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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02F
管理番号 1039454
審判番号 審判1999-14732  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-09-14 
確定日 2001-04-23 
事件の表示 平成4年実用新案登録願第19688号「多気筒エンジンのクランクケース構造」拒絶査定に対する審判事件[平成5年9月3日出願公開、実開平5-66243]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続きの経緯・本願考案
本願は、平成4年2月18日の出願であって、その請求項1?2に係る考案は、平成11年10月12日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1?2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る考案(以下、「本願考案」という。)は、次のとおりのものである。
「クランク軸線に対し横方向に形成されたクランクケース端壁と同端壁に隣接して配設された端部シリンダのボア壁とによって形成されたサイアミーズ壁部を設け、上記サイアミーズ壁部の上部に開口する一方の端部を有し、クランクケース内の冷却水室の冷却水を、同クランクケースの上端に装架されるシリンダヘッド内部の冷却室に流通させる冷却水孔を上記サイアミーズ壁部に穿設すると共に、上記サイアミーズ壁部の下部に、シリンダを挟んでクランク軸線方向に延在するクランクケース内の2つの冷却水室を連通する通路部を設け、上記冷却水孔の他方の端部が上記通路部に開口してなることを特徴とする多気筒エンジンのクランクケース構造。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本出願前国内で頒布された実願昭58-20535号(実開昭59-126152号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)の、
(1)「この考案は、液冷式内燃機関の冷却装置で、特にシリンダブロックにおける冷却液通路構造の改良に関する。」(第1頁19行?第2頁1行)
(2)「第3図ないし第5図において、まず直列に配列した複数個(図中では4個)のシリンダ3の相互に隣接する外周壁を共通の境界壁13として接合すると共に、シリンダ3の外周には通常設けられるウォータジャケット5の他に上記境界壁13を図中斜め方向に貫通するようにしてドリル加工冷却通路14が設けられたいわゆるサイアミーズド型のシリンダブロック1が示されている。」(第5頁7行?14行)、
(3)「図中19はシリンダブロック1上部に各シリンダ3の外周に沿って複数設けられた通路で、上述した通路12と同様にシリンダブロック1側のウォータジャク5(「ウォータジャケット5」の誤記と認める)とシリンダヘッド2側のウォータジャケット6とを連通するものである。」(第6頁20行?第7頁5行)
の記載及び第3?5図の記載からみて、刊行物1には、
「クランク軸線に対し横方向に形成されたクランクケース端壁と同端壁に隣接して配設された端部シリンダのボア壁とによって形成されたサイアミーズ壁部を設け、上記サイアミーズ壁部の上部に開口する一方の端部を有し、クランクケース内のウォータジャケット5の冷却水を、同クランクケースの上端に装架されるシリンダヘッド2内部のウォータジャケット6に流通させる通路19を上記サイアミーズ壁部に穿設すると共に、上記通路19の他方の端部がクランクケース内のウォータジャケット5に開口している、多気筒エンジンのクランクケース構造。」(以下、「刊行物1記載の考案」という。)が記載されているものと認められる。なお、刊行物1の第3?5図をみると、クランクケース端壁と同端壁に隣接して配設された端部シリンダのボア壁とは、上端部が一体化された構造を有しているので、刊行物1記載の考案において、クランクケース端壁と同端壁に隣接して配設された端部シリンダのボア壁とによって、サイアミーズ壁部を形成していると認定した。

また、同じく原査定の拒絶の理由に引用され、本出願前国内で頒布された実願昭59-36802号(実開昭60-149848号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)の、
(4)「本考案はシリンダボア間の肉壁部に冷却水通路孔を設けたドライライナ方式の内燃機関のシリンダブロックに関する。」(第1頁18行?20行)、
(5)「第7図は本考案の別の実施例を示し、第5図に示す通路孔8および通路孔12のウォータジャケット7側を、アッパデッキ上面2aに平行で中心線Cの両側のウォータジャケット7、7を連通する通路孔13に連通させた例である。この実施例では、高温部Aの冷却性だけでなくボア3、3間のアッパデッキ2より下方の肉壁部4の冷却性も同時に向上する。」(第6頁15行?第7頁2行)
の記載及び第7図の記載からみて、刊行物2には、
「肉壁部の下部に、シリンダを挟んでクランク軸線方向に延在するクランクケース内の2つのウォータジャケット7、7を連通する通路孔13を設け、クランクケース内のウォータジャケット7の冷却水を、同クランクケースの上端に装架されるシリンダヘッド内部のウォータジャケットに流通させる通路孔8、12のクランクケース側の端部を上記通路孔13に開口してなる、多気筒エンジンのクランクケース構造。」(以下、「刊行物2記載の考案」という。)が記載されているものと認められる。

3.対比
本願考案と上記刊行物1記載の考案とを対比すると、後者の「クランクケース内のウォータジャケット5」、「シリンダヘッド2内部のウォータジャケット6」及び「通路19」は、それぞれそれらの設置位置及び機能からみて、前者の「クランクケース内の冷却水室」、「シリンダヘッド内部の冷却室」及び「冷却水孔」に相当するから、両者は、
「クランク軸線に対し横方向に形成されたクランクケース端壁と同端壁に隣接して配設された端部シリンダのボア壁とによって形成されたサイアミーズ壁部を設け、上記サイアミーズ壁部の上部に開口する一方の端部を有し、クランクケース内の冷却水室の冷却水を、同クランクケースの上端に装架されるシリンダヘッド内部の冷却室に流通させる冷却水孔を上記サイアミーズ壁部に穿設する、多気筒エンジンのクランクケース構造」で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉クランクケース内の冷却水室の冷却水をシリンダヘッド内部の冷却室に流通させる冷却水孔の他方の端部に関して、前者では、壁部の下部に、シリンダを挟んでクランク軸線方向に延在するクランクケース内の2つの冷却水室を連通する通路部を設け、冷却水孔の他方の端部が上記通路部に開口しているのに対して、後者では、冷却水孔の他方の端部がクランクケース内の冷却水室に開口している点。

4.当審の判断
上記相違点につき検討するに、刊行物2には、クランクケース内の冷却水室の冷却水をシリンダヘッド内部の冷却室に流通させる冷却水孔に関して、壁部の下部に、クランクケース内の2つの冷却水室を連通する通路部を設け、上記冷却水孔の他方の端部を上記通路部に開口したものが記載されており、該刊行物2記載の考案と刊行物1記載の考案とは、クランクケース内の冷却水室の冷却水を、同クランクケースの上端に装架されるシリンダヘッド内部の冷却室に流通させる、多気筒エンジンのクランクケースの冷却構造という、同一の技術分野に属するものである。
してみれば、刊行物1記載の考案における、クランクケース内の冷却水室の冷却水をシリンダヘッド内部の冷却室に流通させる冷却水孔の他方の端部を、刊行物2記載の構造とし、サイアミーズ壁部の下部に、シリンダを挟んでクランク軸線方向に延在するクランクケース内の2つの冷却水室を連通する通路部を設け、他方の端部が上記通路部に開口しているものとすることは、当業者がきわめて容易になし得ることと認められる。
そして、本願考案の作用効果は、刊行物1及び刊行物2記載の考案から当業者が予測できる範囲内のものと認められる。

5.むすび
したがって、本願考案は、刊行物1及び刊行物2に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-12-21 
結審通知日 2001-01-12 
審決日 2001-03-02 
出願番号 実願平4-19688 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (F02F)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 阿部 寛八板 直人  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 清水 信行
清田 栄章
考案の名称 多気筒エンジンのクランクケース構造  
代理人 広渡 禧彰  

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