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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D
管理番号 1036059
審判番号 審判1999-17618  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-11-02 
確定日 2001-04-20 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 60642号「杭打ち具」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 5月12日出願公開、実開平 7- 25036]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯
本願は、平成5年10月15日の出願であって、原審において拒絶の査定がなされたところ、平成11年11月2日付けで審判請求がなされ、その審判請求の日のあとの平成11年12月1日付けで手続補正書が提出されたものである。
2.本願の請求項に係る考案
本願の請求項に係る考案は、前記平成11年12月1日付けの手続補正書で補正された明細書、及び出願当初の図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1?請求項5(全請求項)に記載されたとおりの「杭打ち具」にあると認められるところ、その請求項1、請求項3、及び請求項4に記載された考案は次のとおりのものである。
【請求項1】 上下に長い直管状のガス管等の鋼管製のハンマー筒1の外面に固定した少なくとも一対の鋼管製のハンドル棒2と平坦な打撃面10を有し、ハンマー筒1の上端開口を塞ぐストライカー3とを備えている杭打ち具。
【請求項3】 補助ウエイト15がハンマー筒1ないしはストライカー3の外面に、着脱可能に装着してある請求項1、または(「また」とあるのは、誤記と認められる。)2記載の杭打ち具。
【請求項4】 ハンドル棒2が、ハンマー筒1の筒軸中心と平行に設けられた主枠部4と、主枠部4の上下端に連続して折り曲げられた腕部5、6とで、上下に長いコ字形に形成されており、上下の腕部5、6の突端がハンマー筒1に溶接してある請求項1、2、または3記載の杭打ち具。
3.引用例
原査定の拒絶の理由において引用された実願昭50-24857号(実開昭51-105207号)のマイクロフイルム(以下、「引用例1」という。)には、杭打兼根本打固め具に関して、
「左右に握手1を装備する適当長さの鉄パイプAの上口周縁に螺溝2を穿設し、これにキャップ3を螺合して杭打具とし、・・・」(実用新案登録請求の範囲)と記載され、
「従来の杭打作業には杭を支持する人と槌で打込む人と計二人を要していたが本案は一人で杭打ができる工具を提供せんとする目的である。」(明細書1頁10?12行)と記載され、
「本案は上記のように構成してあるから杭4の上部にキャップ3付鉄パイプを嵌合した後握手1を左右の手で握って上下することにより鉄パイプAを支持しながらその重量と人力により容易に杭打ができる。」(明細書1頁18行?2頁2行)と記載され、
「本案のものは一人で杭打ができるから人手を省くし、ハンマー使用のように杭の上端を損傷することがない等・・・」(明細書2頁5?7行)と記載されている。
これら記載を含む明細書及び図面の記載からみて、引用例1には次の(a)及び(b)のような考案が記載されているものと認められる。
(a) 上下に長い直管状の鉄パイプA製のハンマー筒の外面に固定した一対の握手1と平坦な打撃面を有し、鉄パイプAの上端開口を塞ぐキャップ3とを備えている杭打具。
(b) 前記(a)に記載の杭打具において、握手1が、ハンマー筒の筒軸中心と平行に設けられた主枠部と、主枠部の上下端に連続して折り曲げられた腕部とで、上下に長いコ字形に形成されており、上下の腕部の突端がハンマー筒に取付けてある杭打具。
同じく引用された実願昭46-30222号(実開昭47-27506号)のマイクロフイルム(以下、「引用例2」という。)には、手動杭打込機に関して、
「筒管1に上下の鍔2,3を対面する如く熔着し、筒管1の外周対面に、のぞき窓9,10、を対設し、杭の挿入口を下鍔3に開口4し、2,3,鍔間に手動用握り把手7,8、を対向的に装着して成る手動杭打込機。」(実用新案登録請求の範囲)と記載され、
「鍔中央上面には重量加減用5を架載するための締付ボールト6を設けて打撃の安定をなさしめる。」(明細書2頁1?3行)と記載されている。
4.引用例との対比、判断
(1)請求項1に係る考案について
本願の請求項1に係る考案(以下、「本願考案1」という。)と、引用例1に記載の前記(a)の考案とを対比すると、引用例1の(a)の考案の「握手1」、「キャップ3」、及び「杭打具」は、それぞれその機能からみて、本願考案1の「ハンドル棒2」、「ストライカー3」、及び「杭打ち具」に相当し、引用例1の(a)の考案の「鉄パイプA」と、本願考案1の「ガス管等の鋼管」とは、金属製のハンマー筒という点で共通するから、両考案は、
「上下に長い直管状の金属製のハンマー筒1の外面に固定した一対のハンドル棒2と平坦な打撃面10を有し、ハンマー筒1の上端開口を塞ぐストライカー3とを備えている杭打ち具。」
の点で構成が一致しており、次の(イ)及び(ロ)の点で相違しているものと認められる。
(イ)金属製のハンマー筒が、本願考案1では、ガス管等の鋼管製からなるのに対して、引用例1の(a)の考案では、鉄パイプからなる点。
(ロ)ハンドル棒2(引用例1の(a)の考案では、握手1。)が、本願考案1では、鋼管製であるのに対して、引用例1の(a)の考案では、握手1の材質については明記されていない点。
そこで、これら相違点を検討する。
(イ)の点について
引用例1の(a)の考案の杭打具と、本願考案1の杭打ち具とは共に、杭打具(杭打ち具)を繰り返し上方から落下させ、杭打具の重量と、杭打具を下に引く力とを利用して杭を地中に打ち込むものと認められる。このような杭打具には杭を打撃する際に相当な衝撃力が作用し、また、効率良く早く杭打ち作業をするために杭打具には所要の重量が求められるものであるから、設計上、その材質として金属材料が選ばれるのは普通のことと認められる。
そして、引用例1の(a)の考案では、杭打具のハンマー筒として鉄パイプが使用されているが、この鉄パイプに代えて、本願考案1のように、ガス管等の鋼管製のものを使用することは当業者にとって格別困難なこととは認められないし、ガス管等の鋼鉄製材料を使用するので、安価で強い杭打ち具を提供できる(平成12年7月3日付け手続補正書の「5.請求の理由」参照。)という作用効果も、ガス管等の鋼管製のものを使用することに伴って生ずる自明な効果にすぎないものと認められる。
(ロ)の点について
前記「(イ)の点について」で述べたように、杭打具には杭を打撃する際に相当な衝撃力が作用し、また、所要の重量のハンマー筒を握手(ハンドル棒)で上方に持ち上げ、及び引き降ろすものであるから、握手の材質として相当の強度を有する金属材料が選ばれるのは設計上普通のことであるし、さらに加えて、鋼管製の握手(ハンドル棒)は多くの技術分野において普通に使用されているものであるから、本願考案1が、ハンドル棒を鋼管製とした点は当業者のきわめて容易に思いつくことと認められる。
そして、本願考案1の作用効果は、引用例1、及び設計上普通に行われることから予測しうる範囲のものと認められる。
したがって、本願考案1は、設計上普通に行われることを考慮すれば、引用例1に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
(2)請求項3に係る考案について
請求項3の「・・・ハンマー筒1ないしはストライカー3の外面に、・・・」という記載、及び「・・・装着してある請求項1、または2記載の杭打ち具。」という記載によれば、本願の請求項3に係る考案は、「補助ウエイト15がストライカー3の外面に、着脱可能に装着してある請求項1記載の杭打ち具。」という技術内容(以下、これを「補助ウエイトをストライカーの外面に着脱可能に装着した杭打ち具。」という。)を含むものである。
そこで、本願の請求項3に係る考案のうちの、補助ウエイトをストライカーの外面に着脱可能に装着した杭打ち具(以下、これを「本願考案3」という。)と、引用例1に記載の前記(a)の考案とを対比すると、本願考案3は、請求項1の考案を引用し、請求項1の考案の構成を、「補助ウエイト15がストライカー3の外面に、着脱可能に装着してある」と限定したものであるから、前記「(1)請求項1に係る考案について」での判断と同様に、両考案は、
「上下に長い直管状の金属製のハンマー筒1の外面に固定した一対のハンドル棒2と平坦な打撃面10を有し、ハンマー筒1の上端開口を塞ぐストライカー3とを備えている杭打ち具。」
の点で構成が一致しており、次の(イ)?(ハ)の点で相違しているものと認められる。
(イ)金属製のハンマー筒が、本願考案3では、ガス管等の鋼管製からなるのに対して、引用例1の(a)の考案では、鉄パイプからなる点。
(ロ)ハンドル棒2(引用例1の(a)の考案では、握手1。)が、本願考案3では、鋼管製であるのに対して、引用例1の(a)の考案では、握手1の材質については明記されていない点。
(ハ)本願考案3では、補助ウエイト15がストライカー3の外面に、着脱可能に装着してあるのに対して、引用例1の(a)の考案では、そのような構成を有しない点。
そこで、これら相違点を検討する。
(イ)及び(ロ)の点について
(イ)及び(ロ)の点は、前記「(1)請求項1に係る考案について」で述べたとおりである。
(ハ)の点について
前記引用例2には、手動杭打込機(本願考案3では、杭打ち具。)の重量を調整するために、鍔中央上面に重量加減用5を締付ボールト6で着脱可能に装着したものが記載されており、この技術事項は、本願考案3の、補助ウエイト15がストライカー3の外面に、着脱可能に装着してある、という技術事項と実質的に同じである。
そうすると、本願考案3は、引用例1に記載の考案に、引用例2に記載の技術事項を付加したものに相当し、その付加することは当業者にとって格別困難なこととは認められない。
そして、本願考案3の作用効果は、引用例1、2、及び設計上普通に行われることから予測しうる範囲のものと認められる。
したがって、本願考案3は、設計上普通に行われることを考慮すれば、引用例1に記載の考案に引用例2に記載の技術事項を付加して当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
(3)請求項4に係る考案について
請求項4の「・・・ ハンマー筒1に溶接してある請求項1、2、または3記載の杭打ち具。」の記載によれば、本願の請求項4に係る考案は、請求項1を引用し、請求項1の構成を、「ハンドル棒2が、ハンマー筒1の筒軸中心と平行に設けられた主枠部4と、主枠部4の上下端に連続して折り曲げられた腕部5、6とで、上下に長いコ字形に形成されており、上下の腕部5、6の突端がハンマー筒1に溶接してある」と限定したものである。
そこで、請求項1を引用した本願の請求項4に係る考案(以下、「本願考案4」という。)と、引用例1に記載の前記(b)の考案とを対比すると、
引用例1の(b)の考案の「握手1」、「キャップ3」、及び「杭打具」は、それぞれその機能からみて、本願考案4の「ハンドル棒2」、「ストライカー3」、及び「杭打ち具」に相当し、引用例1の(b)の考案の「鉄パイプA」と、本願考案4の「ガス管等の鋼管」とは、金属製のハンマー筒という点で共通するから、両考案は、
「上下に長い直管状の金属製のハンマー筒1の外面に固定した一対のハンドル棒2と平坦な打撃面10を有し、ハンマー筒1の上端開口を塞ぐストライカー3とを備えており、前記ハンドル棒2が、ハンマー筒1の筒軸中心と平行に設けられた主枠部4と、主枠部4の上下端に連続して折り曲げられた腕部5、6とで、上下に長いコ字形に形成されており、上下の腕部5、6の突端がハンマー筒1に取付けてある杭打ち具。」
の点で構成が一致しており、次の(イ)?(ハ)の点で相違しているものと認められる。
(イ)金属製のハンマー筒が、本願考案4では、ガス管等の鋼管製からなるのに対して、引用例1の(b)の考案では、鉄パイプからなる点。
(ロ)ハンドル棒2(引用例1の(b)の考案では、握手1。)が、本願考案4では、鋼管製であるのに対して、引用例1の(b)の考案では、握手1の材質については明記されていない点。
(ハ)本願考案4では、ハンドル棒2の上下の腕部5、6の突端がハンマー筒1に溶接してあるのに対して、引用例1の(b)の考案では、その点が明記されていない点。
そこで、これら相違点を検討する。
(イ)及び(ロ)の点について
(イ)及び(ロ)の点は、前記「(1)請求項1に係る考案について」で述べたとおりである。
(ハ)の点について
前記「(1)請求項1に係る考案について」で述べたように、ハンドル棒として鋼管製を選択し、使用することは当業者のきわめて容易に思いつくことと認められる。そして、ハンドル棒を鋼管製とすれば、ガス管等の鋼管製のハンマー筒と鋼管製のハンドル棒の取付けを溶接によって行うことは当業者が設計上普通に行うことと認められる。
そして、本願考案4の作用効果は、引用例1、及び設計上普通に行われることから予測しうる範囲のものと認められる。
したがって、本願考案4は、設計上普通に行われることを考慮すれば、引用例1に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
5.むすび
以上のとおり、本願考案1及び本願考案4は、設計上普通に行われることを考慮すれば、引用例1に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
また、本願考案3は、設計上普通に行われることを考慮すれば、引用例1
に記載の考案に引用例2に記載の技術事項を付加して当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-01-18 
結審通知日 2001-01-30 
審決日 2001-02-15 
出願番号 実願平5-60642 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (E02D)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 伊藤 陽深田 高義  
特許庁審判長 佐田 洋一郎
特許庁審判官 鈴木 公子
杉浦 淳
考案の名称 杭打ち具  
代理人 今村 元  

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