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審決分類 審判    B30B
審判    B30B
審判    B30B
管理番号 1032436
審判番号 新実用審判1999-40021  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-09-28 
確定日 2000-05-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第3004561号実用新案「スクリュー脱水機」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.本件実用新案登録の経緯及び考案の要旨
本件実用新案登録第3004561号(以下、「本件実用新案登録」という。)は、平成6年1月24日に実用新案登録出願され、平成6年9月14日に登録されたものであって、本件登録実用新案は、願書に添付した明細書及び図面(以下、「本件明細書」及び「本件図面」という。)の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりの
「【請求項1】多数の微細孔17を有する脱水筒16と、脱水筒16内に配備されたスクリュー2と、スクリュー2を回転駆動する駆動機構12とを備えており、被脱水材料が大豆の摩砕物に水を加えて過熱した「ご」であるスクリュー脱水機において、
スクリュー2の螺旋羽根4の山頂ランド4aに、これの全長にわたって凹溝5を設けてあり、
この凹溝5内に摩擦係数が小さくて耐摩耗性を有するパッキン6をその一部が凹溝5から突出して脱水筒16の内壁面に接触するよう嵌着してあることを特徴とするスクリュー脱水機。
【請求項2】脱水筒16が先細テーパー筒状に形成されており、
スクリュー2が脱水筒16内にあってこれの先端に向かって先細状に形成されており、螺旋羽根4のピッチが先端に行くに従って漸次小さく寸法設定されている請求項1記載のスクリュー脱水機。
【請求項3】多数の微細孔17を有する先細テーパー筒状の脱水筒16と、脱水筒16内にあってこれの先端に向かって先細状に形成されているとともに、螺旋羽根4のピッチが先端に行くに従って漸次小さく寸法設定されているスクリュー2と、スクリュー2を回転駆動する駆動機構12とを備えたスクリュー脱水機において、
スクリュー2の螺旋羽根4の山頂ランド4aの厚み方向両側に、パッキンプレート7・7をその螺旋方向に沿って添え付けることにより、山頂ランド4a上のパッキンプレート7・7間に凹溝5を設けてあり、
この凹溝5内に、摩擦係数が小さくて耐摩耗性を有する合成樹脂製のパッキン6をその一部が凹溝5から突出して脱水筒16の内壁面に接触するよう嵌着してあることを特徴とするスクリュー脱水機。
【請求項4】パッキンプレート7・7を所定間隔置きにかしめることにより、前記凹溝5からのパッキン6の脱落が規制されている請求項3記載のスクリュー脱水機。
【請求項5】多数の微細孔17を有する先細テーパー筒状の脱水筒16と、脱水筒16内にあってこれの先端に向かって先細状に形成されているとともに、螺旋羽根4のピッチが先端に行くに従って漸次小さく寸法設定されているスクリュー2と、スクリュー2を回転駆動する駆動機構12とを備えたスクリュー脱水機において、
スクリュー2の螺旋羽根4の山頂ランド4aに、外側に凹溝5を有するパッキンプレート7を固定してあり、
パッキンプレート7の前記凹溝5内に、摩擦係数が小さくて耐摩耗性を有する合成樹脂製のパッキン6をその一部が凹溝5から突出して脱水筒16の内壁面に接触するよう嵌着してあることを特徴とするスクリュー脱水機。
【請求項6】パッキン6が、ふっ素系樹脂の線材からなる請求項1又は4又は5記載のスクリュー脱水機。
【請求項7】パッキン6を構成するふっ素系樹脂が、線状に押出成形されて圧縮性を有するポリ四フッ化エチレンであり、
該パッキン6が脱水筒16の内壁面に弾性接触する請求項6記載のスクリュー脱水機。
【請求項8】多数の微細孔17を有する先細テーパー筒状の脱水筒16と、脱水筒16内にあってこれの先端に向かって先細状に形成されているとともに、螺旋羽根4のピッチが先端に行くに従って漸次小さく寸法設定されているスクリュー2と、スクリュー2の芯軸3の基部3aを架台1上に片持ち状に支持する軸受ユニット10と、スクリュー2の芯軸3を回転駆動する駆動機構12とを備えたスクリュー脱水機において、
スクリュー2の螺旋羽根4の山頂ランド4aに、これの全長にわたって凹溝5を設けてあり、
この凹溝5内に、摩擦係数が小さくて耐摩耗性を有するパッキン6をその一部が凹溝5から突出して脱水筒16の内壁面に接触するよう嵌着してあり、
軸受ユニット10は、架台1上に固定されて一端に内孔29を形成した軸受けハウジング26と、前記内孔29内においてスクリュー2の芯軸3の基部3aに取り付けたラジアル軸受24と、ラジアル軸受24の外周と軸受ハウジング26の内孔29との間に配設した円筒状のスライドケース27とを有しており、
スライドケース27の外周に雄ねじ38を形成し、この雄ねじ38を軸受ハウジング26の内孔29の内周に形成した雌ねじ39に螺合してあり、
スライドケース27の内周をラジアル軸受24の外輪41の外周に嵌合一体化してあり、
スライドケース27の外端にフランジ37を形成し、このフランジ37にスライドケース27の回り止めを図る回り止め部材48を回り止めロック状態とアンロック状態とに切換え自在に備えていることを特徴とするスクリュー脱水機。
【請求項9】被脱水材料が、大豆の摩砕物に水を加えて加熱した「ご」である請求項3又は5又は8記載のスクリュー脱水機
【請求項10】多数の微細孔17を有する先細テーパー筒状の脱水筒16と、脱水筒16内にあってこれの先端に向かって先細状に形成されているとともに、螺旋羽根4のピッチが先端に行くに従って漸次小さく寸法設定されているスクリュー2と、スクリュー2の芯軸3を回転駆動する駆動機構12とを備えており、被脱水材料が、大豆の摩砕物に水を加えて加熱した「ご」であるスクリュー脱水機において、
スクリュー2の螺旋羽根4の山頂ランド4aに、これの全長にわたって凹溝5を設けてあり、
この凹溝5内に、摩擦係数が小さくて耐摩耗性を有するパッキン6をその一部が凹溝5から突出して脱水筒16の内壁面に接触するよう嵌着してあり、
脱水筒16の先端側に設けた排出口22の外端面上に、該排出口22を開閉する蓋59をスクリュー芯軸3と直交する枢軸62まわりに開閉揺動自在に枢支してあり、
排出口22の外端面上に、枢軸62と直交するシャフト64の基部を固定し、該シャフト64に操作レバー65をシャフト軸芯方向に移動自在にかつシャフト軸心まわりに揺動自在に取り付けてあり、
シャフト64上に圧縮コイルばね67を備えていて、この圧縮コイルばね67で操作レバー65を常にシャフト64の基部方向に移動付勢してあり、
操作レバー65の先端の軸部に、蓋59の外表面上を押さえ付ける押えローラ69をレバー軸心まわりに遊転自在に挿通していることを特徴とするスクリュー脱水機。
【請求項11】蓋59の外表面全体が中央付近で最も高く、外周に至るに従い漸次低くなる凸円弧状に形成され、その最も高い箇所に押えローラ69の落ち込む凹溝72が設けられている請求項10記載のスクリュー脱水機。
【請求項12】パッキン6が、圧縮性を有するポリ四ふっ化エチレンの線材からなり、
該パッキン6が脱水筒16の内壁面に弾性接触する請求項8又は10記載のスクリュー脱水機。」にあるものと認める。

2.審判請求人の主張の概要
請求人は、本件実用新案登録を無効とする、との審決を求めて、甲第1号証として特開平10-166186号公報を、甲第2号証として大阪地方裁判所平成10年(ワ)第11647号の平成11年4月16日付け原告提出の準備書面3の第1-2頁を提示し、さらに被請求人丸井工業株式会社代表者井伊勝彦の当事者尋問を申立て、本件実用新案登録は考案未完成であるから実用新案法第3条第1項柱書の考案に該当せず、また、本件実用新案登録は、明細書に当業者が実施できるように充分に開示されていないから、実用新案法第5条第4項又は第5項に規定する要件を満たさない実用新案登録出願に対してされたものである旨主張している。
なお、審判請求書には、「実用新案法第5条第4項又は第6項に規定する要件を満たさない」と記載されているが、本件実用新案登録には、平成6年法律第116号の改正前の実用新案法第37条の規定が適用されるので、この記載は誤記と認め、上記のとおり認定した。

3.被請求人の主張の概要
これに対し、被請求人は、当業者であれば本件登録実用新案の内容は明確に理解できるから、本件実用新案登録には無効理由がない旨主張している。

4.第3条第3項柱書きについての当審の判断
(1)審判請求人は、「請求項1や請求項5等において『スクリュー2の螺旋羽根4の山頂ランド4aにこれの全長にわたって凹溝5を設け、この凹溝5内に摩擦係数が小さくて耐摩耗性を有するパッキン6をその一部が凹溝5から突出して脱水筒16の内壁面に接触するよう嵌着してある』ことを構成要件にしてあるが、前記目的を達成するために脱水筒の摩耗・損傷防止を図るとしながら、金属製の螺旋羽根の山頂ランド4aに嵌着するパッキンと脱水筒内壁との接触について「間隙」を「零」にすることしか記載されていない。すなわち、本件実用新案は明細書の【0003】に記載されるように脱水筒の内壁と螺旋羽根との金属どうしの接触による摩耗・損傷を防止するためにパッキンを介在させるとあるが、パッキンの接触について「弾性接触することが望ましい」との開示しかないため、本件実用新案の考案を実施するとき螺旋羽根の山頂ランド部がパッキンを押し潰し、直接脱水筒内壁に接触し、螺旋羽根や脱水筒の内壁を損傷するおそれがあり、本件実用新案の考案の目的を達成することができない。」と主張する。
しかしながら、本件登録実用新案は、明細書の【0002】及び【0003】に記載されているように、「従来の一般的なスクリュー脱水機では、スクリューの螺旋羽根の山頂ランドと脱水筒の内壁面との間に、実際にはかなりの間隙を設けている。この間隙は使用に伴って拡大して行く傾向にあり、間隙が拡大すると脱水効率が低下するため、スクリュー芯軸の基端側をハンマーで叩いて先端側に押し込み、以て前記間隙を頻繁に微調整している。この間隙を零にして圧搾効率を上げた場合、スクリューの螺旋羽根の山頂ランドは、多孔性の脱水筒の内壁面と金属材どうしで直接に摩擦接触させることになるので、脱水筒が短期間で摩耗、損傷しやすくなるところに問題があり、また、前記摩耗によって前記山頂ランドと脱水筒との間に間隙が相乗的に生じると、その間隙を零に再調整する煩わしい作業を頻繁に行う必要がある」という従来技術の有する課題のもとに考案されたものであって、本件登録実用新案に共通する目的は、審判請求人の主張するとおり、明細書の【0004】に記載されている「被脱水材料特に前記『ご』の圧搾脱水効率を向上できるスクリュー脱水機を得ること」、「脱水筒の摩耗、損傷防止を図り、耐久性の向上を図れるスクリュー脱水機を得ること」にあると認められる。
そして、本件登録実用新案は、上記目的を達成するために、明細書の【0005】に記載されるように「スクリュー2の螺旋羽根4の山頂ランド4aに、これの全長にわたって凹溝5を設けてあり、この凹溝5内に摩擦係数が小さくて耐摩耗性を有するパッキン6をその一部が凹溝5から突出して脱水筒16の内壁面に接触するよう嵌着し」、明細書の【0010】に記載されるように、「スクリュー2の螺旋羽根4の山頂ランド4aは脱水筒16の内壁面に対して直接に接触せず、パッキン6を介して接触する」ようにしたものである。
ところで、周知のスクリュー脱水機の作動原理から鑑みると、本件登録実用新案に係るスクリュー脱水機は、被脱水材料が脱水筒16の基端側に導入された後、スクリュー2の隣り合った螺旋羽根4間に被脱水材料を封じ込め、スクリュー2の回転に伴って、螺旋羽根4に沿って被脱水材料が先端側へ押されて行き、この間に圧搾作用を受け、蓋59を押さえ付けるさえローラ69の押圧力に抗して排出されるものと認められるから、請求項1乃至請求項5の「パッキン6が・・・脱水筒16の内壁面に接触する」構成は、所望の圧搾効率を維持したうえで被脱水材料が移動するよう、隣り合った螺旋羽根4間の被脱水材料が漏れないように機能するものであることは明らかである。
そうすると、本件登録実用新案のパッキン6と脱水筒16の内壁面との接触は、所望の圧搾効率を維持できる程度にその間隙を小さくし、かつパッキン6の存在によって、螺旋羽根4の金属部分と脱水筒16との接触が防止できる状態とすればよいことは、当業者であれば容易に理解することができることであって、かつ、そのような状態となるようにパッキン6と螺旋羽根4の接触状態を調整することは、当業者であれば適宜行うことができる程度のことである。
したがって、本件明細書又は本件図面に、脱水筒内壁と螺旋羽根の山頂ランドとの間隙について明確に記載されていないからといって、本件登録実用新案を実施することができないとはいえない。
(2)審判請求人は、「特に、図1に示される構成ではパッキンを嵌着した螺旋羽根のパッキンプレート7の外側鋭角部が脱水筒の内壁に接触するおそれが十分にあり、脱水筒の内壁に穿孔をあけることになる。」とも主張する。
しかしながら、本件登録実用新案の要部を示す図1には、螺旋羽根4に溶接されたパッキンプレート7と脱水筒16とが、パッキン6の存在によって接触しない状態が明確に図示されている。
図1に示されたものにおいて、パッキンの変形が大きくなるような状態で使用すれば、パッキンプレート7の外側鋭角部が脱水筒の内壁に接触することもあり得るが、本件登録実用新案は、明細書の【0011】に「スクリュー2の螺旋羽根4の山頂ランド4aが、・・・パッキン6を介して脱水筒16の内面に接触するので」及び「かかるパッキン6の存在により、脱水筒16に摩耗や損傷を加えるようなことがなくて」と記載されているとおり、脱水筒の内壁と螺旋羽根4の金属部分が脱水筒の内面に直接接触しない態様で使用することを前提としている。したがって、本件登録実用新案が、パッキンプレート7が脱水筒16の内壁に接触しないものであることは明らかである。 なお、図1に示されたものが、本件登録実用新案の目的を達成できない態様で使用可能であるというからといって、本件考案が実施できないものであるとすることはできない。

(3)したがって、本件明細書及び図面に記載された事項が、その考案の目的を達成するための手段をすべて欠くものであるとか、又は手段は示されているもののその手段によっては、当該目的を達成することが明らかに不可能なものであるとすることはできないから、本件実用新案登録が考案未完成なものに対してされたとすることはできない。

5.第5条第4項又は第5項に関する要件についての当審の判断
(1)審判請求人は、「本件実用新案は、前記目的を達成するために『脱水筒内に回転するスクリューの螺旋羽根の山頂ランドと脱水筒内壁との金属どおしの接触による摩耗、損傷を防止するためにパッキンを介在させる』とあるが、明細書の【0010】の記載によれば、この両者(脱水筒内壁と螺旋羽根)の間の間隙を生じないようにしたと記載されるように直接両者が接触するように記載されている。」と主張し、
また、「明細書第12頁【0011】の第10行目から第13行目には、『螺旋羽根と脱水筒の間隙を零にする・・・』とあるように両者の間隙を零にする調整が必要である等と記載されている。このように螺旋羽根と脱水筒との間隙を零にした場合、金属部材どおしの接触が回避できるのか疑わしい。この場合、脱水筒内壁に損傷を生じるおそれがある」と主張し、
「本件実用新案の考案において金属部材同士の間隙距離を規定する必要があり、また、パッキンの接触圧力について明記しなければ本件実用新案登録の考案を当業者が容易に実施することができない。」と主張する。
しかしながら、明細書【0010】には、「スクリュー2の螺旋羽根4の山頂ランド4aは、脱水筒16の内壁面に対して直接に接触せず、パッキン6を介して接触する。このことはパッキン6の介在で螺旋羽根4と脱水筒16との間に間隙が生じないことを意味する。
被脱水材料が前記『ご』の場合は、脱水筒16の基端側に導入されたのち、スクリュー2の回転駆動で先端側へ押されて行き、この間に圧搾作用を受けて、豆乳が多孔性の脱水筒16を経て回収される。搾りかすの『おから』は、脱水筒16の先端の排出口22を塞ぐ蓋59を圧縮コイルばね67に抗して押し開くことにより、該排出口22から外へ押し出されて行く。」と記載されており、ここには、審判請求人の主張するとおり、「螺旋羽根と脱水筒との間に間隙が生じない」との記載は存在するが、この記載は、「スクリュー2の螺旋羽根4の山頂ランド4aは、脱水筒16の内壁面に対して直接に接触せず、パッキン6を介して接触する。このことはパッキン6の介在で螺旋羽根4と脱水筒16との間に間隙が生じないことを意味する。」の文章の一部として存在するものであって、この文脈からすれば、「螺旋羽根と脱水筒との間に間隙が生じない」とは、「パッキン6を含めた螺旋羽根4」と脱水筒16の間に間隙が生じないことを意味することは明らかであって、このような記載があるからといって、金属どおしの接触が回避できることが疑わしいということはできない。
また、明細書の【0011】には、「本考案によれば、スクリュー2の螺旋羽根4の山頂ランド4aが、摩擦係数が小さくて耐摩耗性を有するパッキン6を介して脱水筒16の内壁面に接触するので、螺旋羽根4と脱水筒16との間の間隙を零にしても支障がなく、圧搾脱水効率を飛躍的に向上できる。とくに被脱水材料が『ご』の場合に豆乳の回収効率が高まって有意義である。にもかかわらず、かかるパッキン6の介在により、脱水筒16に摩耗や損傷を加えるようなことがなくて耐久性に優れる。
パッキン6これ自体が圧縮変形性を有すると、パッキン6が脱水筒16の内壁面に弾性接触することになる。従って螺旋羽根4と脱水筒16との間隙を零にする調整作業が、融通性をもって楽に行えるうえに、使用初期に調整すれば前記隙間を零にした状態を長期間にわたって維持することができ、このためのメンテナンスが不要になる利点を有する。」との記載されており、審判請求人の主張するとおり、「螺旋羽根と脱水筒との間の間隙を零にする調整作業が・・・」との記載は存在するが、この記載は、「本考案によれば、スクリュー2の螺旋羽根4の山頂ランド4aが、摩擦係数が小さくて耐摩耗性を有するパッキン6を介して脱水筒16の内壁面に接触するので、螺旋羽根4と脱水筒16との間の間隙を零にしても支障がなくスクリュー2の螺旋羽根4の山頂ランド4aは、脱水筒16の内壁面に対して直接に接触せず、パッキン6を介して接触する。このことはパッキン6の介在で螺旋羽根4と脱水筒16との間に間隙が生じないことを意味する。」の文章に引き続いて記載されたものであって、この文脈からすれば、「螺旋羽根と脱水筒との間」とは、「パッキン6を含めた螺旋羽根4」と脱水筒16との間を意味することは明らかであって、このような記載があるからといって、金属どおしの接触が回避できることが疑わしいということはできない。
そして、前記4(1)において指摘したとおり、本件明細書又は図面に、金属部材どおしの間隙距離、及びパッキンの接触圧力は本件登録実用新案を実施する上で当業者が適宜調整することができるものであるから、これらの要件について明記されていないからといって、本件登録実用新案を当業者が容易に実施することができないということはできない。

(2)審判請求人は、「本件実用新案登録は、被脱水材料が『大豆の摩砕物に水を加えて加熱した「ご」である』ことを構成要件にしているが、請求項1や請求項5に記載される『二枚のパッキンプレートの間に凹溝を形成し、パッキンを嵌着した』構成では、スクリュー脱水機の螺旋羽根の山頂ランドにパッキンを配置した状態を実施したときは、このパッキンプレートとパッキンとの間の隙間に前記『ご』が入り、清掃が困難となって、長期間の実施ができないという問題を生じる。従って、この点の解決策が開示していない本件実用新案登録は、当業者が容易に実施することができない。」と主張する。
しかしながら、パッキンプレートとパッキンとの間に「ご」が入ることによって長期間の実施ができないという問題は、本件登録実用新案が課題としている「ご」の圧搾脱水効率の向上、脱水筒の摩耗、損傷の防止とは直接関係するものではなく、また、これらの問題は別の技術で改善すれば足りることであって、このような問題が生ずることによって、本件登録実用新案の実施が当業者によって容易に実施することができないといえるものではない。

(3)したがって、本件明細書又は本件図面の記載が、当業者が容易に本件登録実用新案を実施することができる程度のものではないとすることはできない。

6.当事者尋問について、
審判請求人は、パッキンが全長にわたって脱水筒の内面に押し付けた状態で接触させるような形態にすると脱水筒が破壊されることを被請求人が認識していること、及び、被請求人が本件登録実用新案に係る考案の実施を取りやめたこと、の事実を立証するために、被請求人の当事者尋問を申立てているが、実用新案法第3条柱書に係る考案の成立性及び同法第5条第4項及び第5項に係る明細書の記載要件は、当業者の技術常識を考慮した上で、明細書の記載のみによって判断されるべきものであるから、上記事実の有無が本件審判請求の結論に影響を及ぼすものではない。したがって、請求人が申立てる前記当事者尋問を行う必要はない。

7.結論
したがって、審判請求人が提示した証拠及び理由によっては、本件登録実用新案が実用新案法第3条柱書の考案に該当しないとも、本件実用新案登録が実用新案法第5条第4項又は第5項に規定する要件を満たさない出願に対してされたものであるとすることもできない。
よって結論のとおり審決する。
訴訟費用については、実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項でさらに準用する民事訴訟法第61条を適用して、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-03-10 
結審通知日 2000-03-24 
審決日 2000-04-04 
出願番号 実願平6-921 
審決分類 U 1 111・ 534- Y (B30B)
U 1 111・ 531- Y (B30B)
U 1 111・ 1- Y (B30B)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 小林 武
特許庁審判官 小関 峰夫
桐本 勲
登録日 1994-09-14 
登録番号 実用新案登録第3004561号(U3004561) 
考案の名称 スクリュー脱水機  
代理人 折寄 武士  
代理人 小田 治親  
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