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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04F |
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管理番号 | 1032389 |
審判番号 | 審判1999-5297 |
総通号数 | 17 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2001-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-04-01 |
確定日 | 2000-10-11 |
事件の表示 | 平成 4年実用新案登録願第 10981号「床構造弾性支持装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 8月20日出願公開、実開平 5- 62640]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
(一)手続きの経緯・本願考案 本願は、平成4年2月4日の出願であって、本願の請求項1に係る考案は、平成10年4月27日付けの手続補正書により補正された実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「ばね室を内部に画定する筒状のケーシングと、前記ケーシングの両端を覆い、かつ少なくともそのいずれか一方が前記ケーシングに対して軸線方向に進退自在であるように前記ケーシング内に受容された1対の蓋板と、前記両蓋板間の前記ばね室内に受容されたばねユニットとを有する床構造弾性支持装置であって、前記ばねユニットが、複数の皿ばねを直列に積層してなるものであり、かつこれら複数の皿ばねの少なくとも一部が、互いに異なるばね定数を有するものであることを特徴とする床構造弾性支持装置。」(以下、「本願考案」という。) (二)引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-182360号公報(以下、「引用例」という。)には、例えば、次のような記載がある。 (1)「第1図において、床スラブ1上には、置床2が設置してある。この置床は、その下面に複数の吸振体3が組込んであり、床荷重はこの吸振体を通じて床スラブ1に伝達される。置床2は、床スラブ1との間に吸振体3によって間隙があけられ、この間隙にグラスウール21が充填してある。グラスウール21が置床2内の空気の移動を妨げて、空気の共振を防止する。」公報第2頁左上欄。 (2)「吸振体3の具体的構成を第2図を参照して説明する。吸振体3は、さらばね31とこれを保持する保持枠32とからなる。さらばね31は、2枚重ねのさらばね311,311と312,312とを開口で突合わせた4枚のさらばねを組合せたものである。各さらばねの底部に穴部31aがあけてある。また保持枠32は上下の押え部321、321で押え、その両側を支持部322で保持している。両押え部321には、上記各穴部31aに対向して穴部32aがあけてある。保持枠32の幅の長さを変えることによって、両押え部321の間隔を調整でき、これによりばね力を調整できる。」公報第2頁左上欄?第2頁右上欄。 (3)「第4図が本発明における荷重に対するたわみ曲線を示したものである。従来のたわみ曲線は漸減的であるのに対して、本発明のたわみ曲線は漸進的である。これは、本発明の方が初期支持力が大で、大荷重に対してばね効果が大きいことを示し、衝撃時間を延長でき床面の固有振動数を下げて振動の伝達が小さくなることを意味する。第4図において、点線部分は保持枠32の効果である。またさらばね31は荷重に対してばね間で摩擦が生じ、これにより減衰効果(ダンパ効果)が生じる。置床のレベル調整はさらばねを置床の維持ボルトで行なう。」公報第2頁右上欄。 (4)「さらばねの構成は、上例に限定されず、第5図に示すように単一ばねであってもよい。また第5図鎖線で示すように複数枚重ねてもよく、例えば2枚にすれば荷重を受ける力が2倍になる。第6図に示すように、さらばねを下方向に並べればたわみ量が3倍になり、第7図に示すように組合せることにより荷重-たわみ曲線の特性を変化させ適用する床に合せた調整が可能となる。またさらばねの複数枚の組合せ方と、保持枠32によるばね力の初期荷重の設定によってばね効果とダンパ効果を必要に応じて調整できる。」公報第2頁左下欄。 前記(1)?(4)の記載事項と図面の記載からみて、引用例には、複数のさらばねを保持する保持枠は、両側の支持部と上下の押え部よりなり、かつ少なくとも上下押え部のいずれか一方が両側支持部に対して軸線方向に進退自在とされ、前記保持枠に複数のさらばねを保持してなる床スラブと置床間に配置される吸振体であって、前記複数のさらばねは、積み重ね枚数の異なるさらばねを複数組直列に積層して構成される床スラブと置床間に配置される吸振体が記載されている。 また、実願昭59-142243号(実開昭61-57224号公報)のマイクロフィルム(以下、「周知例」という。)には、例えば、次のような記載がある。 (5)「本考案の推力軸受では、弾性変形しうる最大荷重の異なる2種以上のサラバネから構成される弾性体を介して複数の軸受シューを支持しているので、例えばサラバネとして2種類のものを用いる場合、第8図に示すように、これらのサラバネの弾性変しうる最大荷重のうち小さい方W_(1)を越えた荷重Wが加わるとバネ定数が大きく変化する。即ち、W_(1)を越えるまでは、いずれものサラバネ(各バネ定数をk1,k2とする)も弾性変形するので、この範囲のバネ定数は2つのサラバネのバネ定数の和(k_(1)+k_(2))であるのに対し、W_(1)を越えると弾性変形しうる最大荷重の小さなサラバネ(このバネ定数をk_(1)とする)はたわみきっているので、この範囲のバネ定数は残りのサラバネのバネ定数k_(2)と等しくなる。」明細書第4頁?第5頁。 (6)「このピボット軸案内21とピボット18との間には弾性体25としてサラバネ22,23,24が直列に介装されている。サラバネ23,24は相互に重ね合わされているのに対し、サラバネ22はスぺーサ26の上方においてサラバネ23,25と凹凸を逆にして配置されている。これら3つのサラバネ22,23,24の弾性変形しうる最大荷重は少なくとも1つは異なっており、」明細書第6頁。 前記(5)及び(6)の記載事項と図面の記載からみて、周知例には、複数のサラバネを直列に積層してなる緩衝装置において、複数のサラバネは、弾性変形しうる最大荷重が異なり、かつバネ定数(k1,k2)を異なるようにする緩衝装置が記載されている。 (三)対比 本願考案と引用例に記載の考案を対比する。 引用例に記載の考案における、「保持枠を構成する両側支持部」、「保持枠を構成する上下の押え部」、「複数のさらばね」及び「床スラブと置床間に配置される吸振体」は、本願考案における、「筒状のケーシング」、「1対の蓋板」、「ばねユニット」及び「床構造弾性支持装置」に対応するものであり、引用例に記載の考案における、「積み重ね枚数の異なるさらばね」とは、積み重ね枚数が異なることによりばね定数は変化するものであり、積み重ねられたさらばねを1つのさらばね体とすれば、本件考案における、「複数の皿ばねの少なくとも一部が互いに異なるばね定数を有する」に対応するものであるから、本願考案と引用例に記載の考案は、次の一致点において両者の構成は一致し、次の相違点において両者の構成は相違する。 一致点:ばね室を内部に画定する筒状のケーシングと、前記ケーシングの両端を覆い、かつ少なくともそのいずれか一方が前記ケーシングに対して軸線方向に進退自在であるように前記ケーシング内に受容された1対の蓋板と、前記両蓋板間の前記ばね室内に受容されたばねユニットとを有する床構造弾性支持装置であって、前記ばねユニットが複数の皿ばね体を直列に積層してなるものであり、かつこれら複数の皿ばね体の少なくとも一部が互いに異なるばね定数を有するものであることを特徴とする床構造弾性支持装置。 相違点:本願考案においては、直列に積層される複数の皿ばね体を、それぞれ単一の皿ばねとして、複数の皿ばねの少なくとも一部が互いに異なるばね定数を有するとしたのに対して、引用例に記載の考案においては、直列に積層される複数の皿ばね体を、積み重ね枚数の異なる複数組の皿ばね体とし、積み重ね枚数の相違により少なくとも一部の皿ばね体のばね定数を異なるようにする点。 (四)判断 前記相違点について検討する。 周知例における「サラバネ」は、本願考案における「皿ばね」に相当するものであるから、皿ばねを直列に積層してなる緩衝装置において、直列に積層される複数の皿ばねをそれぞれ単一の皿ばねとし、複数の皿ばねの少なくとも一部のばね定数をそれぞれの皿ばね自体のばね定数を変えることにより異なるものとする構成が記載されており、引用例に記載の考案における積み重ね枚数の相違によりばね定数を異なるものとする構成に代えて、前記周知事項を適用して前記相違点にあげた本願考案の構成のようにすることは当業者がきわめて容易になしえる程度のものである。 (五)むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る考案は、実用新案法第3条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-07-18 |
結審通知日 | 2000-08-01 |
審決日 | 2000-08-22 |
出願番号 | 実願平4-10981 |
審決分類 |
U
1
8・
121-
Z
(E04F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 七字 ひろみ |
特許庁審判長 |
片寄 武彦 |
特許庁審判官 |
小野 忠悦 宮崎 恭 |
考案の名称 | 床構造弾性支持装置 |
代理人 | 大島 陽一 |
代理人 | 大島 陽一 |