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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1032472
審判番号 不服2000-8086  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-06-01 
確定日 2001-01-24 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 25382号「回転電機の固定子」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年11月 8日出願公開、実開平 6- 80352]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年4月16日の出願であって、その考案は請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、本願考案という。)である。
「筒状部と、この筒状部の両端に形成したつば部からなり、前記筒状部に巻線を巻装したボビンを、継鉄部と歯部とからなる固定子鉄心の前記歯部に挿着してなる回転電機の固定子において、前記ボビンの前記継鉄部側のつば部の内側に段差を形成して、つば部の厚さを段階的に薄くしたことを特徴とする回転電機の固定子。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-196743号公報(以下、引用例という。)には、図面と共に以下の記載がある。
「第3図は自動車用交流発電機のロータコイルを形成するに当たり従来のコイルボビン1にコイル線2を巻きつける方法を示す。ボビン1は、この場合、合成樹脂から形成されたもので、円筒状の胴部1aとその両端から半径方向外方に広がる環状フランジ部1b、1cとを有し」(2頁左上欄2行?7行)、
「第1図及び第2図に示すコイルボビン1はナイロン等の合成樹脂から一体成形されたもので、自動車用交流発電機のロータコイルのボビンとして用いられるものである。コイルボビン1のコイル巻き始め側の環状フランジ部1bと円筒状の胴部1aとの間に形成される環状角隅部には段部5がボビン1と一体形成により設けられている。この段部5はリード溝1dと胴部1aの外周面との会合部のうち、該リード溝1dの幅(胴部1aの円周方向寸法)の一側端1d-sから胴部1aの円周方向寸法」ノ一側端1d-sから胴部1aの外周面に沿ってほぼ一周して、該リード部溝1dの幅の他端側1d-eまで伸びている。」(3頁左上欄8行?19行)
すなわち、引用例の第1図及び第2図に示されたコイルボビンでは、回転電機の巻線を巻装した筒状のコイルボビンにおいて、コイルボビンの環状フランジ部の内側に段差を形成して、フランジ部の厚さを段階的に薄くしているものと認められる。
また、引用例の第3図には、回転電機の巻線を巻装した筒状のコイルボビンの両端に、環状フランジ部を設けたものが記載されていると認められる。

3.対比・判断
(1)対比
本願考案と引用例に記載されたものとを比較すると、引用例の環状フランジ部は、本願考案におけるつば部に相当するから、本願考案と引用例とは、筒状部と、この筒状部の端部に形成したつば部からなり、前記筒状部に巻線を巻装したボビンにおいて、つば部の内側に段差を形成して、つば部の厚さを段階的に薄くした回転電機のコイルボビンである点で一致し、以下の点で相違が認められる。
(イ)つば部が、本願考案では、筒状部の両端に設けられているのに対し、引用例では筒状部の一端部に設けることは記載されているものの、両端部に設けることについては明示されていない点、
(ロ)本願考案は、固定子であって、ボビンを、継鉄部と歯部とからなる固定子鉄心の前記歯部に挿着しており、ボビンのつば部の段差が、継鉄部側に形成しているのに対し、引用例は、ロータであって、ボビンをどのようにロータに装着するかについては明示されていない点、
(2)判断
上記相違点(イ)、(ロ)について検討する。
(イ)つば部を、筒状のコイルボビンの両端に設けることは、引用例の第3図にも示されているように周知であり、引用例において、つば部を筒状部の両端に設けるようにすることは、当業者がきわめて容易に想到し得たことと認められる。
(ロ)巻線を巻装したボビンをロータの継鉄部と歯部とからなる歯部に挿着すること、及び、巻線を巻装したボビンを継鉄部と歯部とからなる固定子鉄心の歯部に挿着することは、それぞれ周知であって、巻線を巻装したコイルボビンを、固定子に用いるか、またはロータに用いるかは、回転電機の種類によって適宜決定されるものである。さらに、引用例の、つば部に段差を有するボビンを歯部に挿着する際に、装着形態としては、継鉄部側のつば部に段差を備えるようにするか、または、継鉄部ではない側のつば部に段差を備えるようにするか、の2通りしかなく、段差を有するつば部を継鉄部側にするか否かは、適宜選択する設計的事項にすぎないものである。
そして、引用例のボビンを、固定子に用いて、ボビンを、継鉄部と歯部とからなる固定子鉄心の前記歯部に挿着し、ボビンのつば部の段差が、継鉄部側に形成するようにすることを、採用できないとする理由はないことから、上記(ロ)に係る相違点は、当業者がきわめて容易に想到し得たものと認められる。
そして、本願考案が奏する「固定子の組立性を失うことなく、歯部に装着するボビンに巻線を高密度に巻装した高性能な回転電機の固定子を提供することができる。」という明細書記載の作用効果は、引用例及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願考案は、引用例及び周知技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができず、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-11-28 
結審通知日 2000-11-29 
審決日 2000-12-14 
出願番号 実願平5-25382 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (H02K)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 田良島 潔小川 恭司  
特許庁審判長 大森 蔵人
特許庁審判官 川端 修
岩本 正義
考案の名称 回転電機の固定子  

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