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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04H
管理番号 1032432
審判番号 審判1999-14736  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-09-09 
確定日 2000-12-13 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 52898号「防護柵用自在継ぎ手構造」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 3月20日出願公開、実開平 7- 16864]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願請求項1に係る考案
本願は、平成5年9月3日の出願であって、その請求項1に係る考案は(以下、「本願請求項1に係る考案」という。)、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 防護柵の支柱の上端に横棧を取り付けるための防護柵用自在継ぎ手構造において、
前記支柱の上端に固定される球体と、前記球体に対して回動自在に嵌合する嵌合部を有する、前記横棧の一端を固定するための固定金物と、前記固定金物の前記嵌合部に螺合する締付けボルトとからなり、前記締付けボルトによって、前記固定金物を任意の傾斜角度位置に固定することができることを特徴とする、防護柵用自在継ぎ手構造。」

2.引用例記載の考案
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である実願昭46-800号(実開昭47-922号)のマイクロフィルム(以下、「第1引用例」という。)には、
「手すり部材(1)と立子部材(2)との固定部分に、相対角度調節金具(3)を介装し両部材(1)(2)を固定した手すりの立子固定構造。」(第1頁実用新案登録請求の範囲)及び
「本考案の一実施例を図面に基づいて詳述すれば、(1)は手すり部材、(2)は手すり部材(1)を支承する立子部材、(3)は上記手すり部材(1)と立子部材(2)との相対角度を調節して固定し得る相対角度調節金具であって、該相対角度調節金具(3)は第2図の構成からなる。
即ち相対角度調節金具(3)は押圧板(4)と受板(5)とを有し、これら押圧板(4)と受板(5)との対向部分の中央部分には凹入部(6)(6)を設け、この凹入部(6)(6)の凹入深さを、前記立子部材(2)の上端部に固着した球面体(7)が押圧固定し得る深さとし、更に前記押圧板(4)の凹入部(6)には前記球面体(7)の首部(8)が挿通して移動し得る長溝(9)を前記手すり部材(1)の長さ方向と平行に穿設している。
更に(10)(10)は押圧板(4)と受板(5)とを手すり部材(1)に固定するビスであって、このビス(10)を締着する事により球面体(7)を同時に固定し得るものである。
然りして立子部材(2)の角度調節するときは、ビス(10)(10)を緩めて立子部材(2)を調節移動すればよく、固定する時はビス(10)(10)を締着すればよい。
以上の如く本考案によるときは、従来のように、例えば手すり設置階段の傾斜角度に合せて立子部材の固定金具を受ける必要がなくなり、…相対角度調節金具によって、いかなる傾斜角度の階段であっても立子部材を垂直に固定する事ができ、」(第1頁第17行?第3頁第4行)と記載されている。
そして、第2図には、「受板(5)の凹入部(6)に、立子部材(2)の上端に固定された球面体(7)が回動自在に嵌合され、ビス(10)(10)を締着することにより、押圧板(4)と受板(5)とで球面体(7)を挟持固定すると共に、受板(5)が手すり部材(1)に固定され、受板(5)と手すり部材(1)は任意の傾斜角度位置に固定された構造。」が記載されていると認められる。
以上の明細書及び図面の記載からみて、第1引用例には、以下の考案が記載されていると認められる。
「手すりの立子部材(2)の上端に手すり部材(1)を取り付けるための手すりの構造であって、立子部材(2)の上端に固定される球面体(7)と、前記球面体(7)に対して回動自在に嵌合する凹入部(6)を有する受板(5)と、受板(5)を手すり部材(1)に固定するビス(10)(10)を締着することにより、押圧板(4)と受板(5)とで球面体(7)を挟持固定し、前記受板(5)及び前記手すり部材(1)を任意の傾斜角度位置に固定することができる手すりの構造。」
同じく、実願平1-147196号(実開平3-86119号)のマイクロフィルム(以下、「第2引用例」という。)には、
「本考案は……上下左右へどのようなカーブを描く起伏の激しい防護ラインであってもすべてに対応できる部材であり、……防護柵の自在継手の提供を目的とする。」(第5頁第4?8行)、
「支柱1と手すり棒2とを接続する自由継手3は、支柱の中空部へ上から内嵌する嵌り金具4とこの嵌り金具へさらに内嵌する取付金具5および接続に必要な螺杆から形成されている。嵌り金具4は縦方向へ二分割される金具41,42からなりそれぞれの金具には半球状の凹所43,44とこの凹所を上方へ連通する半円孔45,46とがあり、本例では分割面に段差を設けて着脱自在に嵌合できるようにしているが、もちろん他の接合方式であってもよい。この例では第1図(ハ)に示すように半円孔45,46を一方向に長い長孔としている。
取付金具5は嵌り金具の球状凹所43,44へ内嵌する球体51と、その上部にあって嵌り金具の円孔45,46内で傾動自在に内嵌する首部52および手すり棒を挿通する横向け水平の筒体53とが一体的に形成した部材である。前に述べたとおり半円孔45,46を合せた長孔としたのは、一方向へ首振り自在に嵌合したものであるが、首部52の外周より大きな内径を円孔に与えておけば全方向に対して傾動することもできる。」(第6頁第4行?第7頁第4行及び第1図イ、ロ、ハ、ニ)、
「取付金具の筒体53へ手すり棒2を挿通し手すり棒と筒体とに共通して貫通した締付け孔へ螺杆6を通して締付ける。図の例では4本の螺杆を使用している。」(第7頁第12?15行及び第1図イ、ニ)及び
「上下左右への自由継手の方向が決まると、この方向で固定しなければならないが、本実施例では嵌り金具の凹所43,44の内径よりも、取付金具の球体51の外径を若干大きく設定しておいて、球体を両金具で包んだ状態では分割面に若干の隙間ができるようにし、金具の向きが決った後に支柱外から左右2本の螺杆7A,7Bで締付けて凹面と球面とを押圧して不動のものとする。しかし直接球体内へ屈く(「届く」の誤りと認められる。)螺杆で螺着してもよい。」(第8頁第2?10行及び第1図イ、ロ)と記載されている。

3.対比
そこで、本願請求項1に係る考案と第1引用例記載の考案とを比較すると、
第1引用例記載の考案の「立子部材(2)」、「手すり部材(1)」、「球面体(7)」、「凹入部(6)」及び「受板(5)」は、夫々本願請求項1に係る考案の「支柱」、「横棧」、「球体」、「嵌合部」及び「固定金物」に相当しているから、
本願請求項1に係る考案と第1引用例記載の考案とは、
「支柱の上端に横棧を取り付けるための接続構造において、前記支柱の上端に固定される球体と、前記球体に対して回動自在に嵌合する嵌合部を有する、前記横棧を固定するための固定金物と、固定手段により前記固定金物を任意の傾斜角度位置に固定することができることを特徴とする接続構造。」
である点で一致しているが、下記の点で相違している。
(相違点)
(1)本願請求項1に係る考案は、防護柵用自在継ぎ手構造であるのに対して、第1引用例記載の考案は、手すりの構造である点。
(2)本願請求項1に係る考案は、固定金物は横棧の一端を固定するものであるのに対して、第1引用例記載の考案の固定金物は、そのようなものでない点。
(3)本願請求項1に係る考案は、固定金物の嵌合部に螺合する締付けボルトによって、固定金物を任意の傾斜角度位置に固定しているのに対して、第1引用例記載の考案は、固定金物を横棧に固定するビスを締着することにより、押圧板 と固定金物とで球体を挟持固定し、固定金物を任意の傾斜角度位置に固定している点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討すると、
相違点(1)について
防護柵と手すりとは、支柱と横棧(手すり部材)とで構成される点で共通するものであり、また、機能上も同等なものと認められ、そして本願請求項1に係る考案の防護柵用自在継ぎ手構造も、第1引用例記載の考案の手すりの構造も共に支柱に対する横棧の取付け角度を自在に変えられる支柱と横棧との継ぎ手構造を目的としている点で共通しているから、第1引用例記載の考案を本願請求項1に係る考案のような防護柵用自在継ぎ手構造に転用することは、当業者であれば、きわめて容易に想到できることにすぎないというべきである。
相違点(2)について
相違点(2)における本願請求項1に係る考案の事項は、本願の明細書中の段落【0013】に記載の実施例によれば、インナースリーブ19を2本の横棧8の端部内に挿入し、両端を横棧固定ボルト15によって連結したものであり、これに対して、第2引用例には、上記「2.引用例記載の考案」で摘示したように、取付金具の筒体53へ手すり棒2を挿通し手すり棒と筒体とに共通して貫通した(左右4個の)締付け孔へ4本の螺杆6を通して(手すり棒2を)締付け固定する構造が記載されており、該第2引用例記載の構造によれば、取付金具の筒体53へ2本の手すり棒2の端部を挿入し、2本の螺杆6でそれぞれ手すり棒2の端部を連結することが可能と認められ、特に2本の手すり棒2の端部を連結すること、つまり取付金具の筒体で手すり棒2の一端を固定するようにすることに困難性も認めらず、そして端部間を連結する部材を、本願請求項1に係る考案の実施例のインナースリーブのように横棧の内部に設けるか第2引用例記載の上記構造のように手すり棒即ち横棧の外部に設けるかは、適宜選択できる設計事項にすぎないから、相違点(2)について、本願請求項1に係る考案のようにすることは、当業者であれば、第2引用例記載の考案より、きわめて容易に設計変更できることにすぎないということができる。
相違点(3)について
第2引用例には、直接球体内へ届く螺杆で螺着し、取付金具を固定することが記載されており、加えて、本願の出願前、固定手段として、押しねじによって、軸等を固定することは、慣用されていることにすぎない[別役万愛編「メカニズム」(1983年9月10日)技報堂出版株式会社p.176-177、182-183を参照されたい。]から、相違点(3)において、第1引用例記載の考案の固定手段に代えて本願請求項1に係る考案のようにすることは、当業者が必要に応じてきわめて容易に設計変更できることにすぎないというべきである。
そして、上記相違点(1)?(3)における本願請求項1に係る考案の事項により奏される効果に、格別なものも認められない。

5.むすび
したがって、本願請求項1に係る考案は、上記第1、2引用例記載の考案及び上記慣用の事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

審理終結日 2000-09-29 
結審通知日 2000-10-13 
審決日 2000-10-24 
出願番号 実願平5-52898 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (E04H)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 蔵野 いづみ  
特許庁審判長 樋口 靖志
特許庁審判官 小野 忠悦
藤枝 洋
考案の名称 防護柵用自在継ぎ手構造  
代理人 石川 泰男  

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