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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01G
管理番号 1039447
審判番号 審判1999-17621  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-10-29 
確定日 2001-05-07 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 67490号「トリマコンデンサ」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 7月 4日出願公開、実開平 7- 36435]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 【1】本願考案
本願は、平成5年12月17日の出願であって、その考案を特定するために必要な事項は、平成10年2月4日付及び平成12年12月11日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1乃至2に記載された「トリマコンデンサ」にあるものと認められるところ、当該請求項1に記載された考案(以下、「本願考案」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 可変電極と固定電極と誘電体とを備えたトリマコンデンサにおいて、
前記固定電極及び誘電体は、機械的強度に富むセラミックス板に設けられた孔を介して固定電極がセラミックス板の両面に焼き付けられると共に、前記セラミックス板上の少なくとも一面の固定電極上に誘電体が焼き付けられたものであり、 前記セラミックス板は、その抗折強度が20 Kgf/mm2以上のもので、かつ、その厚さが0.2?0.5mmであり、 前記誘電体は、その厚さが5?30μmであることを特徴とするトリマコンデンサ。」
【2】引用例
(1)当審における平成12年11月6日付拒絶の理由に引用された刊行物1の特開昭52ー23652号公報は、可変容量素子に係わるものであって、その明細書及び図面の記載を参酌すると概要以下の事項が記載されているものと認められる。
(i)「セラミック基板に設けられた小孔の周辺に半円形状に焼き付けされた導体皮膜と、その導体皮膜の上に全面に焼き付けされた誘電体皮膜と、前記セラミック基板の小孔に回転可能な状態で固定された半円形の導体部分を有する板状片によりなることを特徴とする可変容量素子。」(第1頁左下欄「特許請求の範囲」)
(ii)「工程中で高誘電体セラミック薄板にマイクロクラックを生じさせた場合、完成後時間を経過してから致命的な特性劣化を生ずる等の問題がある。」(第1頁右下欄第11?14行)
(iii)「本考案は、混成集積回路用セラミック基板4の所定の位置に小孔5を設け、回路の導体膜形成の際小孔5の周辺にも半円形の導体皮膜6を焼き付けにより形成し、ついで導体皮膜6の上にこれを覆うように小孔5の周辺に円形に高誘電体皮膜7を焼き付けにより形成する。」(第1頁右下欄第15?20行)
(iv)「本発明により、……、従来よりも面積、高さとも著しく小型化が可能となり、また厚膜印刷焼成工程において実施することにより充分緻密な高誘電体被膜が得られるため、従来例の高誘電体セラミック薄板における割れによる特性劣化等の心配が全くなくなり、……、また印刷による厚膜工程で生産できるため、その量産性により、工業的に寄与するところが大きいものである。」(第2頁左上欄第5?16行)
(2)同じく当審における拒絶の理由に引用された刊行物2の特開昭50ー69551号公報は、可変磁器コンデンサに係わるものであって、その明細書及び図面の記載を参酌すると概要以下の事項が記載されているものと認められる。
(i)「磁器基板の上に金属ペーストを印刷・焼成して形成した電極膜の上に高誘電率の磁器組成物よりなる磁器ペーストを印刷・焼成して磁器誘電体の薄膜を形成し、該薄膜の他方の電極を摺動自在に圧接せしめたことを特徴とする可変磁器コンデンサ」(第1頁左下欄「特許請求の範囲」)
(ii)「磁器基板10に前記金属ペーストにより電極膜11を形成するに当つて、そのリード端子をとる必要上、磁器基板10の反対側の面まで、これを連続して設ける。」(第2頁右上欄第9?12行)
(iii)「本発明の磁器誘電体は磁器基板10の上に磁器ペーストの印刷によって設けられるため、厚さ10μ?50μの薄膜とすることができる」(第2頁左下欄第2?5行)
(iv)「以上の実施例においては、ロータ電極の側に磁器ペーストを印刷して誘電体の薄膜を形成する場合について説明したが、磁器誘電体の薄膜は固定電極側に設けても差支えない。」(第2頁左下欄第11?15行)
(3)同じく当審における拒絶の理由に引用された刊行物3の特開昭52ー135055号公報は、可変コンデンサに係わるものであって、その明細書及び図面の記載を参酌すると概要以下の事項が記載されているものと認められる。
「第1図は一般的な可変コンデンサ……、2はアルミナ、ステアタイト等の絶縁体からなるステーター……。この場合、ローター電極10とステーター9の間の実質的な誘電体の厚みは数十ミクロン程度であり、……。……電極焼成を行なうと同時に接合を行なう。」(第2頁左上欄第4行?同頁右上欄第12行)
(4)同じく当審における拒絶の理由に引用された刊行物4の特開昭50ー37469号公報は、電子式時計のトリマーコンデンサに係わるものであって、その明細書及び図面の記載を参酌すると概要以下の事項が記載されているものと認められる。
「4×16×0.5m/mのステアタイト板でできたステータ18に、……、トリマーコンデンサ下面電極20と……取り付け部を、導電金ペーストにより780℃で焼き付け形成する。」(第2頁左上欄第10?16行)
【3】対比・判断
本願考案と前記刊行物1(以下、「引用例1」という。)に記載された考案とを対比すると、引用例1における「可変容量素子」もその記載全般からみて「トリマコンデンサ」といえるものであり、また引用例1における「セラミック板(4)」「導電皮膜(6)」「高誘電体被膜(7)」及び「金属板(8)」は、それぞれ本願考案における「セラミックス板」「固定電極」「誘電体」及び「可変電極」に相当するものと認められる。
したがって、両者は、以下のとおりの一致点及び相違点を有するものと認められる。
(一致点)
「可変電極と固定電極と誘電体とを備えたトリマコンデンサにおいて、
前記固定電極及び誘電体は、セラミックス板に固定電極が焼き付けられると共に、固定電極上に誘電体が焼き付けられたものであるトリマコンデンサ。」
(相違点)
(i)固定電極及び誘電体の焼き付けが、本願考案においては、セラミックス板に設けられた孔を介して固定電極がセラミックス板の両面に焼き付けられるものであるのに対して、引用例1においては、この点の構成がない点。
(ii)セラミックス板が、本願考案においては、機械的強度に富むセラミックス板であり、その抗折強度が20 Kgf/mm2以上のもので、かつ、その厚さが0.2?0.5mmであるのに対して、引用例1においては、この点が明示されていない点。
(iii)誘電体が、本願考案においては、その厚さが5?30μmであるのに対して、引用例1においては、この点が明示されいない点。
(検討)
相違点(i)について、本願考案において、セラミックス板に焼き付ける固定電極を、該セラミックス板に設けた孔を介して両面に設けることの技術的意義は、本願明細書の記載から明確ではないものの、電極のセラミックス板両面間での電気的接続と外部端子部との電気的接続を達成することにあるものと推認できる。しかしながら、引用例1においても、その第2図(b)を参酌すると、セラミック板(4)の両面間での電気的接続が小孔(5)を介して行われるものであり、またセラミックス板の両面の電極を焼き付け(焼成)により形成すると共に、該セラミックス板の孔を介して電気的接続を行うことは、前記引用例2にも電極膜(11)の焼成形成として開示されているように従来より周知の技術的事項である(その他必要で有れば、実願昭55ー43473号(実開昭56ー145836号)のマイクロフィルム参照)。したがって、本願考案のようにセラミックス板の両面に孔を介して固定電極を焼き付けて形成することは、当業者が容易になし得ることと認められる。
相違点(ii)について、引用例1におけるセラミック板(4)においても機械的強度を考慮するものであって当然に所望の機械的強度を備えていることが必要であり、この引用例1においても、前記摘記(ii)したように、先行技術における小型化に伴い「工程中で高誘電体セラミック薄板にマイクロクラックを生じさせた」との明示がなされており、機械的強度に係わる技術的事項が開示されているものと認められる。そして、コンデンサにおけるセラミック板(基板)として、機械的強度に富む材料(例えば、本願考案の実施例において具体的に選択されたセラミック材料であるアルミナ、ステアタイト等)を用いることは、上記刊行物3乃至4に記載されているように従来より周知の技術的事項であり、またこの基板としてのセラミック板の厚さ及び機械的強度に係る具体的数値の選定は、実用的なコンデンサを設計・製造するに当たって当業者が適宜に定める設計上の事項であると認められ、さらにこのセラミック板の厚さが具体的数値として0.5mmに選定されることも前記刊行物4に開示されているところである。したがって、セラミック板を構成する際、本願考案のように具体的数値として、厚さが0.2?0.5mmとすること及び抗折強度が20 Kgf/mm2以上とすることは当業者が適宜になし得ることと認められる。
相違点(iii)について、誘電体の厚さ寸法を薄くすることで、コンデンサの容量を大きくすることができると共にコンデンサを小型化することができることは、当業者における技術常識(例えば、前記引用例2参照)であり、また実際にコンデンサを構成するにあたって具体的数値を選定することは設計上の事項であると認められる。そして、この誘電体の厚さ寸法も、前記引用例2において10?50μmとなるような具体的数値を選定することが記載されているのであるから、本願考案において、誘電体の厚さが5?30μmとなるように構成することは当業者が適宜に定めうることと認められる。
また、本願考案のように構成することによる作用効果も当業者が容易に予測しうる程度のものと認められる。
【4】まとめ
以上のとおりであるから、本願考案は、刊行物1乃至4に記載された考案及び周知の技術的事項に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるので、実用新案登録法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
したがって、本願は、実用新案登録請求の範囲の請求項2について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-02-13 
結審通知日 2001-02-23 
審決日 2001-03-06 
出願番号 実願平5-67490 
審決分類 U 1 8・ 121- WZ (H01G)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 川嵜 健山崎 慎一  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 飯尾 良司
田口 英雄
考案の名称 トリマコンデンサ  
代理人 宇高 克己  

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