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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F25B
管理番号 1036043
審判番号 審判1999-8753  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-05-20 
確定日 2001-03-21 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 56000号「吸収式冷凍装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 4月21日出願公開、実開平 7- 22371]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本件出願の考案
本件出願は、平成5年9月21日の実用新案登録出願であって、その請求項1に係る考案(以下、「請求項1に係る考案」という。)は、平成10年5月20日付け、平成11年6月21日付け、及び平成12年11月6日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 蒸発器と、この蒸発器で発生した冷媒蒸気を吸収した希溶液を加熱濃縮する再熱器とを備える吸収式冷凍装置において、互いに独立して構成される上部ヘッダおよび下部ヘッダと、火炎を含む燃焼ガスをほぼ水平方向に噴射するバーナと、前記両ヘッダ間に連結され前記火炎を含む燃焼ガスと交叉するように、かつ前記火炎を含む燃焼ガスのガス通路のほぼ全域に配置密度を密にして配置される多数のほぼ垂直な溶液管からなる溶液管群とを有する再熱器を具備し、前記溶液管群は、伝熱面密度の異なった溶液管群が、前記火炎を含む燃焼ガスの流通方向の上流側から下流側へ向けて、伝熱面密度の小なるものから大なるものの順に配置されており、少なくとも上流側の溶液管群が燃焼火炎部に配置されていることを特徴とする吸収式冷凍装置。」

2.引用刊行物記載の考案
これに対して、当審において平成12年8月29日付けで通知した拒絶理由に引用した、本件出願前に頒布された刊行物、
刊行物1:特開昭58-104476号公報
刊行物2:実願昭63-107336号(実開平2-28902号)のマ イクロフィルム
刊行物3:特開平5-93657号公報
には、次の事項が記載されている。
イ.刊行物1
刊行物1第2ページ左上欄7?13行には、「本発明は浸管型直焚高温再生器に係り、特に吸収冷凍サイクルに使用される浸管型直焚高温再生器(以下、再生器と称す)に関する。
この種の再生器は、吸収冷凍サイクルの蒸発器で発生した冷媒蒸気を吸収した希リチウムブロマイド(以下LiBrと称す)溶液を加熱濃縮し、濃縮LiBr液と冷媒蒸気を得るためのものである。」と記載されている。
刊行物1第2ページ左上欄16?18行には「16はバーナ、18,20は燃焼室14内にほぼ垂直に配置された溶液管、」と記載されている。
刊行物1第2ページ左上欄20行?右上欄7行には「また、溶液管20は溶液管18よりもガス流下方向下流側に配置されたものであり、この溶液管20には伝熱用のフイン21が設けられている。
バーナ16でガス、灯油等を燃焼して得られた高温燃焼ガス26は、炉筒12内を水平に直進し、平滑溶液管18とフイン付溶液管20の周りを流過して熱交換した後、煙突24より排出される。」と記載されている。
刊行物1第2ページ右上欄10?18行には「このような構造の再生器は、直焚式であるため小型コンパクトであるという長所を有するが、反面、高温の燃焼ガスを直接再生器内へ送るため、均一な加熱がむずかしく、温度の局部的な上昇を生じやすいという欠点がある。この温度の局部的な上昇は、次のような理由から、吸収液として腐食作用が大であるLiBr液を使用する吸収式冷凍サイクルの再生器にとつては非常に重要な問題である。」と記載されている。
刊行物1の第1,2,5,7,8図には「燃焼室14」、「バーナ16」及び「高温燃焼ガス26」が記載されている。

ロ.刊行物2
刊行物2の明細書第1ページ18行?第2ページ13行には「一般に小型の多管式貫流ボイラーは、円筒形の缶体構造をベースとして製作されている。これは、水管を環状に配置し、その内部を燃焼室とするのが燃焼ガスとの熱交換効率を良くするために望ましいと考えられていることによる。
しかし、このような缶体構造とすると、ボイラーの設置場所や配置状態によっては比較的大きなスペースを占有することになり易いため、近年では所謂角型缶体構造をベースとした種々の多管式貫流ボイラーが提案されている。
尚、ここでの角型缶体構造とは、多数の水管を直列に配置してなる水管列を対向配置して,その間に燃焼室を形成したものをいい、バーナ燃焼ガスは、この水管列の間を交叉方向に通過するようになっている。」と記載されている。
刊行物2の明細書第5ページ10行?第7ページ1行には「それらの図面において、(1)は水管壁、(2),(3),(4)は水管壁(1),(1)間に2列に配列した水管群、(5)はバーナを示す。
上記の水管壁(1)は、略直管状の水管,(1a)を等間隔で1列に整列配置して成るもので、各水管(1a)同志をフィン状部材(6)で連結することにより、水管(1a)同志の間隔を塞いだ状態とし、これを図示する実施例では、缶体の両側に、両者が互いに略平行をなすように配置してある。
各水管群(2),(3),(4)は、2列状態で、所定本数ずつ略等間隔で配列してあり、その各々を構成する水管(2a),(3a),(4a)は夫々直管、ヒレ付水管、エロフィン管としている。
バーナ(5)としては、例えば表面燃焼バーナ等の予混合バーナを用いることができるが、このようなバーナは、水管群(2)の水管壁(1)端部間(図中上方)に配置する。従って、バーナ(5)からの燃焼ガスは、水管壁(1),(1)間を図中上方から下方に向けて流れることになり、これに関連して上記の水管群(2),(3),(4)は、この流れ方向に沿って伝熱面密度(燃焼ガスの単位流路長さ当たりの伝熱面面積)の小さいものから大きいものへと配列された状態としてある。
尚、第2図において参照番号(10),(11)は、夫々、上記の各水管(1a),(2a),(3a),(4a)の上端、並びに下端を連結する上下のヘッダを示す。この上下の各ヘッダ(10),(11)は、夫々缶体の長手方向に対して左右に独立した構成となっており、これら上部並びに下部同志のものを外部配管等によって連結することにより、一体化してある。
以上のような構成の角型多管式貫流ボイラーによれば、」と記載されている。
刊行物2の明細書第7ページ9行?第8ページ17行には「この考案に係る缶体によれば、下流側ほど伝熱面密度を高めてあるため、各水管(1a),(2a),(3a),(4a)における伝熱量は、上流側の水管(2a)から下流側の水管(4a)にかけても低下することなく、全体的に略均一となる。
更に、図示するような缶体構造とすることにより、燃焼ガスの流通経路を直線状に比較的長く設定でき、バーナ(5)からの燃焼ガスが水管群(4)の最後尾の水管(4a)を通過するまでに要する時間を比較的長く設定できる。即ち、このような缶体構造では、燃焼ガスがボイラー缶体内に停留する時間を比較的長くすることができるようになり、燃焼ガスは、前述したように、この流通経路において各水管(1a),(2a),(3a),(4a)に伝熱を行って温度が徐々に低下する。この結果、前述したような構造の缶体で、燃焼面負荷が600?1200×10^(4)kcal/m^(2)h のバーナを用いた場合、図中A点で約1200℃,B点で約550℃,C点で約370℃という結果が得られている。
従って、この考案の缶体においては、上流側の伝熱面密度の小なる水管群においても、燃焼ガス温度が低くおさえられ、下流側の外密度の大なる水管群においては、徐々に低下していくため、NOx特にthermal NOxの発生が防止でき、しかも上流側においても燃焼ガス温度が1200℃程度であるため、COが発生していても上流側でCO_(2)に酸化されてしまい、以下下流側では徐々に温度が下がるため、CO_(2)が再び分離してCOとなるのも防止できる。」と記載されている。
刊行物2の明細書第10ページ6?17行には「以上説明をしたように、この考案に係る角型多管式貫流ボイラーは、燃焼ガス流通方向の上流側から下流側に向けて、順次伝熱面密度を増加させた水管群を配列したことにより、燃焼ガスからの熱伝達を上流側から下流側まで略均一化させることができて、局所的な熱伝達効率の低下を防止できる。このため、ボイラー自体の効率の向上が図れ、ランニングコストの低減も可能となる。
又、この考案のボイラーでは、燃焼ガスが比較的均一に温度低下しながら通過し、その温度を低くおさえられるため、NOxやCO等の有害排気物の発生がほとんどなく公害対策上も有利である。」と記載されている。
刊行物2明細書第10ページ18行?第11ページ2行には「更に、この考察のボイラーは、横幅の縮小が容易に行えるから同一効率で比較した場合の全体の大きさを縮小し、設置スペースの削減を可能にし、同一スぺースでも多くのボイラーが設置できるため、」と記載されている。

ハ.刊行物3
刊行物3第2欄1?23行には「燃焼バーナの燃焼面の近くに水管が位置していて燃焼室がほとんど存在しない構成となっている。この結果燃焼ガスは、水管群空間で燃焼反応と伝熱作用が同時に進行すると云う新しい燃焼伝熱方式となっている。したがって、このような新しい燃焼伝熱方式に適合する温度検出器の取付構造の開発が望まれている。とくに、この新しい燃焼伝熱方式においては、水管群空間で燃焼反応と伝熱作用が同時に進行することになるから、測温センサの取付位置によっては、高温の燃焼火炎の影響を受け易く、燃焼火炎の温度が空気比の変化により変化し、これにより検出温度が変化してしまい、水管温度を正確に検出できないと云う問題点がある。
【0004】
【発明が解決するための課題】この発明は、前記の点に鑑み、角型多管式貫流ボイラにおける新しい燃焼伝熱方式においては、燃焼バーナの近くに位置している水管の過熱状態が著しく、最も過熱され易いと云う知見に基づいており、新しい燃焼伝熱方式に適合する温度検出器の取付構造を提供することにより、水管の過熱防止,温度制御あるいは水管内のスケール付着の検出等を確実に行い、角型多管式貫流ボイラの安全で,かつ効率的な運転を目指したものである。」と記載されている。
刊行物3第3欄15?19行には「【0008】図面において、角型多管式貫流ボイラの基本的形状を形成する缶体1は、ほぼ垂直な水管2A,2A,・・・,2B,2B,・・・,2C,2C,・・・,2D,2D,・・・および2E,2E,・・・から構成されている。」と記載されている。
刊行物3第3欄31?37行には「これにより未燃焼および燃焼済みのガスは、基本的には各水管2A?2Eと直交する方向に一方向(図2で左から右方向)に流通するよう構成されている。なお、前記一側開口部6と他側開口部7とは、両水管壁4,5と上部ヘッダ10,下部ヘッダ11で形成される缶体1の左右の開口部を云い、」と記載されている。
刊行物3第3欄39?48行には「【0009】前記水管2A?2Eは、互いに隣り合う水管群の水管に対し千鳥状に配列されており、それらの各間隔は、水管の直径とほぼ等しいかそれ以下に設定してある。
【0010】前記構成における角形缶体1は、燃焼バーナー8の前面にほとんど燃焼室が形成されておらず、すなわち燃焼バーナーの燃焼面の近くに水管が位置しており、1次空気と燃焼ガスとの混合気を水管群間で低温燃焼させ、窒素酸化物の発生量を押さえる構造となっている。」と記載されている。
刊行物3第5欄10?16行には「【0017】前記実施例においては、燃焼バーナ8の燃焼ガス流は、図4に示すごとく、中段部ではほぼ水平方向に流れ、また上下両側では上下に盛り上がり、各水管群2A?2Eとそれぞれ交叉した状態で流れる。そして、燃焼ガスは、各水管群2A?2Eの空間で燃焼反応と伝熱作用が同時に進行しながら流れるので、燃焼ガスには燃焼火炎を含むことになる。」と記載されている。

3.請求項1に係る考案と引用刊行物記載の考案との対比・判断
《対比》
請求項1に係る考案を、上記刊行物1に記載された考案と対比すると、
刊行物1に記載された「再生器」、「希リチウムブロマイド溶液」および「吸収冷凍サイクル」は、請求項1に係る考案における「再熱器」、「希溶液」、「吸収式冷凍装置」にそれぞれ相当すると認められる。
請求項1には、「火炎を含む燃焼ガスをほぼ水平方向に噴射するバーナ」と記載されている。これに対して刊行物1第2ページ右上欄4?7行には「バーナ16でガス、灯油等を燃焼して得られた高温燃焼ガス26は、炉筒12内を水平に直進し、平滑溶液管18とフイン付溶液管20の周りを流過して熱交換した後、煙突24より排出される。」と記載されている。刊行物1のこの記載中には必ずしも、「火炎を含む」と明記されているわけではないが、バーナから火炎がでることは周知かつ当然の事項であり、自明の事項にすぎない。(バーナから火炎がでることが周知であることについて、もし必要であれば、
特開昭56-46960号公報(火炎21)
特開昭58-150780号公報(火炎2)
特開昭58-203370号公報(火炎12)
特開平1-118081号公報(第3ページ左下欄18行「火炎」)
特開平3-39874号公報(火炎11)
特開平4-136665号公報(第3ページ右下欄11行「バーナの炎」
等を参照。)
したがって、刊行物1に記載された「高温燃焼ガス26」は、請求項1に係る考案における「(バーナが噴射する)火炎を含む燃焼ガス」に相当すると認められる。
《一致点》
そこで、両考案は、
「蒸発器と、この蒸発器で発生した冷媒蒸気を吸収した希溶液を加熱濃縮する再熱器とを備える吸収式冷凍装置において、火炎を含む燃焼ガスをほぼ水平方向に噴射するバーナと、前記両ヘッダ間に連結され前記燃焼ガスと交叉するように、配置される多数のほぼ垂直な溶液管からなる溶液管群とを有する再熱器を具備していることを特徴とする吸収式冷凍装置。」
で一致する。

《相違点》
そして、両考案は、次のイ、ロの2点で相違する。
イ.請求項1に係る考案では「互いに独立して構成される上部ヘッダおよび下部ヘッダと、を具備し、前記溶液管群は、伝熱面密度の異なった溶液管群が、前記火炎を含む燃焼ガスの流通方向の上流側から下流側へ向けて、伝熱面密度の小なるものから大なるものの順に配置されており、」とされているが、刊行物1には、このようなヘッダや溶液管の配置が明記されていない点。
ロ.請求項1に係る考案では「(溶液管群は、)前記火炎を含む燃焼ガスと交叉するように、かつ前記火炎を含む燃焼ガスのガス通路のほぼ全域に配置密度を密にして配置され、少なくとも上流側の溶液管群が燃焼火炎部に配置されている」とされているが、刊行物1には、このような火炎と関連した溶液管群の配置が記載されていない点。

《相違点ロ.についての検討》
まず、相違点ロ.について検討すると、相違点ロ.中で掲げられた、請求項1に係る考案の構成の内の、「前記火炎を含む燃焼ガスと交叉するように(配置される多数のほぼ垂直な溶液管からなる溶液管群)」に対応して、刊行物3第5欄10?16行には、「燃焼バーナ8の燃焼ガス流は、・・・(中略)・・・各水管群2A?2Eとそれぞれ交叉した状態で流れる。そして、燃焼ガスは、各水管群2A?2Eの空間で燃焼反応と伝熱作用が同時に進行しながら流れるので、燃焼ガスには燃焼火炎を含むことになる。」と、同様な内容が記載されている。
更に、相違点ロ.中で掲げられた、請求項1に係る考案の構成の内の「前記火炎を含む燃焼ガスの通路のほぼ全域に配置密度を密にして配置され、」に対応して、刊行物3第3欄39?42行には、「水管2A?2Eは、・・・(中略)・・・それらの各間隔は、水管の直径とほぼ等しいかそれ以下に設定してある。」と、同様な内容が記載されている。
また、相違点ロ.中で掲げられた、請求項1に係る考案の構成の内の「少なくとも上流側の溶液管群が燃焼火炎部に配置されている」に対応して、刊行物3第3欄43?47行には、「角形缶体1は、燃焼バーナー8の前面にほとんど燃焼室が形成されておらず、すなわち燃焼バーナーの燃焼面の近くに水管が位置しており、1次空気と燃焼ガスとの混合気を水管群間で低温燃焼させ、」と、同様な内容が記載されている。

《刊行物1に記載された考案に、相違点ロ.に関連した刊行物3の記載事項 を組み合わせることの容易性ついての検討》
上記の《相違点ロ.についての検討》の項で引用した、刊行物3の記載事項である、
a.「燃焼バーナ8の燃焼ガス流は、・・・(中略)・・・各水管群2A?2Eとそれぞれ交叉した状態で流れる。そして、燃焼ガスは、各水管群2A?2Eの空間で燃焼反応と伝熱作用が同時に進行しながら流れるので、燃焼ガスには燃焼火炎を含むことになる。」
b.「水管2A?2Eは、・・・(中略)・・・それらの各間隔は、水管の直径とほぼ等しいかそれ以下に設定してある。」
c.「角形缶体1は、燃焼バーナー8の前面にほとんど燃焼室が形成されておらず、すなわち燃焼バーナーの燃焼面の近くに水管が位置しており、1次空気と燃焼ガスとの混合気を水管群間で低温燃焼させ、」
により、刊行物3に記載された考案では、「1次空気と燃焼ガスとの混合気を水管群間で低温燃焼させ、」、これにより、「窒素酸化物の発生量を押さえる」(刊行物3第3欄47,48行参照。)という効果を達成している。
これに対し、刊行物1には、「窒素酸化物の発生量を押さえる」といった考案の課題は記載されていない。しかし、刊行物1に記載された考案がその対象としている「吸収冷凍サイクルに使用される再生器」の分野で、このような考案の課題が存在していることは、周知の事項にすぎない。もし、必要であれば、
特開昭52-81742号公報(第2ページ左上欄4?10行)
特開平2-13763号公報(第3ページ左上欄15?20行)
特開平4-190007号公報(第2ページ左上欄15?17行)
等を参照。
ところで、刊行物1に記載された考案は「吸収冷凍サイクルに使用される再生器」を対象としているが、刊行物3に記載された考案は「ボイラ」を対象としており、技術分野は異なっている。しかし、両考案は、“バーナにより溶液管や水管を加熱し蒸気を発生する装置”を考案の対象としている点では一致しており、しかも、上記のように、「窒素酸化物の発生量を押さえる」という共通の課題を有している。
このように、技術分野が類似であり、課題の共通性がある以上、刊行物3に記載された、上記a?cの、課題解決のための手段を、刊行物1に記載された考案に組み合わせることは、きわめて容易であると言わざるを得ない。

《相違点イ.についての検討》
次に、相違点イ.について検討すると、相違点イ.中で掲げられた、請求項1に係る考案の構成の内の、「互いに独立して構成される上部ヘッダおよび下部ヘッダ」に対応して、刊行物2の明細書第6ページ13?15行には「第2図において参照番号(10),(11)は、夫々、上記の各水管(1a),(2a),(3a),(4a)の上端、並びに下端を連結する上下のヘッダを示す。」と記載されている。そして、ここに示されている上下のヘッダ(10),(11)が互いに独立して構成されることは必ずしも刊行物2には明記されていない。しかし、これらヘッダ(10),(11)が互いに独立しているものであることは、同刊行物の図面(特に第2図)の記載を参照すれば自明の事項であると認められる。
また、相違点イ.中で掲げられた、請求項1に係る考案の構成の内の、「前記溶液管群は、伝熱面密度の異なった溶液管群が、前記火炎を含む燃焼ガスの流通方向の上流側から下流側へ向けて、伝熱面密度の小なるものから大なるものの順に配置されており、」について検討すると、この構成中の「前記火炎を含む」は、既に、上述の《相違点ロ.についての検討》の項で検討したように、きわめて容易に行うことができる事項にすぎない。そして、この構成中の他の部分に対しては、刊行物2の明細書第6ページ8行?12行に「水管群(2),(3),(4)は、この流れ方向に沿って伝熱面密度(燃焼ガスの単位流路長さ当たりの伝熱面面積)の小さいものから大きいものへと配列された状態としてある。」と同様な内容が記載されている。

《刊行物1に記載された考案に、相違点イ.に関連した刊行物2の記載事項 を組み合わせることの容易性ついての検討》
上記の《相違点イ.についての検討》の項で引用した、刊行物2の記載事項は次のd,eである、
d.「第2図において参照番号(10),(11)は、夫々、上記の各水管(1a),(2a),(3a),(4a)の上端、並びに下端を連結する上下のヘッダを示す。」
e.「水管群(2),(3),(4)は、この流れ方向に沿って伝熱面密度(燃焼ガスの単位流路長さ当たりの伝熱面面積)の小さいものから大きいものへと配列された状態としてある。」
まず、この記載事項d.の組合わせの容易性について検討すると、刊行物2の明細書第2ページ4?13行には「しかし、このような缶体構造とすると、ボイラーの設置場所や配置状態によっては比較的大きなスペースを占有することになり易いため、近年では所謂角型缶体構造をベースとした種々の多管式貫流ボイラーが提案されている。
尚、ここでの角型缶体構造とは、多数の水管を直列に配置してなる水管列を対向配置して,その間に燃焼室を形成したものをいい、バーナ燃焼ガスは、この水管列の間を交叉方向に通過するようになっている。」と、同刊行物の明細書第6ページ13?19行には「尚、第2図において参照番号(10),(11)は、夫々、上記の各水管(1a),(2a),(3a),(4a)の上端、並びに下端を連結する上下のヘッダを示す。この上下の各ヘッダ(10),(11)は、夫々缶体の長手方向に対して左右に独立した構成となっており、これら上部並びに下部同志のものを外部配管等によって連結することにより、一体化してある。」とそれぞれ記載されている。また、同刊行物の明細書第10ページ18行?第11ページ2行には「更に、この考察のボイラーは、横幅の縮小が容易に行えるから同一効率で比較した場合の全体の大きさを縮小し、設置スペースの削減を可能にし、同一スペースでも多くのボイラーが設置できるため、」と記載されている。
このように、刊行物2に記載された考案では、“設置スペースを削減するために角型缶体構造を採用し、すなわち、各水管の上端、並びに下端を連結する上下のヘッダ等からなる缶体構造により、横幅を縮小し、全体の大きさを小さくして、設置スペースの削減を可能にし、”ており、他方、刊行物1に記載された考案では、「このような構造の再生器は、直焚式であるため小型コンパクトであるという長所を有するが、」(刊行物1第2ページ右上欄10,11行)と、(吸収式冷凍サイクルの)再生器においても小型化は有用であるとされている。
したがって、上記、(刊行物2の)記載事項d.のような小型化のための構成を、刊行物1に記載された考案に組合わせることはきわめて容易である。
次に、記載事項e.の組合わせ容易性について検討すると、刊行物2の明細書には、第8ページ1?3行に「燃焼ガスは、前述したように、この流通経路において各水管(1a),(2a),(3a),(4a)に伝熱を行って温度が徐々に低下する。」と、同ページ8?12行には「従って、この考案の缶体においては、上流側の伝熱面密度の小なる水管群においても、燃焼ガス温度が低くおさえられ、下流側の外密度の大なる水管群においては、徐々に低下していくため、NOx特にthermal NOxの発生が防止でき、」と記載されている。
これに対し、刊行物1には、「NOxの発生防止」といった考案の課題は記載されていない。しかし、刊行物1に記載された考案の「吸収冷凍サイクルに使用される再生器」の技術分野に、このような考案の課題が存在することは、周知の事項にすぎない。もし、必要であれば、
特開昭52-81742号公報(第2ページ左上欄4?10行)
特開平2-13763号公報(第3ページ左上欄15?20行)
特開平4-190007号公報(第2ページ左上欄15?17行)
等を参照。
このように、刊行物1に記載された考案は「吸収冷凍サイクルに使用される再生器」の技術分野を対象としており、刊行物2に記載された考案は「ボイラ」の技術分野を対象としていて、技術分野は異なっている。しかし、両考案は、“バーナにより溶液管や水管を加熱し蒸気を発生する装置”を考案の対象としている点では一致しており、かつ、上記のように、「NOxの発生防止」という共通の課題を有している。
したがって、技術分野が類似であり、課題の共通性がある以上、刊行物3に記載された上記のe.の事項を、刊行物1に記載された考案に組み合わせて、課題の解決を計ることは、きわめて容易であると言わざるを得ない。
そして、本願考案によってもたらされる効果は、上記刊行物1?3に記載された事項から、当業者がきわめて容易に予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。

4.むすび
以上のとおりであるから、請求項1に係る考案は、刊行物1ないし刊行物3に記載された考案に基づき、上記の周知技術を参照することにより当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-12-26 
結審通知日 2001-01-16 
審決日 2001-01-30 
出願番号 実願平5-56000 
審決分類 U 1 8・ 121- WZ (F25B)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 鈴木 敏史  
特許庁審判長 大久保 好二
特許庁審判官 会田 博行
岡田 弘規
考案の名称 吸収式冷凍装置  

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