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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1032403
審判番号 審判1999-10968  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-07-07 
確定日 2000-10-20 
事件の表示 平成5年実用新案登録願第99号「カード」拒絶査定に対する審判事件[平成6年7月19日出願公開、実開平6-53175]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1)手続の経緯・本願考案
本願は、平成5年1月6日の出願であって、その請求項1に係る考案は、平成10年9月7日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。(以下、「本願考案」という。)
「 蒸着破壊方式の印字機能を有するカードにおいて、プラスチックシート等のカード基体の上に設けられた磁気記録層と、前記磁気記録層の上に設けられたすず蒸着層と、前記すず蒸着層の上に、樹脂に所定色の顔料を混ぜた顔料タイプのインキを印刷して設けられた保護層と、前記保護層の上に印刷して設けられた、地紋またはデザインされた図柄等の印刷層とを備えて成り、印字機能面をカラー化したことを特徴とするカード。」
2)引用刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成1年8月28日に頒布された特開平1-214489号公報(以下「引用例1」という。)には、次のイ?ルの事項が記載されている。
イ 「1,シート状の基体からなるカードにおいて、前記基体上の略全面に、着色層または磁気記録層、金属薄膜層、および保護層を積層してなる感熱記録体を設けたことを特徴とするカード体。」(特許請求の範囲の請求項1)
ロ 「プラスチックなどの合成樹脂製基体の表面に磁気テープ部が設けられてなるカード体は、乗車券...プリペイドカードなどとして広く用いられている。」(公報第1頁左欄下から2行?右欄5行)
ハ 「各種印刷手段によりすでに形成された可視情報とは別に、個々の情況に応じた個別の可視情報を簡単に記録することができれば、カード体の使用者にとって便利である。」(公報第2頁左上欄6行?9行)
ニ 「第1図において乗車券等のカード体10は、合成樹脂製の基体11からなり、カード10の表面または裏面には、あらかじめ各種印刷手段により、文字、図案等13が印刷されている。」(公報第2頁右上欄11行?15行)
ホ 「次に第2図において、カード体10の層構成について説明する。カード体10の基体11の一方の面に、全面にわたって感熱記録体20が設けられている。この感熱記録体20は、磁気記録層21、下引層22、金属薄膜層23、下引層24、保護層25を順次積層して構成されている。また、カード体10の基体11の他方の面に、全面にわたって保護層28が設けられている。さらに、保護層25と下引層24との間...には、各種印刷手段により文字、図案等13の可視情報が印刷されている。」(公報第2頁右上欄20行?左下欄12行)
ヘ 「なお、上記層構成のうち、下引層22、24については、必ずしも設けなくてもよい。」(公報第2頁左下欄最下行?右下欄1行)
ト 「次に金属薄膜層23として...Sn...などの金属...からなり、真空蒸着法、スパッタ法、めっき法などにより、基体11上に設けられた下引層22上に形成することができる。」(公報第3頁左下欄2行?8行)
チ 「保護層25,28は、合成樹脂フィルムをラミネートするか、エクストルージェンコート法によるか、あるいは合成樹脂塗料を塗布することなどによって形成することができる。」(公報第3頁左下欄13行?16行)
リ 「これら保護層25,28を着色することもできる。」(公報第3頁右下欄2行?3行)
ヌ 「一方、バーコード...等の可視情報が、サーマルヘッド...等の加熱手段31により印字部14に印字される。すなわち、加熱手段31を保護層25側から感熱記録体20に適用すると、この加熱手段31によって金属薄膜層23の所定箇所23aが、所定可視情報の形状に溶融破壊される。この場合...コントラストによって所定の可視情報を認識することができる。」(公報第4頁左上欄4行?15行)
ル 「磁気記録層21の代わりに着色層を設けることもできる。着色層は...着色すべき色に応じて各種の顔料を添加し...混練してなる着色塗料あるいはインキを用いて...あるいは印刷方法により所望部分に形成できる。...機械読取部32を保護層25上に直接印刷により設けた例を示したが...金属薄膜層23を感熱ヘッドを用いて溶融破壊することにより機械読取部32を設けてもよい。」(公報第4頁左下欄3行?右下欄10行)
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成3年5月29日に頒布された特開平3-126596号公報(以下「引用例2」という)には、次のヲ?タの事項が記載されている。
ヲ 「(1) 基材とその片面に形成された磁気層とを備えている磁気カードの磁気層の上に、直接又はアンカーコート層を介して金属蒸着層が形成されており、その金属蒸着層の上に、直接又はトップコート層を介して非黒色系の色をした着色層が形成されており、かつ、金属蒸着層と着色層の厚さが...全体で6μm以下であることを特徴とする隠蔽性磁気カード。」(特許請求の範囲の請求項1)
ワ 「この発明は、キャッシュカード..、等々の...カードの磁気性能に悪影響を及ぼすことなくカードの磁気層側を美麗で鮮明な色とし、また、磁気層側表面に美麗で鮮明な色の印刷を可能とした隠蔽性磁気カード及びその製造方法に係るものである。」(公報第1頁右欄(産業上の利用分野)の欄)
カ 「非黒色系の色をした着色層は、顔料又は染料を混入した適宜の樹脂により形成することができる。」(公報第4頁左上欄3行?4行)
ヨ 「非黒色系の色をした着色層上に、適宜の印刷をしてもよく...着色層上の印刷は、隠蔽性のない明るいカラフルな非黒色系の色の印刷であっも、下地となる着色層が非黒色系の色で隠蔽性をもたせるから、美麗で鮮明な色の印刷となる。」(公報第4頁右上欄10行?16行)
タ 「SnによりSn蒸着層単独とした場合の...絶縁性の金属蒸着層を真空蒸着により形成し...黄色の染料を混入した塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂により...着色層を厚さ2μmに形成して、この発明の隠蔽性磁気カードを得た。」(公報第4頁右下欄1行?9行)
3)対比・ 当審の判断
本願考案と引用例1に記載された考案を対比すると、引用例1記載の「加熱手段によって金属薄膜層23の所定箇所が、所定可視情報の形状に溶融破壊される。コントラストによって所定の可視情報を認識することができる」(前記ヌ)、「{シート状の基体からなるカード}(前記イ)、{プラスチックなどの合成樹脂基体}(前記ロ)及び{カード体は合成樹脂製の基体}(前記ニ)」、「金属薄膜層として...Snなどの金属、真空蒸着法」(前記ト)、「保護層を着色」(前記リ)、「文字、図案等が印刷」(前記ニ)は、本願考案の「蒸着破壊方式の印字機能を有する」、「プラスチックシート等のカード基体」、「すず蒸着層」、「印字機能面をカラー化」、「地紋またはデザインされた図柄等の印刷層」に相当するから、両者は「蒸着破壊方式の印字機能を有するカードにおいて、プラスチックシート等のカード基体の上に設けられた磁気記録層と、前記磁気記録層の上に設けられたすず蒸着層と、前記すず蒸着層の上に、設けられた保護層と(前記イ、ホ、ヘより)、地紋またはデザインされた図柄等の印刷層とを備えた、印字機能面をカラー化したカード」である点で一致し、次のa,bの点で相違する。
a 印刷層が、本願考案では、保護層の上に設けられているのに対し、引用例1では、保護層の下に設けられている点。
b 着色された保護層が、本願考案では、樹脂に所定色の顔料を混ぜた顔料タイプのインキを印刷して形成されているのに対し、引用例1では、着色手段については記載がなく、形成については合成樹脂塗料を塗布することなどによると記載されている点。
上記相違点について検討する。
相違点aについて
基体(引用例2の「基材」が相当する)の上に磁気層、その上にすず蒸着層(引用例2の「Sn蒸着層」が相当する)、その上に保護層(引用例2の「着色層」が相当する)その上に印刷層(引用例2の「適宜の印刷」が相当する)を設けたカードが、引用例2に記載されているように、保護層の上に印刷層を設けることは、当技術分野において、従来から行われていることであり(前記ヨより)、印刷層を保護層の上に設けるか下に設けるかは、当業者が必要に応じて適宜選択できる設計事項にすぎないものである。そして、本願考案のように保護層の上に設けても、出願当初の明細書【0011】,【0031】欄の、上に設けても下に設けても同様の効果が得られる旨の記載からも明らかなように、引用例1のように下に設けたものに比して格別の作用効果が生じたとは認められない。
相違点bについて
着色された保護層が、顔料を混入した樹脂により形成される点が、引用例2に記載されている(前記カより)。顔料を混入した樹脂により着色層を形成するとき、顔料タイプのインキで印刷することは当技術分野において、従来から普通に行なっていることである(前記ル、なお、必要ならば特開平2-230513号公報の第5頁右上欄17行?左下欄18行の記載を参照)。したがって、引用例1記載の塗料を塗布して着色された保護層を形成する技術手段に替えて、引用例2記載の顔料を混入した樹脂により着色された保護層を形成する技術手段を採用して、本願考案のように、樹脂に所定色の顔料タイプのインキを印刷して着色された保護層を形成することは当業者が困難なく行い得ることである。そして、そのことによる効果も引用例2の記載(前記ワより)から予測される範囲ないのものであって、格別のものとはいえない。また、本願考案は、引用例1に記載された考案と引用例2に記載された考案とを寄せ集めて得られる考案が奏する作用効果以上の格別な効果を奏するものとは認められない。
4)むすび
したがって、本願考案は、引用例1乃至2に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-07-13 
結審通知日 2000-07-25 
審決日 2000-08-14 
出願番号 実願平5-99 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (B42D)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 河本 明彦  
特許庁審判長 山田 忠夫
特許庁審判官 平瀬 博通
藤井 靖子
考案の名称 カード  

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