• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 F02M
管理番号 1032433
審判番号 審判1999-9659  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-06-16 
確定日 2000-12-20 
事件の表示 平成5年実用新案登録願第24974号「ダイヤフラム型気化器の同系統式燃料通路構造」拒絶査定に対する審判事件[平成6年11月15日出願公開、実開平6- 80844]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続きの経緯・本願考案
本願は、平成5年4月15日の出願であって、その請求項1に係る考案(以下、「本願考案」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「ダイヤフラムにより区画される定圧燃料室の燃料が低速燃料系統の燃料吸引路を経て低速燃料噴孔と、高速燃料系統の燃料吸引路を経て高速燃料噴孔とへ供給されるものにおいて、低速燃料系統の燃料吸引口と高速燃料系統の燃料吸引口とを気化器本体の定圧燃料室の天壁に設けた共通口へ開口し、該共通口の前記定圧燃料室に通じる口縁部に、燃料量を排ガス規制値以下に絞る固定ジェットを嵌装し、低速燃料系統の燃料調整針弁の入口部に絞りを設けたことを特徴とする、ダイヤフラム型気化器の同系統式燃料通路構造。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平5-7488号(特開平5-256209号公報参照)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)「【産業上の利用分野】本発明は、吸気ダクト内に配置される絞り弁と、吸い込み空気流動方向において絞り弁の前方にて吸気ダクトに通じている少なくとも一つの主ノズルと、絞り弁の領域において吸気ダクトに通じている穴とを有し、主ノズルが、燃料ダクトを介して、燃料で充填される調整室に連通し、穴が、アイドリング室を介して、燃料で充填される調整室に連通している、内燃機関の気化器に関するものである。」(第1欄24行?31行)
(2)「調整室7を画成している調整ダイアフラム20」(第4欄20行)
(3)「【0015】調整室7は、第1の燃料ダクト22により主ノズル23に連通している。(中略)第1の燃料ダクト22内には、固定絞り25が設けられている。固定絞り25の横断面積は、その燃料の供給量が内燃機関をできるだけ少量の燃料/空気混合気で作動させるために十分であるように選定されている。 【0016】さらに第2の燃料ダクト26が設けられている。この第2の燃料ダクト26は、調整室7から、第1の燃料ダクト22の、固定絞り25と逆止板24の間の領域に通じている。図3の拡大図からわかるように、第2の燃料ダクト26内には調整可能な絞り27が配置されている。この絞り27は、弁座27aと弁円錐部27bから形成される。(中略)燃料の供給量が所定の最大値を越えないようにするため、調整可能な絞り27の前方には固定絞り28が設けられている。」(第4欄24行?50行)
(4)「【0017】第1の燃料ダクト22からは、ダクト29がアイドリング室30へと通じている。アイドリング室30内には、固定絞り31と、該固定絞り31にたいして直列に配置される調整可能な絞り32とが設けられている。アイドリング室30は、穴9a,9b,9cを介して吸気ダクト2に連通している。調整可能な絞り32は、調整ねじ33の端部に一体成形された尖端部と、ダクト29の肩部とによって形成され、これによりアイドリング室30への燃料の供給量を調整することができる。」(第5欄7行?16行)
(5)「【0019】図2は気化器1の下部部分の変形例であり、調整室7と、燃料供給管の流出端15と、弁体と、ばねで付勢されているレバーアーム17とが図示されている。図2に図示したこれらの構成要素の構成及びその機能は図1のそれと同じなので、同一の符号を付した。主ノズル23は、燃料ダクト34により調節室7に連通している。燃料ダクト34の調整室側の端部には固定絞り35が設けられている。この固定絞り35には、流動方向に見て調整可能な絞り27が直列に位置している。調整可能な絞り27は、図4によれば、弁座27aと弁円錐部27bとを有している。弁円錐部27bの内部、即ち主調整ねじ8の前部部分8’の内部には、中心部に穴36が設けられ、且つこの穴36と交差する半径方向の穴37とが設けられ、その結果貫流横断面が一定の流動ダクトが調整可能な絞り27に平行に形成される。この実施例においても主調整ねじ8の有効回転角が制限されており、例えば閉塞位置から“開”の方向へ完全に1回転するように制限されている。主調整ねじ8がさらに回転すると、最大の横断面積が固定絞り35によって決定されているので、上記の制限は有効でなくなる。調整可能な絞り27が完全に開口すると、エンジンは燃料が最も濃い混合気を有する。即ち許容燃料濃さ限界値FGが達成される。」(第5欄33行?第6欄5行)

上記の記載及び【図2】、【図4】の記載からみて、先願明細書の図2、図4として示されている変形例には、
「ダイアフラム20により区画される調整室7の燃料がアイドリング室30へと通じているダクト29を経て穴9a,9b,9cと、燃料ダクト34を経て主ノズル23とへ供給されるものにおいて、ダクト29の燃料吸引口と燃料ダクト34の燃料吸引口とを気化器1本体の調整室7の天壁に設けた共通口へ開口し、該共通口の前記調整室7に通じる口縁部に、固定絞り35を嵌装し、燃料ダクト34の固定絞り35と主ノズルとの間に、調整可能な絞り27を固定絞り35と直列に設け、ダクト29の調整可能な絞り32の入口部に固定絞り31を設けた、ダイアフラム型気化器1の同系統式ダクト構造」
が記載されているものと認められる。

3.対比
本願考案と先願明細書記載の発明とを対比すると、後者の「ダイアフラム20」、「調整室7」、「アイドリング室30へと通じているダクト29」、「穴9a,9b,9c」、「燃料ダクト34」、「主ノズル23」、「気化器1」はそれぞれ、前者の「ダイヤフラム」、「定圧燃料室」、「低速燃料系統の燃料吸引路」、「低速燃料噴口」、「高速燃料系統の燃料吸引路」、「高速燃料噴口」、「気化器」に相当する。また、後者の「ダクト29の調整可能な絞り32」、「固定絞り31」は、それらの設置位置及び低速燃料系統の燃料量を調整する機能からみて、前者の「低速燃料系統の燃料調整針弁」、「低速燃料系統の絞り」にそれぞれ相当するものと認められる。
そして、後者の「固定絞り35」及び「調整可能な絞り27」と、前者の「固定ジェット」とは、ともに高速燃料系統の燃料吸引路の燃料量を調整する絞りというべきものであるから、両者は、
「ダイヤフラムにより区画される定圧燃料室の燃料が低速燃料系統の燃料吸引路を経て低速燃料噴孔と、高速燃料系統の燃料吸引路を経て高速燃料噴孔とへ供給されるものにおいて、低速燃料系統の燃料吸引口と高速燃料系統の燃料吸引口とを気化器本体の定圧燃料室の天壁に設けた共通口へ開口し、該共通口の前記定圧燃料室に通じる口縁部に、高速燃料系統の燃料吸引路の絞りを嵌装し、低速燃料系統の燃料調整針弁の入口部に絞りを設けた、ダイヤフラム型気化器の同系統式燃料通路構造」で一致し、以下の点で一応相違する。
〈一応の相違点〉高速燃料系統の燃料吸引路の絞りに関して、前者では、固定ジェットを備え、該固定ジェットが燃料量を排ガス規制値以下に絞るものであるのに対して、後者では、固定絞り35と調整可能な絞り27とを直列状態で備えるものであって、それらが燃料量を排ガス規制値以下に絞るものであるかどうかは不明である点。

4.当審の判断
上記一応の相違点につき検討するに、ダイヤフラム型気化器の高速燃料系統の燃料吸引路の絞りを、調整可能な絞りを設けることのない、固定ジェットのみで行うこと、及び、燃料吸引路を流れる燃料量を規制して、排出ガス規制に対応させることは、本願の出願前ともに、気化器の技術分野において、慣用技術である(前者については、実願平2-805号(実開平3-92548号)のマイクロフィルム、実願平1-145714号(実開平3-83357号)のマイクロフィルム、特開昭59-20555号公報等を、後者については、魚住順蔵外3名著「自動車用気化器の知識と特性」株式会社山海堂発行、昭和61年5月31日第2刷発行、第176頁?第190頁の「6.3排出ガス規制値」及び「6.4排出ガス規制と気化器の対応」を参照)。
それゆえ、本願の出願時の上記技術常識を参酌すると、先願明細書記載の発明の固定絞り35と調整可能な絞り27とを直列状態で備えることと、本願考案の固定ジェットを備え、該固定ジェットが燃料量を排ガス規制値以下に絞るものであるとすることとの一応の相違点は、高速燃料系統の燃料吸引路を絞るという同一課題達成のための具体化手段における微差と解さざるを得ず、本願考案は、先願明細書記載の発明と実質上同一であるものと認められる。

5.むすび
したがって、本願考案は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願考案の考案者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願考案は、実用新案法第3条の2の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-10-11 
結審通知日 2000-10-20 
審決日 2000-10-31 
出願番号 実願平5-24974 
審決分類 U 1 8・ 161- Z (F02M)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 久保 竜一  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 清田 栄章
飯塚 直樹
考案の名称 ダイヤフラム型気化器の同系統式燃料通路構造  
代理人 山本 俊夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ