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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1032451
審判番号 審判1999-20859  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-12-28 
確定日 2001-01-04 
事件の表示 平成 4年実用新案登録願第 34325号「バーコードプリンターの印字濃度制御装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年11月19日出願公開、実開平 5- 85644]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願考案
本願は、平成4年4月27日の出願であって、その請求項1に係る考案(以下、「本願考案」という。)は、平成12年9月19日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】 被印字媒体の供給軸と、カーボンリボン供給軸とがプリンタ内部のプリンターフレームに設けられ、前記被印字媒体の供給軸から繰り出される前記被印字媒体に、前記カーボンリボン供給軸から繰り出されるカーボンリボンを用いて、バーコード等の印字を行うサーマル印字ヘッドおよびプラテンを有する印字機構と、を有するバーコードプリンターの印字濃度制御装置であって、
前記被印字媒体の前記供給軸と、前記カーボンリボンのカーボンリボン供給軸と、の両軸近傍のプリンターフレームに設け、前記被印字媒体および前記カーボンリボンのまわりの環境温度を検出する環境温度センサーと、
この環境温度センサーからの温度信号により前記サーマル印字ヘッドの発熱素子への供給エネルギーを制御する制御回路と、
を有することを特徴とするバーコードプリンターの印字濃度制御装置。」
2.引用例
これに対して、当審における、平成12年7月13日付で通知した拒絶の理由に引用した本願の出願日前の昭和60年4月26日に頒布された特開昭60-73866号公報(以下、「引用例」という。)には、次の記載がある。
a.「第1図は熱転写記録装置全体の構成を概略的に示すもので、図中1は装置本体で」(第2頁第4?5行)
b.「第16図はロール紙供給カセット19の構成を示すもので、・・・カセット本体130にはロール紙装着部132・・・が設けられ、・・・ロール紙装着部132は第17図に示すようにロール紙Pcが巻回された巻芯(紙管)137の両端部を第1,第2のリールユニット138,139によって支持する構成となっている。上記第1リールユニット138はカセット本体130の側枠130a,130aに一端を固定した支軸140に対して回転可能に取付けられたリール本体141・・・を備え・・・第2リールユニット139はサイドフレーム130aに一端を固定した支軸148に回転自在に取付けられたリール本体149・・・・を有した構成となっている。」(第6頁左下欄第2行?右下欄末行)
c.「装置本体1内には転写材としてのロール状の熱転写リボン6を繰出し可能に収納するリボン収納部7、およびこのリボン収納部7から繰出された熱転写リボン6を順次巻取るリボン巻取り部8が設けられている。そして、リボン収納部7のロール(巻芯)9に巻回され、繰出された熱転写リボン6は・・・プラテンローラ4とサーマルヘッド5との間に導かれ、・・・リボン巻取部8のロール(巻芯)14に巻取られる構成となっている。」(第2頁左上欄第15行?右上欄第9行)
d.「サーマルヘッド5による印字制御においては、周囲温度(外部の温度)と装置本体内部の電気回路より生じる温度上昇及びサーマルヘッド5の基板温度が重要となる。前者は熱転写リボン6と用紙、特に熱転写リボン6の溶融状態に大きく関係するものであり、これらの状態を知るために、前記印字媒体温度検知器192が装置本体内に設けられている。」(第9頁右上欄第18行?左下欄第5行)
e.「印字する場合においても、サーマルヘッド5の・・・発熱抵抗体に供給する電力の通電時間を制御する・・・この制御を前記印字媒体温度検知器192によって得られた熱転写リボン6の温度情報をパラメータとして行うことにより、・・・良好な印字を行うことができる。」(第9頁左下欄第15行?右下欄第3行)
f.「主制御部191には・・・印字媒体温度検知器192・・・からの出力信号・・・供給される。」(第7頁右下欄第16行?第8頁左上欄第4行)
g.「サーマルヘッド5では主制御部191より供給される制御信号及び・・・印字データに基づいて熱転写リボン6上のインクを溶融し、用紙・・・Pcに熱転写する」(第8頁右上欄第8?12行)
これらの記載を含む引用例には、
「ロール紙Pcが巻回された巻芯137の両端部を支持する第1,第2のリールユニットが装置本体内のカセット本体130の側枠130a,130bに設けられ、リボン収納部7のロール9が装置本体の内部に設けられ、第1,第2のリールユニット138,139から繰り出される前記ロール紙Pcに、前記リボン収納部のロール9から繰り出される熱転写リボン6を用いて、印字データの印字を行うサーマルヘッド5およびプテンローラ4を有する印字機構を有する感熱記録装置の印字制御装置であって、熱転写リボン6と用紙の状態を知るための印字媒体温度検知器192と、この印字媒体温度検知器192からの情報をパラメータとしてサーマルヘッド5の発熱抵抗体に供給する電力の通電時間を制御する主制御部191とを有する熱転写記録装置の印字制御装置」
が記載されている。
3.対比・判断
本願考案(前者)と、上記引用例に記載された考案(後者)とを比較する。
イ.前者の「カーボンリボン」と後者の「熱転写リボン6」は熱転写リボンという点で共通し、前者の「バーコードプリンター」と後者の「熱転写記録装置」は、熱転写記録装置という点で共通し、前者の「バーコード等」と後者の「印字データ」は、印字データという点で共通し、前者の「環境温度センサー」と後者の「印字媒体温度検知器192」は温度センサーという点で共通している。
ロ.後者も、印字する場合に、サーマルヘッド5の発熱抵抗体に供給する電力の通電時間を制御するものであるから、印字濃度を制御するものであるといえる。
ハ.後者の、装置本体内に設けられている印字媒体温度検知器192が知る熱転写リボン6と用紙(被印字媒体)の状態とは、印字媒体温度検知器192が温度検知器であることから、それらの温度であるといえる。
ニ.後者の、印字媒体温度検知器192からの情報をパラメータとして制御することは、印字媒体温度検知器192からの温度信号により制御することであるといえる。
ホ.後者の、供給する電力の通電時間を制御することは、供給エネルギーを制御することであるといえる。
ヘ.後者の、「ロール紙Pc」、「第1,第2リールユニット138,139」、「ロール9」、「サーマルヘッド5」、「プラテンローラ4」、「発熱抵抗体」及び「主制御部191」は、それぞれ、前者の、「被印字媒体」、「被印字媒体の供給軸」、「リボン供給軸」、「サーマル印字ヘッド」、「プラテン」、「発熱素子」及び「制御回路」に相当している。
以上のことから、両者は、
「被印字媒体の供給軸と、熱転写リボン供給軸とが感熱記録装置の内部に設けられ、前記被印字媒体の供給軸から繰り出される前記被印字媒体に、前記熱転写リボン供給軸から繰り出される熱転写リボンを用いて、印字データの印字を行うサーマル印字ヘッドおよびプラテンを有する印字機構と、を有する熱転写記録装置の印字濃度制御装置であって、
温度を検出する温度センサーと、
この温度センサーからの温度信号により前記サーマル印字ヘッドの発熱素子への供給エネルギーを制御する制御回路と、
を有する熱転写記録装置の印字濃度制御装置。」
である点一致し、次の点で相違している。
〔相違点〕
イ.被印字媒体の供給軸と熱転写リボンの供給軸とが設けられる場所が、前者では、プリンター内部のプリンターフレームとしているのに対して、後者では、ロール紙Pc(被印字媒体)の第1,第2リールユニット138,139(供給軸)が設けられる場所がカセット本体130の側枠130a,130aで、熱転写リボンのロール9(供給軸)が設けられる場所が装置本体1の内部である点、
ロ.熱転写記録装置とその印字データを、前者では、バーコードプリンターとバーコード等と特定しているのに対して、後者では、特定されていない点、
ハ.熱転写リボンを、前者ではカーボンリボンとしているのに対して、後者では熱転写リボンとしている点、
ニ.温度センサーの設置場所とその検出対象について、前者では、被印字媒体の供給軸と、カーボンリボンのカーボンリボン供給軸と、の両軸近傍のプリンターフレームに設け、被印字媒体およびカーボンリボンのまわりの環境温度を検出する環境温度センサーとしているのに対して、後者では、被印字媒体温度検知器192は、装置本体内に設けられ、熱転写リボン6と用紙(被印字媒体)の温度を検出する点。
〔相違点の検討〕
相違点イについて、
熱転写記録装置において、カセット等に収容されない被印字媒体を使用することおよびその供給軸と熱転写リボンの供給軸とを支持すべく、それらが設けられる場所を、熱転写記録装置の支持枠すなわちプリンターフレームとすることは従来周知であるから、後者において相違点イのように構成することは、当業者が容易になす構成の変更と認められる。
相違点ロについて、
熱転写記録装置で、バーコード等を印字するバーコードプリンターは、従来周知(例えば、特開昭63-77756号公報、特開昭63-209961号公報、特開平3-120053号公報等参照。)であるから、前者が相違点ロのように特定した点に格別の技術的意義が見いだせない。
相違点ハについて
熱転写記録装置において、熱転写リボンとしてカーボンリボンを使用することは、慣用されていることであるから、相違点ハにおいて、両者間に格別技術的差異が認められない。
相違点ニについて、
後者において、熱転写リボン6と用紙(被印字記録媒体、ロール紙Pc)は、いずれも、印字を行っている際に、それらが置かれているまわりの環境以外のものから特に熱を加えられるものでもなく、それらの温度とそれらのまわりの環境の温度に違いがあるとは認められないから、被印字媒体温度検知器192の設置場所を、ロール紙Pcの供給軸である第1,第2リールユニット138,139と熱転写リボン6の供給軸であるロール9の両者の近傍の装置本体の枠すなわちプリンターフレームとする共にその検出対象を両者のまわりの環境温度とすることは、当業者が容易に想起できることと認められる。
4.むすび
以上のとおりであるから、本願考案は、上記引用例に記載された考案と周知技術から、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
審理終結日 2000-10-04 
結審通知日 2000-10-17 
審決日 2000-11-09 
出願番号 実願平4-34325 
審決分類 U 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 菅藤 政明  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 番場 得造
小泉 順彦
考案の名称 サーマルプリンターの印字濃度制御装置  

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