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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1032374
審判番号 審判1999-5857  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-04-15 
確定日 2000-09-04 
事件の表示 平成4年実用新案登録願第19063号「ガスレーザ用ガス循環装置」拒絶査定に対する審判事件[平成5年9月28日出願公開、実開平5-72158]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.出願の経緯と本願考案
本願は、平成4年2月28日の出願であって、その考案は、補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 内部にレーザガスを密封した圧力容器(1)内に設置された送風機(2)と、圧力容器(1)外に設置され、送風機(2)を回転駆動してレーザガスを循環させる電動機(10)と、電動機(10)の回転子(11)に直結し、電動機(10)をレーザガスに対して封止する磁性流体シール(20)を介して、圧力容器(1)内部に突出した軸(12)とを備えたガスレーザ用ガス循環装置において、
電動機(10)及び磁性流体シール(20)を囲繞して外気に対して密閉するケース(13,14)を圧力容器(1)外に密設したことを特徴とするガスレーザ装置用ガス循環装。」
2.引用例について
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用した特表平2-500944号公報(以下、引用例1という。)には、その第3頁左下欄第18行?同頁右下欄第1行に、
「包囲体は、シールが破れた場合にシールを通して漏洩するかもしれないレーザガスを入れるために、圧力容器の外部のシャフトの端およびベアリングに面する磁気流体シールの側においてベアリングを包囲している。包囲体の内部のファンシャフト上の内部磁気カップリング部分および包囲体の外部でファンシャフトと同軸的な別個の被駆動シャフト上の外部磁気カップリングから成る磁気カップリングがファンを作動するのに用いられている。このような包囲体を設けたことによって、工業用途ばかりでなく医療用途に使用するのに必要な基準を充分に満足する安全性を備えて、磁気流体シールが破れた場合に、環境中への有毒ガスの漏洩を防ぐものである。」ということが記載されている。
更に、その第4頁左下欄第18行?第5頁右上欄第25行に、
「そのレーザガスはファンシャフト46によって支持された横流ファン44によって圧力容器12内を循環される。レーザガスに接触する横流ファン44およびファンシャフト46の部分は金属、好ましくはニッケル、またはセラミック、このましくは高純度アルミナである。横流ファン44のブレード48はエキシマレーザと共に以前から用いられている横流ファンと同様にシャフト46のまわりに配置されている。しかしながら、以前用いられている横流ファンとは異なって、横流ファン44にはベアリングとファンシャフト46用の駆動機構が設けられており、これらは圧力容器12内のレーザガスから隔離されており、したがってガスを汚染することはない。第4図を参照すると、磁気流体シール組立体50および磁気駆動組立体52が好ましい実施例として示されている。磁気気体シール組立体50は磁気流体シール56およびベアリング58を含むハウジング54を有している。ベアリング58はハウジング54によって支持され、かつ回転自在にファンシャフト46を支持している。ファンシャフト46の部分は実際には特殊加工したシャフトであり、このシャフトは、圧力容器12内で、ファン44を回転するシャフトの部分に対して同軸的に取り付けられている。説明の簡略化のために、連続的な同軸シャフト部分は区別されるべきでなく、単一のシャフトとして以下に説明するが、単一のシャフトであってもよいものである。
磁気流体シール56はベアリング58および圧力容器12の間でハウジング54内に配置され、離して配置した周囲溝62を持つファンシャフト46のセクション60を利用するものである。セクション60に接触しないが隣接して環状磁極片64が配置され、その外周はハウジング54の内部に対してシールされている。シャフト46のまわりに環状に配置した永久磁石66が磁極片64にすぐ隣接して配置されている。磁気材料の微小粉を含む流体68はシャフト46のセクション60および磁極片64の間の溝62の領域内に配置されている。流体68は磁力によって磁気流体68を保持する磁極辺64に働く永久磁石66の作用によってセクション60の領域に収容される。磁気流体68はセクション60においてシャフト46および磁気片64の間に流体シールを形成する。この種の磁気流体シールは周知であり、その構成および動作の詳細は容易に得られる。例えば、この種のシールはニューハンプシャー州ナシュアのフェロフルディックコーポレーションによるフェロフルディックシールとして市販されている。このようなシールは60pai程度の圧力差に耐えることができる。
ベアリング58は永久磁石に隣接して配置されており、磁気流体シール56によって圧力容器12内のレーザガスからシールされているので、潤滑油による圧力容器12内のレーザガスを汚染する危険なしに潤滑油を用いることができる。
シャフト46の端は、ハウジングに取り付けられた磁気駆動組立体52の部分に適合するために、ベアリング58を越えて延び、さらにハウジングの開口を通ってハウジング54の端を越えて延びている。内部磁気カップリング70は円形配列の磁石72を有し、隣接する磁石72は交互に異なった磁性を有する。非磁性シールド材料から作られた圧力キャップ74が磁気カップリング70上に配置され、Oリング77を介してハウジング54にフランジ75に沿って密封状態で取り付けられている。内部圧力キャップ74は磁気気体シールド56のベアリング58側でハウジング54の内部と流体連通しており、圧力容器12内のレーザガスによって通常受ける圧力の数倍の圧力に等しい内部圧力に耐えられるようにハウジング54に取り付けられている。磁気流体シール56が破られ、それによって有毒なレーザガスがベアリングが配置されたシールハウジング54の側に導入される場合には、そのような有毒なレーザガスは、適用される安全基準によって要求される安全性に対して余裕をもって、圧力キャップ74によって保持される。
互いに異なった極性を有する大きな直径の円形配列の磁石78から成る対応する外部磁気カップリング76が内部磁気カップリングに対して同心的にかつ内部磁気カップリングに対して磁束カップリング近接状態で、圧力キャップ74の外部に配置されている。本明細書に記載のこの種の磁気カップリングは以前から知られており、その構成の詳細な説明は省略する。外部磁気カップリング76は圧力キャップ74の外部にあるが、ファンシャフト46と同軸的なシャフト80に適当な環状部材79によって取り付けられている。圧力キャップ74およびシールハウジング54のフランジ75に取り付けられた磁気駆動ハウジング82は外部磁気カップリング76を泥および塵から保護し、またベアリング84を支持し、シャフト80がこのベアリング80で回転する。シャフト80に取り付けたプーリ86はシャフト80をモータのようなシャフトを回転させるための装置に連結するために用いられている。シャフト80が回転され、これによってシャフト80が外部カップリング76を回転させると、外部磁気カップリング76によって内部磁気カップリング70が回転され、それによってファンシャフト46およびファン44が回転される。
横流ファン44の反対端には、第1図に示すように、第2磁気液体シール組立体88が配置されている。第2磁気流体シール組立体88は、第1磁気気体シール組立体に関して記載したものと同様な構造の、ベアリングとファンシャフト46の端のまわりの磁気流体シールとを含むシールハウジング90を有する。しかしながら、ファンシャフト46の端は駆動される必要がないので、ファンシャフト46はシールハウジング90内で終わり、第1磁気流体シール組立体50に関連して用いられた圧力キャップ74のような別個の圧力キャップの必要性をなくしている。第2磁気流体シール組立体88は、好ましい実施例において、第1磁気気体シール組立体50より寸法的に小さい。」ということが図面と共に記載されている。
3.本願考案と引用例1に記載の考案との対比
引用例1に記載の「圧力容器12」、「ファン44」、「内部カップリング70」、「磁気流体シール56」、「ファンシャフト46」、「シールハウジング54」及び「エキシマレーザ」は、それぞれ本願考案の「圧力容器(1)」、「送風機(2)」、「回転子(11)」、「磁性流体シール(20)」、「軸(12)」、「ケース(13,14)」及び「ガスレーザ用ガス循環装置」に対応し、それぞれの対応に格別の差異がない。
そして、引用例1の「磁気駆動ハウジング82」は、その中の「外部カップリング76」が「プーリ86」により回転駆動されて、「内部カップリング70(回転子)」を介して「ファンシャフト46(軸(12))」を回転駆動するものであるから、本願考案の「電動機」と同様に「回転子(11)」を介して「軸(12)」を回転駆動させるための回転駆動系であることは明らかである。
そこで、本願考案と引用例1に記載の考案とを比較すると、両者は「内部にレーザガスを密封した圧力容器内に設置された送風機と、圧力容器外に設置され、送風機を回転駆動してレーザガスを循環させる回転駆動系と、回転駆動系に直結し、回転駆動系をレーザガスに対して封止する磁性流体シールを介して、圧力容器内部に突出した軸とを備え、回転駆動系及び磁性流体シールを囲繞するケースを圧力容器外に密設しているガスレーザ用ガス循環装置」であるという点で一致し、下記の2点(以下、相違点1及び2という。)で相違している。
相違点1:本願考案の回転駆動系は「電動機」であるのに対して、引用例1に記載の回転駆動系は、”「外部カップリング76」が「プーリ86」により回転駆動されて、「内部カップリング70(回転子)」を介して「ファンシャフト46(軸(12))」を回転駆動する”ものである点。
相違点2:本願考案の「ケース(13,14)」は「回転駆動系及び磁性流体シール(20)を外気に対して密閉している」のに対して、引用例1に記載の考案の「ハウジング54及び磁気駆動ハウジング82」は「回転駆動系及び磁性流体シール(20)を外気に対して密閉している」ものではないという点。
4.相違点についての判断
ア.相違点1について
本願考案のように「電動機」を回転駆動系として使用することは当業者に周知(特開平2-307284号公報、実開平2-44363号公報、実開昭55-94483号公報、特開平4-162582号公報等参照)である。
してみると、引用例1に記載の考案において、”「外部カップリング76」が「プーリ86」により回転駆動されて、「内部カップリング70(回転子)」を介して「ファンシャフト46(軸(12))」を回転駆動する”回転駆動系に換えて、周知の「電動機」を使用することは当業者であれば適宜になし得ることである。
イ.相違点2について
本願考案の「ケース(13,14)」が「電動機(10)及び磁性流体シール(20)を外気に対して密閉している」のは、「万一磁性流体シールが破損した場合にも外部にレーザ媒質が漏れることがないため毒性ガスを使用しても安全であり、また検出も容易にできるという優れた効果」(平成10年7月15日付け手続補正書第6頁段落【0014】参照)を得るためである。
ところで、引用例1の第5頁左上欄第14行?第23行において「非磁性シールド材料から作られた圧力キャップ74が磁気カップリング70上に配置され、Oリング77を介してハウジング54にフランジ75に沿って密封状態で取り付けられている。内部圧力キャップ74は磁気気体シールド56のベアリング58側でハウジング54の内部と流体連通しており、圧力容器12内のレーザガスによって通常受ける圧力の数倍の圧力に等しい内部圧力に耐えられるようにハウジング54に取り付けられている。磁気流体シール56が破られ、それによって有毒なレーザガスがベアリングが配置されたシールハウジング54の側に導入される場合には、そのような有毒なレーザガスは、適用される安全基準によって要求される安全性に対して余裕をもって、圧力キャップ74によって保持される。」と記載されているように、引用例1に記載の考案も、本願考案と同様の上記「万一磁性流体シールが破損した場合にも外部にレーザ媒質が漏れることがないため毒性ガスを使用しても安全であり、また検出も容易にできるという優れた効果」を得ているものである。
してみると、引用例1に記載の考案において、その回転駆動系として周知の電動機を使用する場合に、電動機のケースをシールハウジング54に密設して「電動機及び磁気流体シール56を外気に対して密閉する」程度のことは当業者であればきわめて容易に想到し得ることである。
しかも、本願考案によってもたらされる効果も、引用例1及び周知技術から予想し得る程度のものであり、格別とは言えない。
5.むすび
以上のとおり、本願考案は、引用例1に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものと認められるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-06-13 
結審通知日 2000-06-23 
審決日 2000-07-04 
出願番号 実願平4-19063 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (H01S)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 河原 正  
特許庁審判長 青山 待子
特許庁審判官 稲積 義登
東森 秀朋
考案の名称 ガスレーザ用ガス循環装置  
代理人 橋爪 良彦  

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