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審決分類 審判    A63H
管理番号 1039462
審判番号 無効2000-40018  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-08-20 
確定日 2001-05-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第3064450号実用新案「人形」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第3064450号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯・本件考案
本件実用新案登録第3064450号に係る考案(平成11年6月1日出願、平成11年9月16日設定登録。以下「本件考案」という。)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項から判断して次のとおりのものである。
「上面に開口した縦穴5を有して、その縦穴5にイグサの束6を密に埋設した硬質の芯体4を胴体部1に内蔵し、頭部2に突設した下向きの接続棒3を上記芯体4における縦穴5内のイグサの束6に対し抜き挿し自在としたことを特徴とする人形。」
(なお、請求項1に記載された「蜜に」は「密に」の誤記と認められから、上記のように認定した。)

2.請求人の主張
これに対して、請求人は、本件考案の実用新案登録を無効とする、との審決を求め、その理由として、本件考案は、本件出願前に頒布された刊行物に記載された考案であるから実用新案法第3条第1項第3号に該当し、又、本件出願前に頒布された刊行物に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから実用新案法第3条第2項に該当し、その実用新案登録は無効とされるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証を提出している。

3.被請求人の対応
一方、平成12年11月16日付けで請求書副本の送達通知をし、期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが、被請求人からは何の応答もない。

4.甲第1号証及び甲第2号証
甲第1号証(実開平2-126689号公報)には、
「(1)先端が尖った(劣ったは誤記)棒体をもつ頭と、前記頭における棒体の差し込みを許容する差し込み部をもつ胴とを別々に準備し、前記頭を、該頭における棒体を介して前記胴における差し込み部に対して差し込みにより取り付けるようにした頭差し込み式人形であって、
上端に向けて開口する所望深さの充填部材収容孔を備えた適度の剛直性を有する胴本体と、
前記胴本体における充填部材収容孔内に収容される適度の弾性復元性を有する充填部材とからなる・・・頭差し込み式人形の胴構造体。
(2)前記胴本体が木材であって、前記充填部材が、前記胴本体における充填部材収容孔の深さにほぼ等しい長さを有するいぐさ材であって、前記いぐさ材を軸方向に沿って多数本束ね合わせたものからなる・・・請求項(1)に記載の頭差し込み式人形の胴構造体。」(実用新案登録請求の範囲)
が記載されている。

甲第2号証(登録実用新案第3036796号公報)には、
「【請求項1】上端が開口する所要深さの頭保持体収容孔を備えた適度の剛直性を有する胴芯本体と、適度の弾性復元性を有する頭保持体と、前記胴芯本体に基端が嵌入固定される腕芯体とからなる人形の胴芯であって、
前記胴芯本体の上端に前記頭保持体収容孔の両側に夫々切溝を設け、該両切溝底に上端が開口する腕芯体嵌装孔を設け、該嵌装孔に腕芯体の基端を嵌入固定した・・・人形の胴芯。
【請求項2】前記頭保持体がイ草・・・等の弾性復元性を有する材料からなり、前記胴芯本体が木材・・・等の剛直性を有する材料からなる・・・請求項1に記載の人形の胴芯。
【請求項4】前記頭保持体とその収容孔の少なくとも底との間に接着剤を介装した・・・請求項1、2又は3に記載の人形の胴芯。」(実用新案登録請求の範囲)、
「【符号の説明】
2 胴芯本体・・・
4 腕芯体
5 頭保持体収容孔・・・
12 頭
13 頭支持棒」
が記載されている。

5.対比
そこで、本件考案と甲第2号証記載の考案とを比較すると、甲第2号証記載の考案の「頭保持体収容孔5」、「木材等の剛直性を有する材料からなる胴芯本体2」、「頭12」、「頭支持棒13」が、本件考案の「縦穴5」、「硬質の芯体4」、「頭部2」、「接続棒3」に相当するから、
両者は、「上面に開口した縦穴5を有して、その縦穴5にイグサを埋設した硬質の芯体4を有し、頭部2に突設した下向きの接続棒3を上記芯体4における縦穴5内のイグサに対し挿した人形。」で一致し、次の各点で相違する。
(5-1)本件考案が「縦穴5にイグサの束を密に埋設した」のに対し、甲第2号証に記載のない点。
(5-2)本件考案が「芯体4を胴体部1に内蔵し」たのに対し、甲第2号証に記載のない点。
(5-3)本件考案が「頭部2に突設した下向きの接続棒3を上記芯体4における縦穴5内のイグサの束6に対し抜き挿し自在とした」に対し、甲第2号証に記載のない点。

6.当審の判断
上記(5-1)について検討すると、甲第2号証には、確かに、「イグサの束を密に埋設した」との記載はないが、「適度の弾性復元性を有する頭保持体」(請求項1)、「頭保持体がイ草・・・等の弾性復元性を有する材料からなり」(請求項2)との記載から、本件考案と同様に「接続棒(頭保持体)がぐらつくというようなことがなく、胴体部1に対する頭部2の固定状態が安定」(本件登録明細書【考案の効果】)することは、甲第2号証記載の考案も意図していると認められる。又、甲第1号証の「充填部材が、前記胴本体における充填部材収容孔の深さに略等しい長さを有するいぐさ材であって、前記いぐさ材を軸方向に沿って多数本束ね合わせたものからなる」(実用新案登録請求の範囲第(2)項)との記載から、甲第1号証には、「イグサの束を密に埋設した」ことが事実上記載されており、甲第1号証記載の考案を甲第2号証記載の考案に適用することは、当業者であれば、きわめて容易に推考できたものである。

上記(5-2)について検討すると、甲第2号証には、確かに、「芯体4を胴体部1に内蔵し」たとの記載はないが、甲第2号証記載の「胴芯本体2」はその用語から分かるとおり、胴体部の芯になるものであり、本件考案の「胴体部」とは異なるものである。
しかも、甲第2号証記載の「胴芯本体2」は、腕芯体4を備えていることから、本件考案の「芯体4」の実施例と同様に「芯体4・・・の横溝7には、・・・胴体部1に取付ける左右の腕部連結用の針金8を通して掛止することができる」(本件登録明細書【0011】)構成を有するものであり、甲第2号証に「胴体部」が記載されていないとしても、「胴体部」は開示されているに等しい事項である。

上記(5-3)について検討すると、甲第2号証には、確かに、「頭部2に突設した下向きの接続棒3を上記芯体4における縦穴5内のイグサの束6に対し抜き挿し自在とした」との記載はないが、上記(5-1)について検討したとおり、甲第1号証に「イグサの束を密に埋設した」ことが事実上記載されていることから、このような構成にあっては、「接続棒3を・・・イグサの束6に対し抜き挿し自在」とすることは明らかであり、甲第1号証の考案を甲第2号証の考案に適用することは、当業者であれば、きわめて容易に推考できたものである。

7.むすび
以上のとおりであるから、本件考案は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定において準用する特許法第169条第2項の規定において更に準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-03-06 
結審通知日 2001-03-16 
審決日 2001-04-09 
出願番号 実願平11-3830 
審決分類 U 1 111・ 121- Z (A63H)
最終処分 成立    
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 渡部 葉子
藤井 俊二
登録日 1999-09-16 
登録番号 実用新案登録第3064450号(U3064450) 
考案の名称 人形  

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