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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D
管理番号 1032434
審判番号 審判1999-12125  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-07-22 
確定日 2000-12-13 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 35545号「マンホール蓋」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年12月22日出願公開、実開平 6- 87439]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願請求項1に係る考案
本願は、平成5年6月4日の出願であって、その請求項1に係る考案は(以下、「本願請求項1に係る考案」という。)、平成11年3月24日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 棒状本体の先端にT字形フックが形成されたものからなる開閉治具の前記フックが差し込まれる凹嵌部が、マンホール蓋の周縁部内側に形成されたマンホール蓋において、前記凹嵌部の前記周縁部側上面には、前記開閉治具の前記棒状本体が挿入可能な幅を有する溝が、前記マンホール蓋の径方向に形成され、前記溝の両側には、前記フックが係合する張出部が形成され、前記張出部の前記マンホール蓋の中心側の下面エッジ部には、リブが突設されていることを特徴とするマンホール蓋。」

2.引用例記載の考案
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である実願昭59-173468号(実開昭61-89052号)のマイクロフィルム(以下、「第1引用例」という。)には、
「上板1の裏面側に、バール孔2および鍵穴3と連通する匣状空間部10が形成され、該空間部の蓋中心側面は、自重により周側板5および底板6に当接して概ね空気の流通を遮断するよう吊持された揺動板7によつて閉塞され、該揺動板はその枢支軸に対して若干の隙間を有して取付けられたことを特徴とする閉塞人孔蓋。」(第1頁実用新案登録請求の範囲)、
「第1図ないし第5図において、人孔蓋は図示省略したが、全体形状が平面視円形をなし、その周縁の一個所に丁番がとりつけられ、上下に開閉自在とされる。該蓋の開閉側周縁上板1にはバール孔2および鍵穴3が切欠形成されている。そして、この部分の上板裏面側に、前記バール孔2および鍵穴8と連通する匣状空間部10が形成される。即ち、該匣状空間部10は、一部が切欠かれた上板1および外側板4と、蓋の円周方向に沿う両側面をなす周側板5と、底板6とによって5方が囲まれている。」(第3頁第9?19行)及び
「バール孔、鍵穴に匣状空間部が連通しているため、開蓋用具としてバール、つるはしの特殊工具以外の工具も使用できる。」(第6頁第16?19行)
と記載されている。
そして、第1、2図には、「開閉治具が挿入される匣状空間部10の上面の人孔蓋の開閉側周縁上板1に形成された鍵穴3の開口溝とバール孔2の開口溝とが連通し、人孔蓋の径方向に平面T字状に形成され、該開口溝の両側には張出部が形成され、張出部の人孔蓋の中心側の下面エッジ部には、リブが突設されている人孔蓋。」が記載されていると認められる。
以上の明細書及び図面の記載からみて、第1引用例には、以下の考案が記載されていると認められる。
「開蓋用具が差し込まれる匣状空間部10が、人孔蓋の周縁部に形成された人孔蓋において、前記匣状空間部10の人孔蓋周縁部上板1には、前記開蓋用具が挿入可能な開口溝が、前記人孔蓋の径方向に平面T字状に形成され、該開口溝の両側には、張出部が形成され、前記張出部の前記人孔蓋の中心側の下面エッジ部には、リブが突設されている人孔蓋。」
同じく、実願昭55-93855号(実開昭57-18046号)のマイクロフィルム(以下、「第2引用例」という。)には、
「棒状本体の先端に、該棒状本体の長手方向に対してT字状に分岐する掛合部を連設し、かつ前記棒状本体の長手方向の中途には握手を前記掛合部と略平行に連設してなるバール。」(第1頁実用新案登録請求の範囲)、
「この様な構成のバールはどの様な構造の蓋体にでも通常のバールとしては使えるが、特に次の様な蓋体に対してその機能が十分に活かされるものである。……蓋本体(4)の周縁部の一個所に周縁端から中心へ向けやや長めの孔(5)を開設し、しかも該孔の両側上縁部は周縁端から中心へ向かって少くともある長さだけはそれぞれ対向側に張出していることを特徴とした地下連結用蓋に対してなのである。」(第2頁第11行?第3頁第2行及び第2、3図)及び
「本願考案のバールをマンホール用蓋体を開ける場合を例にとって詳述すれば、第6図に示す様に棒状本体先端のT字状掛合部(2)を孔(5)の幅広い上縁部(張出し部でない部分)から挿入し、次いで該治具を周縁端方向へずらして受枠(6)の内周上縁部を支点、棒状本体末端部を力点とし、該末端部を下方へ押下げれば孔(5)の両張出し上縁部に下方から接している棒状本体先端の掛合部(2)が作用点となり蓋本体(4)が持ち上げられる」(第3頁第3?11行及び第1、3、6図)と記載されている。
そして、第1、2、3、6図の記載によれば、「バールのT字状掛合部(2)を孔(5)の幅広い上縁開口溝から挿入し、次いで溝に沿って棒状本体(1)を周縁端方向へずらして両張出し上縁部に掛合部(2)を係合させること。」という事項が示唆されていると認められる。
以上の明細書及び図面の記載からみて、第2引用例には、以下の考案が記載されていると認められる。
「バールが棒状本体(1)の先端にT字状に分岐する掛合部(2)が形成されたものからなり、バールの前記掛合部(2)を孔(5)の幅広い上縁開口溝から挿入し、次いで溝に沿って棒状本体(1)を周縁端方向へずらして、孔(5)の両張出し上縁部に掛合部(2)が係合し、蓋(4)が持ち上げられること」

3.対比
そこで、本願請求項1に係る考案と第1引用例記載の考案とを比較すると、
第1引用例記載の考案の「開蓋用具」、「匣状空間部10」、「人孔蓋」、「周縁部上板1」及び「開口溝」は、夫々本願請求項1に係る考案の「開閉治具」、「凹嵌部」、「マンホール蓋」、「周縁部側上面」及び「溝」に相当しているから、
本願請求項1に係る考案と第1引用例記載の考案とは、
「開閉治具が差し込まれる凹嵌部が形成されたマンホール蓋において、前記凹嵌部のマンホール蓋周縁部側上面には、前記開閉治具が挿入可能な幅を有する溝が、前記マンホール蓋の径方向に形成され、前記溝の両側には、張出部が形成され、前記張出部の前記マンホール蓋の中心側の下面エッジ部には、リブが突設されていることを特徴とするマンホール蓋。」
である点で一致するが、下記の点で相違している。
(相違点)
(1)本願請求項1に係る考案は、開閉治具が棒状本体の先端にT字形フックが形成されたものからなり、凹嵌部にフックが差し込まれ、溝に、開閉治具の棒状本体が挿入し、張出部にフックが係合するものであるのに対して、第1引用例には、そのようなことが記載されていない点。
(2)本願請求項1に係る考案は、フックが差し込まれる凹嵌部が、マンホール蓋の周縁部内側に形成されているのに対して、第1引用例記載の考案は、マンホール蓋の周縁部に形成されている点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討すると、
相違点(1)について
第2引用例には、バール(本願請求項1に係る考案の「開閉治具」に相当する。以下括弧内の事項は、本願請求項1に係る考案の相当する事項を示す。)が棒状本体の先端にT字状に分岐する掛合部(T字形フック)が形成されたものからなり、バール(開閉治具)の前記掛合部(フック)を孔(凹嵌部)の幅広い上縁開口溝から挿入し、次いで溝に沿って棒状本体を周縁端方向へずらして、孔(凹嵌部)の両張出し上縁部(張出部)に掛合部(フック)が係合し、蓋が持ち上げられることが記載されており、相違点(1)における本願請求項1に係る考案は、第2引用例に記載された考案にすぎず、そして、第1引用例記載の考案においても、蓋開閉用の鍵穴の溝が蓋の径方向に平面T字状形状をしている点、溝の両側には、張出部が形成され、該張出部のマンホール蓋の中心側の下面エッジ部には、リブが突設された構造であれば、上記第2引用例記載の考案の開閉治具及びそれによる開蓋方法が適用できるものと認められるから、相違点(1)について、本願請求項1に係る考案のようにすることは、当業者であれば、第2引用例記載の考案より、きわめて容易に想到できることにすぎないというべきである。
相違点(2)について
本願の出願前、開閉治具が差し込まれる鍵穴をマンホール蓋の周縁部内側に形成することは、周知の事項であり(例えば、実公昭54-23166号公報、実願昭60-138087号(実開昭61-54051号)のマイクロフィルムを参照されたい。)、相違点(2)において、本願請求項1に係る考案のようにすることは、当業者が必要に応じてきわめて容易に設計変更できることにすぎないというべきである。
そして、上記相違点(1)及び(2)における本願請求項1に係る考案の事項により奏される効果に、格別なものも認められない。

5.むすび
したがって、本願請求項1に係る考案は、上記第1、2引用例記載の考案及び上記周知の事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-09-28 
結審通知日 2000-10-13 
審決日 2000-10-24 
出願番号 実願平5-35545 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (E02D)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 向後 晋一深田 高義  
特許庁審判長 樋口 靖志
特許庁審判官 藤枝 洋
小野 忠悦
考案の名称 マンホール蓋  
代理人 石川 泰男  

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