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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D |
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管理番号 | 1032438 |
審判番号 | 審判1999-13976 |
総通号数 | 17 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2001-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-08-26 |
確定日 | 2000-12-13 |
事件の表示 | 平成 5年実用新案登録願第 58720号「嵌合容器の蓋」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 5月23日出願公開、実開平 7- 28046]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願考案 本願は、平成5年10月29日の出願であって、その請求項1ないし2に係る考案は、当審における平成12年6月6日付け手続補正書により補正された明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 頂壁とその周縁から垂下するスカート部を有し、このスカート部が容器本体と外嵌合により係合する蓋において、前記スカート部の弯曲部に隣接して短い間隔で一対のノッチを設け、このノッチを結ぶ仮想線から少くとも外側の頂壁をスカート部上縁とほぼ同一平面にしてこの仮想線の近辺を屈曲容易とし、かつ仮想線の外側と内側の頂壁を引き続いて持ち上がるようにして開封可能にしたことを特徴とする嵌合容器の蓋。 【請求項2】 前記頂壁をスカート部の上縁とほぼ同一平面にした部分に対応するスカート部の下縁にタブを形成した請求項1記載の嵌合容器の蓋。 2.当審の拒絶理由 これに対して、当審において平成12年3月27日付けで通知した拒絶理由は、およそ次のとおりである。 「本願の請求項1ないし2に係る考案は、その出願前に国内において頒布された刊行物である実願昭56-53846号(実開昭57-167070号公報)のマイクロフィルムに記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号に規定する考案に該当し、実用新案登録を受けることができない。」 3.引用刊行物の記載内容 (1)当審で引用した前記刊行物(以下「引用刊行物」という。)には、次のaの事項が図面(第1?2図)とともに記載されている。 a.容器本体に成形ぶたを嵌合した容器において、成形ぶたが内容物取り出し口の面積を所定比率に分割するための開封用の第1溝と開封されたふたの位置固定用の第2溝とそれらの溝に連接し、開封しやすくし、かつ補強効果のある中間部と第1溝に連なり、開封開始のために該ふたの側壁に設けられたスリット及び開封用の開封片を有していて、内容物を所定比率に分割された内容物取り出し口より容易に取り出せるようにしたことを特徴とした容器。(実用新案登録請求の範囲) そして、第1?2図の記載を参照すると、前記aの記載事項に関し、次のb?iの各事項が該当することを認めることができる。 b.前記aにいう成形ぶたは、1つの平面からなる頂壁を有すること。 c.前記aにいう側壁は、複数の湾曲部(弯曲部)を有し、頂壁の周縁から垂下していること。 d.この側壁は、容器本体のフランジ部と外嵌合により係合していること。 e.前記aにいうスリットは、前記側壁の1つの湾曲部(弯曲部)に隣接して一定の間隔で一対設けられていること(両図では、一対のスリットの内、手前の一方のみに8が付番されている。)。 f.この両スリットの間には、これらを結ぶ1本の仮想線の存在を想定し得ること。 g.この仮想線から少なくとも外側の頂壁は、前記側壁の上縁とほぼ同一平面となっていること。 h.この仮想線の近辺の頂壁は、屈曲容易となっていること。 i.前記aにいう開封用の開封片は、前記頂壁が前記側壁の上縁とほぼ同一平面となっている部分に対応する側壁の下縁に形成されていること。 また、引用刊行物には、前記aにいう成形ぶたの1つの具体的形態の説明として、次の事項が記載されている。 j.又容器本体と嵌合しやすくその嵌合をよりよくするために成形ぶたの側壁の内側に突起(10)を任意の位置に設けることによりその役目を果たし、更にこの成形ぶたを積み重ねた場合のスタッキング防止となる。(3頁末行?4頁4行) (2)前記jの記載事項である「成形ぶたの側壁の内側に突起(10)を任意の位置に設けること」は、前記aにいう成形ぶたの1具体例を説明したものにすぎず、前記aにいう成形ぶたはこの突起を有さないものをも包含するから、前記a?hの事項を総合すると、引用刊行物には、次の考案(以下「引用考案」という。)が記載されていると認めることができる。 「頂壁とその周縁から垂下する側壁を有し、この側壁が容器本体と外嵌合により係合する蓋において、前記側壁の弯曲部に隣接して一定の間隔で一対のスリットを設け、このスリットを結ぶ仮想線から少くとも外側の頂壁を側壁上縁とほぼ同一平面にしてこの仮想線の近辺を屈曲容易とした嵌合容器の蓋。」 4.対比及び判断 (1)請求項1に係る考案について 請求項1に係る考案と引用考案とを対比すると、後者の「側壁」、「一定の間隔」、「スリット」は、それぞれ、前者の「スカート部」、「短い間隔」、「ノッチ」に相当することが明らかであるから、結局両者は、次の一致点アで一致し、相違点イでのみ相違する。 【一致点ア】頂壁とその周縁から垂下するスカート部を有し、このスカート部が容器本体と外嵌合により係合する蓋において、前記スカート部の弯曲部に隣接して短い間隔で一対のノッチを設け、このノッチを結ぶ仮想線から少くとも外側の頂壁をスカート部上縁とほぼ同一平面にしてこの仮想線の近辺を屈曲容易とした嵌合容器の蓋。 【相違点イ】請求項1に係る考案では、嵌合容器の蓋について、「かつ仮想線の外側と内側の頂壁を引き続いて持ち上がるようにして開封可能にした」とさらに規定するのに対し、引用考案では、これについて言及しない点。 この相違点イについて検討する。 本願の明細書の段落【0008】、【0015】等の記載を参照すると、相違点イにいう「仮想線の外側と内側の頂壁を引き続いて持ち上がるようにして開封可能にした」との文言は、「請求項1に係る考案の嵌合容器の蓋を容器本体に外嵌合により係合させた状態において、一対のノッチを結ぶ仮想線を想定した場合、この仮想線から外側の頂壁の周縁から垂下するスカート部の下縁に係合を解除しようとする外力が作用したときに、仮想線の外側の頂壁だけでなく、これに引き続いて仮想線の内側の頂壁も持ち上がって来て、係合が解除され蓋の開封が可能であること」を意味するものと解される。 してみると、相違点イをなす事項は、請求項1に係る考案の嵌合容器の蓋を使用した場合の、つまり嵌合容器の蓋を容器本体に外嵌合により係合させた場合の開封時の作用機序を規定したものと解されるところ、前認定のとおり、引用考案と請求項1に係る考案とはともに前記一致点アの構成を有するのであるから、この構成を有する引用考案の嵌合容器の蓋を容器本体に外嵌合により係合させた場合にも、一対のノッチを結ぶ仮想線から外側の頂壁の周縁から垂下するスカート部の下縁に係合を解除しようとする外力が作用したときには、仮想線の外側の頂壁だけでなく、これに引き続いて仮想線の内側の頂壁も持ち上がって来て、係合が解除され蓋の開封が可能であるものと当然推認できる。この推認を覆すに足りる証拠はない。 したがって、引用考案には相違点イをなす事項の言及はないものの、一致点アの構成を有する引用考案の嵌合容器の蓋は、当然に「仮想線の外側と内側の頂壁を引き続いて持ち上がるようにして開封可能にした」ものとなっているものであり、相違点イは実質的な相違点とはなり得ないから、結局、請求項1に係る考案は、引用刊行物に記載された考案であるというほかはない。 なお、この点に関し、審判請求人は平成12年6月6日付け意見書において、「引用刊行物記載のものでは、蓋を手で引き上げる力を一旦遮断するために溝を形成したものである」旨主張している。しかし、請求項1に係る考案は、溝が存在することを排除するものではなく、しかも、引用刊行物記載のもののように溝が存在したところで、蓋を引き上げる力を加え続ければ、外嵌合の係合が順に解除され、溝の内側の頂壁も引き続いて持ち上がるものであることは容易に推認できる。 (2)請求項2に係る考案について 請求項2に係る考案は、請求項1に係る考案の嵌合容器の蓋において、「前記頂壁をスカート部の上縁とほぼ同一平面にした部分に対応するスカート部の下縁にタブを形成した」ことをさらに規定するものである。 一方、引用刊行物には、前記aのとおり、成形ぶたに「開封用の開封片」を設けることが記載されており、この開封用の開封片は、前記iに認定したように、前記頂壁が前記側壁の上縁とほぼ同一平面となっている部分に対応する側壁の下縁に形成されているもの、つまり、頂壁をスカート部の上縁とほぼ同一平面にした部分に対応するスカート部の下縁に形成したものであって、しかも、この「開封用の開封片」は請求項2に係る考案にいう「タブ」に相当することが明らかであるから、結局、請求項2に係る考案も、刊行物1に記載された考案であるというほかはない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1ないし2に係る考案は、実用新案法第3条第1項第3号に規定する考案に該当し、実用新案登録を受けることができない。 したがって、本願は、当審において通知した前記拒絶理由によって拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-09-08 |
結審通知日 | 2000-09-22 |
審決日 | 2000-10-03 |
出願番号 | 実願平5-58720 |
審決分類 |
U
1
8・
113-
WZ
(B65D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渡邊 豊英 |
特許庁審判長 |
佐藤 雪枝 |
特許庁審判官 |
杉原 進 西村 綾子 |
考案の名称 | 嵌合容器の蓋 |
代理人 | 鎌田 文二 |
代理人 | 東尾 正博 |
代理人 | 鳥居 和久 |