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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01H
管理番号 1039465
審判番号 不服2000-446  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-01-13 
確定日 2001-05-17 
事件の表示 平成9年実用新案登録願第6377号「高周波リレー」拒絶査定に対する審判事件[平成10年4月10日出願公開、実開平10-86号]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願考案
本願は、平成9年7月22日の実用新案登録出願(実願平9-6377号)であって、昭和63年9月14日に出願された実願昭63-121032号の一部を新たな実用新案登録出願としたものであって、その請求項1に係る考案は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、
「小径の貫通孔を複数設けた金属製のベースと、各貫通孔にそれぞれ挿通されベースの裏面からの突出部位がプリント基板に接続される複数の固定端子と、一対の固定端子間を接続する位置と固定端子から離れる位置との間で移動自在な可動接触片と、可動接触片を駆動する電磁石部と、少なくとも固定端子と可動接触片との接触部位をベースとの間で囲むようにベースに結合される金属製のカバーと、上記固定端子と上記貫通孔の内周面との間に充填されるフッ素樹脂の絶縁物とを備え、固定端子においてベースの表面に突出する部位の面積を貫通孔に挿通された部位の断面積よりも大きく形成し、可動接触片を固定端子の長手方向に移動自在として成る高周波リレー。」(以下、「本願考案」という。)
にあると認める。

2.引用例
A.これに対して、原審における平成11年3月18日付けの拒絶理由通知において引用文献3として示された実願昭56-109605号(実開昭58-14645号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、例えば、その
(1)明細書第2頁第5?10行の
『従来高周波を開閉する開閉器は、その周囲を金属または樹脂成形品に金属メッキを行なったシールドケースによりシールドされ、これらの開閉器をプリント基板に実装する場合には、シールドケースをプリント基板のアースパターン(べタアース)に確実に接続する必要があった。』
なる記載、および
(2)同第4頁第9行?第5頁第11行の
『以下、この考案を本出願人が先に提案した高周波用電磁リレーに適用した例に基づき、第3図以下の図面に基づき説明する。
合成樹脂で形成されるとともに、表面をメッキ、蒸着あるいは塗装等により導電性薄膜1cが形成されているシールドケース1とカバー2とでハウジングが構成されている。
このシールドケース1には後述の接点回路部を収納するための凹部1aと電磁石部を収納するための凹部1f等が設けられている。上記シールドケース1の凹部1aには、絶縁性樹脂でなる絶縁ブロック3d,4d,5dが嵌入され、これら絶縁ブロック3d,4d,5dにより保持される棒状の3本の固定端子3,4,5がその接点部3a,4a,5aがケース1内に、端子部3b(「3d」は「3b」の誤記),4b,5bがケース1外に突出するように固着される。カード9,10は、上記ケース1に形成されたガイド溝1d,1eでスライド可能に支持されており、このカード9,10の略中央には可動接触片11,12がそれぞれ固定されている。この可動接触片11の両端は上記固定端子3,4と接触可能に対向し、可動接触片12の両端は上記固定端子4,5と接触可能に対向している。』
なる記載、そして
(3)図面、特に第3図および第4図の図示内容、等からみて、
小方形の嵌入穴を3つ設けた金属製シールドケース1と、各嵌入穴にそれぞれ挿通されシールドケース1の外へ突出する端子部3b,4b,5bがプリント基板に接続される3本の固定端子3,4,5と、固定端子3,4間あるいは固定端子4,5間を接続する位置と固定端子から離れる位置との間で移動自在な可動接触片11,12と、可動接触片11,12を駆動する電磁石部14?19と、少なくとも固定端子3,4,5と可動接触片11,12との接触部位をシールドケース1との間で囲むようにシールドケース1に結合される金属製カバー2と、上記固定端子3,4,5と上記嵌入穴の内周面との間に嵌入される絶縁ブロック3d,4d,5dとを備え、固定端子3,4,5が棒状であって、可動接触片11,12を固定端子3,4,5の長手方向と直交する方向に移動自在として成る高周波用電磁リレー、
が記載されていると認められる。
B.同じく、引用文献4として示された特開昭61-153963号公報(以下、「引用例2」という。)には、同軸コネクタの構造に関し、
(1)公報第1頁右下欄第11?13行に
『コネクタ本体2内に弾性を有する導電体材料からなる中心導体3を保持したテフロン(登録商標)等からなる絶縁体4を嵌入する。』
と記載され、
(2)第2図には、上記記載に対応する同軸コネクタの構造が示されている。

3.対比
そこで、上記引用例1に記載されたもの(以下、単に、「引用例1のもの」という。)と本願考案とを比較すると、引用例1のものにおける「嵌入穴を3つ」、「金属製シールドケース1」、「外へ突出する端子部3b,4b,5b」、「3本の固定端子3,4,5」、「固定端子3,4間あるいは固定端子4,5間」、「金属製カバー2」、「嵌入される絶縁ブロック3d,4d,5d」そして「高周波用電磁リレー」なる各文言は、それらの意味、機能または作用等からみて、それぞれ、順に、本願考案における「貫通孔を複数」、「金属製のベース」、「裏面からの突出部位」、「複数の固定端子」、「一対の固定端子間」、「金属製のカバー」、「充填される絶縁物」、そして「高周波リレー」に相当すると認められるので、本願考案と引用例1のものとは、
小(寸法の)貫通孔を複数設けた金属製のベースと、各貫通孔にそれぞれ挿通されベースの裏面からの突出部位がプリント基板に接続される複数の固定端子と、一対の固定端子間を接続する位置と固定端子から離れる位置との間で移動自在な可動接触片と、可動接触片を駆動する電磁石部と、少なくとも固定端子と可動接触片との接触部位をベースとの間で囲むようにベースに結合される金属製のカバーと、上記固定端子と上記貫通孔の内周面との間に充填される絶縁物とを備えた高周波リレー、
である点で一致しており、下記の点で相違していると認められる。
[相違点]
(1)金属製のベースに設けた小寸法の貫通孔の形状が、本願考案では「小径」とあることから円形であるのに対して、引用例1のものが方形である点。
(2)固定端子と貫通孔の内周面との間に充填される絶縁物の材料が、本願考案では「フッ素樹脂」であるのに対して、引用例1のものでは何ら特定されていない点。
(3)固定端子の形状および固定端子と可動接触片との関連構成が、本願考案では、「固定端子においてベースの表面に突出する部位の面積を貫通孔に挿通された部位の断面積よりも大きく形成し、可動接触片を固定端子の長手方向に移動自在として成る」のに対して、引用例1のものでは、固定端子が棒状であって、可動接触片を固定端子の長手方向と直交する方向に移動自在として成る点。

4.当審の判断
続いて、上記の各相違点について、それぞれ検討する。
[1]相違点(1)について
高周波リレーにおいて、金属製のベースに設けた貫通孔の形状を円形にすることは、慣用手段である(一例として、原審における拒絶理由通知で引用文献7として示された特公昭60-24524号公報の第1図及び第4図参照)。
それ故、引用例1のものの貫通孔の形状を上記慣用手段に倣って円形とする程度のことは、当業者が必要に応じて適宜に採用し得る設計的事項にすぎないものと認められる。
[2]相違点(2)について
固定端子(中心導体3)と貫通孔(コネクタ本体2の内部)の内周面との間に充填される絶縁物の材料としてフッ素樹脂(登録商標「テフロン」)を用いることは、上記引用例2に記載されている。
それ故、引用例1のものにおいて、固定端子と貫通孔の内周面との間に充填される絶縁物の材料として上記引用例2のものに倣ってフッ素樹脂を適用する程度のことは、当業者が必要に応じてきわめて容易になし得る材料の選択にすぎないものと認められる。
[3]相違点(3)について
高周波リレー(高周波切替器)において、固定端子(固定接点10)のベース(本体側ケース9a)の表面に突出する部位の面積を貫通孔に挿通された部位の断面積よりも大きく形成し、可動接触片(可動中心導体11)を固定端子(固定接点10)の長手方向に移動自在として成る構造は、原査定の備考欄に提示した特開昭59-127401号公報に記載されているように、或いは、同じく原査定の備考欄に提示した特開昭60-216422号公報に見られるように、周知の技術手段である。
それ故、引用例1のものの固定端子の形状および固定端子と可動接触片との関連構成を、上記周知の技術手段に倣って固定端子においてベースの表面に突出する部位の面積を貫通孔に挿通された部位の断面積よりも大きく形成し、可動接触片を固定端子の長手方向に移動自在として成るように構成する程度のことは、当業者が必要に応じてきわめて容易になし得るところである。
そして、本願考案の構成によってもたらされる明細書に記載の効果も、引用例1のもの、引用例2のもの、そして上記周知・慣用の手段から当業者であれば予測できる範囲のものであって、格別なものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願考案は、その出願前に当業者が引用例1のもの、引用例2のもの、そして上記周知・慣用の手段に基いてきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-03-13 
結審通知日 2001-03-21 
審決日 2001-04-03 
出願番号 実願平9-6377 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (H01H)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 中川 真一  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 熊倉 強
藤本 信男
考案の名称 高周波リレー  
代理人 西川 惠清  
代理人 森 厚夫  

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