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審決分類 審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 無効としない G01M
管理番号 1039441
審判番号 審判1998-35258  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-06-05 
確定日 2001-01-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第2502840号実用新案「配管漏洩検知装置」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 I.[手続の経緯]
本件実用新案登録は、平成1年4月21日に実願平1ー47329号として出願され、平成8年4月9日に実用新案登録第2502840号として設定登録がなされ、その後、矢崎総業株式会社より請求項1に係る実用新案登録を無効とする審決を求める審判の請求がなされ、請求書の副本が被請求人である伊藤工機株式会社に送達され、答弁書が提出されたものである。
II.[本件請求項1に係る考案]
本件請求項1に係る考案は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、次のものである。
「大量のガスを流す主管路に設けた圧力調整器に小流量のバイパス管路を設け、このバイパス管路に、前記圧力調整器より出口圧力を少し高く設定した小型圧力調整器、及び一定期間ガス流れが停止しないときに漏洩していると判断して表示する小型漏洩検知機能付ガスメータを取付けた配管漏洩検知装置。」
III.[審判請求人の主張の概要]
請求人は、証拠方法として、甲第1号証(実用新案登録第2502840号公報)、甲第2号証(実願平1ー47329号の出願当初の明細書及び図面)、甲第3号証(本件平成7年9月25日付け手続補正書)、甲第4号証(特開平3ー41300号公報)、甲第5号証(本件出願当初の明細書と本件平成7年9月25日付け手続補正書の対照表)、甲第6号証(特許・実用新案審査基準抜粋、発明協会平成5年7月20日発行)、甲第7号証(平成6年12月改正、「液化石油ガス用流量検知式切替型漏えい検知装置検査規定」、財団法人日本エルピーガス機器検査協会発行)及び甲第8号証(’96年8月号「月刊住SUMAI」第23?25頁、日本工業出版株式会社発行)を提示し、以下の主張(1、2)をする。
(主張1)
本件実用新案登録出願において、平成7年9月25日付け手続補正書によって行われた補正が、出願当初の明細書又は図面の記載の範囲内の補正でなく、明細書の要旨を変更するものであるので、本件実用新案登録出願は、昭和62年改正実用新案法第9条において準用する昭和62年改正特許法第40条の規定により、補正書提出日である平成7年9月25日の出願とみなされる。
よって、本件の請求項1に係る考案は、その出願日(前記補正書提出日)前に日本国内において頒布された刊行物(甲第4号証、特開平3ー41300号公報)に記載された考案と同一となって、当該登録に係る考案は、実用新案法第3条第1項第3号に掲げる考案に該当し、実用新案法第37条の規定により無効とすべきものである、というものである。
(主張2)
本件の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、実用新案法第3条1項柱書の規定又は実用新案法第5条第3項及び第4項の規定に違反して登録されたものであり、実用新案法第37条の規定により無効とすべきものである、というものである。
IV.[被請求人の主張の概要]
被請求人は、証拠方法として、乙第1号証(実公昭52ー13633号公報)、乙第2号証(実公昭52ー36251号公報)、乙第3号証(実公昭55ー43442号公報)、乙第4号証(実公昭52ー17134号公報)、乙第5号証(高圧ガス保安協会編集「第二種販売主任者講習テキスト(第四次改訂版)」(昭和63年5月31日発行)第37?49頁)、乙第6号証(昭和62年8月31日改正の「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則関係基準」)、乙第7号証(高圧ガス保安協会、昭和62年7月20日発行、「高圧ガス」Vol.24 No.7通巻206号第(13)頁?第(18)頁)及び乙第8号証(高圧ガス保安協会編集、平成元年7月20日第4刷発行、「液化石油ガス整備士講習用液化石油ガス整備士ハンドブック(五訂版)第380頁)を提示し、本件実用新案登録出願の平成7年9月25日付け手続き補正は、明細書の要旨を変更するものでなく適法であって、本件実用新案登録出願は、平成1年4月21日に出願されたものであるから、本件の請求項1に記載された考案は、その出願後の平成3年2月21日に日本国内において頒布された刊行物である甲第4号証(特開平3ー41300号公報)に記載された考案と同一であるか否かを判断するまでもなく、実用新案法第3条第1項第3号に掲げる考案に該当するものでないし、また、本件の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、実用新案法第3条1項柱書の規定又は実用新案法第5条第3項及び第4項の規定に違反しないから、その登録を無効とすることはできない旨主張する。
V.[本件実用新案登録出願の平成7年9月25日付け手続補正の適否について]
まず、高圧ガス保安業界における配管の漏洩検知の手法としての周知慣用技術を考察する。
被請求人が乙第6号証として提出した昭和62年8月31日改正の「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則関係基準」には、「29 供給管又は配管等の気密試験方法及び漏えい試験の方法」において、次のことが記載されている。
「3 漏えい試験(漏えい検知装置を用いる場合に限る。)
供給管及び配管の漏えい試験は、漏えい検知装置を設置した箇所から末端閉止弁までの間(以下この項において「被検知部分」という。)については、次の基準により行うものとする。
(1)漏えい検知装置は、被検知部分へのガスの流入の状況によりガスの漏えいを有効に検知し、ガスの消費者若しくはその他建物の関係者に音響若しくは表示により警報するもの又は被検知部分へのガスの供給を自動的に停止するもの(流量検知式のもの)であって、次の基準に適合するものとする。
▲1▼被検知部分からのガスの漏えい量を被検知部分への流入量として検知するものをいう。
▲2▼検知可能な最少のガス漏えい量は3リットル毎時を超えるものではないこと。
▲3▼被検知部分へのガスの流入を30日間連続して検知した場合は、自動的に音響又は表示により警報し、かつ、ガスの漏えいがないことを確認できるまでは、警報し続けるものであること。
▲4▼検知機能が維持できなくなった場合は、自動的に音響又は表示により警報するものであること。
▲5▼ガスの供給を自動的に停止するものにあっては、作動状況の確認が容易にでき、かつ、復帰安全機構を有すること。」
また、被請求人が乙第7号証として提出した高圧ガス保安協会が昭和62年7月20日に発行した「高圧ガス」Vol.24 No.7通巻206号第(13)頁?第(18)頁の記載、特に第(14)頁には、「4.マイコンメーターIIの基本仕様」として、次のことが記載されている。
「(1)主な機能
マイコンメーターIIには、以下に示す機能がある。
▲1▼合計流量オーバー遮断機能
ガス流量が消費先の保有燃焼器具の合計消費流量を超えて流れた場合、元せんの誤開放等によるガス漏れと判断し遮断する機能。
▲2▼増加流量オーバー遮断機能
ガスメーターを流れるガスの流量が増加したとき、その増加流量が保有燃焼器具の消費量最大の機器消費量に比べて異常に大きい流量の増加であった場合、ゴム管付元せんの誤開放等によるガス漏れと判断し遮断する機能。
▲3▼継続使用時間オーバー遮断機能
普通ではありえないような器具の長時間使用が発生しているかどうかを判断するものである。
流量に変動がない状態で、燃焼器具が使用され続け使用時間がその燃焼器具のガス消費量に応じて定められた時間を超えた場合、器具の消し忘れ又は元栓の不完全閉止等によるガス漏れと判断し遮断する機能。
▲4▼微少漏洩表示機能
微少流量のガスが定められた期間を超えて流れ続けた場合、口火の消し忘れ又は配管類からの微小漏洩と判断し微小漏洩表示を行う機能。
▲5▼復帰安全機能
マイコンメーターIIが異常と判断してガス流路を遮断した後、マニュアルで遮断弁を復帰させた場合遮断弁の下流側ガス漏れがないかどうかをチェックし、ガス漏れがあった場合は再び遮断する機能。
▲6▼その他
電池電圧低下表示機能、オプション機器入力端子等」
上記のことから、高圧ガス保安業界において、「配管の漏洩検知」は、「配管部に一定期間ガス流れを連続して検知した場合に配管の漏洩と判断すること」を含むことが明らかである。
そして、本件実用新案登録出願の出願当初の明細書の記載事項を検討すると、小型圧力調整器14の出口圧力設定を主管路11の二次用圧力調整器R_(3)の出口圧力設定より少し高くして主管路11にガスが流れるときはバイパス管路13にも必ずガスが流れるようにするとともに、小型漏洩検知機能付ガスメータ5として、高圧ガス保安協会が定める基準に合格してマイコンメータIIとして市販されているものを用いて配管の漏洩を検知することが記載されていることから、主管路の漏洩によるガス流れが生じるとバイパス管路にも必ず主管路の漏洩によるガス流れが生じ、かつ、そのバイパス管のガス流れは、一定期間ガス流れが停止しないという主管路のガス漏洩によるガス流れによるものを当然含んでいるので、「小型漏洩検知機能付ガスメータ5」が「一定期間ガス流れが停止しないときに漏洩していると判断して表示する」ものであることは、出願当初の明細書に実質的に記載されていた事項と認められる。
さらに、請求人の主張を検討する。請求人は、[理由1]として、補正後の明細書記載の甲の技術的事項「ガス器具の使用がなくなると、主管路11内のガス圧は徐々に上昇し、そのガス圧が圧力調整器R_(3)の設定圧力より高くなると、圧力調整器R_(3)にはガスは流れなくなる。一方、小型圧力調整器14は、その出口圧力が前記圧力調整器R_(3)の出口圧力より少し高く設定されているため、圧力調整器R_(3)のガスが流れなくなっても、流れつづけ、・・・」は、当初明細書記載の初期の目的を達成し得ない実施例を根拠としており明細書の要旨を変更するものである旨主張する。しかし、本件当初明細書に記載された「マイコンメータII」は、前記したように各種の機能を有しており、単にガス流量の異常時にガスを遮断する機能を有するだけでなく、ガス流量の異常時に警報する機能も有するものであって、その警報機能を利用することで、本件当初明細書に記載の課題を達成できることは、明らかである。また、前記甲の技術的事項は、本件当初明細書の「小型圧力調整器14の出口圧力設定を主管路11の二次用圧力調整器R_(3)の出口圧力設定より少し高くして主管路11にガスが流れるときはバイパス管路13にも必ずガスが流れるようにする。」という記載及び高圧ガス保安業界において周知慣用技術である圧力調整器の機能(例えば、被請求人が乙第5号証として提出した、高圧ガス保安協会編集「第二種販売主任者講習テキスト(第四次改訂版)」(昭和63年5月31日発行)第37?49頁に記載された事項)、即ち、圧力調整器の出口圧力を常に設定圧になるように自動的に弁を開閉することで圧力調整器内のガスの通過遮断を制御し、その下流のガス器具にガスを供給する配管のガス圧力を一定に保つ機能とから、当然の帰結となることを記載したまでであり、出願当初の開示範囲内である。したがって、前記甲の技術的事項を補正により加えることは、明細書の要旨を変更するものでないから、請求人の前記[理由1]には合理性がなく、採用できない。
請求人は[理由2]として、次の1?4に関する技術的事項の補正について、本件考案が適用を受ける審査基準(甲第6号証)によると、要旨変更である旨主張する。以下、それらについて検討する。
(1.圧力調整器に関して)
補正後の明細書の記載「圧力調整器4は、弁の開閉により、下流側が設定圧より低圧ならばガスを流通させて供給し、一方下流側が設定圧になればガス流通を停止させる作用を行なって、供給するガス圧(出口圧力)を一定に保つ働きをするものである。」は、高圧ガス保安業界において周知慣用技術である圧力調整器の機能(例えば、被請求人が乙第5号証として提出した、高圧ガス保安協会編集「第二種販売主任者講習テキスト(第四次改訂版)」(昭和63年5月31日発行)第37?49頁に記載された事項)、即ち、圧力調整器の出口圧力を常に設定圧になるように自動的に弁を開閉することで圧力調整器内のガスの通過遮断を制御し、その下流のガス器具にガスを供給する配管のガス圧力を一定に保つ機能に基づき、当初明細書に記載していた圧力調整器4が当然有する機能を補足説明するにすぎないから、要旨変更にはならない。
(2.小型漏洩検知機能付ガスメータに関して)
補正後の明細書の記載「小型漏洩検知機能付ガスメータ5は、小流量の配管漏洩検知に使用され、流量センサ、マイコン制御および異常表示装置を備え、一定の時間(通常30日間)、ガス流れが停止しない場合、漏洩の疑いがあることを表示等の手段で警報する機能を有する、非常に有効なものである。」は、被請求人が乙第6号証として提出した昭和62年8月31日改正の「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則関係基準」の「29 供給管又は配管等の気密試験方法及び漏えい試験の方法」に規定されることや、被請求人が乙第7号証として提出した高圧ガス保安協会が昭和62年7月20日に発行した「高圧ガス」Vol.24 No.7通巻206号第(13)頁?第(18)頁の記載、特に第(14)頁の「4.マイコンメーターIIの基本仕様」に記載されていることから判断して、当初明細書に記載されていた小型漏洩検知機能付ガスメータ5が、本来当然有している機能を補足説明するものであるので、要旨変更にはならない。
(3.実施例に関して)
被請求人が乙第6号証として提出した昭和62年8月31日改正の「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則関係基準」の「29 供給管又は配管等の気密試験方法及び漏えい試験の方法」に規定されることや、被請求人が乙第7号証として提出した高圧ガス保安協会が昭和62年7月20日に発行した「高圧ガス」Vol.24 No.7通巻206号第(13)頁?第(18)頁の記載、特に第(14)頁の「4.マイコンメーターIIの基本仕様」を考慮すれば本件当初明細書に記載されている「異常」、「異常時」には、「微少漏洩」に関するものも、当然含まれていたと解される。また、補正後の明細書の記載「・・・その連続検出期間、例えば30日間続けば、ガス漏洩として警報を発する。」は、やはり前記乙第6、7号証を考慮すれば、本件当初明細書に記載されているに等しい事項と言える。故に、実施例に関しても要旨変更の箇所は見出し得ない。(4.実用新案登録請求の範囲に関して)
補正後の「圧力調整器」および「小型漏洩検知機能付ガスメータ」の意味内容は前記(1、2)に述べたように、当初明細書に記載された範囲内のものでしかない。
結局、請求人の主張する[理由2]にも合理性がなく、採用できない。
以上のとおりであるから、本件実用新案登録出願の平成7年9月25日付け手続き補正は、明細書の要旨を変更するものでなく適法であって、本件実用新案登録出願は、平成1年4月21日に出願されたものある。
VI.[請求人の前記主張1に対する当審の判断]
前記V.の欄に述べたように、本件実用新案登録出願は、平成1年4月21日に出願されたものであるから、本件の請求項1に記載された考案はその出願後の平成3年2月21日に日本国内において頒布された刊行物である甲第4号証(特開平3ー41300号公報)に記載された考案と同一であるか否かを判断するまでもなく、実用新案法第3条第1項第3号に掲げる考案に該当するものでないので、請求人の前記主張1は失当である。
VII.[請求人の前記主張2に対する当審の判断]
請求人は、本件の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、実用新案法第3条1項柱書の規定又は実用新案法第5条第3項及び第4項の規定に違反している理由として、具体的に次の理由(1、2)を挙げているので、検討する。
前記理由(1、2)は要するに、マイコンメータIIがガス遮断機能を有するので、ガス遮断後は微少漏洩を検知できなくなるから、本件請求項1に係る考案は、産業上の利用性がない未完成のものであるか、又は明細書の詳細な説明に実施が容易なように裏付けされていないものであるという趣旨である。しかし、マイコンメータIIは、ガス流量が異常の際にガスを遮断する機能を有するだけでなく、ガス流量が異常の際に警報する機能も有することは、当初明細書に記載されていたのであって、バイパス管路に設けられた小型漏洩検知機能付ガスメータ5(マイコンメータII)が、バイパス管路のガス流量の異常を検知することによって、主管路のガス漏洩が検知できることは明らかであるから、請求人の前記主張2は失当である。
VIII.[むすび]
以上のとおりであるから、審判請求人が主張する理由及び証拠方法によっては、本件の請求項1に係る実用新案登録を無効にすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1998-10-19 
結審通知日 1998-10-27 
審決日 1998-11-06 
出願番号 実願平1-47329 
審決分類 U 1 112・ 531- Y (G01M)
最終処分 不成立    
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 柏木 悠三
森 雅之
登録日 1996-04-09 
登録番号 実用登録第2502840号(U2502840) 
考案の名称 配管漏洩検知装置  
代理人 鳥居 和久  
代理人 鎌田 文二  
代理人 岩崎 幸邦  
代理人 三好 秀和  
代理人 城下 武文  
代理人 東尾 正博  

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