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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16F
管理番号 1032391
審判番号 審判1999-1846  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-04 
確定日 2000-10-11 
事件の表示 平成 4年実用新案登録願第 33256号「ダンパ装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年12月 7日出願公開、実開平 5- 90000]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願考案
本願は、出願日が平成4年5月20日であつて、その請求項1に係る考案は(以下、「本願考案」という。)は、平成9年12月4日付け、及び平成11年3月8日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その登録請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
クランクシャフトに取り付けられるダンパプレートに第1、第2、第3、第4のゴム部材を介して第1、第2、第3、第4の慣性体をそれぞれ装着して第1のダンパ、第2のダンパ、第3のダンパ及び第4のダンパを構成し、上記クランクシャフト共振ピークを第1ピーク乃至第5ピークの5つの領域に分割したダンパ装置であって、
上記第1、第2、第3、第4の各ダンパの慣性モーメントをそれぞれId_(1)、Id_(2)、Id_(3)、Id_(4)とし、各ダンパの固有振動数をfd_(1)、fd_(2)、fd_(3)、fd_(4)としたとき、
慣性モーメントをId_(1)>Id_(2)>Id_(3)>Id_(4)、固有振動数をfd_(1)<fd_(2)<fd_(3)<fd_(4)なる関係にそれぞれ設定すると共に、fd_(1)が上記第1ピークと第2ピークに関与し、fd_(2)が上記第2ピークと第3ピークに関与し、fd_(3)が上記第3ピークと第4ピークに関与し、fd_(4)が上記第4ピークと第5ピークに関与するようにそれぞれ設定したことを特徴とするダンパ装置。
2.引用例
これに対し、原査定の拒絶理由において引用された実願昭58-60500号(実開昭59-166050号)のマイクロフィルムには、ダンパ装置に関して、以下の技術的事項が記載されているものと認められる。
イ.「クランクシャフトに取付けられるダンパプレートの外周部に環状板部とこの環状板部の外周縁より延出する円筒部とを形成し、上記環状板部には環状の第1慣性体を第1弾性体で連結し、上記円筒部には筒状の第2慣性体を第2弾性体で連結し、上記両弾性体の変形によりクランクシャフトのねじり振動を吸収するダンパ装置において、上記第2慣性体より第1慣性体の慣性モーメントを大きく形成したことを特徴とするダンパ装置。」(実用新案登録請求の範囲)
ロ、「ここで、第1慣性体8の慣性モーメントId_(1)は第2慣性体9の慣性モーメントId_(2) に比べ大きく形成されており、…しかも、第1 および第2弾性体10,11の各固有振動数fd_(1),fd_(2)は、(fd_(2)/fd_(1))^(2) =2?3、即ち、fd_(1)<fd_(2)を満すように形成される。このような条件設定によりクランクシャフト4と第1、第2のダンパ要素は互いにマッチングを取られ、第5図に示すように、クランクシャフト4の3つの共振ピークI,II,IIIに対し、ダンパ装置1の両弾性体10,11(第1弾性体側を実線、第2弾性体側を1点鎖線でそれぞれ示した)の振幅のピークを調和させることができる。」(第5頁6?20行)
ハ.「第4図に示したダンパ装置1は第5図より明らかなように第1弾性体10のゴム部相対ねじり振幅θ_(1)(ねじり角)の内第I節における値が最も大きくなり、これに比べ第2弾性体11のゴム部相対ねじり振幅θ_(2)の最大値は第III節において生じる。」(第6頁3?7行)
以上の記載事項並びに明細書及び図面の全記載からみて、引用例には、以下の考案(以下、「引用考案」という。)が記載されているものと認める。
「クランクシャフトに取り付けられるダンパプレートに第1,第2の弾性体を介して第1,第2の慣性体をそれぞれ装着して第1のダンパ、第2のダンパを構成し、上記クランクシャフト共振ピークを第1ピーク乃至第3ピークの3つの領域に分割したダンパ装置であつて、上記第1,第2の各ダンパの慣性モーメントをId_(1)、Id_(2)とし、各ダンパの固有振動数をfd_(1)、fd_(2)としたとき、慣性モーメントをId_(1)>Id_(2)、固有振動数をfd_(1)<fd_(2)なる関係にそれぞれ設定すると共に、fd_(1)が主として、上記第1ピークと第2ピークに関与し、fd_(2)が主として、上記第2ピークと第3ピークに関与するようにそれぞれ設定したダンパ装置。」
3.対比
本願考案と引用考案とを比較すると、引用考案の「弾性体」は、本願考案の「ゴム部材」相当するものと認められるので、両者には、以下の一致点及び相違点があるものと認められる。
[一致点]
両者は、クランクシャフトに取り付けられるダンパプレートに複数のダンパを構成し、上記クランクシャフトの共振ピークを分割するダンパ装置である点。
[相違点]
引用考案では、第1,第2のダンパを構成し、クランクシャフト共振ピークを3つの領域に分割したダンパ装置において、第1,第2の各ダンパの慣性モーメントをId_(1)、Id_(2)、各ダンパの固有振動数をfd_(1)、fd_(2)としたとき、慣性モーメントをId_(1)>Id_(2)、固有振動数をfd_(1)<fd_(2)なる関係にそれぞれ設定すると共に、fd_(1)が主として、上記第1ピークと第2ピークに関与し、fd_(2)が主として、上記第2ピークと第3ピークに関与させるようにしたのに対して、
本願考案では、第1のダンパ、第2のダンパ、第3のダンパ及び第4のダンパを構成し、上記クランクシャフト共振ピークを第1ピーク乃至第5ピークの5つの領域に分割したダンパ装置において、第1、第2、第3、第4の各ダンパの慣性モーメントをそれぞれId_(1)、Id_(2)、Id_(3)、Id_(4)とし、各ダンパの固有振動数をfd_(1)、fd_(2)、fd_(3)、fd_(4)としたとき、 慣性モーメントをId_(1)>Id_(2)>Id_(3)>Id_(4)、固有振動数をfd_(1)<fd_(2)<fd_(3)<fd_(4)なる関係にそれぞれ設定すると共に、fd_(1)が上記第1ピークと第2ピークに関与し、fd_(2)が上記第2ピークと第3ピークに関与し、fd_(3)が上記第3ピークと第4ピークに関与し、fd_(4)が上記第4ピークと第5ピークに関与させるようにした点。
4.当審の判断
そこで上記相違点について検討する。
クランクシャフトの共振ピークの値を低減するために、従来よりシングルマスを取り付けピークを2つの領域、ダブルマスを取り付けピークを3つの領域に分割し、共振ピークの値を低減しているが、この技術手段の延長上のものとして、3個のダンパで構成し、4つのピークの領域に分割することも慣用されている技術{実願昭56-90418号(実開昭57-202036号)のマイクロフィルム参照}であること、また特に、4個のダンパで構成し、ピークを5つの領域に分割した点に格別の創意工夫を要したものとも認められない。
また、引用考案にも示すように、第1,第2の各ダンパの慣性モーメントをId_(1)、Id_(2)、各ダンパの固有振動数をfd_(1)、fd_(2)としたとき、慣性モーメントをId_(1)>Id_(2)、固有振動数をfd_(1)<fd_(2)なる関係にそれぞれ設定すると、その際、固有振動数の小さいfd_(1)が主として、上記第1ピークと第2ピークに関与し、固有振動数の大きいfd_(2)が主として、上記第2ピークと第3ピークに関与する(言い換えると、固有振動が小さいダンパは、一次振動I(第1ピーク)に対して最もよく働き、二次振動II(第2ピーク)に対しては中間的な制振効果を発揮し、三次振動III(第3ピーク)に対してはあまり制振効果を発揮しない。逆に固有振動の大きいダンパは、三次振動III(第3ピーク)に対して最もよく働き、二次振動II(第2ピーク)に対しては中間的な制振効果を発揮し、一次振動I(第1ピーク)に対してはあまり制振効果を発揮しない。)、このように、固有振動数の大小が制振ピーク値の特性に影響を与えることが一般に知られているように周知の技術である。{実願昭63-16135号(実開平1-119954号)のマイクロフイルム、実願昭63-16134号(実開平1-119953号)のマイクロフィルム参照}。
これらの点を考慮すると、本件考案のように4個のダンパで構成し、ピークを5つの領域に分割したい場合、第1、第2、第3、第4の各ダンパの慣性モーメントをそれぞれId_(1)、Id_(2)、Id_(3)、Id_(4)とし、各ダンパの固有振動数をfd_(1)、fd_(2)、fd_(3)、fd_(4)としたとき、各慣性体における慣性モーメント及び固有振動の大小関係について、固有振動数の各ピークに与える影響等を考慮し、慣性モーメントをId_(1)>Id_(2)>Id_(3)>Id_(4)、固有振動数をfd_(1)<fd_(2)<fd_(3)<fd_(4)なる関係の順にそれぞれ設定し、その結果、fd_(1)が上記第1ピークと第2ピークに関与し、fd_(2)が上記第2ピークと第3ピークに関与し、fd_(3)が上記第3ピークと第4ピークに関与し、fd_(4)が上記第4ピークと第5ピークに関与するようにする程度のことは、当業者であれば適宜採用できた設計事項に過ぎないものと認める。
5.むすび
以上のとおりであるから、本願考案は、引用考案及び周知技術並びに慣用技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よつて、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-07-19 
結審通知日 2000-08-01 
審決日 2000-08-16 
出願番号 実願平4-33256 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (F16F)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 藤原 直欣  
特許庁審判長 佐藤 洋
特許庁審判官 常盤 務
秋月 均
考案の名称 ダンパ装置  
代理人 樺山 亨  
代理人 本多 章悟  

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