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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て不成立) A01F
管理番号 1028429
判定請求番号 判定2000-60087  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2001-04-27 
種別 判定 
判定請求日 2000-06-09 
確定日 2000-10-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第2541587号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「ピット式茶生葉受入装置」は、実用新案登録第2541587号考案の技術的範囲に属する。
理由 1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号装置の図面1、イ号装置の図面2及びイ号装置の説明資料に記載するピット式茶生葉受入装置(以下、イ号物件という)が、登録実用新案第2541587号の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。

2.本件登録実用新案
(2-1)本件考案の構成
本件登録実用新案(以下、本件考案という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、それを構成要件に分説すると次のとおりである。
A:摘採され茶袋に収納されて製茶工場に運ばれた生葉を荷受け後、直ちに前記茶袋から取り出して製茶工場内の生葉管理室等へ搬送する前に前記生葉を一時的に貯留する生葉受入用冷却貯槽であって、
B:該生葉受入用冷却貯槽の上部開口は床面と略同一面となるように設置するとともに、
C:該生葉受入用冷却貯槽の底面を通気性の無端輸送帯で形成し、
D:該通気性無端輸送帯を介して生葉受入用冷却貯槽内に収容された茶袋から取り出されたばかりの生葉に冷風を供給する冷却用ファンを備え、
E:前記した生葉受入用冷却貯槽の底面を形成する通気性の無端輸送帯の送出端を、該生葉受入用冷却貯槽内の生葉を製茶工場内の生葉管理室等へ搬送する上昇コンベヤのホッパーに臨ませたことを特徴とする
F:生葉受入用冷却貯槽装置。」

(2-2)本件考案の目的及び効果
本件登録公報によれば、本件考案の目的及び効果は次のとおりである。
「本考案は、摘採されて製茶工場へ運ばれてきた生葉を短時間で茶袋から出して生葉間の呼吸熱を除去し、品質の劣化を防止する生葉受入用冷却貯槽装置の提供を目的とするものである。」(第3欄第19?22行)、
「摘採され茶袋に押し詰められて製茶工場に運ばれてきた生葉を荷受け後、茶袋から取り出し製茶工場内の生葉管理室等へ搬送する前の上昇コンベヤの時間待ちの間を底面を通気性を有する無端輸送帯で形成した生葉受入用冷却貯槽に投入するので、生葉が茶袋に詰められたままトラックの荷台等に長時間放置されることがなく、摘採されたばかりの生葉を短時間で茶袋から取り出すことができ、生葉受入用冷却貯槽に投入された生葉は、前記した通気性の底面から冷却用ファンによって冷風を浴びせられ生葉間の呼吸熱が除去されるので、生葉管理室等に収容されるときには、前記の生葉は冷えた状態になっており、生葉があかやけを起こすような恐れは全くない。更に、前記の生葉受入用冷却貯槽は製茶工場内の生葉管理装置へ生葉を搬送する上昇コンベヤのホッパーより生葉の収容量がはるかに多いので、前記の上昇コンベヤの数及び容量が小さくても順番待ちを行う必要がなく、生葉受入用冷却貯槽への投入は、前記の生葉受入用冷却貯槽の上部開口が床面と略同一面となるように設置されているので、床面から直接投入するのに容易であり、上部開口面の全面から投入できるため投入口を広く形成でき、上昇コンベヤのホッパーに直接投入するのに比し作業性にも優れているので短時間で茶袋から生葉をあけることができ、更に、前記の生葉受入用冷却貯槽の送出端を製茶工場内の生葉管理室へ生葉を搬送する上昇コンベヤのホッパーに臨ませてあるので生葉管理室等への搬送も容易に行われるものである。」(第5欄第29行?第6欄第24行)。

3.イ号物件
イ号物件の符号2を付した部材を、請求人は、バケットコンベアとしているが、バケットコンベアは無端帯にバケットを備え該無端帯の回動によりバケットを回動させて被搬送物を搬送するものである。ところが、「イ号装置の図面」によれば、符号2を付した個所の部材(三角柱からなるホッパー状の部分)は、生葉管理室等へ搬送する上昇コンベア(同図面の左下に下方のみ示されたコンベア)の側壁の下端に固定されていて無端帯とともに回動するものではなく、該部材は送出コンベア25の送出端の下方にあることから送出コンベア25の送出端が邪魔をして無端帯とともに回動できないものであり、また、生葉管理室等へ搬送する上昇コンベアは、サンプリング装置30の構成と同一の構成を有することからも、イ号物件の符号2を付した部材バケットコンベアということはできないから、上記符号2を付した個所の部材はホッパーと解するのが相当である。
そうすると、請求人が提出したイ号物件は、次のa?fからなるものと認める。
a:茶袋に収納された生葉を、生葉管理室等へ搬送する前に茶袋から取り出して一時的に貯留する収容コンテナ10であること。
b:収容コンテナ10の上部開口の左右及び後側は床面から上方に突出するように、左右の側壁上部12A、後壁上部13Aを設定し、左右の側壁上部12Aの上方にはさらに手摺り14を設け、収容コンテナ10の手前側は、床面と略同一平面とし投入口としていること。
c:収容コンテナ10の底面を、小孔が開口されたコンベアスラット16aからなる受入コンベヤ16で形成していること。
d:受入コンベヤ16を介してコンテナ10内に収容された生葉に冷風を供給する送風機17Bを備えていること。
e:収容コンテナ10の底面を形成する受入コンベヤ16の送出端は、まず送出コンベヤ25に連接し、この送出コンベヤ25が、生葉管理室等へ搬送する上昇コンベアのホッパー2に連接していること。
f:ピット式茶生葉受入装置1であること。

4.当事者の主張
イ号物件が本件考案の構成要件A、C、D、Fを充足していることについて、請求人及び被請求人の間に争いはない。
イ号物件が本件考案の構成要件B、Eを充足するか否かについては、請求人及び被請求人の主張が異なっている。

5.イ号物件が本件考案の技術的範囲に属するか否かについて
(5-1)争いのない点について
本件考案とイ号物件とを対比すると、イ号物件の「収容コンテナ10」、「小孔が開口されたコンベアスラット16aからなる受入コンベヤ16」、「送風機17B」、「ピット式茶生葉受入装置1」は、本件考案の「生葉受入用冷却貯槽」、「通気性無端輸送帯」、「冷却用ファン」、「生葉受入用冷却貯槽装置」にそれぞれ相当するから、イ号物件の各構成a、c、d、fは、本件考案の各構成要件A、C、D、Fを充足している。

(5-2)争点1(構成要件Bの充足性)について
本件考案の構成要件Bとイ号物件の構成要件bとを対比すると、生葉受人用冷却貯槽の上部開口が、本件考案の構成要件Bは「床面と略同一平面となるよう設置」したのに対し、イ号物件の構成要件bは、「左右の側壁上部12A、後壁上部13Aを設定し、左右の側壁上部12Aの上方にはさらに手摺り14を設け、収容コンテナ10の手前側は、床面と略同一平面となるように設置」した点で構成が一応相違する。
この点について、請求人は、イ号物件の構成要件bが本件考案の構成要件Bを充足しない理由として、「上部開口高さ同一要件(構成要件B)は、生葉受人用冷却貯槽の上部開口は床面と略同一面となるよう設置するものであるが、「略同一面」とは、床面から上部開口面の全面へ容易に直接茶葉を投入できる効果を奏し得るものであると解される。」(請求書第5頁第15?18行)、「本件登録新案のB上部開口高さ要件(構成要件B)は、生葉受入用冷却貯槽1の上部開口は床面と略同一面となるようにすることである。イ号装置についてみると、イ号装置はその上部開放部をみると無端輸送帯たる受入コンベヤ16の始端側のみにおいて床面と同じ高さの投入口としており、他のほとんどの周囲は、床3より420mm高く側壁12(側壁上部12A)、後壁(後壁上部13A)が設定されている。従ってイ号装置では、茶生葉を床面から上部開口面の全面へ容易に直接投入できるとは言えないため、B.上部開口高さ要件(構成要件B)を具えていないと判断し得る。」(同書第8頁第18?26行)と主張している。
以下、構成要件bについて検討する。
本件考案は、「摘採されて製茶工場へ運ばれてきた生葉を短時間で茶袋から出して生葉間の呼吸熱を除去し、品質の劣化を防止する生葉受入用冷却貯槽装置の提供を目的」(登録公報第3欄第19?22行)とするものであり、「生葉が茶袋に詰められたままトラックの荷台等に長時間放置されることがなく、摘採されたばかりの生葉を短時間で茶袋から取り出すことができ」(同公報第6欄第3?5行)、「生葉管理室等に収容されるときには、前記の生葉は冷えた状態になっており、生葉があかやけを起こすような恐れは全くない。」(同公報同欄第8?10行)の作用効果を奏するために、「該生葉受入用冷却貯槽の底面を通気性の無端輸送帯で形成し、該通気性無端輸送帯を介して生葉受入用冷却貯槽内に収容された茶袋から取り出されたばかりの生葉に冷風を供給する冷却用ファンを備え」た構成を採用し、それに加えて、「床面から(生葉を)直接投入するのに容易」(同公報同欄第15?16行)である作用効果を奏するために、床面を掘り下げて形成した穴に、生葉受入用冷却貯槽を埋め込んで、「該生葉受入用冷却貯槽の上部開口を床面と略同一となるように設置」(構成要件B)した構成を付随的に付加したものである。
そして、本件考案の構成要件Bは、上部開口の全面が床面と略同一平面であることをとくに規定していない。
また、本件登録明細書の第1図を参照すると、上部開口の無端輸送体2の始端部側は床面から少し低く配置され、上部開口の無端輸送体2の終端部側は床面と略同一平面となっており、しかも、上部開口の無端輸送体2の終端部側には、上昇コンベア6が存在することから、この部分から生葉を生葉受入用冷却槽1に投入することは困難であるから、本件考案の構成要件Bが「上部開口面の全面から投入できる投入口を広く構成」(本件登録明細書第6欄第16?17行)することを意図したものとは認められず、本件考案の構成要件Bは、上部開口面の全面が床面と略同一平面であることまでも意味するものでもない。
以上の本件考案の構成要件Bの検討結果から、本件考案の生葉受入用冷却貯槽の上部開口は床面と略同一面とした構成の効果は、茶葉を床面から直接投入することが容易であることであり、この点においてはイ号装置も投入口より生葉を投入するとき、前記の投入口は床面と同一面に形成されているので、前記した本件考案と同様の構成及び効果を有するものである。
また、作業者の転落防止のために開口の周囲に壁や手摺りを設けることは、普通一般に行われていることであり、イ号装置の上部開口の手前にのみ茶生葉の投入口として床面と同一面としたとしても、茶葉を床面から直接投入することが容易であるという本件考案と同一の作用・効果を有するものであり、茶生葉受入装置として格別の効果を奏するものでもない。
したがって、イ号物件の構成要件bは本件考案の構成要件Bを充足することになる。

(5-3)争点2(構成要件Eの充足性)について
本件考案の構成要件Eとイ号物件の構成要件eとを対比すると、生葉受入用冷却貯槽内の生葉を、生葉受入用冷却貯槽の底面を形成する通気性の無端輸送帯から、製茶工場内の生葉管理室等へ搬送する上昇コンベヤのホッパーに移送する際に、本件考案の構成要件Eが「該通気性無端輸送帯の送出端を該ホッパーに臨ませた」のに対し、イ号物件の構成要件eが「送出コンベア25を介して、該通気性無端輸送帯の送出端を該ホッパーに臨ませた」点で一応構成が相違する。
この点について、請求人は、イ号物件の構成要件eが本件考案の構成要件Eを充足しない理由として、「2回目補正時までは、搬送手段の受給端に、とにかく生葉受入用貯槽の送出端を臨ませるとの技術的範囲の限定にとどまっていたが、拒絶理由を解消するために、どの場所にどのような目的で使用するのかを明確にするために、現在の登録請求の範囲のように上昇コンベヤのホッパーに、通気性の無端輸送帯の送出端を臨ませるという条件に限定した(4回目補正時)。これは従来公知の生葉管理コンテナとの差異を明確にするため、使用される場所の限定を厳格にしたものと判断される。」(請求書第6頁第11?18行)、「E.上昇コンベヤホッパー連接要件(構成要件E)は、・・・通気性の無端輸送帯の送出端から上昇コンベヤのホッパーに直接に生葉が投入されることが必要とされるものである。一方、イ号装置について見ると、イ号装置は非通気性の送出コンベヤ25を介してバケットコンベヤへ生葉が送り込まれる。」(請求書第8頁第28行?第9頁第5行)と主張している。
以下、構成要件Eの充足性について検討する。
本件考案は、上記(5-2)において詳述したように、「摘採されて製茶工場へ運ばれてきた生葉を短時間で茶袋から出して生葉間の呼吸熱を除去し、品質の劣化を防止する生葉受入用冷却貯槽装置の提供を目的」(本件登録公報第3欄第19?22行)とし、構成要件Bの構成を採用することに、考案の本質的な部分があるのであって、実用新案登録請求の範囲に記載された構成要件Eの構成を採ることによって「生葉管理室等への搬送も容易に行われる」(本件登録公報第6欄第23?24行)ようにすることは、考案の本質的な部分ではない。
また、生葉受入用冷却貯槽装置を設置するに当たって、床面を掘り込む位置と生葉管理室等の位置との相対的な配置関係によっては、生葉受入用冷却貯槽装置の通気性無端帯の送出端を、直接、生葉管理室等へ搬送する上昇コンベアのホッパーに、直接、臨ませることが困難な場合があり、このような場合には、上記構成要件Eをイ号物件のものに置き換えてコンベアを介在させても、本件考案の上記目的を達成することができるし、上記構成要件Eをイ号物件のものに置き換えてコンベアを介在させることは、イ号物件の実施の時点において当業者がきわめて容易に想到することができたものである。
さらに、本件考案の審査経過より明らかなとおり、本件考案出願前には、イ号物件は本件考案の出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術からきわめて容易に推考できたものではない。
そして、イ号物件を、本件考案の出願手続において実用新案登録請求の範囲から除外する旨の記載はない。
以上の検討結果から、イ号物件の構成要件eは本件考案の構成要件Eと均等であり、本件考案の構成要件Eを充足することになる。

したがって、イ号物件は、本件考案の構成要件のすべてを充足する。

6.むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件考案の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2000-09-19 
出願番号 実願平1-1860 
審決分類 U 1 2・ 1- YB (A01F)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 藤井 靖子
村山 隆
登録日 1997-04-25 
登録番号 実用新案登録第2541587号(U2541587) 
考案の名称 生葉受入用冷却貯槽装置  
代理人 岩木 謙二  
代理人 東山 喬彦  

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