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審決分類 |
審判 全部申し立て F16K 審判 全部申し立て F16K |
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管理番号 | 1036091 |
異議申立番号 | 異議1998-76273 |
総通号数 | 18 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2001-06-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-12-28 |
確定日 | 2000-11-30 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 実用新案登録第2575783号「ダブルソレノイド形電磁弁」の請求項1ないし2に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 実用新案登録第2575783号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を取り消す。 |
理由 |
1,手続の経緯 本件実用新案登録第2575783号に係る出願は、平成4年5月29日に実用新案登録出願され、平成8年5月28日付け(特許庁受付は平成8年5月29日)で手続補正がなされ、平成10年4月17日に設定登録がされたものである。 これに対して、平成10年12月28日付けで実用新案登録異議申立がなされ、平成11年3月25日付けで取消理由が通知された後、平成11年6月14日付けで特許権者よりこの取消理由に対して意見書が提出されたものである。 2,取消理由及び意見書の概要 上記取消理由は、概要次のとおりである。 ▲1▼,平成8年5月28日付け(特許庁受付は平成8年5月29日)手続補正は、願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「当初明細書」という。)に記載されていない新規な技術思想を追加するものであり、その結果、考案の構成に関する技術的事項が願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内でないものとなったものであるから、明細書の要旨を変更するものである。 したがって、当該補正は明細書の要旨を変更するものであるから、本件出願は、その出願時に適用されていた実用新案法第9条で準用する特許法第40条の規定により、手続補正が特許庁に受付けられた平成8年5月29日に実用新案登録出願がされたものとみなされるものである。 ▲2▼,本件特許は、本件実用新案登録出願がされたものとみなされる平成8年5月29日以前に頒布された刊行物である、実願平4-43243号(実開平5-96660号)のCD-ROM[異議申立人・株式会社コガネイが提示した甲第1号証。以下「引用例イ」という。]及び特開平7-198054号公報(同甲第7号証。以下「引用例ロ」という。)に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反して実用新案登録されたものである。 これに対する特許権者の意見書の主張は、概要次のとおりである ▲1▼,当該補正は、当初明細書に記載されていた一使用方法を説明したものにすぎず、新規な課題解決手段(構成)を付加したものではないから、明細書の要旨を変更するものではない。 ▲2▼,したがって、本件出願の出願日は、平成4年5月29日であり、その後に頒布された刊行物である引用例イ、ロの存在によって実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものとすることはできない。 3,本件考案に係る出願日 そこで、先ず本件実用新案登録出願に係る出願日について検討する。 上記手続補正は、当初明細書には記載されていない次の事項を含むものであることは明らかである。 ▲1▼,請求項1の記載における次の事項。 『上記第1ピストンを、第2ピストンより大径とし、』 ▲2▼,【0017】欄の記載における次の事項。 『また、上記電磁弁は、基本的には第1ピストン6aまたは第2ピストン6bの駆動により主弁体7を切換動作させるものであるが、第1ピストン6aを第2ピストン6bよりも大径に形成しているので、第2ピストン6b側にパイロット圧力流体を常に供給した状態に保ち、第1ピストン6a側にパイロット圧力流体を給排することにより、シングルソレノイド弁としても利用できるものである。』 そして、この補正により、本件考案は、当初明細書には記載されていなかった、シングルソレノイド弁として使用しうる新規な課題解決手段を有するに至ったものである。 すなわち、当初明細書に記載されている考案(以下、「当初考案」という。)は、ダブルソレノイド弁として、2個のソレノイドへの交互の通電によって主弁を駆動するモードと、停電等の事故によって電磁弁が動作不能となったときのために手動によって主弁を操作するモードの二つの使用形態を想定したダブルソレノイド弁であった。(当初明細書の【0002】欄参照。) これに対し、補正された明細書に記載されている考案(以下、「補正考案」という。)は、上記二つの使用形態のほかに、「第2ピストン6b側にパイロット圧力流体を常に供給した状態に保ち、第1ピストン6a側にパイロット圧力流体を給排する」という使用形態、すなわち、第1パイロット弁部10aを駆動する第1のソレノイド9aのみに通電或いは解除を行って主弁を作動させるという当初明細書には記載のなかったシングルソレノイド弁であるところの使用の形態が追加されたものである。 そして、ダブルソレノイド弁の場合は、パイロット圧力により主弁が操作できれば、第1ピストンと第2ピストンの径はどのような関係のものでも良く、実際、当初明細書には第1ピストンと第2ピストンの径については何の記載もなかったものである。 しかし、シングルソレノイド弁としての使用する際には、「第1ピストンを第2ピストンより大径」とすることが要件となり、しかもその径の差は双方のピストンにパイロット圧力がかかった場合に差圧で一方方向に主弁が移動できる程度の径の差が必要となるものであるから、その点で単に第1ピストンの径が大きいというものではなく、技術的にみて有意の差が必要である。 したがって、二つのソレノイドに対する通電の態様が異なり、第1ピストンが第2ピストンより必要量大径でなければならない点で、補正考案は考案の構成に関する技術的事項が異なったものとなっており、当初明細書の図面から容易に想到できる一使用方法を説明したものであるから、明細書の要旨を変更するものではない旨の特許権者の主張は認めることはできない。 したがって、上記補正は、当初考案においては全く考慮されていなかったシングルソレノイド弁としても使用することができるという新規な技術思想を追加するものであり、その結果、考案の構成に関する技術的事項が当初明細書に記載した事項の範囲内でないものとなったものであるから、明細書の要旨を変更するものである。 よって、本件出願は、この出願時に適用されていた実用新案法第9条で準用する特許法第40条の規定により、手続補正が特許庁に受付けられた平成8年5月29日に実用新案登録出願がされたものとみなされるものである。 4,実用新案登録異議申立についての判断 ▲1▼,本件考案 本件実用新案登録第2575783号に係る出願の請求項1、2に係る考案は次のとおりのものと認める。 【請求項1】 供給ポート、出力ポート、排出ポート及びこれらのポートが開口する弁孔が開設された弁ボディと、上記弁孔に摺動可能に挿入された主弁体と、上記弁ボディにおける弁孔の軸方向両側に配設された第1、第2ピストン収納箱と、これらのピストン収納箱に摺動可能に挿入された第1、第2ピストンとを有し、第1、第2ピストンに作用するパイロット流体圧によりそれらのピストンを駆動して主弁体を切換動作させ、上記複数のポート間の流体の流れ方向を切換える主弁、並びに、 上記第1ピストン収納箱の外端側に設置され、上下方向に重設された第1、第2パイロット弁部を有するパイロット弁ボディと、それらのパイロット弁部を動作させる第1、第2ソレノイドとを備え、該第1、第2ソレノイドヘの通電及びその解除によりそれぞれのパイロット弁部から上記第1、第2ピストン収納箱に個別に連通する第1、第2パイロット出力流路にパイロット流体を給排するパイロット電磁弁、 を備えたダブルソレノイド形電磁弁において、 上記第1ピストンを、第2ピストンより大径とし、 上記主弁の弁ボディにおける弁孔の上部に沿って、供給ポートから第1、第2パイロット弁部に供給流体を供給するためのパイロット供給流路と、第2パイロット弁部から第2ピストン収納箱にパイロット流体を供給するパイロット出力流路とを設け、 上記パイロット電磁弁に近接して、上方からの押圧により、パイロット流体をパイロット出力流路に出力させる第1手動操作装置を配設すると共に、 上記第1手動操作装置よりも弁ボディ側に、上方からの押圧により、第2パイロット弁部からのパイロット出力流路を遮断すると共に、パイロット供給流路と第2ピストン収納箱に至るパイロット出力流路とを連通させる第2手動操作装置を配設した、 ことを特徴とするダブルソレノイド形電磁弁。 【請求項2】 請求項1に記載のダブルソレノイド形電磁弁において、 第1手動操作装置は、その押圧により、第1ソレノイドの可動鉄心を直接的に後退させて第1パイロット弁部の供給弁座を開放するものとした、ことを特徴とするダブルソレノイド形電磁弁。 ▲2▼,本件考案と引用例記載の考案の対比・判断 ここで、本件に係る出願は、上述のとおり、平成8年5月29日に実用新案登録出願がされたものとみなされ、そのみなされた出願の日前に頒布された刊行物である引用例イには、本件の請求項1及び2に係る構成のうち、「第1ピストンを、第2ピストンより大径とし」た点については記載されていないが、その余の構成はすべて記載されている。 また、引用例ロの【0020】欄には、ダブルソレノイド形電磁弁においてシングルソレノイド電磁弁としても使えるようにするという本件考案と同一の課題を達成するため、「大径ピストン21を、小径ピストン22より大径」とした点が記載されている。 そして、引用例ロ記載の考案における大径ピストン21が本件考案の第1ピストンに相当し、小径ピストン22が本件考案の第2ピストンに相当することは明らかであるから、引用例イ記載の考案に引用例ロ記載の上記の点を適用して本件の請求項1及び2に係る考案とすることは当業者においてきわめて容易になし得ることと認められる。 5,むすび 以上のとおりであるから、本件の請求項1及び2に係る考案は、引用例イ、ロに記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反して実用新案登録されたものである。 したがって、本件考案に係る実用新案登録は、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-07-13 |
出願番号 | 実願平4-43243 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
Z
(F16K)
U 1 651・ 03- Z (F16K) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 鳥居 稔 |
特許庁審判長 |
佐藤 洋 |
特許庁審判官 |
舟木 進 西村 敏彦 |
登録日 | 1998-04-17 |
登録番号 | 実用登録第2575783号(U2575783) |
権利者 |
エスエムシー株式会社 東京都港区新橋1丁目16番4号 |
考案の名称 | ダブルソレノイド形電磁弁 |
代理人 | 林 宏 |
代理人 | 小塚 善高 |
代理人 | 内山 正雄 |
代理人 | 筒井 大和 |
代理人 | 鷹野 寧 |