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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない H01J
管理番号 1036036
審判番号 審判1998-35666  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-12-24 
確定日 2000-05-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第1977187号実用新案「映像管パネル把持装置」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 I.手続の経緯
本件登録実用新案(実用新案登録第1977187号)に係る考案についての出願は、昭和61年2月6日にされ、平成4年10月30日に出願公告され、平成5年7月26日に実用新案権の設定の登録がされた。
平成10年12月24日に審判請求書が提出され、平成11年4月1日に審判事件答弁書が提出された。
平成11年4月1日に願書に添付した明細書又は図面の訂正を請求する訂正請求書が提出されたが、平成11年6月24日に同訂正請求書を取下げる旨の訂正請求取下書が提出された。
平成11年10月14日に審判請求理由補充書が提出された。
請求人は平成11年10月28日の口頭審理において、また請求人及び被請求人は平成11年12月27日の口頭審理において、それぞれ、陳述要領書に記載のとおりに陳述した。

II.本件登録実用新案に係る考案
本件登録実用新案に係る考案(以下、「本件考案」という)は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された下記のとおりのものと認める。
記(実用新案登録請求の範囲)
パネル搬送腕の端部の横軸に旋回可能に取付けた吊持軸の下端にパネル保持板を設け、該吊持軸心に関して対称に前記パネル保持板の両端に一対のパネル把持腕を横軸に回動自在に対向軸支し、該パネル把持腕の夫々の下端内側にパネルを挟持する把持具を取付けると共に、パネル把持腕の夫々の上端に等長の把持具開閉作動杆の一端を軸支し、該作動杆の他端を前記パネル保持板に突設したばね受け板の挿通孔に貫挿して前記吊持軸に回動自在に取付けた回動リンクの吊持軸心に関して対称の両端に軸支し、前記作動杆の一端と前記ばね受け板との間に前記把持具を閉方向に付勢するコイルばねを圧縮介装した映像管パネル把持装置。

III.請求人の主張及び証拠方法
請求人・平田機工株式会社の請求の趣旨は下記1のとおりであり、その理由は、概略、下記2(無効理由1から無効理由3まで)のとおりである。
証拠方法として下記3(甲第1号証から甲第20号証まで)のとおり提出している。なお、それらのうち、甲第1号証及び甲第3号証から甲第5号証までの4つの証拠方法については本件審判の請求では証拠とはせず甲第2号証及び甲第6号証から甲第20号証までを証拠とする旨、陳述した(第1回口頭審理(期日 平成11年10月28日))。
記1(請求の趣旨)
本件実用新案登録は無効とする、との審決を求める。
記2(請求の理由)
1.無効理由1
本件考案は、その出願前に公開された甲第2号証、甲第6号証から甲第13号証まで及び甲第14号証から甲第17号証までに記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができず、同法第37条第1項の規定によりその登録を無効とすべきものである。(審判請求書、平成11年10月14日付け審判請求理由補充書)
2.無効理由2
本件考案は、その出願日前の実用新案登録出願であって、その出願後に出願公開された甲第19号証(実開昭61-194940号(実願昭60-80219号):出願日 昭和60年5月29日、出願公開日 昭和61年12月4日)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された考案と同一であるから、実用新案法第3条の2の規定により実用新案登録を受けることができず、同法第37条第1項の規定によりその登録を無効とすべきものである。(平成11年10月14日付け審判請求理由補充書)
3.無効理由3
本件実用新案登録出願の明細書は、その実用新案登録請求の範囲の記載が実用新案法第5条第4項に規定する要件を満たしておらず、同法第37条第1項の規定によりその登録を無効とすべきものである。(平成11年10月14日付け審判請求理由補充書)
記3(証拠方法)
甲第1号証:実公昭58-15106号公報
甲第2号証:特公昭59-23059号公報
甲第3号証:「外づかみ抱きかかえ形ハンド」、「図解メカニカルハンド」(工業調査会発行、昭和52年10月20日)、第96頁
甲第4号証:被告準備書面(六)の写し及びイ号図面
甲第5号証:原告準備書面(三)及び(四)の写し
甲第6号証:実開昭59-124085号公報
甲第7号証:実開昭58-98188号公報
甲第8号証:実開昭59-8789号公報
甲第9号証:特開昭53-18165号公報
甲第10号証:実開昭60-84287号公報
甲第11号証:実開昭59-39193号公報
甲第12号証:実開昭59-124086号公報
甲第13号証:特開昭59-37084号公報解
甲第14号証:特開昭54-83762号公報
甲第15号証:実開昭54-37065号公報
甲第16号証:実開昭57-97358号公報
甲第17号証:実開昭57-97359号公報
甲第18号証:特開昭53-36175号公報
甲第19号証:実開昭61-194940号公報
甲第20号証:原告準備書面(八)の写し

IV.被請求人の主張及び証拠方法
被請求人・株式会社椿本チェインの答弁の趣旨は下記1のとおりであり、その理由は、概略、下記2のとおりである。
証拠方法は提出していない。
なお、請求人が提出した証拠方法については、甲第2号証及び甲第6号証から甲第20号証までについて、その成立を認めている。
記1(答弁の趣旨)
本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。
記2(答弁の理由)
1.訴訟における被請求人の主張は本件審判の請求の審理には何ら関係がない。
2.本件考案は、甲第2号証及び甲第6号証から甲第13号証までに記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとは言えないから、無効理由1に基づく主張は退けられるべきである。
3.本件考案は、甲第19号証に記載された考案と同一であるとは言えないから、無効理由2に基づく主張は退けられるべきである。
4.侵害訴訟における被請求人の主張は本件審判の請求の審理には何ら関係がなく、無効理由3に基づく主張は退けられるべきである。

V.当審の判断
1.無効理由3(法第5条第4項)について
(1)請求人が主張する記載不備
請求人は、無効理由3について、さらに詳細に、「実用新案登録請求の範囲における「該作動杆の他端を前記パネル保持板に突設したばね受け板の挿通孔に貫通して」との記載は「作動杆がコイルばねを挿通していること」を明確に特定していないので、記載に不備がある」旨主張している。
そして、その根拠として、概略、
(a)本件明細書において、実施例の装置においては、作動杆がコイルばねを挿通している場合が記載され(公告公報第4欄12行から19行まで)、作動杆がコイルばねを挿通しない場合については記載がない。
(b)実用新案登録請求の範囲の「作動杆の一端とばね受け板との間にコイルばねを圧縮介装した」及び「作動杆の他端をばね受け板の挿通孔に貫通して」との構成を、「「作動杆の一端」とは作動杆の一部を指し示す意味である。」に照らして解釈すれば、作動杆がコイルばねを挿通している以外に考えられない。
(c)訴訟での被請求人の主張からすると、被請求人は、「作動杆がコイルばねを挿通している」との構成が本件考案の考案の構成に欠くことができない事項ではないことを自ら認めている。
と述べている。
(2)検討
そこで検討する。
まず、実用新案登録請求の範囲に記載された考案の構成に欠くことができない事項についての判断の基準となるべき対象は、願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の記載及び考案の詳細な説明の記載であり、これらの記載を離れた当事者の主張によって判断が影響されるものではない。よって、訴訟での当事者の主張によっては本件明細書の実用新案登録請求の範囲の記載が不備であるとすることはできない。
つぎに、本件の考案の目的である「本考案は、パネル中心を回転中心に一致させて把持すると同時に、寸法の異なる多管種のパネルをも挟持できるパネル把持装置を提供すること」(本件公告公報第2欄25行から第3欄1行まで)は、「そこで、パネル寸法の大小に拘らず、コイルばねを圧縮変形させる外力を一方の把持腕上端に作用させて、把持具を開方向に回動せしめてパネル外側方に位置させたのち、該外力を除去すると、コイルばねは伸張変形して把持具を閉方向に回動付勢し、前述の如く、パネルを吊持軸心と同心の位置において挟圧保持することができる」(本件公告公報第3欄37行から43行まで)との記載からも明らかなように、実用新案登録請求の範囲の「作動杆の一端とばね受け板との間に把持具を閉方向に付勢するコイルばねを圧縮介装した」により達成されるものである。
したがって、「作動杆がコイルばねを挿通していること」を特定しなければ本件考案の目的を達成することができない、と言うことはできず、「作動杆がコイルばねを挿通していること」を特定する記載がないことをもっては実用新案登録請求の範囲の記載に不備があると言うことはできない。
(3)まとめ
以上から、無効理由3は採用することができない。
2.無効理由1(法第3条第2項)について
請求人の無効理由1についての主張は、詳細には下記のとおりである。
(a)甲第2号証に記載された考案は、一対のパネル把持腕の構造がパネル保持板の両端で同じ構造ではないこと、及び、把持具開閉作動杆及び回動リンクなる構成を具備していないこと、において本件考案とは異なる。
(b)映像管パネルの把持装置のような産業用の把持装置の分野では、同じ構造の一対の把持腕をリンク機構を用いて開閉する技術は、例えば、甲第6号証から甲第13号証に記載されるとおり、本件の出願時において周知の技術である。
(c)映像管パネルの把持装置の分野では、大きさの異なるパネルを一つの機構で把持することの必要性は、例えば甲第14号証から甲第17号証までに記載されるとおり、本件の出願時において周知の課題である。
(d)当業者であれば、甲第2号証の記載をみれば、把持するパネルの寸法に対応して、把持中心と回転中心とを一致させる技術が開示されていることを直ちに理解することができる。
(e)してみると、本件の出願時に、映像管パネルの把持装置の当業者であれば、当該技術分野において周知の課題である「大きさの異なるパネルを一つの機構で把持する」という課題に着目して、把持装置全般の分野において周知の技術である「同じ構造の一対の把持腕をリンク機構で開閉する」という技術的思想を、甲第2号証に開示された映像管パネル把持装置に適用することにより、本件考案とすることはきわめて容易になしえたことである。
そこで検討する。
(1)甲各号証に記載された事項
甲第2号証及び甲第6号証から甲第17号証までには、以下のとおりの記載がある。
なお、甲第6号証から甲第8号証まで、甲第10号証から甲第12号証まで及び甲第15号証から甲第17号証までの証拠方法については、いずれも、公報ではなくその公報の出願の願書に添付した明細書及び図面のマイクロフィルムの写しが添付されていることから、以後、「公報」を「公報の出願の願書に添付した明細書及び図面のマイクロフィルム」と読み替える。
(甲第2号証)
(ア)「本発明はカラー受像管のパネル搬送用のキャリアヘッドに関するものである。」(第2欄25行から26行まで)
(イ)「キャリア8の先端にはパネル支持軸9がキャリア8の先端に回転可能に軸承された一対の軸10の先端に固定されている。これら一対の軸10はキャリア8中に設けられた駆動軸と傘歯車等を介して連結関係にあり、後述する変角機構によって回転されパネル支持軸9を傾動させる。パネル支持軸9の先端には第4図に拡大して示すようなキャリアヘッド11が固定されている。このキャリアヘッド11は鋳造品で、一端に形成された筒部12から放射状に延びた支持腕13を複数本を有し、これら支持腕13の側面には位置決めブロック14が取付けられる。」(第3欄23行から34行まで)
(ウ)「位置決めブロック14は支持腕13の側面に穿設された長孔13a中に摺動自在に嵌合されたガイドピン15を案内して支持腕13に対して一定範囲にわたってその位置を調整可能に設けられ、止めねじ16によって目的とする位置に固定できる。」(第3欄34行から39行まで)
(エ)「位置決めブロック14の先端には挟持用のパット14aが、基部には載置用のパット14bが固定されており、パネルに対して弾性的に接触し得るように構成されている。」(第3欄40行から43行まで)
(オ)「これら位置決めブロック14のうち1個は第1図a、bに符号14cをもって示すように支持腕13に対して可動であり、L字状の作動アーム18を介して移動出来るように構成されている。すなわち、作動アーム18と位置決めブロック14cとは一体で、支柱19に対して回動自在にピン20を介して連結されている。この作動アーム18の他端は遮蔽材17を貫通して支持腕13側に延び、ピン21を介して摺動ロッド22の後端に回動自在に連結されている。摺動ロッド22の先端はキャリアヘッド11のボス23中に摺動自在に嵌合され、このボスの側面と摺動ロッド22の外端部近傍との間にはスプリング24が弾挿されており、作動レバー18に対してピン20を中心として第4図aにおいて反時計方向の回動習性を与えている。」(第4欄4行から19行まで)
(カ)「ピン20の軸と軸を平行に、かつキャリアヘッド11の中心を通りピン20と直行する平面a-a’に関し対称を長さに円筒部を有するローラー63が取付けられている。このローラー63はレバー18の回動用のローラーで、後述する第3図の開閉機構の先端に取りつけられたプッシャー64に押されてレバー18を回動する。プッシャー64の先端には平坦部が設けられており、これとローラー63の円筒部が平面a-a’に関し対称な長さにわたり線接触するよう構成されている。」(第4欄27行から36行まで)
(キ)「つぎに、以上のように構成された本実施例の動作につき説明する。まず、・・・所定位置にキャリアヘッド11が停止する。・・・つぎに、エアシリンダ32が作動し、作動レバー18をスプリング24の弾発力に抗して摺動ロッド22がボス23中に嵌入する方向に押動される。すると作動レバー18の先端が外方に開き、同時に第3図に示すようにパネルPが図示していないパネル装着装置によって上昇されキャリアヘッド11の位置決めブロック14間に嵌入される。この嵌入は図示していない検出装置によって検出され、エアシリンダ32が後退すると、作動レバー18はスプリング24の弾発力によって元の状態に復帰されその先端がパネルPを第4図に示すように挟持し、正確に位置決め保持する。」(第7欄37行から第8欄19行まで)
(ク)「このようにしてパネルPが保持されるとターンテーブル式に構成された支持腕7が所定のピッチだけ回転される。この間・・・昇降ロッド41が昇降し、その昇降量に応じてパネル支持軸9が傾動し、塗布液の注入などが行われ、・・・第1図に示すように次々と目的とする角度に傾動される。そして、自転の必要がある場合には第2図に示すように自転装置55などによって自転される。」(第8欄20行から32行まで)
(甲第6号証)
(ケ)「ロータリーアクチュエータの軸にカムフォロアー付きリンクを取付け該リンクの回転運動を一対の直線ガイドされるフィンガーに取付けた変換金具の直線運動に変換してフィンガーを開閉せしめることを特徴とする、ロボットハンド。」(実用新案登録請求の範囲の欄)
(コ)「本考案は以上のように構成されているから、物品(ワ-ク)の径が変化しても確実に把持することができ、物品(ワーク)の径が変化しても把持中心が変わらない効果を有する。」(第3頁8行から11行まで)
(甲第7号証)
(サ)「基準点(O1)に対して等分中心部を回転可能に支持した第1節リンク部材(3)の両端に、長さが互いに等しい1対の第2節リンク部材(4a)、(4b)を回転可能に夫々連結する一方、同形をなす1対の爪付指(1a)、(1b)を、先端の各爪(2a)、(2b)がワーク把持中心点(O2)の両側において相対するように、前記基準点(O1)を挟み両側に配設すると共に、該基準点(O1)と前記ワーク把持中心点(O2)とを結ぶ中心線(l)に対して平行移動のみ可能な如く、各爪付指(1a)、(1b)における2個所を前記中心線(l)に直交して設けた1対のガイド(5)、(5)・・・に夫々係合せしめ、各爪付指(1a)、(1b)において基準点(O1)を通り、かつ、ガイド(5)、(5)・・・に平行な線と交わる所定個所に、前記各第2節リンク部材(4a)、(4b)の端部を夫々回転可能に連結せしめ、さらに作動軸を前記ガイド(5)、(5)・・・に平行にした直線往復動アクチュエータ(6)によって一方の爪付指(1a)あるいは(1b)を移動可能となしたことを特徴とする産業用ロボットのハンドリング装置。」(実用新案登録請求の範囲の欄)
(シ)「(イ)爪付指(1a)、(1b)がワーク把持中心点(O2)に対して等距離かつ対称の位置となって接近・離間する構造であるため、ワークの大きさには何等左右されなく同心的、求心的に把持が可能である。」(第10頁11行から15行まで)
(甲第8号証)
(ス)「1固のシリンダ内に同軸的に対向して装填された2個のピストンと、これらピストンに突設されたシリンダ外に突出するピストンロッドと、これらピストンロッドに固定されて互いに対応姿勢とされる1対のフィンガと、前記シリンダの中央で揺動するリンクを介してそれぞれのピストンロッドを連結するリンク装置とを備えたことを特徴とするロボットハンド。」(実用新案登録請求の範囲の欄)
(セ)「したがってフィンガ11、11はリンク装置によって互いに同期して、対向間隔の中心線をシリンダ4の中心線と常に一致させた状態で相対的に移動し、操作用流体に従いワークを把持したり離したりすることができる。」(第7頁5行から9行まで)
(甲第9号証)
(ソ)「回転アクチュエータの回転軸にその回転を直線運動に変換するカム又はリンクを介してガイドバーにガイドされて平行移動し得る1対の爪を連結し前記回転アクチュエータの回転により前記1対の爪を互いに内側又は外側に平行移動するようにしたことを特徴とする平行爪機構。」(特許請求の範囲の欄)
(甲第10号証)
(タ)「回転軸に装着した回転腕の両端にそれぞれガイドバーを介して互いに接近離反摺動する連結リンクを設け該連結リンクに爪を装着してなることを特徴とするグリップ。」(実用新案登録請求の範囲の欄)
(甲第11号証)
(チ)「ホルダー両側に1対のクランプ部材を平行に対向配設し、ホルダー中央に設けた正逆転し得る回転軸に回転レバーの中央を固着し、該回転レバー先端と1対のクランプ部材とをリンクで連結し、1対のクランプ部材が対向して平行に摺動し得る案内棒を設けてなるワークのクランプ装置。」(実用新案登録請求の範囲の欄)
(甲第12号証)
(ツ)「アクチュエータにより作動せしめられる一対のフィンガーの開閉により物品を把持するロボットハンドにおいて、直線ガイドされるフィンガーにバネ力を作用せしめて物品把持時にバネ力とアクチュエータ出力の和が出力となるようにしたことを特徴とする、ロボットハンド。」(実用新案登録請求の範囲の欄)
(甲第13号証)
(テ)「回転軸に固定されたブラケットに、リンク機構を介して溝カムに連接され、共同して開閉動作を行なう一対のワーク挟持部材を設けたワークの反転装置において、前記溝カムを前記回転軸と同心に回転自在に設けるとともに、前記溝カムを機体に固定解放自在としたことを特徴とする手動クランプ・アンクランプ手段付ワーク反転装置。」(特許請求の範囲の欄)
(甲第14号証)
(ト)「本発明はたとえばカラーブラウン管のパネル内面に蛍光面などを塗布するコーテイングマシーンにおけるパネルのチャック装置に関するものである。」(第1頁左下欄20行から右上欄3行まで)
(ナ)「従来、この種のコーテングマシーンのチャック装置は、パネルの大きさ別に専用のものを使用している。しかし、最近のように多種の大きさのパネルを生産する必要が生じてくると、専用チャックを使用していたのでは多種のコーテイングマシーンが必要になるか、専用のパネルチャックを交換して使用するかのどちらかになり、どちらをとっても作業性が悪く、またコーテイングマシーンの稼働率が低下し、大巾なコストアップの原因になっていた。」(第1頁右下欄18行から第2頁左上欄7行まで)
(甲第15号証)
(ニ)「本考案は、カラーブラウン管蛍光面製作用の蛍光体スラリー塗布機構に用いられるブラウン管パネル保持装置に関する。」(第1頁15行から第2頁2行まで)
(ヌ)「しかし、上記構成では、チャッキング用の爪を保持されるブラウン管パネルの大きさに対応させてその周辺部外側に配置しなければならず、一種類の大きさにした適用できなかった。このため大きさの異なるものに対しては、それぞれの大きさ毎に別の保持装置を設けなければならない。そして各種形状のブラウン管パネルを蛍光体塗布工程に流す場合は、大きさ毎に区分して流れをコントロールする必要があり、作業性が悪く、また塗布機の稼働率を低下させる原因の一つであった。」(第2頁11行から第3頁7行まで)
(甲第16号証)
(ネ)「本考案は、ブラウン管のパネル支持装置に係り、とくに、複数のサイズのパネルを支持するようなものに関するものである。」(第1頁15行から第2頁2行まで)
(ノ)「従来のパネル支持装置は、各サイズのパネルに対してそれぞれ専用的に作られたものであり、このため、異なるサイズのブラウン管を製造する場合には製造ライン中の多数のパネル支持装置をすべて交換する必要があり、製造ラインの変更が容易に行なえず、また、各種のサイズのパネル支持装置を用意しなければならず、さらに一つの製造ラインに各種のサイズのパネル混合して流すこともできなかった。」(第2頁9行から第3頁2行まで)
(甲第17号証)
(ハ)「本考案は、ブラウン管のパネル支持装置に係り、とくに、2種類のサイズのパネルを支持するようなものに関するものである。」(第2頁1行から3行まで)
(ヒ)「従来のパネル支持装置は、各サイズのパネルに対してそれぞれ専用的に作られたものであり、このため、異なるサイズのブラウン管を製造する場合には製造ライン中の多数のパネル支持装置をすべて交換する必要があり、製造ラインの変更が容易に行なえず、また、各種のサイズのパネル支持装置を用意しなければならず、さらに一つの製造ラインに各種のサイズのパネル混合して流すこともできなかった。」(第2頁10行から第3頁3行まで)
(2)甲第2号証に記載された考案
甲第2号証に記載された上記(ア)から(ク)までの記載からみて、甲第2号証には、下記の考案(以下、「引用考案」という)が記載されているものと認められる。
記(甲第2号証に記載された考案)
キャリア(8)の端部の一対の軸(10、10)に旋回可能に取付けたパネル支持軸(9)の下端にキャリアヘッド(11)を設け、前記キャリアヘッド(11)の一端に位置決めブロック(14)を調整可能に設け、前記キャリアヘッド(11)の他端に一対に作動アーム(18、18)をピン(20)に回動自在に軸支して設け、該位置決めブロック(14)の下端内側にパネルを挟持する一対の把持用パッド(14a、14a)を取り付け、作動アーム(18)の夫々の下端内側にパネルを挟持する把持用パッド(14a、14a)を取付けると共に、一方の作動アーム(18)の上端に摺動ロッド(22)の一端を軸支し、該摺動ロッド(22)の他端を前記キャリアヘッド(11)に突設したボス(23)の挿通孔に貫挿し、前記ロッド(22)の一端と前記ボス(23)との間に前記把持用パッド(14a、14a)を閉方向に付勢するスプリング(26)を圧縮介装したカラー受像管のパネル搬送用のキャリアヘッド。
(3)甲第6号証から甲第13号証まで及び甲第14号証から甲第17号証までに記載された事項
甲第6号証から甲第13号証までには、「産業用の把持装置の分野において、同じ構造の一対の把持腕を回動リンク機構を用いて開閉すること」が記載されている。
なお、甲第6号証から甲第13号証までは、すべて、上記事項が周知の技術であることを示す証拠として、例示的に一括して提出されたものである。
甲第14号証から甲第17号証までには、「映像管パネルの把持装置の分野において、大きさの異なる多管種のパネルを一つの機構で把持する」ことが記載されている。
なお、甲第14号証から甲第17号証までは、すべて、上記事項が周知の課題であることを示す証拠として、例示的に一括して提出されたものである。
(4)対比
本件考案と引用考案とを対比する。
引用考案の「キャリア(8)」、「軸(10、10)」、「パネル支持軸(9)」、「キャリアヘッド(11)」、「作動アーム(18)」、「ピン(20)」、「把持用パッド(14a)」、「摺動ロッド(22)」、「ボス(23)の側面」、「スプリング(26)」及び「カラー受像管のパネル搬送用のキャリアヘッド」は、それぞれ、本件考案の「パネル搬送腕」、「横軸」、「吊持軸」、「パネル保持板」、「パネル把持腕」、「横軸」、「把持具」、「作動杆」、「ばね受け板」、「コイルばね」及び「映像管パネル把持装置」に相当する。
したがって、本件考案と引用考案とは、下記1において一致するものの下記2において相違するものと認められる。
記1(一致点)
パネル搬送腕の端部の横軸に旋回可能に取付けた吊持軸の下端にパネル保持板を設け、前記パネル保持板にパネル把持腕を設け、該パネル把持腕の下端内側にパネルを挟持する把持具を取付けると共に、パネル把持腕の上端に把持具開閉作動杆の一端を軸支し、該作動杆の他端を前記パネル保持板に突設したばね受け板の挿通孔に貫挿し、前記ばね受け板との間に前記把持具を閉方向に付勢するコイルばねを圧縮介装した映像管パネル把持装置。
記2(相違点)
(a)本件考案では、「吊持軸心に関して対称にパネル保持板の両端に一対のパネル把持腕を横軸に回動自在に対向軸支し」ているのに対して、引用考案では、パネル保持板の一端に位置決めブロックを位置調整可能に取付け、パネル保持板の他端に把持腕(作動アーム)を横軸に回動自在に軸支する点。
(b)本件考案では、「作動杆の他端を吊持軸に回動自在に取付けた回動リンクの吊持軸心に関して対称の両端に軸支し」ているのに対して、引用考案では、作動杆(摺動ロッド)の他端は何物にも取付けられておらず自由である点。
(5)検討
本件考案の目的・効果
まず、本件考案は、「従来の技術において、パネルを塗布工程へ吸着搬送する際には、・・・パネルの大きさが変わっても吸着吊持できる利点はあるが、必ずしもパネルの中心が吸着される確実性に乏しく、・・・また、パネルを挟持搬送する際には、・・・パネルの外形寸法が、・・・変わった場合に、挟持間隔が固定されている従来の挟持具では挟持不可能であるため、その都度、異なった大きさの挟持具を付け換える必要があった。」(本件公告公報第2欄6行から24行まで)ところへ、「そこで、本考案は、パネル中心を回転中心に一致させて把持すると同時に、寸法の異なる多管種のパネルをも挟持できるパネル把持装置を提供することを目的とする」(本件公告公報第2欄25行から第3欄1行まで)ものであり、そして、「本考案は、多管種のパネルをパネル内面塗装時の回転軸である吊持軸と同心に把持することができるから、パネルの把持機構を飛躍的に拡大し且つ均一塗装が確実に行われるので高品質の多管種パネルを量産できる」(本件公告公報第6欄26行から30行まで)の効果を得るものである。
相違点(a)
本件考案の目的は、上記のとおり、「パネル中心を回転中心に一致させて把持すると同時に、寸法の異なる多管種のパネルをも挟持できる」であり、しかも把持動作中にそのような把持又は挟持を実現するものである。
甲第2号証には、「位置決めブロック14は・・・一定範囲にわたってその位置を調整可能に設けられ・・・目的とする位置に固定できる」(上記(ウ))、「作動レバー18はスプリング24の弾発力によって元の状態に復帰されその先端がパネルPを・・・挟持し、正確に位置決め保持する」(上記(キ))と記載されている。
しかし、この位置決めブロック14の位置調整が「パネル中心を回転中心たる吊持軸(パネル支持軸9)の軸心に一致させるための調整」であるとの記載はない。また、第4図に図示された一点鎖線が請求人が主張するように「パネル支持軸9(吊持軸)の軸心とパネルPの中心とを通る」ものであったとしても、このことからこの位置調整が「パネル中心を吊持軸(パネル支持軸9)心に一致させるための調整」であるとは一義的には言えない。
また、この位置調整が、「寸法の異なる多管種のパネルを挟持するための調整」であるとの記載はない。加えて、「位置決めブロック14は・・・長孔13a中に摺動自在に嵌合されたガイドピン15を案内にして支持腕13に対して一定範囲にわたってその位置を調整可能に設けられ、止めねじ16によって目的とする位置に固定できる」(上記(ウ))との記載からみて、長孔13aの長さの範囲内においてガイドピンを摺動させるだけであり、「位置決め」の範囲を越えるものではない。ここで、「位置決め」とは一般に「工作物の加工位置を正確に決めること」(工業研究会編「機械用語辞典」(昭和60年9月20日)第34頁参照)であるから、位置決めブロック14の位置調整はパネルを把持する際の微調整を意味するものと解され、寸法の異なる多管種に対応させることまでを意図したものとは解されない。仮に、位置決めブロック14がパネルの寸法に応じて相当の範囲にわたって調整されるものであれば、位置決めブロック14と対向する位置にあり作動アーム18を回動自在に連結する支柱19も付随して対称的に相当の範囲にわたって調整される必要があると解されるが、支柱19の位置調整については何等記載されていないことからみても、位置決めブロック14による位置調整は微調整であることが裏付けられる。さらに、甲第14号証から甲第17号証までの記載を参照し「映像管パネルの把持装置の分野において、大きさの異なる多管種のパネルを一つの機構で把持する」ことが本件出願前に周知の課題であったとしても、位置決めブロック14の位置調整が、「寸法の異なる多管種のパネルを挟持するための調整」であるとは言えないのであるから、前記請求人が主張する周知の課題が甲第2号証に記載のキャリアヘッドに存在していたとすることはできない。
しかも、この位置調整では、一度調整された位置はその後固定されたままであるため、調整に際してはその都度装置の動作を止める必要があり、把持動作中に調整をすることはできない。これは、むしろ、本件出願において問題点として指摘した従来の技術に属するものである。
さらに、「位置決めブロック14と作動アーム18」の対は、一方は固定され他方は軸支される構成であって両方の把持腕は同じ構造ではなく、一対の構成ではない。
これらより、甲第2号証には、「把持動作中に、パネル中心を回転中心に一致させて把持すると同時に、寸法の異なる多管種のパネルをも挟持できる」という本件考案の課題は存在せず、また、「両方の把持腕を同じ構造の一対の構成とする」ことも示されていない。
以上、甲第2号証には、「把持動作中に、パネル中心を回転中心に一致させて把持すると同時に、寸法の異なる多管種のパネルをも挟持できる」との本件考案の課題が存在せず、「両方の把持腕を同じ構造の一対の構成とする」ことも示されていないことから、甲第6号証から甲第13号証までの記載を参照し「産業用の把持装置の分野において、同じ構造の一対の把持腕を回動リンク機構を用いて開閉すること」ことが本件出願前に周知であったとしても、甲第2号証の「位置決めブロック14と作動アーム18」の対に上記周知とする「同じ構造の一対の把持腕」を適用してこれらを一対の構成とすることはできず、本件考案の「吊持軸心に関して対称にパネル保持板の両端に一対のパネル把持腕を横軸に回動自在に対向軸支し」に至ることはできない。
相違点(b)
本件考案の「作動杆」は、「作動杆の他端を吊持軸に回動自在に取付けた回動リンクの吊持軸心に関して対称の両端に軸支し」、一端を「パネル把持腕の夫々の上端に軸支し」ており、これにより、把持腕の駆動力が回動リンクから作動杆を介して把持腕に伝達される。すなわち、作動杆は駆動力伝達手段として機能している。
甲第2号証の「摺動ロッド22」は、その他端はボス23の挿通孔に摺動自在に嵌合され、その一端とボス23の側面との間に弾装されたスプリング24に挿通されている。そして、摺動ロッド22の他端は自由である。これらから、摺動ロッド22はボス23の挿通孔を通る摺動動作により作動アーム18の動作方向を案内すると共に、スプリング24の位置を規制する機能を有するものと理解される(上記(オ)、(キ)、図4(a))。
また、作動アーム18への駆動力は、プッシャ64の押圧によりキャリアヘッド11の外部に位置する開閉機構(駆動機構)から与えられる(上記(カ))。
これらより、摺動ロッド22には、作動アーム18の案内手段及びスプリング24の位置規制手段としての機能はあるものの、作動アーム18への駆動力を駆動機構から伝達する駆動力伝達手段としての機能はない、と言える。
以上、甲第2号証には、摺動ロッド22が作動アーム18への駆動力伝達手段としての機能することが示されていないことから、甲第6号証から甲第13号証までの記載を参照し「産業用の把持装置の分野において、同じ構造の一対の把持腕を回動リンク機構を用いて開閉すること」ことが本件出願前に周知であったとしても、甲第2号証に記載されたプッシャによる作動アーム18の駆動に上記周知とする「回動リンク機構を用いて開閉する」を適用してロッド22を駆動力伝達手段として回動リンクに軸支することことまでは導くことができず、本件考案の「作動杆の他端を吊持軸に回動自在に取付けた回動リンクの吊持軸心に関して対称の両端に軸支し」に至ることはできない。
効果
そして、本件考案は、上記のとおり明細書に記載された効果、すなわち「多管種のパネルを同時に混合して製造ラインに流すことができる」との効果を得るものである。
その他
なお、請求人は、無効理由1について(以下、無効理由2についても、同じ)、「本件考案は、リンク機構の一部をなす作動杆(8a、8b)を、開閉作動杆として機能させると共に、コイルばねの案内棒として使用するための構成(この構成は実用新案登録請求の範囲では、”前記作動杆の一端と前記ばね受け板との間に前記把持具を閉方向に付勢するコイルばねを圧縮介装した”と表現されている)に特徴がないので、あるいはないとすれば、法3条2項の規定に該当するものであり、その登録を無効にすべきである。」(平成11年12月24日付け「口頭審理陳述要領書」第4頁)と主張しているが、本件考案の要旨は上記認定したとおりであり、「作動杆がコイルばねを挿通していること」については「1.無効理由3(法第5条第4項)」で述べたとおりであるから、請求人の上記主張は採用できない。
(6)まとめ
以上から、無効理由1は採用することができない。
3.無効理由2(第3条の2)について
(1)先願明細書の記載
請求人が甲第19号証として提出した実開昭61-194940号公報を公開公報とする実用新案登録出願である「実願昭60-80219号」の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「先願明細書」という)には、以下の記載がある。
記(先願明細書の記載)
(ア)「本考案の目的は、数種類のサイズのパネルをそれぞれ支持可能で、多管種中量生産に好適なブラウン管のパネル支持装置を提供することにある。」(第3頁12行から14行まで)
(イ)「本考案によるブラウン管のパネル支持装置は、パネル面に沿って設けられるフレームと、このフレームに沿って設けられパネル外側面の短辺部および長辺部をそれぞれ挟持する各一対の挟持体と、これら各一対の挟持体と連結した回動により各一対の挟持体を前記パネル外側面にそれぞれ当接させる操作機構と、この操作機構に設けられ複数種のパネルの大きさに対応してそれぞれ位置決めされた係止部と、これら各係止部とそれぞれ係脱可能に構成されいずれかの係止部との係合により前記操作機構を前記各一対の挟持体が対応する大きさのパネル外側面に圧接するように駆動すると共にこれら各一対の挟持体を上記圧接状態に係止するロック機構とを備えており、あるサイスのパネルを保持するに当っては、まず、前記操作機構を回動操作して各一対の挟持体をパネル外側面の短辺部および長辺部に当接させ、この後、このサイズに対応する係止部に対し前記ロック機構を係合させ、各一対の挟持体をパネル外側面の短辺部および長辺部に圧接させると共に、この圧接状態を保つべく係止することにより、パネルを4方から挟圧保持するものである。」(第3頁16行から第4頁17行まで)
(ウ)「このフレーム12は軸芯13およびその外周に一体に嵌着した支持筒14を持ち、・・・4本のビーム15を一体に突設し、・・・各ビーム15の中間部に、前記軸芯13と同心を成す環状枠部16を一体に設けたものである。また、上記4本のビーム15の各先端部には長方形状の取付部17をそれぞれ一体に設ける。(第5頁3行から10行まで)
(エ)「21A、21Bは一対の挟持体で、前記パネル11の外側面の短辺部に対向して設けられる。この挟持体21A、21Bは、第2図で示すように、中間部が・・・・取付部17と対向する部分に設けられた支持部材22によって回動可能に支持された回動杆23A、23Bを有し、この回動杆23A、23Bの下端に・・・・押圧用のローラ25A、25Bを設けたものである。27A、27Bも同じく一対の挟持体で、前記パネル11の外側面の長辺部に対向して設けられる。」(第5頁13行から第6頁4行まで)
(オ)「前記軸芯13の外周には、操作機構33の主体となる第1円板34および第2円板35が回転可能に装着される。上記第1円板34は・・・外方に向かって延出する回動操作レバー36を一体に持つ。また、第2円板35は、・・・第1円板34の回動に追従動作する。」(第6頁17行から第7頁4行まで)
(カ)「第1円板34の下面の第1図で示す連結点34aと前記回動杆23Aの上端との間および同第1円板34の下面の連結点34bと前記回動杆23Bの上端との間はそれぞれ連結杆37によって連結されている。また、第2円板35の上面の第4図で示す連結点35aと前記回動杆28Aの上端との間および同第2円板35の上面の連結点35bと前記回動杆28Bの上端との間は、それぞれ第3図で示すように連結杆38によって連結されている。」(第7頁4行から13行まで)
(キ)「したがって、第1円板34および第2円板35を第1図の反時計方向に回動操作すると、各回動杆23A、23B、および28A、28Bの上端部は対応する連結杆37、38により外方に押し出され、前記押圧ローラ25A、25Bおよび30A、30Bはパネル11の対応する外側面に向って移動し、これと当接する。」(第7頁14行から20行まで)
(ク)「なお、各回動杆23A、23Bおおよび28A、28Bの上部中間部と、フレーム12側との間には、第2図および第3図で示すようにばね39が張設されており、各回動杆23A、23Bおよび28A、28Bに対し、前記ローラ25A、25Bおよび30A、30Bがパネル11の対応する外側面から離れる方向の力、すなわち第1円板34および第2円板35を第1図の時計方向に回動させる方向の力を常時与えている。」(第8頁1行から8行まで)
(ケ)「これら係止部41A?41Dは後述するロック機構により係止され、前述した各一対の挟持体21A、21Bおよび27A、27Bを各サイズのパネル外側面に圧接させ、かつこの圧接状態を維持するものである。」(第8頁13行から17行まで)
(コ)「上記操作により、パネル11はその外側面の短辺部が一対の挟持体21A、21Bにより挟圧保持され、また外側面の長辺部が一対の挟持体27A、27Bにより挟圧保持されるので、パネル11は4方向から支持装置の中央部に保持されることになる。これは、どのようなサイズのパネルでも同じであり、サイズによって保持位置がずれたりすることはなく、常に中央部に保持される。」(第12頁9行から16行まで)
(サ)「以上のように本考案によれば、一台のパネル支持装置によって複数種類のパネルを保持することができるので、ブラウン管の製造ラインの変更などに際し、パネル支持装置を交換する必要がなく、また数種類のサイズのパネル支持装置を用意する必要もなく、そのための保管スペースも不要となり、さらに一つの製造ラインに複数種類のパネルを混合して流すこともできる。」(第13頁11行から18行まで)
(2)先願明細書に記載された考案
これらの記載からみて、先願明細書には、下記の考案(以下、「先願考案」という)が記載されているものと認められる。
記(先願明細書に記載された考案)
軸芯(13)の下端に軸芯(13)と同心をなす環状枠部(16)を設け、軸芯(13)に関して対称にフレーム(12)(環状枠部(16)の両端に回動杆(23A、23B)を支持部材(22、22)によって回動可能に対向軸支し、回動杆の夫々(23A、23B)の下端内側にパネルを挟持する押圧用ローラ(25A、25A、25B、25B)を取付けると共に、回動杆の夫々(23A、23B)の上端に等長の連結杆(37、37)の一端を軸支持し、連結杆(37、37)の他端を軸芯(13)に回動自在に取付けた第1円板(35)の軸芯(13)に関して対称の両端に軸支し、回動杆の夫々(23A、23B)の上部中間部とフレーム(12)との間にローラ(25A、25A、25B、25B)を開方向に付勢するばね(39、39)を張設したパネルを挟圧保持するブラウン管のパネル支持装置。
(3)対比
本件考案と先願考案とを対比する。
先願考案の「軸芯(13)」、「フレーム(12)」、「回動杆(23)」、「ローラ(25)」、「連結杆(27)」、「第1円板(35)」、「ばね(39)」及び「パネルを挟圧保持するブラウン管のパネル保持装置」は、それぞれ、本件考案の「吊持軸」、「パネル保持板」、「パネル把持腕」、「把持具」、「把持具開閉作動杆」、「回動リンク」、「コイルばね」及び「映像管パネル把持装置」に相当する。
したがって、本件考案と先願考案とは、下記1において一致するものの下記2において相違するものと認められる。
記1(一致点)
吊持軸の下端にパネル保持板を設け、該吊持軸心に関して対称に前記パネル保持板の両端にパネル把持腕を横軸に回動自在に対向軸支し、該パネル把持腕の夫々の下端内側にパネルを挟持する把持具を取付けると共に、パネル把持腕の夫々の上端に等長の把持具開閉作動杆の一端を軸支し、該作動杆の他端を前記吊持軸に回動自在に取付けた回動リンクの吊持軸心に関して対称の両端に軸支し、前記把持具を付勢するコイルばねを介装した映像管パネル把持装置。
記2(相違点)
(a)本件考案では、吊持軸が「パネル搬送腕の端部の横軸に旋回可能に取付けた吊持軸」であるのに対して、先願明細書にはそのような記載はない点。
(b)本件考案では、「作動杆の一端とばね受け板との間に把持具を閉方向に付勢するコイルばねを圧縮介装した」のに対して、先願考案では、各把持腕(回動杆23A、23B)の上部中間部とパネル保持板(フレーム12)との間に、把持具(ローラ25A、25B)がパネルから離れる方向に常時力を与えるようにばねが張設されている点。
(4)検討
まず、相違点(b)について、請求人は、甲第18号証をも参照して、「この相違は、周知・慣用技術の付加、削除、転換等であって、かつ、新たな効果を奏するものではないので、微差である」旨主張するので、検討する。
本件考案のばねは、把持腕がパネルを挟む方向に常時付勢力を与えるもので、挟持に際してはこの付勢力により直接パネルを挟持している。これに対して、先願考案のばねは、把持腕がパネルから離れる方向に常時付勢力を与えるもので、挟持に際してはこの付勢力に抗して把持腕を閉じてパネルに当接し別途設けたロック機構によりパネルを挟持しており、この付勢力により挟持している訳ではない。すなわち、本件考案のばねの付勢力は把持腕を閉じパネルを挟持する力となるのに対して、先願考案のばねの付勢力は単に把持腕を開くためのものであり、両付勢力は単に方向が異なるというだけではなく、その作用が全く異なるものである。
このように、本件考案のばねの作用は先願考案のばねの作用とは異なるものであるから、先願発明の張設されたばねを、甲第18号証に記載されるような圧縮介装したばねで単に置き換えることはできない。したがって、相違点(b)は「周知・慣用技術の付加、削除、転換等であって、かつ、新たな効果を奏するものではない」とは言えず、結果、微差であるとは言えない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件考案は先願明細書に記載された考案と同一である、ということはできない。
(5)まとめ
以上から、無効理由2は採用することができない。

VI.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件実用新案登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決をする。
審理終結日 2000-01-26 
結審通知日 2000-02-15 
審決日 2000-03-27 
出願番号 実願昭61-15093 
審決分類 U 1 112・ 121- Y (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平塚 義三  
特許庁審判長 新宮 佳典
特許庁審判官 島田 信一
高瀬 浩一
登録日 1993-07-26 
登録番号 実用新案登録第1977187号(U1977187) 
考案の名称 映像管パネル把持装置  
代理人 丸山 幸雄  
代理人 松本 研一  
代理人 河野 登夫  
代理人 大塚 康徳  
復代理人 渡辺 広己  
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