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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60S
管理番号 1036038
審判番号 不服2000-1134  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-01-31 
確定日 2001-04-11 
事件の表示 平成8年実用新案登録願第11964号「ワイパの自動制御装置」[平成9年6月24日出願公開、実開平9-367]拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯および考案
本願は、平成2年10月15日に出願された特願平2年273501号(パリ条約による優先権主張1989年12月2日、ドイツ連邦共和国)を、平成5年法律第26号による改正前の実用新案法第8条第1項の規定により平成8年11月22日に実用新案登録出願に変更したものであって、その請求項1ないし5の考案は、平成12年2月24日付の手続補正書によって補正された明細書および図面の記載から見て、実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりの次のものと認める。
「 【請求項1】 ガラス上の湿度を検出指示するセンサを有し、該センサが所定の閾値を上回る湿度を検出指示した場合にはワイパが投入接続される、ワイパの自動制御装置において、前記ワイパはさらに手動操作可能なスイッチ(6)を介して投入接続可能であり、該スイッチ(6)の操作によって閾値が低減され、装置の投入接続後の閾値は、投入接続時点でセンサから送出された出力電圧よりもやや低い値をとることを特徴とする、ワイパの自動制御装置。
【請求項2】 前記スイッチ(6)を操作した際の閾値は、ほぼ当該時点でセンサから送出される出力電圧に低減される、請求項1記載のワイパの自動制御装置。
【請求項3】 比較的長い時間をおいて装置を投入接続した際の閾値は、最後に存在していて記憶された値をとる、請求項1又は2記載のワイパの自動制御装置。
【請求項4】 短時間内での装置の再投入接続の際の閾値は、当該時点でセンサから送出された出力電圧にほぼ同じ値をとる、請求項1?3いずれか1項記載のワイパの自動制御装置。
【請求項5】 プログラム付きのマイクロコンピュータ(5)が設けられている、前記プログラムによって規則的にセンサ(1)とスイッチ(6)が走査検出され、閾値を上回った際およびスイッチ(6)を操作した際にワイパが投入接続又は遮断され、スイッチ(6)を操作した際に実際のセンサ信号に依存して閾値が適合される請求項1?4いずれか1項記載のワイパの自動制御装置。」

2.引用刊行物とその記載事項の概要
(1)刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前である昭和61年3月4日に頒布された実願昭59-120332号(実開昭61-35069号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、次の(ア)?(ク)の事項が記載されている。
(ア)「12は降雨量を検出する雨センサであって、降雨量に応じたレベルの検出信号が出力される。」(上記マイクロフィルムの明細書第6頁第16?17行)
(イ)「14は制御装置であって、ワイパースイッチ10からの選択信号及び雨センサ12からの降雨量検出信号が夫々供給され、これらに基づき所定の演算処理を実行してワイパー駆動信号を出力する。」(上記明細書第6頁第18行?第7頁第3行)
(ウ)「この場合、制御装置14は、降雨量検出信号が低速・高速判定用閾値AH、低速・間欠作動判定用閾値AL、及び間欠作動・停止判定用閾値A1Wを越えているか否かを判定する降雨量判定手段16と、」(上記明細書第7頁第3行?7行)
(エ)「前記ワイパースイッチ10の選択モードに応じたワイパー駆動信号即ち低速モードのときに低速駆動信号を、高速モードのとき高速駆動信号を、オートモードのとき前記降雨量判定手段16の判定結果に基づき停止、高速、低速、及び間欠作動の何れかを選択して駆動信号を夫々出力するワイパー駆動制御手段20とを備えている。」(上記明細書第7頁第17行?第8頁第3行)
(オ)「10はモード選択手段としてのワイパースイッチであり、AUTOはオートモード選択位置、OFF、LO及びHiは夫々マニュアルモードを選択する停止モード選択位置、低速モード選択位置及び高速モード選択位置で、各モード選択位置に対応した選択信号が出力される。」(上記明細書第6頁第10?15行)
(カ)「停止モードから雨が降り始めた状態となって運転者がワイパースイッチ10でオートモードに切り換えると、・・・そのときの降雨量検出値VSを間欠動作・停止判定用閾値A1Wとして更新記憶し、その後・・・ワイパーモータ22を所定時間毎の間欠動作させる間欠動作処理を行って」(上記明細書第15頁第4?16行)
(キ)「オートモードでのワイピング処理中にワイパー拭払速度が運転者の感覚と合致せず、運転者がワイパースイッチ10で低速モードを選択すると、・・・そのときの降雨量検出値VSを低速・間欠動作判定用閾値ALとして更新記憶し」(上記明細書第16頁第15行?第17頁第4行)
(ク)「本考案によれば、運転者が降雨状態に応じてモード選択手段でモード切換を行ったときに、そのときの雨センサの降雨量検出値をオートモードにおける判定用閾値として使用するように構成されているので、オートモードにおける判定用閾値を運転者の感覚に対応させて設定することができ、モード切換の煩しさを解消することができる車両用オートワイパーを得ることが可能となる」(上記明細書第17頁第19行?第8頁第8行)
(2)刊行物2の記載事項
次に、本願の優先権主張の日前である昭和62年8月31日に頒布された実願昭61-26040号(実開昭62-137858号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、次の(ケ)、(コ)の事項が記載されている。
(ケ)「大気の相対湿度を電気信号に変換する湿度検出手段と、該湿度検出手段により検出した検出信号によって水滴除去手段のオン、オフを制御する制御手段とを備えたものから成っている。」(上記マイクロフィルムの明細書第3頁第15?18行)
(コ)「本実施例にあっては水滴除去手段としてワイパー装置の制御する場合について説明すると」(上記明細書第4頁第8?10行)

3.対比および判断
(1)考案の対比
以上の認定に基づいて、本願請求項1に係る考案(以下、「本願考案」という。)と、刊行物1記載の考案とを対比する。
上記(ア)?(エ)の記載から、刊行物1記載のオートワイパーは、降雨量を検出指示する雨センサ12を有し、該センサ12が、間欠作動・停止判定用閾値A1Wを上回る降雨量を検出した場合にはワイパーを間欠作動させ、低速・間欠作動判定用閾値ALを上回る降雨量を検出した場合にはワイパーを低速駆動させる、降雨量判定手段16およびワイパー駆動制御手段20を有し、また、(オ)?(キ)の記載から、ワイパーを手動操作可能なワイパースイッチ10をも有することが明らかである。
そして、刊行物1記載の考案の「雨センサ12」は、本願考案における「ガラス上の湿度を検出指示するセンサ」と同様に、オートワイパーの駆動制御を行うための車両外部の環境条件である降雨状態を検出するものである。また、刊行物1記載の「降雨量判定手段16」および「ワイパー駆動制御手段20」は、上記雨センサ12と共に、ワイパーを停止、高速、低速、及び間欠作動させる自動制御装置であるから、ワイパーの「自動制御装置」を構成するものに他ならないし、同様に「ワイパースイッチ10」は、上記で認定したようにワイパーの手動操作を可能とするから、本願考案の「スイッチ(6)」に相当し、「間欠動作・停止判定用閾値A1W」は、当該閾値A1Wを上回る降雨量が検出指示された場合にワイパーが投入接続されることになるのだから、本願考案でいう「閾値」に相当する。
以上から、本願考案と刊行物1記載の考案との一致点と相違点は次のとおりである。
<一致点> 降雨状態を検出するセンサを有し、該センサが所定の閾値を上回る値を検出指示した場合にはワイパが投入接続される、ワイパの自動制御装置において、
前記ワイパはさらに手動操作可能なスイッチを介して投入接続可能であるワイパの自動制御装置である点。
<相違点1> 降雨状態の検出手段と判定条件に関して、本願考案では「ガラス上の湿度を検出するセンサ」を用いて、湿度に基づく制御をするのに対し、刊行物1記載の考案では、降雨量を検出する雨センサを用いて、降雨量に基づく制御を行う点。
<相違点2> 本願考案では、「スイッチの操作によって閾値が低減され」るとしているのに対して、刊行物1記載の考案には、このような閾値の低減について明確な言及がない点。
<相違点3> 装置の投入接続後の閾値に関して、本願考案では、「投入接続時点でセンサから送出された出力電圧よりもやや低い値をとる」としているのに対して、刊行物1記載の考案では、このことについて言及がない点。
(2)相違点の検討
そこで、上記相違点1について検討すると、上記(ケ)、(コ)の記載からみて、ワイパーを制御するための降雨状態を検出するセンサとして湿度センサを用い、湿度に基づく制御を行うことは、従来から公知の技術的手段であるし、制御対象がワイパーであることを考慮すれば、ワイパーが設置されている最も直近であるガラス付近での環境条件を検出しようとすることは、当業者であればごく自然に想到される程度の事項である。
したがって、ワイパーを制御するためのセンサとして、雨センサに代えてガラス上の湿度を検出するセンサを用い、湿度に基づく制御を行うようにする点に、格別の困難性はない。
次に、相違点2について検討すると、刊行物1記載のオートワイパーは、上記(ク)にあるように、「判定用閾値を運転者の感覚に対応させて設定することができ」るものである。これに対して、本願明細書の記載(【0001】?【0005】)によれば、本願考案において、スイッチの手動操作によって閾値を低減していることの主要な技術課題は、判定用閾値を、ドライバが感じる可視条件に対応させることであるから、本願考案の上記技術課題は、刊行物1にも開示されていることが明らかである。また、刊行物1には、オートモード選択中のワイパ停止時におけるワイパスイッチの手動操作によって、間欠作動・停止判定用閾値A1Wを下げることについての明確な言及こそないものの、「オートモードでのワイピング処理中にワイパー拭払速度が運転者の感覚と合致せず、運転者がワイパースイッチ10で低速モードを選択」したときに、「低速・間欠動作判定用閾値AL」を下げる旨の記載がある(上記(キ)参照)。そして、刊行物1記載のオートワイパーでは、ワイパーの速度は、降雨量の増加に応じて、間欠、低速、高速の順に作動するものとされており、低速作動以前には、間欠作動されることが望ましいことは、当然である。
そうすると、刊行物1における上記技術課題の開示と、「低速・間欠動作判定用閾値AL」を下げる旨の記載とは、オートモードでのワイピング停止中に、当該停止が「運転者の感覚と合致せず、運転者がワイパースイッチ10で低速モードを選択」したときには、低速・間欠動作判定用閾値ALを下げると同時に、間欠作動・停止判定用閾値A1Wを下げるようにすること、あるいは少なくともその必要性を示唆しているといえる。
したがって、刊行物1の考案において、スイッチの操作によって閾値が低減されるように構成することは、当業者がきわめて容易に考案することができたものである。
最後に、相違点3について検討すると、ワイパ装置は、フロントガラスを通した視界を確保し、運転の安全を担保する目的で設けられるものである。そして、このような安全確保のための自動制御における判断のための閾値は、通常、確実に作動や停止が行われるように、余裕を持った値に設定することが技術常識といえる。このような技術常識と、上記相違点2についての検討で指摘した技術課題とに鑑みれば、装置の投入接続後の閾値を、投入接続時点でセンサから送出された出力電圧よりもやや低い値をとるように構成することは、当業者がきわめて容易に想到しうる程度の設計事項といえる。

4.請求項2?5の考案について
請求項2の考案で規定している事項は、上記(カ)、(キ)のとおり、実質上、刊行物1に開示されているし、また、請求項3、4で規定している事項は、刊行物1の明細書第14頁第4?8行に「高速・低速判定用閾値・・・は不揮発性メモリ内に記憶するようにして・・・保持される」という記載により開示されている。更に、請求項5は、刊行物1の明細書第8頁第15行?第17頁第12行に説明されている各制御ステップと同様の事項を規定しようとするものである。
したがって、請求項2?5の考案も、本願考案と同様に、上記刊行物1および2記載の考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものといえる。

5.むすび
以上のとおり、本願請求項1?5の各考案は、いずれも上記刊行物1および2記載の考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-11-07 
結審通知日 2000-11-14 
審決日 2000-11-29 
出願番号 実願平8-11964 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (B60S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大橋 康史水野 治彦  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 鈴木 法明
刈間 宏信
考案の名称 ワイパの自動制御装置  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 ラインハルト・アインゼル  
代理人 山崎 利臣  
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