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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62D |
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管理番号 | 1036012 |
審判番号 | 審判1998-19718 |
総通号数 | 18 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2001-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-12-10 |
確定日 | 2001-03-12 |
事件の表示 | 平成4年実用新案登録願第86300号「後輪転舵装置」拒絶査定に対する審判事件[平成6年6月7日出願公開、実開平6-42536]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願考案 本願は平成4年11月20日の出願であって、平成11年1月12日付けで補正された明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1には、次のとおり記載されている。 「車両の走行方向に配在されるシャシーフレームの下方に該シャシーフレームを横切る方向に配在され、その両端に後輪を保持する後方車軸を板バネを介して支持させると共に上記後方車軸はその中央位置を回転中心にして両端がシャシーフレーム側に連結されたアーム部材の頂点部に連結している後輪転舵装置において、後方車軸と平行に一つのリンク部材を設け、このリンク部材の中央はシャシーフレーム側に一つの軸を介して回転自在に軸着され、更に上記リンク部材の両端に連結ロッドを介して後方車軸の両端を枢着させ、又、上記リンク部材の一端にシャシーフレーム側に当該シャシーフレームに沿って保持された油圧シリンダのロッドを枢着させ、前記後方車軸を油圧シリンダの駆動で前記中央位置を回転中心にしながら氷平方向に回動可能にしたことを特徴とする後輪操舵装置。」 なお、上記記載における「氷平方向」との記載は、出願当初の明細書における請求項1の記載及び詳細な説明における対応する記載から見て、「水平方向」の誤記と認められるので、本願の請求項1に係る考案(以下、「本願考案」という。)は、請求項1中の「氷平方向」を「水平方向」と読み替えたとおりの後輪操舵装置と認める。 2.引用刊行物とその記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由(平成10年4月7日付け拒絶理由通知)に引用され、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願平2-96813号(実開平4-52976号)のマイクロフィルム(以下「引用例」という。)には、下記の記載がある。 ア.「本考案は、重荷重のトラックやバス等に用いて好適の、後々輪操舵式後二軸車両に関する。」(1頁14,15行) イ.「第1?3図に示すように、この実施例では、後輪1,1′や後々輪2,2′はダブルタイヤであり、それぞれの左右輪は、アクスル(車軸)la,2aにより連結されている。このうち、後々輪2,2′のアクスル2aはその中央部をボールジョイント9を介しラジアスロッド10a,10bに枢着されている。これにより、後々輪のアクスル2aが鉛直軸回りに回動可能に枢着されて、後々輪2,2′が車両の旋回を助成しうるようになっている。 なお、ラジアスロッド10a,10bは、アクスル2aとの枢着部からそれぞれ車幅方向外側に向けて斜前方に延在しており、その先端10c,10dをシャシ4に取り付けられている。 また、アクスル2aはその両端部においてスライドシート2bを介しスプリング3に当接しており、スライドシート2bはスプリング3に対し所要のスライドを許容されるように形成され、アクスル2aの回転が許容されている。 このように、アクスル2aを回転駆動するために、駆動械構Sが設けられている。 つまり、アクスル2aの両端部の下面には、ボールジョイント11,11′を介しドラグリンク8,8′が取り付けられている。そして、このドラグリンク8,8′の先端はリンク12、12′の車外側端部に取り付けられており、リンク12,12′はシャシ4に中間部12a,12′aを枢支されている。 また、リンク12,12′の他端側は、車長方向に延在しており、その前端部に左右連結リンク13が取り付けられ、リンク12,12′を同時に同一方向に同一回転角だけ回動できるようになっている。これにより、リンク12,12′,13を通じて、アクスル2aが円滑にかつ確実に回転駆動されるようになっている。 さらに、リンク12の前端部には、油圧シリンダ14が枢着されている。この油圧シリンダ14は、基端をシャシ4に枢支されて、一端部に油圧に応じて移動するピストンロッド14aが突出しており、リンク12の前端部にはこのロッド14aの先端が取り付けられている。」(4頁12行?6頁12行) ウ.「つまり、油圧シリンダ14の収縮により、・・・アクスル2aは、・・中央部のユニバーサルジョイント9を中心として右回転する。」(8頁9?16行) エ.実施例を示す図面として、第1図?第4図が示されている。 上記ア?エの記載から、引用例には、下記の考案が記載されているものと認める。 「アクスル2aをスプリング3を介して支持させると共に、両端がシャシ4側に連結されたラジアスロッド10a,10bの頂点部に連結し、アクスル2aは鉛直軸回りに回動可能に枢着されている後々輪操舵機構において、シャシ4に固定されたリンク12a,12bを左右連結リンク13で連結し、このリンク12a,12bの車外側端部にドラグリンク8,8’が取り付けられ、ボールジョイント11,11’を介してアクスル両端部の下面に取り付けられており、リンク12a,12bの一端にシャシ側に保持された油圧シリンダ14のピストンロッド14aが取り付けられ、アクスル2aを油圧シリンダの駆動で鉛直軸回りに回動駆動可能にした後々輪操舵機構。」 3.考案の対比 本願考案と引用例に記載された考案を対比すると、引用例記載の考案における「シャシ4」は、本願考案における「シャーシフレーム」に相当するものと認められ、同様に「アクスル2a」は「後方車軸」に、「スプリング3」は「板バネ」に、「ラジアスロッド10a,10b」は「アーム部材」に、「リンク12a、12bと左右連結リンク13」が「リンク部材」に、「ピストンロッド14a」が「ロッド」に、「後々輪操舵機構」は「後輪操舵装置」にそれぞれ相当するものと認められる。 また、引用例においても、アクスル2aは、車両の走行方向に配在されるシャシ4の下方に該シャシ4を横切る方向に配在され、その両端に後々輪を保持するものであることは明らかであり、引用例記載の考案におけるアクスル2aの回転する中心は、本願考案の「中央位置」ということができ、「油圧シリンダの駆動で鉛直軸回りに回動駆動可能にした」ことは、実質上「油圧シリンダの駆動で中央位置を回転中心にしながら水平方向に回動可能にした」ことになるので、本願考案と引用例記載の考案とは、いずれも 「車両の走行方向に配在されるシャシーフレームの下方に該シャシーフレームを横切る方向に配在され、その両端に後輪を保持する後方車軸を板バネを介して支持させると共に上記後方車軸はその中央位置を回転中心にして両端がシャシーフレーム側に連結されたアーム部材の頂点部に連結している後輪転舵装置において、リンク部材を設け、更に上記リンク部材の両端に連結ロッドを介して後方車軸の両端を枢着させ、又、上記リンク部材の一端にシャシーフレーム側に保持された油圧シリンダのロッドを枢着させ、前記後方車軸を油圧シリンダの駆動で前記中央位置を回転中心にしながら水平方向に回動可能にした後輪操舵装置。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点1> 本願考案においては、リンク部材が「後方車軸と平行に1つの」リンク部材であって、「このリンク部材の中央はシャシーフレーム側に一つの軸を介して回転自在に軸着され」ているのに対して、引用例では、シャシ4に固定されたリンク12a,12bを左右連結リンク13で連結したリンク部材である点。 <相違点2> 本願考案においては、油圧シリンダが「シャシーフレームに沿って」保持されているのに対して、引用例においては、そのような向きで保持されていない点。 4.相違点の判断 相違点1について 引用例記載の考案においても1つの油圧シリンダで後方車軸を回転させているのであり、その力を後方車軸の両端にその作用方向を逆にして伝えている点では本願考案とはなんら相違していない。そして、力を伝えるべき部材の両端にその作用方向を逆にして伝えるリンク部材として、力を伝えるべき部材と平行の1つの部材であって、この部材の中央が1つの軸を介して回転自在に軸着されたリンクは周知のリンク構成であって(特開昭64-46059号公報の第1図のリンク機構、小間登「機械器具設計便覧」(昭和39年7月5日)7版,太陽閣p.303のI386のリンク構造参照)、引用例記載のリンク部材に代えて該周知のリンク構成を採用することは当業者がきわめて容易になし得たことといえる。 相違点2について 油圧シリンダを「シャシーフレームに沿って」保持することは、リンクを介して後方車軸に力を伝達できるように油圧シリンダを設置するにあたり、車体フレームの配置やその他の部材の配置に応じて当業者が適宜選択しうる設計的事項にすぎない。 また、本願考案の効果も、引用例に記載の考案、及び、慣用技術からきわめて容易に予測し得る域を出るものではない。 5.むすび 以上のとおり、本願考案は、引用例に記載された考案及び慣用手段に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反し、実用新案登録を受けることができないものであり、本願は拒絶されるべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-12-26 |
結審通知日 | 2001-01-12 |
審決日 | 2001-01-24 |
出願番号 | 実願平4-86300 |
審決分類 |
U
1
8・
121-
Z
(B62D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山内 康明 |
特許庁審判長 |
粟津 憲一 |
特許庁審判官 |
大島 祥吾 ぬで島 慎二 |
考案の名称 | 後輪転舵装置 |
代理人 | 天野 泉 |