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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B60R
管理番号 1036095
判定請求番号 判定2000-60157  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2001-06-29 
種別 判定 
判定請求日 2000-11-24 
確定日 2001-04-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第2514116号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す物件は、登録第2514116号実用新案の技術的範囲に属しない。
理由 【1】請求の趣旨
イ号図面並びにその説明書に示す物件(以下、「イ号物件」という。)は、登録第2514116号実用新案の技術的範囲に属する、との判定を求める。
【2】本件登録実用新案
本件登録実用新案は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりのものであり、その構成、目的及び作用効果は、以下のとおりのものと認める。
1.本件登録実用新案の構成
本件登録実用新案の構成は、(a)?(e)の符号を付して分説すると、以下のとおりのものと認める。
(a)所要空間を有する収納部の上部に開口部を有し、該収納部の左右両側板を後方に所要長延出し、
(b)座席シートの下部空間に出入自在に収納されて成る箱体において、
(c)上部の前後に摺動自在に案内されて前記開口部を閉塞できる蓋と、
(d)上部の前端部で揺動自在に係着され前方へ裏面を上面として展開できる蓋を有して成る
(e)自動車座席シートにおける履物入れ。
2.本件登録実用新案の目的、作用効果
願書に添付した明細書には、【考案が解決しようとする課題】について、「自動車の座席で休息をとる場合、靴やサンダルなどの履物を収納でき、かつ、座席シート前方の空間を目一杯に足のせ領域として確保し、膝を伸ばした状態で足をのせることのできるオットマン付きの自動車座席シートにおける履物入れを提供するものである。」(段落【0003】)と記載され、【作用】について、「上記構成によれば、収納部には脱いだ履物が収納され、開口部に摺動自在に被蓋される蓋はオットマン(以下、足のせ台とする。)となり、前端部に揺動自在に係着される蓋は前方へ前傾状態で裏面を上面として展開され、該裏面を足のせ面として足のせ台にのせた足の先端を保持する。」(段落【0005】)と記載され、 【考案の効果】について「本考案の履物入れaによれば、シート下方の空間を許容幅一杯に有効利用してコンパクトに且つ衛生的に履物を車内に保管できるとともに即刻座席シート前方の空間を目一杯に足のせ領域として確保できる足のせ台として活用できるものであるから、シートと協働して瞬時に簡易なベッドを構成し、両膝を伸ばして休息をとることができる。したがって、疲労回復が早まることは勿論のこと楽な姿勢で仮眠ができるなど、ドライブ中の健康維持と安全運転に寄与する効果がある。」( 段落【0008】)と記載されているものと認められる。
【3】イ号物件
1.イ号図面(判定請求書に添付の理由書の「図1」?「図4」)及びイ号説明書(判定請求書に添付の理由書の「(四)イ号物件の内容」)に示された構成
(1)台箱aの上部に、揺動台bが揺動して展開できるように設けられている。(図1,図2(展開状態))
(2)台箱aは、揺動台bが重なったときに自動車の座席の下に押し入れ又は引き出せる高さと奥行きと幅をもつ。
(3)台箱aは、上表面の前後を円弧状とした形をなし、上表面の両側に奥行き方向へ穿った溝1を有する(図1?図3)。
(4)前記溝1から、台箱a内であって該台箱aの上部前端部に幅方向に軸受けされた軸2に下端部が取り付けられたアーム3が突出している(図1?図3)。
(5)揺動台bは、足かけ台cと足かけ枠dからなる(図1,図2,図4)。
(6)足かけ台cは台箱aよりも広い底面をもち、該底面に、台箱aの溝1より突き出たアーム3の上端部を取り付けている(図1,図2,図4)。
(7)足かけ台cの上表面の縁部近傍に、幅方向に、凹部4が凹設されている(図4)。
(8)足かけ枠dは、左右の側板5間が足かけ台cの幅以上の間隔をもち、該側板5間は上方の連結軸6で連結され、全体がU字状の枠に形成されている(図1,図2)。
(9)足かけ枠dは、その両側板5の下方が、足かけ台cの下部に幅方向に挿通して軸受けされた連結軸7の両端に、取り付けられている(図1,図2,図4)。
2.イ号図面及びイ号説明書に示された作用
(1)揺動台bは、足かけ台cを台箱aから引き起こすと、台箱aの溝1の一端にアーム3が係止されるまで起きて係止される。そして足かけ枠dは連結軸7を軸として前方へ倒れ係止される。 ( 図2)
(2)反対に、揺動台bは、足かけ枠dを足かけ台cに重ねつつその凹部4に連結軸6を嵌入し、台箱aに重ねてゆくと、溝1の他端にアーム3が係止されるまで重ねられる。( 図1)
(3)上記(2)の揺動台bを重ねた状態にて、台箱aを座席下の空間に押し入れる。
(4)反対に台箱aを座席下の空間から引き出して、揺動台bの足かけ台cを起し、足かけ枠dを前方へ展開すると、足かけ台cに足を足かけ枠dに足さきを掛けることができる。(図2)
3.イ号図面及びイ号説明書に示された効果
(1)台箱aの上に、足かけ台cと足かけ枠dとから成る揺動台bを重ねると、自動車の座席シートの下部空間に出入自在に収納できる。
(2)台箱aから足かけ台cと足かけ枠dを展開すると、座席シートに座して足及び足さきを足かけ台cと足かけ枠dへ乗せることができる。
(3)足かけ台cは、台箱aに対し揺動自在に、台箱aに重なり或いは起立する。
(4)台箱aに足かけ台cを介して揺動自在に取り付けられた足かけ枠dは、前方へ裏面を上面として展開される。
4.イ号物件の構成
イ号物件の構成は、上記1?3より、次のとおりのものと認められる。
(イ)台箱aに、足かけ台c及び足かけ枠dからなる揺動台bを重ねると、座席シートの下部空間に出入自在に収納できる状態となる自動車座席シートにおける足のせであって、
(ロ)前記足かけ台cを、前記台箱aの上表面を覆う広さとし、前記台箱aの上部前端部に揺動自在に取り付け、
(ハ)前記足かけ枠dを、台箱aの上部前端部に、足かけ台cを介して揺動自在に取り着け、前方へ裏面を上面として展開されるよう構成した
(ニ)自動車座席シートにおける足のせ。
【4】本件登録実用新案及びイ号物件についての当事者の主張
1.判定請求人の主張
(1)本件登録実用新案の構成(a)、(b)とイ号物件の構成(イ)とは、座席シートの下部空間に出入自在に収納されるものである。
(2)本件登録実用新案の構成(c)とイ号物件の構成(ロ)とは、前者(c)は箱体の上部に摺動自在に案内される蓋を設けたのに対し、後者(ロ)は台箱の表面を覆う広さの足かけ台cを台箱の上部に揺動自在に設けたものであるから、両者の目的作用は同様であって構成上類似である。
(3)本件登録実用新案の構成(d)とイ号物件の構成(ハ)とは、前者(d)は、箱体の上部前端部で揺動自在に係着され前方へ裏返えしで展開できる蓋を設けたのに対し、後者(ハ)は、台箱aに足かけ台cを介して上部前端部で揺動自在に係着され前方へ裏返えしで展開する足かけ枠dを設けたものであるから、両者は目的作用が同様であって構成上類似である。
上記のとおりイ号物件は、本件登録実用新案の構成要件を具備するものである。
2.被請求人の主張
イ号物件は、少なくとも、以下の4つの点において本件登録実用新案と相違する。 各相違点はそれぞれ単独で評価しても、イ号物件は、「技術的範囲に属しない」と結論できるものである。
(1)第1相違点
イ号物件は、物品収容部を有さず、収容部に連なる開口部を有しない。イ号物件は、本件登録実用新案の構成(e)の「自動車座席シートにおける履物入れ」でなく、また「履物入れ」と均等なものでもない。
(2)第2相違点
イ号物件は、収納部の上部に開口部を有しないし、該収納部の左右両側板を後方に所要長延出するものでもない。イ号物件は、本件登録実用新案の構成(a)の「所要空間を有する収納部の上部に開口部を有し、該収納部の左右両側板を後方に所要長延出し」という要件をも欠いている。イ号物件は、構成(a)に均等な構成も備えていない。
(3)第3相違点
イ号物件は、「摺動自在に案内されて開口部を閉塞できる蓋」を有しない。イ号物件は、本件登録実用新案の構成(c)の「上部の前後に摺動自在に案内されて前記開口部を閉塞できる蓋」という要件も欠き、均等な構成も備えていない。
(4)第4相違点
イ号物件は、「足掛け枠d」が「揺動自在に係着され前方へ裏面を上面として展開できる部材」であったとしても、該「足掛け枠d」は、「枠」であって「蓋」ではなく、また、「揺動台b」に揺動自在なのであって、台箱aに対して揺動自在となっているものではない。 本件登録実用新案の構成(d)のうち、「上部の前端部で揺動自在に係着され」は、「箱体の上部の前端部で揺動自在に係着され」の意味であるところ、イ号物件は、その要件を備えていないし、「前方へ裏面を上面として展開できる蓋」の要件を欠き、均等な構成も備えていない。
したがって、イ号図面とその説明書に示す物件は、登録第2514116号実用新案の技術的範囲に属しない。
【5】当審の判断
本件登録実用新案とイ号物件とを対比する。
イ号物件は、「収納部の上部に開口部」、及び「収納部の左右両側板を後方に所要長延出し」た構成を備えていないから、本件登録実用新案の構成(a)「所要空間を有する収納部の上部に開口部を有し、該収納部の左右両側板を後方に所要長延出し」を充足しない。
イ号物件の上記構成(イ)「台箱aに、足かけ台c及び足かけ枠dからなる揺動台bを重ねると、座席シートの下部空間に出入自在に収納できる状態となる自動車座席シートにおける足のせであって」は、「台箱a」が座席シートの下部空間に出入自在に収納できる構成をもつから、本件登録実用新案の構成(b)を充足する。
本件登録実用新案の構成(c),(d)が「蓋」により特定されるものであるのに対して、イ号物件の「足かけ台c」及び「足かけ枠d」は、台箱を覆うとしても、いずれも、「蓋」ではないから、イ号物件は、本件登録実用新案の構成(c)「上部の前後に摺動自在に案内されて前記開口部を閉塞できる蓋」を有する点、及び(d)「上部の前端部で揺動自在に係着され前方へ裏面を上面として展開できる蓋」を有する点を充足しない。
イ号物件は、「履物入れ」ではないから、本件登録実用新案の(e)「自動車座席シートにおける履物入れ」を充足しない。
【6】むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件登録実用新案の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2001-03-26 
出願番号 実願平3-108284 
審決分類 U 1 2・ 1- ZB (B60R)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 伊藤 元人  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 粟津 憲一
刈間 宏信
登録日 1996-07-23 
登録番号 実用新案登録第2514116号(U2514116) 
考案の名称 自動車座席シ?トにおける履物入れ  
代理人 藤盛 道夫  
代理人 小玉 秀男  
代理人 村瀬 裕昭  
代理人 熊谷 繁  

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