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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07C |
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管理番号 | 1036011 |
審判番号 | 審判1999-12121 |
総通号数 | 18 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2001-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-07-22 |
確定日 | 2001-02-21 |
事件の表示 | 平成 4年実用新案登録願第 41250号「運行記録計の錠前構造」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 1月21日出願公開、実開平 6- 4864]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本願考案 本願は、平成4年6月16日の出願であって、その請求項1に係る考案(以下「本願考案」という。)は、平成9年12月8日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「記録針等の記録機構部が収容された主ケースに対して、時計体等の表示部が収容された蓋ケースをヒンジを介して開閉可能に設け、この蓋ケースに装着した錠前により施錠可能とした運行記録計において、 上記錠前の鍵差込口に連なる鍵穴を内部に有するシリンダの周壁に、該鍵穴と連通する光導入窓を形成し、 上記蓋ケースに形成された上記シリンダの収容部に、上記光導入窓と対応した切欠き部を形成し、 上記表示部を照明する電球が配された蓋ケース内に面して上記切欠き部を配置して、 上記電球から上記切欠き部及び上記光導入窓を通って上記鍵穴の内部に導かれた光を、該鍵穴の内部から上記鍵差込口を介して上記鍵穴の外部に出射させるようにした、 ことを特徴とする運行記録計の錠前構造。」 2 引用刊行物 (1)刊行物1 これに対して、原査定における拒絶の理由に引用した本願の出願の日前である昭和58年6月30日に頒布された実願昭57-186669号(実開昭58-96208号公報)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。 a「計器板1内に例えば該計器板1の正面と同一平面に組み込まれほぼ円筒形の輪郭を有しているタコグラフ2が公式の形式で、旋回可能に該タコグラフ2のケーシング3に配属させられている蓋4とケーシングに固定の付加部5とを備えつけられている。この場合旋回すきま6によって互いに分割されている蓋4および付加部5の正面は有利には同じ平面内に位置している。蓋4内に設けられている窓7を通しては従来のように速度測定値のための表示部材8,9と時刻を表すための表示部材10,11,12とを見てとることができるようになっているのに対し、・・・蓋4を外部に向けて閉鎖する正面フレーム16内に錠前18の閉鎖シリンダ17が配置されていることが図示されており、・・・蓋4のケーシングがこの場合鉢形に形成されている第1の構成部分20および正面フレーム16により形成されていて・・・詳しく見て取れる。(第12頁第9行-第14頁第1行) b「即ち、正面リング16と正面円板42が結合されていて、ばね作用を有する遮光リング43および目盛り担体として役だつ光導体44が第1の蓋構成部材20と結合されており、該光導体44が第1の蓋構成部分20に構成されているブラケット45上に載っている。」(第16頁第4-9行) また、第1及び2図より、蓋4には、閉鎖シリンダ17を収容する収容部が形成されていることが明らかである。 また、刊行物1には、表示部材8?12を照明するための手段を設けることに関して明記されていないが、表示部材8?12を照明することは、当然に必要とされるものであり、また、上記bに記載されているように蓋構成部分20に遮光リング43及び光導体44が設けられていることより、蓋4に表示部材8?12を照明するための手段が設けられていると認められる。 また、閉鎖シリンダ17の内部に錠前の鍵差込口に連なる鍵穴を有すること、ケーシング3に記録針等の記録機構部が収容されていること及び蓋4がヒンジを介して開閉可能に設けられていることは、技術常識より明らかである。 以上のとおりであるので、刊行物1には次の考案が記載されていると認められる。 記録針等の記録機構部が収容されたケーシング3に対して、速度測定値の表示部材8,9及び時刻の表示部材10,11,12が収容された蓋4をヒンジを介して開閉可能に設け、蓋4に装着された錠前18により施錠可能としたタコグラフにおいて、 上記錠前18の鍵差込口に連なる鍵穴を内部に有する閉鎖シリンダ17、上記蓋4に形成された上記閉鎖シリンダ17の収容部及び上記表示部材8?12を照明する手段が配された蓋4を備えたタコグラフ2の錠前構造。 (2)刊行物2 同じく引用した本願の出願の日前である昭和60年8月30日に頒布された実願昭59-16837号(実開昭60-129458号公報)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。 a「この考案は、以上のような不具合に鑑みなされたものであって、照明用の光源が一個でキーボード2とキー孔4とを共に照明できるキー孔照明装置を提供することを目的とする。」(第3頁第13-16行) b「そしてこのキーボードの上方には、キーボード照明用の光源8が設けられている。この光源8は例えば発光ダイオードを用いたものであり、第2図中に矢印で示すようにキーボード2を照明する他、キー孔4を照明するためにも用いられる。 また、キー孔4の周囲には、第4図に示すような透光部材10が配設されている。この透光部材は、例えばアクリル樹脂のような透明な材料で形成された略環状の部材で、この透光部材外周には導光部材11が接続されている。この導光部材11は、上記透光部材10と同様にアクリル樹脂等の透明な材料で形成され、曲り部12と一端部13に反射面14,15を有する断面矩形のかぎ型の部材で、2つの反射面14,15は軸方向に対し略45°に形成されている。そして他端16には、前述の光源8の光が入射する入射面17が平面として形成されている。この入射面17は、これらの透光部材10と導光部材11とをキー孔4の周囲に取り付けた際にキーボード2が配置されるアウトサイドハンドル部1の表面に露出するように設けられている。 そして上述の光源8はキーボード2の表面を照明する他第2図及び第3図に矢印で示すように上記導光部材11の入射面17に光線を照射するようになっている。 従ってこの導光部材11の入射面17から入射した光は、第3図及び第4図に示すようにこの導光部材11の中を進行し、曲り部12の第一の反射面14と端部の第二の反射面15とで反射して透光部材10に入射する。そして、この透光部材10に入射した光は、第5図に示すように透光部材10の内周面及び外周面で反射を繰り返し、内周面での反射に際して内周面で光の一部が漏出し、キー孔を照明する。」(第4頁第15行-第6頁第9行) また、キーボード2照明用の光源8は、キー孔4から見るとキー孔4以外の他の箇所の照明用の光源であり、他の箇所の照明用の光源と表現することができるものである。 また、キー孔は、鍵穴と表現することができるものである。 以上のとおりであるので、刊行物2には、他の箇所の照明用の光源からの光の一部を導いて鍵穴を照明する鍵穴照明装置の考案が記載されていると認められる。 3 対比 本願考案と刊行物1に記載された考案とを対比すると、刊行物1に記載された考案における「ケーシング3」、「速度測定値の表示部材8,9及び時刻の表示部材10,11,12」、「蓋4」、「タコグラフ2」及び「閉鎖シリンダ17」は、本願考案における「主ケース」、「時計体等の表示部」、「蓋ケース」、「運行記録計」及び「シリンダ」にそれぞれ相当している。 また、本願考案の電球は、照明するためのものであるので、照明するための手段という限りにおいて刊行物1に記載された考案の照明する手段と一致している。 以上のとおりであるので、両者は、次の点で一致している。 記録針等の記録機構部が収容された主ケースに対して、時計体等の表示部が収容された蓋ケースをヒンジを介して開閉可能に設け、この蓋ケースに装着した錠前により施錠可能とした運行記録計において、 上記錠前の鍵差込口に連なる鍵穴を内部に有するシリンダ、上記蓋ケースに形成された上記シリンダの収容部及び上記表示部を照明する手段が配された蓋ケースを備えた設けた運行記録計の錠前構造。 しかし、本願考案では、錠前の鍵差込口に連なる鍵穴を内部に有するシリンダの周壁に、該鍵穴と連通する光導入窓を形成し、蓋ケースに形成された上記シリンダの収容部に、上記光導入窓と対応した切欠き部を形成し、表示部を照明する電球が配された蓋ケース内に面して上記切欠き部を配置して、上記電球から上記切欠き部及び上記光導入窓を通って上記鍵穴の内部に導かれた光を、該鍵穴の内部から上記鍵差込口を介して上記鍵穴の外部に出射させるようにしたものであるのに対して、刊行物1に記載された考案では、上記シリンダ、上記シリンダの収容部及び上記表示部を照明する手段を備えるものの、そのようなものではない点で相違している。 4 当審の判断 上記相違している点について検討する。 先ず、暗い状態でも鍵穴への鍵の差し込み動作ができるように、光源からを鍵穴の内部に光を導き、該導いた光を鍵穴の内部から鍵差込口を介して鍵穴の外部に出射させる鍵穴照明装置は、例えば、実願昭54-129637号(実開昭56-47149号公報)のマイクロフィルム、実願昭60-143648号(実開昭62-52657号公報)のマイクロフィルム等に記載されているように本願出願前周知である。 したがって、刊行物1に記載された考案において、光源から鍵穴の内部に光を導き、該導いた光を鍵穴の内部から鍵差込口を介して鍵穴の外部に出射させることは、上記周知な技術の単なる採用にすぎず、そして、その上記周知な技術の採用に際し、同じく鍵穴照明技術に関する刊行物2に記載された他の箇所の照明用の光源からの光の一部を導いて鍵穴を照明する鍵穴照明装置の考案を参考とし、表示部を照明する手段からの光を鍵穴内部に導くようにすることは直ちに着想し得る事柄であって、そして、その光を鍵穴内部に導く具体的手段として、錠前のシリンダ、シリンダの収容部に光の導入に適合した窓、切欠き等を設けることは、例えば、上記周知の例として示した実願昭54-129637号(実開昭56-47149号公報)のマイクロフィルムにも光路17を形成する貫通孔15,16を設けることが記載されているように、必要に応じて適宜設けられる程度の設計的事項である。 また、照明する手段として電球を採用することは、例示するまでもなく、本願出願前周知である。 以上のとおりであるので、刊行物1に記載された考案において、錠前の鍵差込口に連なる鍵穴を内部に有するシリンダの周壁に、該鍵穴と連通する光導入窓を形成し、上記蓋ケースに形成された上記シリンダの収容部に、上記光導入窓と対応した切欠き部を形成し、上記表示部を照明する電球が配された蓋ケース内に面して上記切欠き部を配置して、上記電球から上記切欠き部及び上記光導入窓を通って上記鍵穴の内部に導かれた光を、該鍵穴の内部から上記鍵差込口を介して上記鍵穴の外部に出射させるようにする点は、当業者がきわめて容易になすことのできたものといわざるを得ない。 なお、本願考案の効果は、刊行物1及び2に記載された考案並びに上記周知な技術から当業者が当然予測できる程度の効果であって、格別のものではない。 5 むすび 以上のとおり、本願考案は、刊行物1及び2に記載された考案並びに上記周知の技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-11-30 |
結審通知日 | 2000-12-12 |
審決日 | 2000-12-26 |
出願番号 | 実願平4-41250 |
審決分類 |
U
1
8・
121-
Z
(G07C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山崎 勝司、内山 隆史 |
特許庁審判長 |
小林 武 |
特許庁審判官 |
宮崎 侑久 中村 達之 |
考案の名称 | 運行記録計の錠前構造 |
代理人 | 松村 貞男 |
代理人 | 瀧野 秀雄 |