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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A24F |
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管理番号 | 1032439 |
審判番号 | 審判1999-13977 |
総通号数 | 17 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2001-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-08-30 |
確定日 | 2000-12-13 |
事件の表示 | 平成 5年実用新案登録願第 63565号「灰皿」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 5月16日出願公開、実開平 7- 25799]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.本願考案 本願は、平成5年10月22日の出願であって、その請求項1ないし3に係る考案は、当審における平成12年6月19日付け手続補正書により補正された明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】周側にタバコ載置用の縁部2を設け、該縁部2に穿設されるタバコ嵌着凹溝3のすべてが受皿1の中心4に向く直線溝となした受皿1のある灰皿に於て、前記縁部2は水平縁であって、タバコ嵌着凹溝3が隣接のタバコ嵌着凹溝に近接して縁部2の内側縁5の所での間隙は略々零となるように、縁部2に鋭角三角形状の水平面の間隙12があるものとなすと共に、前記タバコ嵌着凹溝3の深さを巻煙草の直径の約1/2以上となしたことを特徴とする灰皿。 【請求項2】請求項1に記載の灰皿に於て、前記タバコ嵌着凹溝3の断面形が略々半円形であることを特徴とする灰皿。 【請求項3】請求項1に記載の灰皿に於て、前記タバコ嵌着凹溝3,3,3の断面形が鋸歯状であることを特徴とする灰皿。 II.当審の拒絶理由における引用刊行物 これに対して、当審において平成12年3月31日付けで通知した拒絶理由において引用した刊行物は次のとおりである。これらの刊行物はいずれも本願出願前に国内において頒布されたものである。 刊行物1:実願昭46-90962号(実開昭48-60894号公報)のマイクロフィルム 刊行物2:実願平1-43522号(実開平2-137895号公報)のマイクロフィルム 刊行物3:実願昭52-54630号(実開昭53-149790号公報)のマイクロフィルム III.引用刊行物の記載内容 1.刊行物1には、次のa?cの事項が図面(第1?4図)とともに記載されている。 a.本案は図面に例示する如く灰ざら本体1の中上外周側内周受盤3に接する間を未広状に傾斜せしめ、続いて内周面にタバコ7の載置凹部2?2を凹設しその左右にタバコ7の左転、右転を防ぐ凸部を複数状成形し、更に着脱自在タバコ受盤3表裏に貫通して通気孔4?4及び灰捨孔5をうがった防火安全灰ざらの構造。(実用新案登録請求の範囲。後記cの記載等から見て、このaの記載中、「未広状」とあるのは「末広状」の、「複数状」とあるのは「複数条」のそれぞれ明白な誤記であると認める。) b.従来灰ざらには各種形状、模様を施した用途に応じ使用されるよう商品として出回っているが、何れもタバコの灰は必ず灰ざらの中に落下するがタバコの載置面(吸い残り)がほとんど水平面であり、かつタバコの火は次第に吸口の方へ燃消し移行して吸がらは灰ざらの外部に落下する。これを防ぐ為必ず灰ざらの上でもみ消したり灰ざらの中に入れる等面倒で忘れると火災の原因となる灰ざらの載置平面に波状或ひは凹部を設けてタバコの吸いがら等狭入し消火を助長するよう工夫されているが、いまだに安全確実な灰ざらはない。(1頁下から8行?2頁3行) c.然るに本案は前項の難点を解決する手段として考案されたもので、これを図面に就いてその実施例を説明すれば、第2図に視るように灰ざら本体1の灰ざら内底9、灰、吸がら留部8上縁周より灰ざら本体1内周面にタバコ7の載置凹部2?2を凹設し、その左右にタバコ7の左転右転を防ぐ凸条をそれぞれ複数条成型し、更に吸がら留部8と載置凹部2?2、凸条6?6より該本体1を外側に末広状に傾斜せしめて載置凹部2に乗せられるタバコ7は吸がら留部8に向って30度?45の角度を保持し得るよう成型する。(2頁7?17行) 2.前記cの記載事項を勘案し、また、第1?4図の記載を参照すると、前記aの記載事項に関し、次のd?hの各事項が該当することを認めることができる(付番省略)。 d.前記aにいう灰ざら本体には、その外周側にタバコ載置用の縁部が設けられていること。 e.このタバコ載置用の縁部は、その外側縁に向かって上向きに末広状に傾斜しており、その上面には複数のタバコ載置凹部が凹設つまり穿設されていること。 f.このタバコ載置凹部は、そのすべてが灰ざら本体の中心に向く直線溝となっていること。 g.タバコ載置凹部は、隣接のタバコ載置凹部に近接していること。 h.前記のタバコ載置用の縁部の内側縁(タバコ受盤と接する縁)の所でのタバコ載置凹部どうしの間隙が略々零となるようになされており、タバコ載置用の縁部にはタバコ載置凹部どうしの鋭角三角形状の傾斜面の間隙があるものとなされていること。 3.前記a、cの各記載事項及び前記d?hの各事項を総合すると、刊行物1には、結局、次の考案(以下「引用考案」という。)が記載されていると認めることができる。 【引用考案】周側にタバコ載置用の縁部を設け、該縁部に穿設されるタバコ載置凹部のすべてが灰皿本体の中心に向く直線溝となした灰皿本体のある灰皿に於て、前記縁部は傾斜縁であって、タバコ載置凹部が隣接のタバコ載置凹部に近接して縁部の内側縁の所での間隙は略々零となるように、縁部に鋭角三角形状の傾斜面の間隙があるものとなした灰皿。 4.刊行物2には、その実用新案登録請求の範囲の記載及び第1?2図の記載を総合すると、吸殻受皿の周囲上辺に外向きに水平に台縁を連設すること、台縁にはたばこ保持凹溝を数ヶ所に設けることがそれぞれ記載されていると認めることができる。 また、同刊行物の第2図には、前記のたばこ保持凹溝の深さを巻煙草の直径の約1/2以上としたものが示されている。 5.刊行物3には、灰皿の側壁上縁に形成した広巾部の上にタバコを支持させるための切欠き溝を切設するに際し、切欠き溝の内側端をタバコ全体がほぼ押込まれる程度の深さに形成すると共に、その外側部をそれよりも僅かに浅めに形成することが記載されている(2頁11行?3頁1行)。 また、同刊行物の第1図には、前記の切欠き溝の断面形をほぼ半円形にしたものが示されている。 IV.対比及び判断 1.請求項1に係る考案について(付番省略) (1)請求項1に係る考案と引用考案とを対比すると、後者の「タバコ載置凹部」、「灰皿本体」は、前者の「タバコ嵌着凹溝」、「受皿」にそれぞれ相当することが明らかであるから、結局両者は、次の一致点で一致し、相違点アないしウで相違する。 【一致点】周側にタバコ載置用の縁部を設け、該縁部に穿設されるタバコ嵌着凹溝のすべてが受皿の中心に向く直線溝となした受皿のある灰皿に於て、タバコ嵌着凹溝が隣接のタバコ嵌着凹溝に近接して縁部の内側縁の所での間隙は略々零となるように、縁部に鋭角三角形状の間隙があるものとなした灰皿。 【相違点ア】タバコ載置用の縁部が、請求項1に係る考案では水平縁であるのに対し、引用考案では傾斜縁である点。 【相違点イ】タバコ載置用の縁部にある鋭角三角形状の間隙が、請求項1に係る考案では水平面の間隙であるのに対し、引用考案では傾斜面の間隙である点。 【相違点ウ】請求項1に係る考案ではタバコ嵌着凹溝の深さを巻煙草の直径の約1/2以上となしたのに対し、引用考案ではタバコ嵌着凹溝の深さに言及しない点。 (2)これらの相違点について検討する。 (相違点アについて) 刊行物2の記載によれば、前記のとおり、吸殻受皿の周囲上辺に外向きに水平に台縁を連設すること、つまり受皿の周側に設けるタバコ載置用の縁部を水平縁とすることが知られ、また、刊行物1にも前記bのとおり、「従来の灰ざらにおけるタバコの載置面はほとんど水平面である」旨記載されていて、これからも、タバコ載置用の縁部を水平縁とすることが知られるから、引用考案においてタバコ載置用の縁部を傾斜縁に代えて水平縁に変更し、相違点アのように、タバコ載置用の縁部は水平縁であると規定することは、刊行物1?2の記載に基づいて当業者がきわめて容易に想到し得ることである。そして、この変更によって何ら格別の効果は生じていない。 なお、刊行物1の前記b、cの記載から明らかなように、引用考案では、タバコ載置用の縁部を水平縁とした場合の防火上の難点を解決するために、これをわざわざ傾斜させたものであるから、このことを特段考慮しなければ、むしろ同縁部を水平縁とすることの方が普通であるということさえできる。 (相違点イについて) 前記のように、引用考案においてタバコ載置用の縁部を傾斜縁に代えて水平縁に変更した場合には、これに伴って、タバコ載置用の縁部にある鋭角三角形状の間隙も当然水平面となるから、相違点イの「タバコ載置用の縁部にある鋭角三角形状の間隙は水平面の間隙である」との事項は、タバコ載置用の縁部を水平縁にしたことに伴う当然の変化をことさら規定したものにすぎないものというべきである。 (相違点ウについて) 刊行物2には、前記のとおり、たばこ保持凹溝つまりタバコ嵌着凹溝の深さを巻煙草の直径の約1/2以上となしたものが示されており、また、刊行物3には、タバコを支持させるための切欠き溝の内側端をタバコ全体がほぼ押込まれる程度の深さに形成すると共に、その外側部をそれよりも僅かに浅めに形成することが記載されていて、この場合には、同切欠き溝つまりタバコ嵌着凹溝の深さは巻煙草の直径の約1/2以上となされているものと直ちに推認できるから、引用考案において、さらに、「タバコ嵌着凹溝の深さを巻煙草の直径の約1/2以上となした」と規定することは、刊行物2?3の記載に基づいて当業者がきわめて容易に想到し得ることである。そして、このように規定したことによって何ら格別の効果は生じていない。 (相違点ア、イ及びウの組み合わせについて) 請求項1に係る考案が相違点ア、イ及びウを組み合わせた点にも格別の見るべきものはない。 (3)したがって、請求項1に係る考案は、刊行物1?2に記載された考案に基づいて、本願出願前に当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 2.請求項2に係る考案について(付番省略) 請求項2に係る考案は、請求項1に係る考案において、さらに、「タバコ嵌着凹溝の断面形が略々半円形である」と規定するものであるところ、刊行物3には、前記のとおり、タバコを支持させるための切欠き溝つまりタバコ嵌着凹溝の断面形をほぼ半円形にしたものが示されているから、請求項1に係る考案において、さらに前記のように規定することは、刊行物3の記載に基づいて当業者がきわめて容易に想到し得ることである。そして、このように規定したことによって何ら格別の効果は生じていない。 したがって、請求項2に係る考案は、刊行物1?3に記載された考案に基づいて、本願出願前に当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 3.請求項3に係る考案について(付番省略) 請求項3に係る考案は、請求項1に係る考案において、さらに、「タバコ嵌着凹溝の断面形が鋸歯状である」と規定するものであるが、請求項3の記載では、タバコ嵌着凹溝に3、3、3と付番されているところから見て、「断面形が鋸歯状である」とは、複数のタバコ嵌着凹溝が連なってできる断面形態を述べたものと解されるから、個々のタバコ嵌着凹溝の断面形は、上面が開いた逆三角形であると認められる。 しかし、タバコ嵌着凹溝の断面形をどのような形状にするかは当業者の設計事項に属し、しかも、請求項3に係る考案において、この断面形を上面が開いた逆三角形にした点に何ら格別の意味が見出せないから、このようにする点、つまり請求項1に係る考案においてさらに前記のように規定することは、例えば刊行物3によって知られる上面が開いた半円形状であるタバコ嵌着凹溝の断面形状を種々変更するなどして、当業者がきわめて容易に想到しうることである。 したがって、請求項3に係る考案は、刊行物1?3に記載された考案に基づいて、本願出願前に当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 V.むすび 以上のとおり、本願の請求項1ないし3に係る考案は、その出願前に国内において頒布された刊行物に記載された考案に基づいて、その出願前に当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-09-13 |
結審通知日 | 2000-09-26 |
審決日 | 2000-10-10 |
出願番号 | 実願平5-63565 |
審決分類 |
U
1
8・
121-
WZ
(A24F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 近 東明、西川 恵雄 |
特許庁審判長 |
佐藤 雪枝 |
特許庁審判官 |
鈴木 美知子 杉原 進 |
考案の名称 | 灰皿 |
代理人 | 唐見 敏則 |