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審決分類 審判 全部申し立て   F24H
管理番号 1032515
異議申立番号 異議2000-72782  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-11 
確定日 2001-01-31 
異議申立件数
事件の表示 登録第2602357号「給湯器」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2602357号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.本件考案
登録第2602357号(平成5年11月30日出願、平成11年10月29日設定登録)の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】熱交換器の出側の管路に熱交換器から出る湯の温度を検出する出湯温度センサが設けられ、この出湯温度センサの検出温度に基づき燃焼制御が行われている給湯器において、この給湯器内に配設される熱交換器は、複数のフィンプレートを通して給水導入側を初段とし給湯吐出側を最終段とする複数段の水管が前記フィンプレートの配設領域を折り返して配置されていて前記複数段の水管のうち最終段の水管は外部から給湯器内に入り込む冷風の吹き込み部を通して配置されている熱交換器であり、また、給湯器には水管内の凍結を防止する凍結防止ヒータと、凍結予防用の温度センサと、この凍結予防用の温度センサの検出温度に基づいて前記凍結防止ヒータの動作制御を行うヒータ制御部とが設けられており、前記凍結予防用の温度センサは冷風の吹き込み部を通した熱交換器の最終段の水管側に設け、この凍結予防用の温度センサに出湯温度センサとしての役割を兼用させたことを特徴とする給湯器。」
2.申し立ての理由の概要
登録異議申立人井上ひろ子は、証拠として甲第1号証(実公昭63-10432号公報)、甲第2号証(特公昭60-22139号公報)、甲第3号証(実願昭61-21077号(実開昭62-132349号)のマイクロフィルム)を提出し、本件考案は、甲第1?3号証記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案の登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消すべきである旨主張している。
3.申立人が提出した引用刊行物等の記載
申立人が甲第1号証として提出し、当審が通知した取消の理由に引用された刊行物1(実公昭63-10432号公報)には、「このバーナ2は燃料制御器3を通して燃料供給源(図示しない)に連通されており、そのバーナ2および燃料制御器3を主体として上記熱交換器1を加熱するための燃焼機が構成される。そして、熱交換器1には給湯用水管4が券回装着される。給湯用水管4の熱交換器入口側には凍結防止用ヒータ5が取付けられ、また熱交換器出口側には給湯温度検知用の温度検知器たとえばサーミスタ6が取付けられる。」(公報第1頁左欄第20行?同右欄第1行)、「第2図に示すように、凍結防止用サーモスタット8を除去し、凍結防止用ヒータ5に対する駆動電力を制御部7から直接的にヒータ5へ供給する。この場合、制御部7は、サーミスタ6の検知温度に応じてヒータ5に対する駆動電力の供給制御を行うようにしてある。」(第2頁左欄第26行?31行)、「給湯用水管4の最も凍結の恐れのある熱交換器出口側に給湯温度制御用の感度の良いサーミスタ6が設けられていることに着目し、そのサーミスタ6を凍結防止制御用として用いるようにしたので、確実な凍結防止が可能となる。」(第3頁左欄第18行?第23行)との記載が図面と共に示されている。そして、第2図からは、吐出側の給湯用水管は、複数のフィンプレートを通していること、サーミスタは、給湯用水管のフィンプレートが設けられている部位からすぐ後の部位に設けられていることが窺える。
当審が通知した取消の理由に引用された刊行物2(実願昭50-133218号(実開昭52-46346号)のマイクロフィルム)には、「瞬間湯沸器の排気管に接続しその排気管より排気面積を大きくしたフィンチューブを内蔵した温水器」(実用新案登録請求の範囲)が記載され、該温水器に関し、「よって給水管(8)に供給された水は温水器(5)内のフィンチューブ(9)を通ることにより高温化され・・・高温化された湯が給湯管(12)を通じて各処に給湯されるものである。」(第4頁第5?10行)との記載が図面とともに示されている。
同じく刊行物3(実願昭58-46948号(実開昭59-153484号)のマイクロフィルム)には、「蛇行状に連なる熱交換パイプの直管部分外周に熱交換用のフィンを設けてなる熱交換器において、前記熱交換パイプの直管部分に凍結防止用のヒータを設置したことを特徴とする熱交換器の凍結防止装置。」(実用新案登録請求の範囲)が記載され、図面からは、熱交換パイプが複数のフィンプレートを通してフィンプレートの配設領域を折り返して配置されている構成が把握できる。
同じく刊行物4(実願昭62-26595号(実開昭63-134348号)のマイクロフィルム)には、「器具内に於ける熱交換器(1)又はその近傍の水回路部分にヒータを配設し、更に、上記ヒータを、器具内に具備させた温度検知スイッチの出力によってON・OFF制御するようにした給湯器の凍結防止装置に於いて、器具に、作動温度が水の凍結温度にほぼ一致する値に設定された第1温度検知スイッチ(41)と、これより高く設定された作動温度を有する第2温度検知スイッチ(42)を設けると共に、各温度検知スイッチ(41)、(42)は、それぞれ作動温度以下でON動作するようにし、ヒータには、第1温度検知スイッチ(41)と第2温度検知スイッチ(42)のAND出力を印加させ、第2温度検知スイッチ(42)の感熱部は熱交換器(1)又はその近傍の水回路部分に、他方の第1温度検知スイッチ(41)の感熱部は器具の外気温を感知し易い場所にそれぞれ位置させた給湯器の凍結防止装置。」(実用新案登録請求の範囲)が記載され、該装置に関し、「第2図に示すように、・・・この実施例では、上記第2温度検知スイッチ(42)の感熱部(44)は、有風時に冷気が吹込み易く冷却され易い排気口(6)の近傍に位置させてある。」(第9頁第2?14行)との記載が図面と共に示されている。
同じく刊行物5(実願平1-71846号(実開平3-13062号)のマイクロフィルム)には、「熱交換器に凍結防止用の水温検知手段を設けると共に給気通路内に外気温検知手段を設け、前記水温検知手段がONするとファンを一時的に時限運転し、このファンの運転による給気温度により外気温検知手段がONすれば凍結防止用の電気ヒータを作動させるようにしたことを特徴とする湯沸器。」(実用新案登録請求の範囲)が記載され、「(11)は給気通路(6)に設けた外気温検知スイッチ(外気温検知手段)で、外気温が凍結のおそれのある温度に低下するとON信号が導出されるように設定してある。水温検知スイッチ(10)がONするとファン(7)がタイマ(T1)で一時的に約15秒時限運転し、吸込まれた外気温を外気温検知スイッチ(11)で検知し、これがONすると始めて凍結防止用の電気ヒータ(12)が作動し器具内の水温を上昇して凍結防止するように構成してある。」(第3頁第18行?第4頁第7行)との記載が図面と共に示されている。
申立人が提出した甲第2号証(特公昭60-22139号公報)には、「凍結防止装置」が記載され、該装置に関し、「この状態で外気温がマイナス温度になり器具の水回路が凍結温度になってくれば、器具内の水回路で最も早く冷えやすい熱交換器2のフィンパイプ部31に接して設けられた温度検知素子32が予め凍結前温度附近に設定されており、その温度附近で動作して回路に通電されて水制御器1の加熱部23の部分に設けられたヒータ27が加熱し始める。」(第2頁左欄第41行?右欄第4行)との記載が図面とともに示されている。
同じく甲第3号証(実願昭61-21077号(実開昭62-132349号)のマイクロフィルム)には、「略U字状のパイプヒーター(10)の対向した棒状部(11)の平行間隔と略等しい短辺(21)と、適宜の間隔で小片(22)を切り残して並置した長辺(23)とを有する略矩形にヒーター固定板(20)を形成し、上記棒状部(11)を小片(22)によって抱持し、内胴部(31)に券装した券水管(33)の間隔内に内胴部(31)の外周壁にヒーター固定板(20)を密着固定して構成した給湯器の凍結防止ヒーター。」(実用新案登録請求の範囲)が図面と共に示されている。
4.対比・判断
そこで、本件考案(前者)と刊行物1に記載された考案(後者)とを対比すると、後者の「サーミスタ」、「凍結防止用ヒータ」、「制御部」、「給湯機」は、それぞれ前者の「出湯温度センサ、凍結予防用の温度センサ」、「凍結防止ヒータ」、「ヒータ制御部」、「給湯器」に相当しているから、
両者は、熱交換器の出側の管路に熱交換器から出る湯の温度を検出する出湯温度センサが設けられ、この出湯温度センサの検出温度に基づき燃焼制御が行われている給湯器において、この給湯器内に配設される熱交換器は、複数のフィンプレートを通した水管を備えた熱交換器であり、また、給湯器には水管内の凍結を防止する凍結防止ヒータと、凍結予防用の温度センサと、この凍結予防用の温度センサの検出温度に基づいて前記凍結防止ヒータの動作制御を行うヒータ制御部とが設けられており、前記凍結予防用の温度センサは熱交換器の最終の水管側に設け、この凍結予防用の温度センサに出湯温度センサとしての役割を兼用させたことを特徴とする給湯器の点で一致し、
1)前者の給湯器内に配設される熱交換器は、給水導入側を初段とし給湯吐出側を最終段とする複数段の水管が前記フィンプレートの配設領域を折り返して配置されたものとしているのに対し、後者のものは、熱交換器に給湯用水管が券回装着され、給水管の出側部位には複数のフィンプレートを通したものとしている点、
2)前者が、給湯吐出側を最終段とする複数段の水管のうち最終段の水管は外部から給湯器内に入り込む冷風の吹き込み部を通して配置されているものとし、凍結予防用の温度センサは冷風の吹き込み部を通した熱交換器の最終段の水管側に設けているのに対して、後者には、該構成に関する記載が無い点で両者は相違している。
そこで、まず、上記相違点1)について検討する。
上記刊行物2および刊行物3には、いずれも熱交換器を給水側と吐出側の間においてフィンプレートの配設領域を折り返して配置されたものが記載されている。しかし、いずれのものも、温度センサに関する記載は見当たらない。
次に、上記相違点2)について検討する。
上記刊行物4に記載のものには、「第2温度検知スイッチ(42)の感熱部(44)は、有風時に冷気が吹込み易く冷却され易い排気口(6)の近傍に位置させてある。」との記載があるが、「ヒーター(32)、(32)は、熱交換器(1)近傍の水回路内が40度以下になった時に発熱停止し、15℃以下に降下した時には発熱するようにしてある。」(第14頁第18行?第15頁第1行)との記載があり、又、その設置位置が最終段の水管側に設けられているとの記載がないことから、第2温度検知スイッチ(42)が本件考案の凍結予防用の温度センサと同じ機能を有しているとはいえない。
また、上記刊行物5には凍結防止用の外気温検知スイッチを設けたものが記載されているが、ここでいう外気温は、ファンの運転により吸込まれた外気の温度を検出するものであって、本件考案のもののように、冷風の吹き込み部を通した熱交換器の最終段の水管側に設けた温度センサとは異なるものである。
そして、甲第2?3号証に記載のものも冷風の吹き込み部にセンサを設ける点についての記載は見当たらない。
以上のとおり、上記いずれの刊行物にも本件考案の構成である、給湯吐出側を最終段とする複数段の水管のうち最終段の水管は外部から給湯器内に入り込む冷風の吹き込み部を通して配置されているものとし、凍結予防用の温度センサは冷風の吹き込み部を通した熱交換器の最終段の水管側に設けた点については記載が無いし、示唆もない。
そして、本件考案は、上記構成を具備することにより、「給湯器の凍結を確実に防止することができる。」(段落番号【0033】)という効果を奏するものである。
したがって、本件考案は、上記刊行物1?5および甲第2?3号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものということはできない。
5.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立の理由によっては、本件考案についての実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
異議決定日 2001-01-11 
出願番号 実願平5-69587 
審決分類 U 1 651・ 121- Y (F24H)
最終処分 維持    
特許庁審判長 大久保 好二
特許庁審判官 岡本 昌直
原 慧
登録日 1999-10-29 
登録番号 実用新案登録第2602357号(U2602357) 
権利者 株式会社ガスター
神奈川県大和市深見台3丁目4番地
考案の名称 給湯器  
代理人 五十嵐 清  

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