• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない B65D
管理番号 1032465
審判番号 審判1999-35681  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-11-18 
確定日 2000-12-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第1712320号実用新案「包装用トレ-」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 I.請求の趣旨

登録第1712320号実用新案の登録を無効とする。との審決を求める。

II.被請求人の答弁の趣旨

本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。

III.手続の経緯

1.本件実用新案登録に係る考案(以下「本件考案」という。)についての手続の経緯は、およそ次のとおりである。
(1)実用新案登録出願(実願昭54-48866) 昭和54年4月11日
(2)実用新案出願公告(実公昭62-15155) 昭和62年4月17日
(3)設定登録(登録実用新案第1712320号) 昭和62年12月21日
(4)存続期間の満了による実用新案権の消滅 平成6年4月11日
(5)本件無効審判の請求 平成11年11月18日
(6)被請求人への審判請求書副本の送付 平成12年2月16日
(7)請求人からの上申書の提出 平成12年4月4日
(8)被請求人への同上申書の送付 平成12年6月9日
(9)被請求人からの審判事件答弁書の提出 平成12年4月17日(指定期間内)
(10)請求人への同審判事件答弁書の送付 平成12年6月9日
(11)請求人からの審判事件弁駁書の提出 平成12年6月27日(指定期間内)
(12)被請求人からの審判事件答弁書(追加)の提出 平成12年10月10日

2.本件実用新案登録については、これまでに、本件無効審判の請求のほかにも、次の第1回ないし第3回無効審判の請求及び判定の請求があった。
(1)第1回無効審判の請求(審判平6-17428) 平成6年10月14日
(2)同無効審判の審決日 平成7年6月22日(請求不成立)
(3)同無効審判審決の取消訴訟の判決言渡〔平成7年(行ケ)第173号判決〕 平成9年11月27日(請求棄却確定済み)
(4)第2回無効審判の請求(審判平8-5735) 平成8年4月22日
(5)同無効審判の審決日 平成8年12月10日(請求不成立確定済み)
(6)判定の請求(判定平9-60007) 平成9年4月4日
(7)同判定の請求の却下 平成10年10月9日
(8)第3回無効審判の請求 平成10年2月23日(審判平10-35067)
(9)同無効審判の審決日 平成10年10月9日(請求不成立)
(10)同無効審判審決の取消訴訟の判決言渡〔平成10年(行ケ)第360号判決〕 平成11年9月30日(請求棄却確定済み)

IV.本件考案

1.本件考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「被包装物を盛付けしたトレーの上面にストレッチフィルムをオーバーラップして糊付面に接着させたのちトレーの周囲上縁の近傍でフィルムを切断して包装体を形成するために使用するトレーであって、平坦な底板と、上記底板の周囲から上方へ拡開傾斜して一体に延長された周壁と、上記周壁の上部外側面全周に形成された略垂直な接着剤塗布面とを具備し、上記トレーの接着剤塗布面を、多数個のトレーを重ね合わせたとき、各トレーの接着剤塗布面が露呈して連続した略垂直な面として柱状を呈する如く形成したことを特徴とする包装用トレー。」

V.請求人の主張の概要

1.請求人は、次の甲第1号証ないし甲第8号証を提出し、本件考案は、本件出願前に国内において頒布された刊行物である甲第4?8号証の各刊行物に記載された考案に基づいて、本件出願前に当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであって、本件実用新案登録は無効とされなければならない旨主張している。なお、請求人は、上申書において、本件考案が実用新案登録を受けることができないとする根拠法条が実用新案法第3条第2項であることを明らかにした。
甲第1号証 本件実用新案公報
甲第2号証 平成6年審判第17428号審決
甲第3号証 平成10年審判第35067号審決
甲第4号証 実公昭39-38574号公報
甲第5号証 特開昭50-26686号公報
甲第6号証 特開昭50-65381号公報
甲第7号証 実開昭53-45102号明細書
甲第8号証 特許第26320号公報
ここで、甲第2号証は、前記III.2の第1回無効審判の確定審決(以下「第一審決」という。)に相当し、甲第3号証は、第3回無効審判の確定審決(以下「第二審決」という。)に相当するものである。また、甲第7号証について「実開昭53-45102号明細書」とし、甲第8号証について「特許第26320号公報」としているのは、添付書類である両証の写しから見て、それぞれ、「実願昭51-126274号(実開昭53-45102号)のマイクロフィルム」、「特許第26320号明細書」を意味するものと認める。

2.そして、請求人は、本件考案が甲第4?8号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとする理由として、過去の第一審決及び第二審決における容易性の判断において公知でないと認定された本件考案の構成が、甲第5?6号証に記載されており、他の構成は、第一審決又は第二審決において引用された甲第4、7?8号証に記載されていることを挙げている。

VI.「本件審判請求は一事不再理の原則に反する」との被請求人の主張について

1.被請求人は、甲第5?6号証に記載されているような公知の技術的事項は、本件実用新案登録に係る過去の審判事件において当然判断されたはずであるから、わざわざ両証を追加して判断を求めることは、一事不再理の原則に反する旨主張する。

2.しかし、甲第5?6号証が前記III.2に掲げた過去の無効審判の請求において提出されていないことは、当庁における記録上明らかであるから、本件審判請求は、同一の事実及び同一の証拠に基づいてするものではない。
したがって、本件審判請求は一事不再理の原則に反するものではないので、請求人の主張につき検討を進める。

VII.甲第4号証ないし甲第8号証記載の技術内容

1.甲第4号証記載の技術内容
(1)甲第4号証には、次のa?iの事項が図面(第1?7図)とともに記載されている。
a.大体平らな底の部分と、上方に延びた側壁と、前記側壁の頂部から下方に延び、該側壁の全周囲のまわりに接している唇とを持った容器、前記容器の中に置かれた包装さるべき品物、および前記品物と容器との頂部を覆い、前記容器の全周囲のぐるりに前記唇の下に延びた後縁のある熱収縮性フィルム材料のシートを備えて居り、前記シート後縁は前記容器の唇と拘束係合をするように唇の全周囲の下に収縮され、前記シートの残りの部分は品物と容器との頂部を覆うて緊張したしわのないカバーを形成するように熱収縮されている所の容器包装。(実用新案登録請求の範囲)
b.本考案によって作られた包装は、大体平らな底と、大体上方に延びた側壁と、前記側壁の頂部および全周囲のまわりの所にある大体水平な縁とさらに前記側壁頂部の、水平の縁の全周囲のまわりに下方に延びた唇またはフランジとを持った容器と、前記容器の中に置かれてる包装さるべき品物と、そして前記品物と容器との頂部を覆い、下方に延びて前記唇あるいはフランジの周囲を完全に囲んでいる後縁を持っている所の熱収縮性のフィルム材料のシートとを備え、前記後縁は前記下方に延びた唇あるいはフランジの全周囲の下に収縮されて、それと拘束結合を為し、前記品物を覆うたフィルム・シートの部分は、前記容器および品物の頂部を覆うて緊張した、しわのない覆を形成するように熱収縮されたものである。(1頁左欄下から9行から右欄6行)
c.本考案によれば、覆われるべき容器は、容器の側壁の頂部から、下方に延びた唇またはフランジを備え、包装さるべき品物が容器中に置かれ、容器の開放された頂部の面積よりも大きい面積を持った熱収縮性フィルム材料のシートが品物と容器とを覆うて置かれ、側壁の間に置かれた前記フィルム・シートの部分は側壁の頂部の所、またはそこから水平に延びてる縁の所で一時的にその場所に保持され前記フィルム・シートの自由な後縁は、下方に延びた唇またはフランジの周囲でその下に選択的に熱収縮され、それによって容器の全周囲のまわりに前記フィルム・シートをしっかりと拘束する。(1頁右欄7?19行)
d.容器の側壁は一般に底から上方に開いていて、容器を取り扱ったり貯蔵したり、その他の目的に対して容器を整然と積み重ねることを可能としている。(2頁左欄5?8行)
e.下方に延びた唇あるいはフランジは、フィルム・カバー・シートを緊張する好適の縁を形成し、接着剤を施すことの出来る表面積を持ち、(2頁左欄14?17行)
f.第1図および第2図に示された容器8は大体円形で底部9、側壁10および側壁の頂部に接し容器の全周囲のまわりに、下方に延びた唇11を持っている。第3図に示すように、本考案の包装は、容器8の中に望みの適当な品物(図示していない)を入れ、次に品物と容器を覆うて熱収縮性フィルム材料のシート2を置くことによって作られる。(2頁左欄27?33行)
g.第5図乃至第7図にも、本考案の容器包装を示している。これ等の図において容器20は一般に楕円形で、底の部分22および大体垂直になった側壁23を持っている。側壁の頂部から下方に延びて僅かに開いている唇24が縁21の外縁に接して容器の全周囲のまわりに備えられている。(2頁右欄14?19行)
h.包装は、容器の中に品物(図示していない)を置き、次に唇24の下端の下に延びてる後縁30を持った熱収縮性のフィルムのシート28を置くことによって形成される。フィルムが縁の周囲のまわりに抑さえられている間に、その後縁は前に記載したような風に唇のまわりの下に収縮される。その後、容器および縁の頂部部を覆うフィルム・シート28の部分は、第7図に示す包装を形成するように収縮して緊張される。(2頁右欄26?34行)
i.本考案による効果は、容器の周囲に唇あるいは突起部を設けていることによって、熱収縮性フィルム・シートが熱収縮をする時、この突起部に拘束されてこゝに接着シールを形成することである。従来のように突起部の無い容器の上に熱収縮性フィルム・シートが熱収縮をする時は、フィルムは熱収縮の際直接側壁の外表面に貼り付いて自後の充分な収縮を妨害することにより、不完全なシールを形成し、あるいは全体に外観のより緊張したフィルム・カバーの形成を不可能にする欠陥を生じ勝ちである。本考案は 、これ等の欠陥を解消する効果を有するものである。(2頁右欄36?末行)
(2)前記b、c、eにそれぞれいう「下方に延びた唇あるいはフランジ」や前記iにいう「唇あるいは突起部」とは、図面を参照すると、第2?4図の唇11や第6?7図の唇24を指すものと解される。また、前記eにいう「下方に延びた唇あるいはフランジは、フィルム・カバー・シートを緊張する好適の縁を形成し」とは、前記iに記載されている唇あるいは突起部の果たす作用効果から見て、唇11、24自体がフィルム・カバー・シートを緊張するための縁部(突起部)になることを意味するものと解される。この点で、前記eにいう「縁」は、前記bにいう「大体水平な縁」、前記cにいう「水平に延びてる縁」及び前記gにいう「縁21」とは異なるものである。
そうしてみると、前記eの「下方に延びた唇あるいはフランジは、フィルム・カバー・シートを緊張する好適の縁を形成し、接着剤を施すことの出来る表面積を持ち」とは、下方に延びた唇11、24がフィルム・カバー・シートを緊張するための縁部(突起部)となり、かつ唇の上面が接着剤塗布面となることを意味するものであると認められる。
(3)そこで、前記a?hの記載事項を第1?7図を参照しながら総合し、また、これらの図には、通常「トレー」と称されるものが記載されていることを考慮すると、結局、甲第4号証には、トレーの側壁の頂部に、その全周囲から下方に延びる僅かに開いた唇11、24を設けることにより、熱収縮性フィルムからなるカバーシートでトレーを覆って加熱シールする際の、トレー側壁へのカバーシートの貼り付きに起因する収縮妨害を防止することを目的とした次の考案(以下「引用考案」という。)が記載されていると認められる。
【引用考案】包装さるべき品物を中に置いたトレーの頂部に熱収縮性フィルム材料のシートを覆って接着剤塗布面に接着させて包装した品物を形成するために使用するトレーであって、大体平らな底の部分と、上記底の部分から上方へ大体垂直に延びながら外方に開いている側壁と、上記側壁の頂部(又は上記側壁の頂部にある水平な縁の外縁)に接してトレーの全周囲に備えられていて、上記側壁の頂部から下方に延びてわずかに開いている唇の上面からなる接着剤塗布面とを具備する包装用トレー。
(4)被請求人は、答弁書及び追加の答弁書において、前記eの文言は、甲第4号証に係る実用新案登録出願の明細書を英語から日本語に翻訳する際の誤訳であって、その本来の英語は、「下方に延びた唇あるいはフランジとフィルム・カバー・シートを緊張する好適の縁が形成され(この縁は)接着剤を施すことの出来る表面積を持ち」又は「下方に延びた唇あるいはフランジとフィルム・カバー・シートを緊張する好適の縁を形成し(この縁は)接着剤を施すことの出来る表面積を持ち」というようなものであったはずである旨主張する。
しかし、これが誤訳であると認めるに足りる証拠はなく、しかも被請求人の推定する前記文言ではかえって意味が不明であり、また前記eの文言は前説示のとおりに認定できるものであるから、この主張は採用しない。
また、被請求人は、追加の答弁書において、前記eの文言については、甲第4号証の実用新案公報を発行する際に、助詞の「に」を「は」と誤植した可能性があるとして、同文言を「下方に延びた唇あるいはフランジに(加えて)フィルム・カバー・シートを緊張する好適の縁を形成し、(縁は)接着剤を施すことの出来る表面積を持ち」とすると、同文言に続く「また、容器がポリスチレンのようなプラスチックで出来ている時には容器とカバー・シートの間を軽く融着されるので容器とカバー・シートの間には非常に密着した封緘が形成される。」との文言と併せて技術的にも意味が通じ、甲第4号証に係る実用新案登録出願の出願人の考えが明瞭に分かる旨主張する。
しかし、助詞の「は」を「に」に置き換え、「は」の直後の読点を削除しただけでは意味が通じず、括弧内の語句を補う必要があり、しかも、同語句を補っても文章上奇妙なものとなり意味が通じるとはいまだ言い難いから、前記eの文言中に、前記の誤植があったと推定することは到底できない。
(5)被請求人は、追加の答弁書において、自己の実験結果を示し、答弁書における主張を補足して次のように主張する。
(i)前記aにいう「側壁の頂部から下方に延び、該側壁の全周囲のまわりに接している唇」を持った甲第4号証記載の容器を用いて同証記載の方法に従って熱収縮包装を実施しようとしても、同証記載のようにはうまく実施することはできず、また、同証記載の熱収縮包装を実施するに際し、追加の答弁書の写真1?6に示すような被請求人独自の改良を加えても、熱収縮性フィルム材料のシートの後縁は同証第4、7図のように唇の下に整然とまくれ上がった状態にはならないから、同証記載の熱収縮包装は実施が不可能であり先行技術となり得ない。
(ii)唇に接着剤を塗布すると、唇の表面を前記シートが滑らず良好な熱収縮包装を実施することができなくなるから、接着剤は、唇に塗布されるのではなく、前記(4)で誤訳又は誤植を指摘したように、「縁」に塗布されるのである。
しかし、前記(i)については、被請求人のなし得た一つの実験の結果から結論付けているにすぎず、それをもって直ちに甲第4号証記載の熱収縮包装が実施不可能であるとは断定できない。なお、前記写真によれば、被請求人が行った実験では、唇を容器側壁の頂部から下方に長く延ばしすぎて形成したことが、熱収縮性フィルム材料のシートの後縁が唇の下にまくれ上がらないことの一因ではないかと推測される。また、前記(ii)については、前記のように唇を長く延ばしすぎて接着剤塗布面を広くしすぎたことや容器材質、接着剤等の選び方に問題があるのではないかと推測されるから、この実験結果をもって、甲第4号証記載の熱収縮包装においては、接着剤は唇に塗布されるのではないとは断定できない。
したがって、被請求人の前記主張は採用できない。

2.甲第5号証記載の技術内容
(1)甲第5号証には、次のj?mの事項が図面(第1?14図)とともに記載されている。
j.上端が開口した包装容器の対向側壁上端部に接着剤を塗布し、前記包装容器から製品が生ている部分に熱収縮性プラスチックフィルムをかぶせて前記接着剤により該フィルムの両端を包装容器の対向側壁上端部に接着し、その後該フィルムを加熱収縮させることを特徴とする収縮包装方法。(特許請求の範囲)
k.本発明は段ボールトレイ、木のハーフデプスケース、プラスチックトレイ等に缶又は壜等の製品を詰める場合において、トレイ又はケースの長手方向対向側壁に接着剤を塗布し、プラスチックフィルムをかぶせて前記接着剤によりフィルムを接着すると共に連続して送られるフィルムを切断し、次に加熱収縮用のヒートトンネルを通過させ包装を完成させるものである。(1頁右下欄下から6行?2頁左上欄3行)
l.本発明収縮包装方法及びその装置は以上述べたように実施し得るものである。その収縮包装方法は、上端が開口した包装容器の対向側壁上端部に接着剤を塗布し、前記包装容器から製品が出ている部分に熱収縮性プラスチックフィルムをかぶせて前記接着剤により該フィルムの両端を包装容器の対向側壁上端部に接着し、(4頁左上欄10?16行)
m.更にこの包装収縮方法によれば、次に述べるような効果が得られる。1)包装容器全体をフィルムで収縮包装させる方法に比べて使用フィルムが大幅に少なくなり、包装コストが低減し経済的である。(4頁右上欄1?5行)
(2)前記jの記載中、「生ている」は、前記lの記載から見て、「出ている」の明白な誤記であると認められるから、前記j?mの記載事項を特に第1?7図を参照しながら総合すると、甲第5号証には、次の技術的事項(以下「技術的事項A」という。)が記載されていると認められる。
【技術的事項A】平坦な底板と垂直な側壁とを具備し上端が開口しているトレーの対向側壁の上端部に近い外側面に接着剤を塗布し、このトレーに、これから被包装物(製品)がはみ出ている状態で被包装物を収容し、被包装物の上部を連続して送られる熱収縮性プラスチックフィルムで覆って、前記接着剤により該フィルムの両端をトレーの対向側壁の上端部に接着するとともに該フィルムを切断し、その後該フィルムを加熱収縮させることからなる収縮包装方法。

3.甲第6号証記載の技術内容
(1)甲第6号証には、次のn?p(oは欠号)の事項が図面(第1?10A図)とともに記載されている。
n.罐、びん及びそれに類似する物品を、底壁とそこから延びている立上り壁とを有し該壁の第1の対の間隔ずけられた壁が第2の対の壁によって共に連結されている一連のトレー内に包装する方法であって、第1の対の壁上に接着剤を附与すること、該壁に附与された接着剤に対し、かつ前記物品上へフィルムシートを配置すること、接着剤が固化するまでフィルムシートを前記壁上の附与接着剤に対し押圧すること、トレー間のフィルムシートを分離すること、トレーへ物品を保持するため該シートを収縮すること、の諸段階から成る物品包装方法。(特許請求の範囲)
p.短かい壁41、43におけるフィルムは開放状態となっているが、必要ならば閉鎖されよう。これらの短かい壁41、43上にフィルムを閉鎖するために、1対のスプレーガン又は塗布器227が回転部所23付近に載置されており(第2図)、トレー37の短かい壁41、43に沿って帯状に糊を附与する。(9頁右上欄下から3行?左下欄4行)
(2)前記n?pの記載事項を特に第2A?2D、7A?7C図を参照しながら総合すると、甲第6号証には、次の技術的事項(以下「技術的事項B」という。)が記載されていると認められる。
【技術的事項B】平坦な底板と垂直な側壁とを具備し上端が開口しているトレーの4つの側壁の外側面の一定部分に接着剤を塗布し、このトレーに、これから被包装物(物品)がはみ出ている状態で被包装物を収容し、被包装物の上部を連続して送られる熱収縮性フィルムシートで覆って、前記接着剤により該フィルムシートをトレーの4つの側壁の上端部付近に接着した後該フィルムシートを切断し、その後該フィルムシートを加熱収縮させることからなる物品包装方法。

4.甲第7号証記載の技術内容
(1)甲第7号証には、次のq?uの事項が図面(第1?6図)とともに記載されている。
q.底面、側面に補強リブを形成してなる通称ミートトレイ等皿状容器において、容器上周縁に外下側に巻込んだ形態の耳部を形成してなる包装用皿状容器。(実用新案登録請求の範囲)
r.本考案は皿状容器に肉又は魚等を入れて全体をプラスチックフィルム包装したパック製品に特に適した包装用容器に関する。従来一般にミートトレイ(通称)等皿状容器を用いたパック製品の包装作業は自動化したラインシステムで行われている。この作業は、容器に肉等被収納物が収納された後、予め適度の張り強度に微調整されて張られているフィルム下において容器を上昇させ、フィルム面を下から押上げて容器全体をフィルム内に包み込ませ、次いで下向コ状になったフィルムを容器の下側において左右から交絞させて容器外周に張りつくように包着させ、その後で容器下側のフィルムの合わさり部をシールして製品とするものである。(1頁下から8行?2頁6行)
s.この際、上記フィルムを包着させる時には、第2図で略示するようにフィルムの包着につれて強い張力が付加され、矢印で示すように容器に対しては両側端部を押しつぶすとともに全体を下方にたわみ折るような圧力が加わる。(2頁6?11行)
t.以上のように構成してなる容器によれば、第2図に示す如く、プラスチックフィルムPの包着の際に生じる容器側面特に四隅部3’への上下方向加圧A、及び容器全体を下方にたわみ折るような変形加圧Bのいずれに対しても、耳部10の丸みのある巻込形が強固な保形力を発揮して容器全体を保形保持し、(4頁下から2行?5頁5行)
u.一方、上記耳部は第5図に示す如く、容器複数枚を積合せた際、丸い耳部同志が重なり合う為容器間に空気Sを生じさせる役目を果し、積合せた容器を一枚々々剥しやすくする上で非常に効果的となり、スタッキング防止を完遂する。(6頁3?7行)
(2)前記sの記載から見て、前記r、tにいう「プラスチックフィルム」はストレッチフィルムであることが明らかであるから、前記q?uの記載事項を特に第2?6図を参照しながら総合すると、甲第7号証には、次の技術的事項(以下「技術的事項C」という。)が記載されていると認められる。
【技術的事項C】被包装物(被収納物)を収納したトレーの上面にストレッチフィルムをオーバーラップして包み込み、トレーの下側のフィルムの合わさり部をシールして包装体を形成するために使用するトレーであって、平坦な底板と、上記底板の周囲から上方へ拡開傾斜して一体に延長された周壁と、上記周壁の上部外側面全周に形成された耳部の略垂直な外面とを具備し、上記トレーの耳部の略垂直な外面を、多数個のトレーを重ね合わせたとき、各トレーの耳部の略垂直な外面が露呈して連続した略垂直な面として柱状を呈する如く形成した包装用トレー。
(3)被請求人は、答弁書及び追加の答弁書において、前記qにいう「容器上周縁に外下側に巻込んだ形態の耳部」を持つ甲第7号証記載の容器は金型等によって成形することができないものであるから、同証は先行技術とはなり得ない旨主張する。
しかし、同証には前記耳部を持つ容器の形状や構造が図面とともに明確に記載されているのであるから、これの金型等による成形が可能であるか否かにかかわらず、同証の記載から前記のように技術的事項Cを認定することに何らの妨げもない。

5.甲第8号証記載の技術内容
(1)甲第8号証には、次のvの事項が図面(第一?九図)とともに記載されている。ただし、旧字体を常用漢字に、記号及び外来語以外の片仮名を平仮名にそれぞれ置き換え、読点及び濁点を補ってある。
v.本機械の作用を述れば、先づ、第一図中(イ)なる糊箱へ硬軟適度の糊液を注入為し置き、(ヨ)なる台枠の(天)の所の上面にして、(ニ)なる紙載転布と(ハ)なる緩和紙押棒との間へ、第八図の(三)に示せる如く為して重子たる紙を水平に挿入し、(中略10行)糊箱底の小孔(イ’)より垂出せる糊は「ロール」に塗着し、紙の糊代露出面へ糊液を塗刷し、(2頁8?末行)
(2)前記vの記載中、「重子たる紙」の読みは「重ねたる紙」であるから、前記vの記載事項を特に第一図、第八図の三を参照しながら総合すると、甲第8号証には、次の技術的事項(以下「技術的事項D」という。)が記載されていると認められる。
【技術的事項D】紙の一方の面の一部分に接着剤を塗布するに際し、複数葉の紙を重ねてそれらの接着剤を塗布すべき部分だけを重なり合うことなく順次露呈させ、その露呈面に接着剤塗布ロールにより接着剤を塗布すること。

VIII.対比及び判断

1.本件考案と引用考案とを対比すると、引用考案の「包装さるべき品物」、「中に置いた」、「頂部」、「フィルム材料のシート」、「覆って」、「接着剤塗布面」、「包装した品物」、「大体平らな底の部分」、「上記底の部分から上方へ大体垂直に延びながら外方に開いている」、「側壁」、「上記側壁の頂部(又は上記側壁の頂部にある水平な縁の外縁)に接してトレーの全周囲に備えられていて」は、それぞれ、本件考案の「被包装物」、「盛付けした」、「上面」、「フィルム」、「オーバーラップして」、「糊付面」、「包装体」、「平坦な底板」、「上記底板の周囲から上方へ拡開傾斜して一体に延長された」、「周壁」、「上記周壁の上部外側面全周に形成された」に相当することが明らかである。
また、引用考案の「上記側壁の頂部(又は上記側壁の頂部にある水平な縁の外縁)に接してトレーの全周囲に備えられていて、上記側壁の頂部から下方に延びてわずかに開いている唇の上面からなる接着剤塗布面」の文言は、接着剤塗布面が周壁の頂部から斜め下方に向かって傾斜して周壁の上部外側面全周に形成されていることを意味するから、引用考案の接着剤塗布面は、「下方傾斜した接着剤塗布面」というべきものである。
そして、このような「下方傾斜した接着剤塗布面」が周壁の上部外側面全周に形成されているトレーを多数個重ね合わせたときには、「各トレーの接着剤塗布面が露呈して連続した略垂直な面として柱状を呈する如く」にはならないことは明らかである。
したがって、結局、本件考案と引用考案とは、次の一致点で一致し、相違点アないしエで相違する。
【一致点】被包装物を盛付けしたトレーの上面にフィルムをオーバーラップして糊付面に接着させて包装体を形成するために使用するトレーであって、平坦な底板と、上記底板の周囲から上方へ拡開傾斜して一体に延長された周壁と、上記周壁の上部外側面全周に形成された接着剤塗布面とを具備する包装用トレー。
【相違点ア】上記周壁の上部外側面全周に形成された接着剤塗布面が、本件考案では、略垂直な接着剤塗布面であるのに対し、引用考案では、下方傾斜した接着剤塗布面である点。
【相違点イ】上記トレーの接着剤塗布面を、本件考案では、多数個のトレーを重ね合わせたとき、各トレーの接着剤塗布面が露呈して連続した略垂直な面として柱状を呈する如く形成したのに対し、引用考案では、このように形成していない点。
【相違点ウ】オーバーラップするフィルムが、本件考案では、ストレッチフィルムであるのに対し、引用考案では、熱収縮性フィルムである点。
【相違点エ】本件考案では、フィルムをオーバーラップして糊付面に接着させたのちトレーの周囲上縁の近傍でフィルムを切断して包装体を形成するのに対し、引用考案では、このようなフィルムの切断に言及していない点。

2.これらの相違点について検討する。
(1)相違点アについて
相違点アをなす構成である「上記周壁(すなわち、トレーの平坦な底板の周囲から上方へ拡開傾斜して一体に延長された周壁)の上部外側面全周に形成された接着剤塗布面が、略垂直な接着剤塗布面である」とする点は、甲第4?8号証のいずれにも記載されていないばかりでなく、これら各証の記載から当業者がきわめて容易に想到し得るものでもない。
以下これを詳説する。
(i)甲第5号証記載の技術的事項A及び甲第6号証記載の技術的事項Bは、平坦な底板とこの底板の周囲から上方へ垂直に延長された周壁とを具備するトレーについて、当該垂直な周壁の上端部に近い外側面自体の全周を接着剤塗布面とすることをせいぜい教えるにすぎず、トレーの平坦な底板の周囲から上方へ拡開傾斜して一体に延長された周壁の上部外側面全周に形成された接着剤塗布面が、略垂直な接着剤塗布面であるようにすることは教えない。垂直な周壁を具備するトレーの周壁上端部外側面自体を接着剤塗布面とすることが知られたところで、その知見からは、上方へ拡開傾斜した周壁を具備するトレーについて、その上部外側面全周に略垂直な接着剤塗布面を形成することは何ら導かれないのである。
したがって、甲第4号証の記載と甲第5?6号証の記載とを総合勘案しても、前記相違点アをなす構成が、当業者にきわめて容易に着想されたものとはいえない。
(ii)甲第4号証記載の引用考案にいう包装用トレーによる包装体の形成は、トレーの側壁、すなわちトレーの周壁の頂部にある面状部分を接着剤塗布面として、トレーの周壁の頂部の全周囲とフィルムとを接着すること(以下「トレー頂部接着法」という。)により行うものである(本件考案における包装体の形成もこれによることはいうまでもない。)のに対し、甲第7号証記載の技術的事項Cにいう包装用トレーによるそれは、接着剤を用いずに、トレーの下側のフィルムの合わさり部をシールすること(以下「フィルムシール法」という。)により行うものであるから、両証記載の包装体の形成方法は全く別異のものであり、しかも、引用考案は、前示のように、トレーの側壁の頂部に、その全周囲から下方に延びる僅かに開いた唇11、24(すなわち下方傾斜した接着剤塗布面)を設けることにより、熱収縮性フィルムからなるカバーシートでトレーを覆って加熱シールする際の、トレー側壁へのカバーシートの貼り付きに起因する収縮妨害を防止することを目的とするものであるのに対し、甲第7号証記載の包装用トレーに耳部を設けたのは、ストレッチフィルムの包着の際のトレーの保形保持(変形防止)を目的とするものである(前記s?t参照)から、甲第7号証により、略垂直な外面を有する耳部をトレーに形成することが知られたところで、引用考案における「下方傾斜した接着剤塗布面」を「略垂直な接着剤塗布面」に変更することなど、両証の記載からは到底導かれない。このことは、引用考案において、当該下方に延びる唇に代えて、甲第7号証記載のトレーのように略垂直な外面を有する耳部を設けたものとすると、却って前記貼り付きが起きやすくなることが容易に推測できることを考慮すれば、一層明らかとなる。
したがって、甲第4?6号証の記載に加え甲第7号証の記載を総合勘案しても、前記相違点アをなす構成が、当業者にきわめて容易に着想されるとはいえない。
(iii)甲第8号証記載の技術的事項Dは、複数葉の紙を重ねてそれらの糊代部分だけを露呈させ、当該露呈部分に一度に糊を塗布することを教えるにすぎない。
したがって、甲第4?7号証の記載に加え甲第8号証の記載を総合勘案しても、前記相違点アをなす構成が、当業者にきわめて容易に着想されるとはいえない。
(2)相違点イについて
前説示のとおり、相違点アをなす構成である「上記周壁の上部外側面全周に形成された接着剤塗布面が、略垂直な接着剤塗布面である」とする点が、そもそも、甲第4?8号証のいずれにも記載されていないばかりでなく、これら各証の記載から当業者がきわめて容易に想到し得るものでもないのであるから、この接着剤塗布面を、多数個のトレーを重ね合わせたとき、各トレーの接着剤塗布面が露呈して連続した略垂直な面として柱状を呈する如く形成することも、甲第4?8号証の記載からは到底導かれない。
したがって、相違点イをなす構成である「上記トレーの接着剤塗布面を、多数個のトレーを重ね合わせたとき、各トレーの接着剤塗布面が露呈して連続した略垂直な面として柱状を呈する如く形成した」とする点は、甲第4?8号証のいずれにも記載されていないばかりでなく、これら各証の記載から当業者がきわめて容易に想到し得るものでもない。
(3)相違点ウについて
引用考案では、トレー頂部接着法による包装体の形成に使用するオーバーラップ用フィルムとして熱収縮性フィルムを用いているが、一般に、包装体の形成に使用するオーバーラップ用フィルムとしては、フィルムシール法による包装体の形成を教える技術的事項Cからも知られるように、ストレッチフィルムも熱収縮性フィルムもともに慣用のものであるから、引用考案のトレー頂部接着法による包装体の形成に使用するオーバーラップ用フィルムとして、熱収縮性フィルムに代えてストレッチフィルムを選択することは、当業者がきわめて容易に想到し得ることである。本件考案が、トレー頂部接着法による包装体の形成に使用するオーバーラップ用フィルムとして特にストレッチフィルムを採用した点に格別の意義はない。その上、本件実用新案登録明細書には、ストレッチフィルムとして、具体的には軟質塩化ビニール樹脂のフィルムを用いること、これは加熱すると収縮する性質を持っていることがそれぞれ記載されているから、本件考案の「ストレッチフィルム」という用語は、それが熱収縮性フィルムである場合をも包含している。
(4)相違点エについて
包装体を形成する際に、オーバーラップして包着したフィルム等の包材の剰余部分を切断排除することは、日常にも見られるごく普通のことであるから、引用考案のトレーにおいても、フィルムを接着させたのち、剰余部分が生じたときは、トレーの周囲上縁の近傍でフィルムを切断して剰余部分を排除して包装体を形成することは、当業者がきわめて容易に想到し得ることである。本件考案が、フィルムをオーバーラップして糊付面に接着させたのちトレーの周囲上縁の近傍でフィルムを切断して包装体を形成するとした点に格別の意義はない。

3.したがって、本件考案の構成である「上記周壁の上部外側面全周に形成された略垂直な接着剤塗布面を具備する」点及び「上記トレーの接着剤塗布面を、多数個のトレーを重ね合わせたとき、各トレーの接着剤塗布面が露呈して連続した略垂直な面として柱状を呈する如く形成した」点は、甲第4?8号証の記載からは導かれないから、本件考案は、これら各証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。

IX. 請求人の主張について

1.請求人は、第一審決及び第二審決において先行技術が存在しないと認定された「垂直面に接着剤を塗布し、フィルムを接着するようにした」技術が甲第5?6号証に開示されているから、これと甲第4、7?8号証に開示されている技術とを総合することにより、本件考案はきわめて容易に想到できるものである旨主張する。

2.しかし、第一審決は、相違点(イ)として、「第1引用例(実公昭39-38574号公報)に記載されたものは水平フランジ21の上面と傾斜フランジの上面に接着剤を塗布してこれをラップフィルムの接着面としたのに対して、本件登録実用新案は略垂直な面を接着面とした点」を挙げ[第一審決の4.(2)参照]、この相違点について、「トレーの垂直フランジの外面のみを接着面とすることは、請求人が提出した証拠方法のいずれにも記載されておらず、また、周知の事項でもない。」と認定しており[同審決の4.(3)の〔相違点(イ)について〕参照]、また、第二審決は、相違点(イ)として、「周壁の上部外側面全周に形成された下方に延びる面は、本件考案では、略垂直な接着剤塗布面として構成されているのに対し、甲第2号証(実公昭39-38574号公報)に記載された考案では、僅かに開いた接着剤塗布可能な唇として構成されている点」を挙げ[第二審決の3.(2)前半参照]、この相違点について、「甲第4号証(米国特許第3593909号明細書)には、端フランジの外側面が垂直であると文言をもって記載されていないし、さらには、その外側面が接着剤塗布面であることも何等記載されていない。」と認定しているのであって[同審決の3.(2)後半参照]、いずれの審決も、単に、トレーの垂直面を接着剤塗布面とすることが証拠に記載されていない又は周知でないと認定しているのではない。両審決では、トレーの周壁上部外側面に形成された「フランジ」や「下方に延びる面」の垂直面を接着剤塗布面とすることが公知であるか否かを問題にしているのである。
なお、前記III.2.(3)の確定判決及びIII.2.(10)の確定判決は、後者の判決が、「審決が、甲第4号証(米国特許第3593909号明細書)には、端フランジの外側面が垂直であると文言をもって記載されていないと認定したのは正確とはいえない」と判示した他は、いずれも、第一審決及び第二審決の前記認定を支持している。

3.したがって、請求人の主張は、その前提において既に妥当なものとはいえない。そして、たとえ甲第5?6号証が存在したところで、本件考案が、甲第4?8号証の記載からきわめて容易に想到することができたものであるといえないことは、前説示のとおりである。

4.請求人は、本件考案の進歩性の欠如について、前記相違点アないしウを挙げて、引用考案をベースに論じているが、それだけでなく「別の視点」として、さらに、甲第7号証に記載された考案をベースとしても論じることができるとして、本件考案は、甲第7号証によって公知となった形状の包装用トレーの上部外側壁に、甲第4?6号証によって公知となった接着剤塗布面を設けたものにすぎず、進歩性がないと主張する。
しかし、甲第7号証記載の包装用トレーは、前示したように、フィルムシール法により包装体を形成するために使用するものであり、しかも当該トレーに耳部を設けたのは、フィルムの包着の際のトレーの保形保持(変形防止)を目的とするものであるから、当該耳部がたとえ略垂直な外面を具備していようとも、当該外面を接着剤塗布面とすることなど、甲第4?8号証の記載をいかに総合勘案したところで到底導かれない。

X. むすび

以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件実用新案登録を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定により準用する特許法第169条第2項の規定によりさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-09-28 
結審通知日 2000-10-13 
審決日 2000-11-07 
出願番号 実願昭54-48866 
審決分類 U 1 112・ 121- Y (B65D)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 橋爪 良彦大槻 清寿新井 正男  
特許庁審判長 佐藤 雪枝
特許庁審判官 杉原 進
鈴木 美知子
登録日 1987-12-21 
登録番号 実用新案登録第1712320号(U1712320) 
考案の名称 包装用トレ-  
代理人 峯 唯夫  
代理人 江原 省吾  
代理人 城村 邦彦  
代理人 白石 吉之  
代理人 田中 秀佳  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ