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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1032407
審判番号 審判1999-13964  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-08-26 
確定日 2000-11-09 
事件の表示 平成 4年実用新案登録願第 75021号「構造用多機能パネル」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 5月27日出願公開、実開平 6- 40103]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続きの経緯・本願考案
本願は、平成4年10月28日の出願であって、その請求項1、2に係る考案は、平成10年5月22日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1、2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 発泡合成樹脂からなる板状の断熱材と該断熱材の両面に貼着される構造用板材とを備え、土台上に端部同士を突き合わせて建並べることによって、自立する建築物の壁を構成でき、かつ建築物の壁上に端部同士を突き合わせて配置することによって、それ自体で荷重負担可能な天井あるいは床を構成できる構造用多機能パネルにおいて、前記構造用板材のうち建屋の外側に配置される側の一方の構造用板材と前記断熱材との間に上下および左右方向に連通する通気層を形成したことを特徴とする構造用多機能パネル。」(以下、「本願考案1」という。)
「【請求項2】 前記通気層は前記断熱材の一方面に配置される突起間に形成されることを特徴とする請求項1に記載の構造用多機能パネル。」(以下、「本願考案2」という。)

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に国内において頒布された刊行物である、特開平3-187435号公報(以下、「引用例1」という。)には、次のような記載がある。
a.「(1)発泡成形断熱材を芯材とし、その両面に構造用面材を接着して一体成形された構造用壁パネルの両側面には、前記発泡成形断熱材と前記構造用面材との一対の接合部に沿って上下方向に連続した嵌合用溝が形成されており、一対の構造用壁パネルの対向する一対の前記嵌合用溝で形成される空間部に対応した断面寸法を有する一対の副板を備え、該副板の前記構造用面材に当接する側の側面に、シーラントをあらかじめ鉛直方向に連続して塗布しておき、しかる後に該副板を対向配置される前記一対の嵌合用溝に各々嵌挿し、釘打ち固定することにより、一対の構造用壁パネルを相互に接合するようにしたことを特徴とする建築物の構築工法。」(特許請求の範囲の請求項1)
b.「本実施例では、前記発泡成形断熱材2がポリスチレンを使用して発泡成形されており、前記構造用面材3が、木材チップやカンナくずを圧着成形した、いわゆるウエハーボードで構成されている。」(第3頁左上欄第3?7行)
c.「構造用床パネル9や構造用屋根パネル10は、基本的には前記構造用壁パネル1と同様の構成である」(第3頁右上欄第12?14行)
d.「構造用床パネル9を前記基礎上に敷設し、アンカーボルト等の所定の手段により基礎と緊結する。なお、下部構造体としては、・・・適宜な構造とすることができる。しかる後に、第2図に示すように、敷設された構造用床パネル9・・・上に下桟材7を配置する。・・・しかる後に、該下桟材7の両側面に粘着材14を連続塗布するとともに、上面に密閉剤としてのシーラント15を連続塗布しておき、壁構造用パネル1の下面の前記凹陥部5を嵌着して、相互を釘打ち固定する。」(第3頁左下欄第11行から右下欄第7行)
e.「1階部分の壁パネル1の構築が完了したら、前記スペーサー17上に2階の構造用床パネルを敷設、固定し、」(第4頁左下欄第20行から右下欄第2行)
これらの記載及び第1?3図を参照すると、引用例1には、「発泡合成樹脂からなる板状の断熱材と該断熱材の両面に接着される構造用面材とを備え、下部構造上に端部同士を突き合わせて建並べることによって、自立する建築物の壁を構成でき、かつ建築物の壁上に端部同士を突き合わせて配置することによって、それ自体で荷重負担可能な床を構成できる構造用パネル」(以下、「引用例1記載の考案」という。)が記載されているものと認められる。
また、本願の出願日前に国内において頒布された刊行物である、特開平2-104841号公報(以下、「引用例2」という。)には、次のような記載がある。
a.「(1)所定肉厚の芯層を確保してプレート両面に互いに直交する切溝を施し、当該切溝交点にロータリー堰を設けた発泡プラスチックボードの当該切溝面に該切溝に連通する透孔を多点設した構造用合板を一体的に積層するとしてなることを特徴とする断熱ボード。」(特許請求の範囲の請求項1)
b.「発泡プラスチックボード27は、所定厚の芯層27aを確保して、そのプレート両面には、既述のボード1と同様に互いに直交する切溝28a、28bを施すと共に当該切溝28a、28b交点には、補強並びに四方通気用のロータリー堰29が設けられ、かかる通気層を形成した表裏切溝面には構造用合板30,30が一体的に積層される。」(第5頁左下欄第5?11行)
c.「本発明の断熱ボード32は、構造用合板30で構造強度が付与されて、構造版となる」(第5頁左下欄第14?16行)
これらの記載及び第1、3図を参照すると、引用例2には、「発泡合成樹脂からなる板状の断熱材と該断熱材の両面に積層される構造用合板とを備えた断熱ボードにおいて、断熱材に所定厚の芯層を確保してその両面に互いに直交する切溝を施し、構造用合板と断熱材との間に上下および左右方向に連通する通気層を形成したこと」(以下、「引用例2記載の考案」という。)が記載されているものと認められる。

3.対比・判断
A.本願考案1について
本願考案1と引用例1記載の考案を対比すると、引用例1記載の考案の「構造用面材」及び「構造用パネル」は、それぞれの機能に照らし、各々本願考案1の「構造用板材」及び「構造用多機能パネル」に相当し、本願考案1の「土台」も壁の下部構造であるから、両者は、「発泡合成樹脂からなる板状の断熱材と該断熱材の両面に貼着される構造用板材とを備え、土台上に端部同士を突き合わせて建並べることによって、自立する建築物の壁を構成でき、かつ建築物の壁上に端部同士を突き合わせて配置することによって、それ自体で荷重負担可能な床を構成できる構造用多機能パネル」の点で一致し、下記の点で相違している。
a.本願考案1では、構造用板材のうち建屋の外側に配置される側の一方の構造用板材と断熱材との間に上下および左右方向に連通する通気層を形成したのに対し、引用例1記載の考案ではそのような構成を有していない点。
一方、引用例2記載の考案の「構造用合板」は、本願考案1の「構造用板材」に相当し、本願考案1では、構造用板材のうち建屋の外側に配置される側の一方の構造用板材と断熱材との間に上下および左右方向に連通する通気層を形成したのに対し、引用例2記載の考案では、両方の構造用板材と断熱材との間に上下および左右方向に連通する通気層を形成しているが、この点は単なる設計的事項にすぎないから、引用例2には、上記相違点aにおける本願考案1と同様な構成が記載されているといえる。ここで、引用例2記載の考案の「断熱ボード」は、本願考案1の「構造用多機能パネル」のように、土台上に端部同士を突き合わせて建並べることによって、自立する建築物の壁を構成でき、かつ建築物の壁上に端部同士を突き合わせて配置することによって、それ自体で荷重負担可能な床を構成できるか否かははっきりしないが、引用例2には、上記cで引用したように「本発明の断熱ボード32は、構造用合板30で構造強度が付与されて、構造版となる」と記載されているから、引用例2記載の考案の「断熱ボード」は、引用例1記載の考案の「構造用パネル」と同様な構造用のパネルと解され、これらの考案を組み合わせることに格別の困難性はない。
また、本願考案1によってもたらされる効果も、引用例1、2に記載された事項から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別なものとはいえない。
B.本願考案2について
本願考案2は、本願考案1を引用して、さらに「通気層は前記断熱材の一方面に配置される突起間に形成される」という構成を付加したものである。
上記本願考案1についての検討事項に加え、引用例2をみると、引用例2記載の考案の通気層は、断熱材に所定肉厚の芯層を確保して直交する切溝を施すことにより形成しているが、これは、直交する切溝を施すことにより所定肉厚の芯層上に突起を形成し、通気層は突起間に形成されることと同じことであり、本願考案2で付加された構成は、引用例2に記載されていることになる。
C.対比・判断のむすび
したがって、本願考案1、2はいずれも、引用例1、2記載の考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願考案1、2はいずれも、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-08-22 
結審通知日 2000-09-01 
審決日 2000-09-12 
出願番号 実願平4-75021 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (E04B)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 山田 忠夫古屋野 浩志  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 鈴木 憲子
宮崎 恭
考案の名称 構造用多機能パネル  
代理人 鈴木 俊一郎  

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