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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) H01Q
管理番号 1032491
審判番号 審判1996-11001  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 1996-07-01 
確定日 2000-05-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第2093657号「アンテナ装置」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成 9年 8月10日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成09(行ケ)年第0238号平成11年2月23日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。   
結論 登録第2093657号実用新案の明細書の請求項1に記載された考案についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯・本件登録実用新案の要旨
本件登録第2093657号実用新案(以下、「本件考案」という。)は、昭和63年8月25日に出願(実願昭63-111973号)され、平成5年6月14日に出願公告(実公平5ー22967号)され、平成7年12月18日に設定登録されたものであって、その要旨は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりの、
「パラボラ反射器と、前記パラボラ反射器によって反射された電波を受けるように前記パラボラ反射器に対向して配置されるフイードホーンと、前記フイードホーンからの電波を受ける導波管開口部が形成されかつ前記フイードホーンに接続されるケースと、前記ケースに収納されて前記導波管開口部から導かれた電波を周波数変換するための周波数変換回路部と、その一方端に前記パラボラ反射器が固着された支持アームとを備えるアンテナ装置において、
前記支持アームの他方端を前記フイードホーンと前記ケースとの接続部に固着し、かつ前記ケースを前記導波管開口部が上にかつ出力側端部が下になるように垂下させたことを特徴とする、アンテナ装置。」にあるものと認める。
2.請求人の主張
請求人は、甲第1号証(実願昭59-8011号(実開昭60-119116号)のマイクロフィルム)、甲第2号証(「BSアンテナの施行技術」第50?53頁(昭和59年5月発行、テレビ受信向上委員会))、甲第3号証(マスプロ電工株式会社が製造販売する衛星アンテナ「BSQ75・BSQ100・BSQ120」のパンフレット(昭和59年6月発行))、甲第4号証 (「テレビ技術」7月号、’88/VOL.3、6第42?46頁(昭和63年7月1日発行、電子技術出版株式会社))、甲第5号証(甲第4号証の参考図)、甲第6号証の1(昭和63年4月27日付の納品書(株式会社ロケット発行))、甲第6号証の2(昭和63年4月27日付の請求書(株式会社ロケット発行))、甲第6号証の3(昭和63年4月28日付の領収書(株式会社ロケット発行))、甲第7号証(BSアンテナ「NE-BSA451」の取扱説明書(日本電気ホームエレクトロニクス株式会社発行))、甲第8号証(昭和63年4月21日、電波新聞抜粋)、甲第9号証(BSアンテナおよびBSコンバータ(NE-BSC200、NE-BSA451)に関する証明書(日本電気ホームエレクトロニクス株式会社映像メディア事業部発行))、および、甲第10号証(BSアンテナおよびBSコンバータ(NE-BSC200、NE-BSA451)に関する証明書(名古屋工業大学電気情報工学科教授、池田哲夫発行))を提示するとともに、甲第8号証に掲載されたBSアンテナ「NE-BSA451」の構造の検証を申し立て、また同アンテナが本件出願前に購入された事実を立証しようとして、検証申立書・証人尋問申請書を提出して、本件登録実用新案は、本件出願前に.日本国内において頒布された刊行物に記載された考案および公然知られた考案と同一であるから実用新案法第3条第1項の規定に違反して登録されたものであり、またこれらの考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであり、実用新案法第37条第1項の規定により、無効にされるべきである旨主張している。
3.被請求人の主張
被請求人は、甲第1?10号証ならびに検甲第1号証には、本件考案の「支持アームをフイードホーンとケースとの接続部に固着しかつケースを垂下させることにより、本件実用新案の効果を得ること」について開示も示唆もなく、係る構成は、より詳しくは、ケースは長手ケースを意味し、その長手ケースの上部側面に導波管開口部が形成されており、ケースの下部から出力端子が取り出されていて、「垂下」とは、このようなケースを本件公報の第1図に示す逆L字状になるように配置させたことを意味しており、このように「垂下」されたケースは、甲第1?10号証に開示も示唆もなされていない旨主張している。
4.各甲号証記載 の考案
これに対して、請求人の提出した、各甲号証には次の考案が記載されている。
(1)甲第4号証(「テレビ技術」7月号、’88/VOL.36第42?46 頁(昭和63年7月1日発行、電子技術出版株式会社))には、
その「写真1」および「第1図」に示された事項から、
「パラボラ反射器と、フィードホーンと、ケースと、支持アームとからなるアンテナ装置であって、支持アームの他方端をフィードホーンに固着し、かつケースを扁平な直方体状とし、その偏平方向一端面部の中央付近にフィードホーンが接続され、その下側側面部から出力端子が導出される」構造が示されている。
また、表1には、BSアンテナの仕様として、コンバータ部の仕様が記載され、出力構造として高周波同軸C15コネクタを用いることも記載されている。
(2)甲第1号証(実願昭59-8011号(実開昭60-119116号)マイクロフィルム(昭和60年8月12日特許庁発行))、には、
アーム7の連結部7bと一体形成された二叉片8を一次放射器要素15とコンバータ要素16との接続部に固着すること、が記載されている(4頁4?5頁7行、第1?3図参照)。
5.対比・判断
本件考案と甲第4号証に記載されたものとを対比すると、甲第4号証に記載されたものにおいて、ケースにフィードホーンからの電波を受ける導波管開口部が形成されていること、及び支持アームの一方端がパラボラ反射器に固着されていることは自明のことであり、また、本件考案において、「垂下」とは、水平方向の寸法の最小化及び曲げモーメントの最小化のために、ケースの外寸のうち最も短い辺が水平方向になるように配置し、他の辺が垂直、又はそれに近い姿勢で配置するものであると認められ、一方、甲第4号証に記載されたものも、第1図のものは、実際使用する場合には、パラボラ反射器が衛星の方向に向けて、ある仰角を持って使用されるはずであり、その場合ケースが、ケースの最も短い辺が水平方向、他の辺は垂直、又はそれに近い姿勢で配置されるのであり、甲第4号証に記載されたものにおいて、ケースが本件考案の「垂下」に相当する姿勢で配置されることは、自明のことである、ので、
両者は、
A.パラボラ反射器と、前記パラボラ反射器によって反射された電波を受けるように前記パラボラ反射器に対向して配置されるフィードホーンと、前記フィードホーンからの電波を受ける導波管開ロ部が形成されかつ前記フィードホーンに接続されるケースと、前記ケースに収納されて前記導波管開口部から導かれた電波を周波数変換するための周波数変換回路部と、その一方端に前記パラボラ反射器が固着された支持アームとを備えるアンテナ装置であって、
前記支持アームの他方端を、前記フイードホーン及び前記ケースからなるものの所定部分に固着し、かつ、前記導波管開口部が上にかつ出力側端部が下になるように垂下させたアンテナ装置、
である点で一致し、次のBの点で相違する。
B.前記支持アームの他方端を固着する位置が、本件考案では、前記フイードホーンと前記ケースとの接続部に固着しているのに対して、甲第4号証に記載されたものでは、前記支持アームの他方端をフィードホーンに固着している点、
次に、前記相違点Bについて検討すると、
(1)相違点Bについて
支持アーム7の他方端(連結部7bと一体形成された二叉片8)をフィードホン(一次放射器要素15)とケース(コンバータ要素16)との接続部に固着することは、甲第1号証に記載されているように、甲第4号証に記載されているものと同じアンテナ装置の技術において、本件出願前公知であるから、甲第4号証に記載されているものにおいて、前記支持アームの他方端を前記フイードホーンと前記ケースとの接続部に固着するようにすることは当業者がきわめて容易に成し得ることである。
また、本件考案の奏する効果も、甲第4号証及び甲第1号証に記載されているものから予測される範囲のものである。
よって、本件考案は、前記甲第4号証、甲第1号証に記載されているものからの当業者がきわめて容易に考案できたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができないものである。
6.被請求人の主張の検討
本件考案の「支持アームをフイードホーンとケースとの接続部に固着しかつケースを垂下させることにより、本件実用新案の効果を得ること」は、前記5.対比・判断、において記載したように、「垂下」は、甲第4号証に記載されたもの、において自明の構成であるし、「支持アームをフイードホーンとケースとの接続部に固着し」なる構成は前記5.対比・判断、(1)相違点Bについて、で検討したように、甲第4号証及び甲第1号証に記載されているものよりきわめて容易に成し得るので、前記本件考案の構成は、甲第4号証及び甲第1号証に記載されているものよりきわめて容易に成し得るものである。また、「係る構成は、より詳しくは、ケースは長手ケースを意味し、その長手ケースの上部側面に導波管開口部が形成されており、ケースの下部から出力端子が取り出されていて、「垂下」とは、このようなケースを本件公報の第1図に示す逆L字状になるように配置させたことを意味しており、このように「垂下」されたケースは、甲第1?10号証に開示も示唆もなされていない旨」主張しているが、本件考案である請求項1では、ケースについて「長手ケース」を用いたり、「長手ケースの上部側面に導波管開口部が形成されている」ことは記載がなく、本件考案で「垂下」が、「ケースを本件公報の第1図に示す逆L字状になるように配置」を意味するものとは認められず、「垂下」については、前記5.対比・判断、において記載したように、甲第4号証に記載されたものにおいて自明の構成である。
よって、前記被請求人の主張は採用することができないものである。
なお、請求項1で「長手ケース」を用いることや、「長手ケースの上部側面に導波管開口部を形成する」ことを訂正しても、それらの事項は本件出願前周知であり(特開昭60-105301号公報第6図、特開昭61-177003号公報、昭和62年11月2日発行日経産業新聞第(10)面参照)、それをもって進歩性を肯定することは困難である。
7.したがって、本件考案の登録は、旧実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第37条第1項の規定により、これを無効にすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1997-07-16 
結審通知日 1997-07-25 
審決日 1997-08-10 
出願番号 実願昭63-111973 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (H01Q)
最終処分 成立    
前審関与審査官 倉地 保幸  
特許庁審判長 松野 高尚
特許庁審判官 山本 春樹
稲葉 慶和
武井 袈裟彦
大塚 良平
登録日 1995-12-18 
登録番号 実用新案登録第2093657号(U2093657) 
考案の名称 アンテナ装置  
代理人 山田 義人  
代理人 石田 喜樹  

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