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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E01C
管理番号 1032418
審判番号 審判1998-19711  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-12-10 
確定日 2000-11-15 
事件の表示 平成 4年実用新案登録願第 54673号「人工芝生」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 1月11日出願公開、実開平 6- 1405]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願請求項1に係る考案
本願は、平成4年8月4日の出願であって、その請求項1に係る考案は(以下、「本願請求項1に係る考案」という。)、平成10年8月3日付けの手続補正書により全文補正され、さらに平成11年1月8日付けの手続補正書により補正された明細書及び平成11年1月8日付けの手続補正書により補正された図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 芝生状パイル面を形成するように第1の人工芝がバッキング上に列をなして植設され、前記第1の人工芝より短い第2の人工芝が前記第1の人工芝の列の間に列をなして植設され、前記第1の人工芝の先端部が表面から突出する状態となるよう前記バッキング上に砂層が設けられ、前記第2の人工芝は前記砂層中に埋設され、前記第1の人工芝の隣り合う列と列との離隔は、野球ボールが前記第1の人工芝上に落下した際に該野球ボールが前記第1の人工芝の隣り合う少なくとも2列に跨る度合であることを特徴とする人工芝生。」

2.引用例記載の考案
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である特開平3-247804号公報(以下、「第1引用例」という。)には、
「図面は合成樹脂製のパイルを基布に植設した砂入り人工芝を示し、第1図、第2図において、この砂入り人工芝1は、経糸と緯糸とで織成した基布2に、亀甲模様に配列したカットパイル3と、亀甲模様の空間内部に配置したループパイル4とをタフティングし、続いて基布2の裏面にバッキング剤である合成樹脂5を塗布することにより人工芝6を形成し、これに砂7を充填して構成している。」(第2頁右上欄第16行?左下欄第4行及び第1、2図)及び
「このように形成した人工芝6に、……ループパイル4を覆う程度の位置で砂地が安定するように砂7を充填する。
このようにして砂7を充填した砂入り人工芝1では、直立するカットパイル3が、踏まれたりして斜めに押圧されて左右方向に移動しようとする砂7を、ループパイル4の形状保持機能で、反発したり吸収したりして、砂7の移動を阻止する。
一方、上下方向、左右方向に粘り強い弾力を有するループパイル4は、踏まれたりして砂7が上方から押圧する力を、二本の脚を湾曲させて支持し、左右方向からの力に対しては、起立する二本の脚が砂7内で同時に揺動し、砂7同士が密着するのを防いで、砂7が硬化してしまうのを阻止する。
よって、どのような力が及ほうとも砂地の適度な弾力を有する良好なコンディションを長期間に渡って付与することのできる砂入り人工芝1を得ることができる。」(第2頁右下欄第15行?第3頁左上欄第13行及び第2?4図)と記載されており、
第2図には、カットパイル3の先端部が表面から突出する状態となるよう前記バッキング剤5を塗布した基布2上に砂7層が設けられた構造が示されている。
以上の明細書及び図面の記載からみて、第1引用例には、以下の考案が記載されていると認められる。
「芝生状パイル面を形成するように直立するカットパイル3がバッキング剤5を塗布した基布2上に亀甲模様に配列され、前記カットパイル3より短いループパイル4が前記カットパイル3の亀甲模様の空間内部に配置され、前記カットパイル3の先端部が表面から突出する状態となるよう前記バッキング剤5を塗布した基布2上に砂7層が設けられ、前記ループパイル4は砂7に覆われてなる人工芝生。」
同じく、実願昭55-119248号(実開昭57-41906号)のマイクロフィルム(以下、「第2引用例」という。)には、
「(1)基布表面に直立状フィラメントとカ-ルフィラメントとを基布の巾方向に段差を付けて交互に植毛したことを特徴とするスポ-ツ用人工芝生。
(2)植毛したときカールフィラメントに対し直立状フィラメントの頂部が突出して段差を付けたことを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項記載の人工芝生。」(第1頁実用新案登録請求の範囲)、
「フィラメント4,5の植毛状態は図に示す如く、直立状フィラメント4はカ-ルフィラメント5に対して植毛された状態で段差し、即ちフィラメント4の頂部部分が約8?1m/m、好ましくは2?5m/m突出していることが必要である。これは芝生表面の芝密度を粗にして摩擦抵抗を少くし、かつ芝生そのものの密度はカールフィラメントで保持し芝生としての特性を保持させたものである。従つて段差が8m/m以上はフィラメントの倒伏が起き、また段差が1m/m以下では摩擦抵抗がなくなるので極端な段差は好ましくない。」(第4頁第6?16行)及び
「以上説明の如く、本考案の人工芝生は基布表面に直立状フィラメントとカールフィラメントとを混在させて直立状フィラメントの頂部を突出させて植毛したものであるから、表面密度が粗く、火傷に対しての対摩擦性が極めて優れ、身体が接触しても火傷の心配がなく、かつ直立状フィラメントとカールフィラメントとにより、天然芝生の如く種々の方向に向う芝生に形成でき、天然芝生に最も近い状態の人工芝生を得ることができる。
また基布によって芝目が極端に変ることがないので、ボールのバウンドはどの部分でも一定になり、特にテニスコ-ト、野球、アメリカンフットボール用の人工芝生として最適である。」(第6頁第5?17行)と記載されており、
第1?3図には、基布1表面に直立状フィラメント4が列をなして植設され、カ-ルフィラメント5が前記直立状フィラメント4の列の間に列をなして植設されており、直立状フィラメント4とカ-ルフィラメント5の段差Hを約8?1m/m、好ましくは2?5m/mに設定した場合、直立状フィラメント4の隣り合う列と列との離隔は、野球ボールが前記直立状フィラメント4上に落下した際に該野球ボールが前記直立状フィラメント4の隣り合う少なくとも2列に跨る度合であることが示されていると認められる。
以上の明細書及び図面の記載からみて、第2引用例には、以下の考案が示唆されていると認められる。
「基布表面に直立状フィラメント4が基布1の巾方向に列をなして植設され、カ-ルフィラメント5が前記直立状フィラメント4の列の間に段差を付けて列をなして植設されており、野球ボールが前記直立状フィラメント4上に落下した際に該野球ボールが前記直立状フィラメント4の隣り合う少なくとも2列に跨る度合にされ、芝目が極端に変ることがないので、ボールのバウンドはどの部分でも一定になり、特に野球用の人工芝生として最適である人工芝生。」

3.対比
そこで、本願請求項1に係る考案と第1引用例記載の考案とを比較すると、
第1引用例記載の考案の「カットパイル3」、「バッキング剤5を塗布した基布2」、「ループパイル4」及び「ループパイル4は砂7に覆われてなる」は、夫々本願請求項1に係る考案の「第1の人工芝」、「バッキング」、「第2の人工芝」及び「第2の人工芝は砂層中に埋設され」に相当しているから、
本願請求項1に係る考案と第1引用例記載の考案とは、
「芝生状パイル面を形成するように第1の人工芝がバッキング上に植設され、前記第1の人工芝より短い第2の人工芝が前記第1の人工芝の間に植設され、前記第1の人工芝の先端部が表面から突出する状態となるよう前記バッキング上に砂層が設けられ、前記第2の人工芝は前記砂層中に埋設された人工芝生。」
である点で一致するが、下記の点で相違している。
(相違点)
(1)本願請求項1に係る考案は、第1の人工芝が列をなして植設され、第2の人工芝が前記第1の人工芝の列の間に列をなして植設されているのに対して、第1引用例記載の考案は、そのようにされていない点。
(2)本願請求項1に係る考案は、第1の人工芝の隣り合う列と列との離隔は、野球ボールが前記第1の人工芝上に落下した際に該野球ボールが前記第1の人工芝の隣り合う少なくとも2列に跨る度合であるとしているのに対して、第1引用例記載の考案は、そのような構成を具備していない点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討すると、
相違点(1)について
本願出願前、人工芝生を形成するパイルは、列状に植設して形成することは、の例示する迄もなく、普通に実施されていることであり、また、第2引用例には、第1の人工芝に相当する直立状フィラメントが列をなして植設され、第2の人工芝に相当するカ-ルフィラメントが前記直立状フィラメントの列の間に列をなして植設されていることが示唆されていると認められ、相違点(1)における本願請求項1に係る考案の事項は、当業者であれば、何ら考案力を要することなく想到できる設計変更にすぎないというべきである。
相違点(2)について
第2引用例には、野球ボールが第1の人工芝に相当する直立状フィラメント上に落下した際に該野球ボールが該直立状フィラメントの隣り合う少なくとも2列に跨る度合であり、芝目が極端に変ることがないので、ボールのバウンドはどの部分でも一定になり、特に野球用の人工芝生として最適である人工芝生が示唆されていると認められ、そして、第2引用例記載の考案のような砂層を備えていないものも、本願請求項1に係る考案のように砂層を備えているものも、野球ボールの第1の人工芝(直立状フィラメント)に対する作用・効果に格別の差異はないといえるから、相違点(2)において、本願請求項1に係る考案のようにすることは、野球用として人工芝生を適用する際、当業者がきわめて容易に想到しうる設計的事項にすぎないということができる。

5.むすび
したがって、本願請求項1に係る考案は、上記第1、2引用例記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-09-01 
結審通知日 2000-09-12 
審決日 2000-09-27 
出願番号 実願平4-54673 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (E01C)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 深田 高義  
特許庁審判長 樋口 靖志
特許庁審判官 鈴木 憲子
藤枝 洋
考案の名称 人工芝生  
代理人 掛樋 悠路  
代理人 中川 博司  
代理人 小原 健志  
代理人 三枝 英二  
代理人 舘 泰光  

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