FBWアクチュエータ」を介して「HYD UNIT」、「メインロータ」を操作する「FBW研究機」である。
そこで、本件考案(以下、「前者」という。)と甲第1号証記載の考案(以下、「後者」という。)とを対比すると、後者の「メインロータ」とは、ヘリコプタのメインロータであって、翼形状を有し、その操作により機体の姿勢を変更できることは明らかだから、前者の「蛇面」に相当する。また、「アクチュエータ制御計算機MACC」は、メインロータを操作するためのアクチュエータの操作量を計算するから、前者の「オートパイロット」に相当する。
そうすると、両者は、
「操縦輪に連結されたメカニカル系統を介し舵面を操舵する手動操縦系統を備えた航空機の飛行制御装置において、前記舵面とは前記メカニカル系統を介して連結されていないミニスティックを設け、前記ミニスティックの操作量を電気信号に変換してオートパイロット装置に入力し、前記オートパイロット装置の指令信号によりアクチュエータを介して舵面を操舵するようにしたことを特徴とする航空機の飛行制御装置。」
である点で一致し、本件考案では、
「前記操縦輪の操舵量を電気信号に変換するセンサを介しオートパイロット装置に入力し舵面を自動で操舵するコントロールホィールステアリング方式の操縦系統」
を有しているのに対して、甲第1号証記載の考案では、そのようなコントロールホィールステアリング方式の操縦系統について、記載されていない点で相違する。
そこで、この相違点を検討すると、異議申立人は、異議申立書の第6頁第18?21行において、上記相違点は、上記(ウ)に記載されている旨主張しているが、上記(ウ)には、「飛行制御計算機FCC」および「アクチュエータ制御計算機MACC」により、「FBWアクチュエータ」を制御することは記載されているものの、「飛行制御計算機FCC」には、「4軸サイドスティックコントローラ」「1軸サイドスティックコントローラ」「スティック(ペダル)」のいずれからも入力がないし、「アクチュエータ制御計算機MACC」への入力は、「4軸サイドスティックコントローラ」および「1軸サイドスティックコントローラ」から入力されるものであって、「スティック(ペダル)」の操作量を電気信号に変換するセンサを介して「アクチュエータ制御計算機MACC」に入力しているわけではないから、上記相違点のコントロールホィールステアリング方式の操縦系統が、甲第1号証に記載されているとはいえない。
また、甲第1号証には、上記(ケ)(コ)に「電気式安定増大装置(SAS)」が開示されており、甲第3,5,6号証には、「機体姿勢制御系A」「飛行距離及び対地速度制御系B」「高度制御系C」が開示され、甲第4号証には、「速度設定器4」が開示されている。
そこで、これらの「電気式安定増大装置(SAS)」「機体姿勢制御系A」「飛行距離及び対地速度制御系B」「高度制御系C」「速度設定器4」の、甲第1号証の「機械式操縦装置」への適用について検討すると、甲第1号証の(ケ)(コ)の記載からは、「スティック(ペダル)」の操作量を電気信号に変換するセンサを介して「電気式安定増大装置(SAS)」に入力しているかどうか明確ではなく、甲第3,5,6号証では、操縦輪の操舵量を電気信号に変換するセンサを介して、「機体姿勢制御系A」「飛行距離及び対地速度制御系B」「高度制御系C」に入力しているかどうか明確ではなく、甲第4号証では、操縦輪の操舵量を電気信号に変換するセンサを介して、「速度設定器4」に入力しているかどうか明確ではない。しかも、上記(キ)における「FBW操縦システムがディスエンゲージされた状態では母機の機械式操縦装置への作動に影響がないように構成されている。つまり、FBW操縦システムは接続機構を介して既存の機械式操縦装置にパラレルに接続されている」という記載からも明らかなように、甲第1号証の「FBW研究機」は、FBWの飛行試験を行うにあたり、FBW操縦システムに異常が生じた場合でも、機械式操縦装置により操縦を継続できるように、FBW操縦システムとは別個に機械式操縦装置を設けるものであり、「FBW研究機」に限って、FBW操縦システムと機械式操縦装置とを重畳して設けるものである。そうすると、甲第1号証の「機械式操縦装置」に対して、従来公知の「電気式安定増大装置(SAS)」「機体姿勢制御系A」「飛行距離及び対地速度制御系B」「高度制御系C」「速度設定器4」を付加することは、機械式操縦装置における「電気式安定増大装置(SAS)」「機体姿勢制御系A」「飛行距離及び対地速度制御系B」「高度制御系C」「速度設定器4」と、FBW操縦システムにおける「飛行制御計算機FCC」および「アクチュエータ制御計算機MACC」とを、「FBW操縦システムがディスエンゲージされた状態では母機の機械式操縦装置への作動に影響がないように」別個に設けることとなり、機械式操縦装置における「電気式安定増大装置(SAS)」「機体姿勢制御系A」「飛行距離及び対地速度制御系B」「高度制御系C」「速度設定器4」と、FBW操縦システムにおける「飛行制御計算機FCC」および「アクチュエータ制御計算機MACC」とを、同一のハードウエア構成としないことを前提とした構成になる。

次に、甲第2号証の考案と対比するため、甲第2号証を参照すると、上記(ス)?(ツ)の記載から、甲第2号証のものは、「スティック(ペダル)」に連結された「機械式リンケージ」を介して「HYD UNIT」、「メインロータ」を操作する「機械式操縦装置」と、「メインロータ」とは「機械式リンケージ」を介して連結されていない「3軸サイドスティックコントローラ」および「1軸サイドスティックコントローラ」を設け、「3軸サイドスティックコントローラ」および「1軸サイドスティックコントローラ」の操作量を電気信号に変換して「アクチュエータ制御計算機ACC」に入力し、「アクチュエータ制御計算機ACC」の指令信号により「FBWアクチュエータ」を介して「HYD UNIT」、「メインロータ」を操作する「FBW研究機」であって、本件考案(以下、「前者」という。)と甲第2号証記載の考案(以下、「後者」という。)とを対比すると、後者の「メインロータ」とは、ヘリコプタのメインロータであって、翼形状を有し、その操作により機体の姿勢を変更できることは明らかだから、前者の「蛇面」に相当する。また、「アクチュエータ制御計算機MACC」は、メインロータを操作するためのアクチュエータの操作量を計算するから、前者の「オートパイロット」に相当する。
そうすると、両者は、
「操縦輪に連結されたメカニカル系統を介し舵面を操舵する手動操縦系統を備えた航空機の飛行制御装置において、前記舵面とは前記メカニカル系統を介して連結されていないミニスティックを設け、前記ミニスティックの操作量を電気信号に変換してオートパイロット装置に入力し、前記オートパイロット装置の指令信号によりアクチュエータを介して舵面を操舵するようにしたことを特徴とする航空機の飛行制御装置。」
である点で一致し、本件考案では、
「前記操縦輪の操舵量を電気信号に変換するセンサを介しオートパイロット装置に入力し舵面を自動で操舵するコントロールホィールステアリング方式の操縦系統」
を有しているのに対して、甲第2号証記載の考案では、そのようなコントロールホィールステアリング方式の操縦系統について、記載されていない点で相違する。
そこで、この相違点を検討すると、上記(ス)?(ツ)には、「アクチュエータ制御計算機ACC」により、「FBWアクチュエータ」を制御することは記載されているものの、「アクチュエータ制御計算機ACC」への入力は、「3軸サイドスティックコントローラ」および「1軸サイドスティックコントローラ」から入力されるものであって、「スティック(ペダル)」の操作量を電気信号に変換するセンサを介して「アクチュエータ制御計算機ACC」に入力しているわけではないから、上記相違点のコントロールホィールステアリング方式の操縦系統が、甲第2号証に記載されているとはいえない。
また、甲第2号証の「機械式操縦装置」に対して、上記の甲第1号証の「電気式安定増大装置(SAS)」、甲第3,5,6号証の「機体姿勢制御系A」「飛行距離及び対地速度制御系B」「高度制御系C」、甲第4号証の「速度設定器4」を適用することについて検討すると、甲第1号証の(ケ)(コ)の記載からは、「スティック(ペダル)」の操作量を電気信号に変換するセンサを介して「電気式安定増大装置(SAS)」に入力しているかどうか明確ではなく、甲第3,5,6号証では、操縦輪の操舵量を電気信号に変換するセンサを介して、「機体姿勢制御系A」「飛行距離及び対地速度制御系B」「高度制御系C」に入力しているかどうか明確ではなく、甲第4号証では、操縦輪の操舵量を電気信号に変換するセンサを介して、「速度設定器4」に入力しているかどうか明確ではない。しかも、上記(シ)における「FBW操縦システムは次の安全対策のもとに図6に示すように母機の機械式操縦系統にパラレルに結合し搭載した。」という記載からも明らかなように、甲第2号証の「FBW研究機」は、FBWの飛行試験を行うにあたり、FBW操縦システムに異常が生じた場合でも、機械式操縦装置により操縦を継続できるように、FBW操縦システムとは別個に機械式操縦装置を設けるものであり、「FBW研究機」に限って、FBW操縦システムと機械式操縦装置とを重畳して設けるものである。そうすると、甲第2号証の「機械式操縦装置」に対して、従来公知の「電気式安定増大装置(SAS)」「機体姿勢制御系A」「飛行距離及び対地速度制御系B」「高度制御系C」「速度設定器4」を付加することは、機械式操縦装置における「電気式安定増大装置(SAS)」「機体姿勢制御系A」「飛行距離及び対地速度制御系B」「高度制御系C」「速度設定器4」と、FBW操縦システムにおける「飛行制御計算機FCC」および「アクチュエータ制御計算機ACC」とを、別個に設けることとなり、機械式操縦装置における「電気式安定増大装置(SAS)」「機体姿勢制御系A」「飛行距離及び対地速度制御系B」「高度制御系C」「速度設定器4」と、FBW操縦システムにおける「飛行制御計算機FCC」および「アクチュエータ制御計算機ACC」とを、同一のハードウエア構成としないことを前提とした構成になる。

上述のように、甲第1?6号証には、手動操縦系統の操縦輪の操舵量をオートパイロット装置に入力するにあたり、操縦輪の操舵量を電気信号に変換するセンサを介して入力することについて、記載も示唆もない。
さらに、甲第3?6号証には、手動操縦系統の操縦輪の操舵量が入力されるオートパイロットと、ミニスティックの操作量が入力されるオートパイロットとを、同一のオートパイロットで共用する構成について、記載も示唆もなく、甲第1、2号証には、手動操縦系統の操縦輪の操舵量が入力されるオートパイロットと、ミニスティックの操作量が入力されるオートパイロットとを、別個の構成として共用しないことが示唆されている。
したがって、本件考案は、甲第1号証または甲第2号証に記載された考案でないばかりか、甲第1?6号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案できたものでもない。

5.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由および証拠によっては、本件請求項1に係る考案の実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る考案についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1に係る考案についての実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してなされたものではない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-12-05 
出願番号 実願平5-59886 
審決分類 U 1 651・ 113- Y (B64C)
U 1 651・ 121- Y (B64C)
最終処分 維持  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 鈴木 久雄
刈間 宏信
登録日 2000-01-14 
登録番号 実用新案登録第2603637号(U2603637) 
権利者 富士重工業株式会社
東京都新宿区西新宿一丁目7番2号
考案の名称 航空機の飛行制御装置  
代理人 西教 圭一郎  
代理人 杉山 毅至  
代理人 廣瀬 峰太郎  
代理人 竹内 三喜夫  
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