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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性 無効としない E04F
管理番号 1039479
審判番号 審判1999-35388  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-07-30 
確定日 2001-05-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第2534671号実用新案「配線用フロアパネル」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第一 本件考案
本件登録第2534671号実用新案は、平成3年12月2日に実用新案登録出願され、平成9年2月13日に設定登録がなされたものである。その登録実用新案の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」と言う。)は、明細書び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「略方形パネル(P)を配線経路(3)が直交して形成されるように設け、その配線経路(3)の底に床面不陸に追従する不陸追従部(2)を有し、該配線経路の直線部分と交差部分の上面開□縁に設けた段部(5)に直線部カバー板(4A)および交差部カバー板(4B)を落とし込み式に嵌めて配線経路(3)の上面開□を覆うことによって上面を平らに構成し、交差部カバー板(4B)の裏側を支える第1の支持部(7)を配線経路の交差部分の底に有するとともに、直線部カバー板(4A)の裏側を支える第2の支持部(7)を、不陸追従部(2)の配線経路幅方向略中央近傍であって、前記第1の支持部(7)と並んで配線経路を二経路に略区分するように、前記パネル(P)と一体成形により小柱状、または衝立状に、配線横切り可能な一定間隔をあけて複数個連続配置し、且つ、第1および第2の支持部(7)の頂部(7B)は、前記直線部カバー板(4A)および交差部カバー板(4B)の裏側を一定の面積で支える略平坦面に形成されていることを特徴とする配線用フロアパネル。」

第二 請求人の主張及び提示した証拠方法
請求人は、「登録第2534671号実用新案の請求項1に係る考案の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めており、その理由として、本件考案は、本件登録実用新案の出願前に公知の甲第1号証ないし甲第6号証に記載の考案に基いて、当業者がきわめて容易に想到できたものであり、実用新案法3条2項の規定に違反して登録されたものであるとしている。
特に、平成12年6月27日付け弁駁書において、構成要件中「略方形パネル?平らに構成し」との構成要件1?3については公知技術に属するものであり要部はその余にあると被請求人は答弁しているとした上で、請求人は以下の主張を行っている。
すなわち、構成要件4「交差部カバー板(4B)の裏側を支える第1の支持部(7)を配線経路の交差部分の底に有する」は、明らかに甲第5号証に開示されている図面符号(13)であり、明細書中の赤線を引いた部分である。
構成要件5及び6「直線部カバー板(4A)の裏側を支える第2の支持部(7)を、不陸追従部(2)の配線経路幅方向略中央近傍であって、前記第1の支持部(7)と並んで配線経路を二経路に略区分するように、前記パネル(P)と一体成形により小柱状、または衝立状に、配線横切り可能な一定間隔をあけて複数個連続配置し」は、直接には開示されていないが、第2の支持部(7)を第1の支持部(7)と並んで配線経路を二経路に区分するように、パネル(P)と一体成形により小柱状または衝立状に連続配置する構成は、基本的には甲第1号証に開示されているセパレーター(4)を、甲第5号証に開示されている前記支柱による列に代えることによって容易に実現することができるのである。
構成要件7「第1および第2の支持部(7)の頂部(7B)は、前記直線部カバー板(4A)および交差部カバー板(4B)の裏側を一定の面積で支える略平坦面に形成されている」は、技術的には甲第1号証及び甲第5号証(特に第4図)に開示されている。即ち、甲第1号証には図面の開示はないが、セパレータ(4)の高さは下部タイル(2)の高さと同位であるから,セパレータの頂部は上部タイル(1)が水平面状に接するように略平坦面に成るのは当然であるし、甲第5号証における支柱(13)の頂部が略平坦面に成ることも床パネル(1)が接することを考えれば、これも当然である。
してみれば、本件考案は、特に、甲第1号証,甲第3号証及び甲第5号証に係る各公知技術を見て、当業者であればきわめて容易に本件実用新案に係る構成を考案することができるものといえるのである。(同弁駁書2頁10行?3頁2行参照)
そして、以下の証拠方法を提出している。
甲第1号証:実願昭50-116117号(実開昭52-29722号)の願書に添付した明細書又は図面の内容を撮影したマイクロフィルム
甲第2号証:実願昭61-16504号(実開昭62-131037号)の願書に添付した明細書又は図面の内容を撮影したマイクロフィルム
甲第3号証:特開昭62-284854号公報
甲第4号証:特開平1-185117号公報
甲第5号証:実願平1-130841号(実開平3-74735号)の願書に添付した明細書又は図面の内容を撮影したマイクロフィルム
甲第6号証:実願平2-9327号(実開平3-99142号)の願書に添付した明細書又は図面の内容を撮影したマイクロフィルム

第三 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、答弁書において、概略、以下の反論を行っている。
すなわち、請求人は、本件考案は、甲第1?6号証にそれぞれ記載された各構成要件を容易に組み合わせたものであるとして、進歩性欠如を主張し実用新案法3条2項に違反する旨主張する。しかし、請求人は単に組み合わせの容易性を主張するのみで、各証拠との関係で組み合わせ容易性の具体的理由を全く主張していない。甲第1?6号証には、本件考案の構成4?7が記載されておらず、特に第1の支持部及び第2の支持部の各構成とそれらの関係が全く開示されていないので、甲第1?6号証のいずれの組み合わせを選択しても、本件考案の構成要件が具備する配線用フロアパネルを実現することができず。各証拠の組み合わせに係る容易性の判断を行うまでもなく、請求人の主張は理由がない。又、甲第1?6号証の各証拠を組み合わせるに際し、その組み合わせを動機付ける理由は見当たらず(この点に関する請求人の主張は全くない。)、いかなる観点からも本件考案の進歩性が否定される理由は見当たらない。

第四 当審での検討
一 甲第1?6号証に記載されている技術事項
1 甲第1号証(実願昭50-116117号[実開昭52-29722号]の願書に添付した明細書又は図面の内容を撮影したマイクロフィルム)
甲第1号証には、
(1) 「ビニール床タイルにおいて、1条ないしは数条の配線溝3を十文字に設けた下部タイル2と該下部タイル2に組合される上部タイル1とからなり、該配線溝3を床配線用の空間として使用する構造からなる配線用床タイル。」(同明細書1頁5?9行、実用新案登録請求の範囲参照)
(2) 「第1図は本考案の一実施例で、上部タイル1と下部タイル2からなり、下部タイル2には配線用の配線溝3が設けてあり、上部タイル1は下部タイル2の蓋として組合せて構成する。下部タイル2は電気通信ケーブル等が隠ぺいする程度の肉厚とし、配線溝3は配線を容易にするため十文字に設けられている。」(同2頁12?18行参照)
(3) 「第2図は本考案の他の実施例で、下部タイル2はセパレータ4を設け2条の配線溝3を持った構造よりなっている。」(同3頁1?3行参照)
(4) 「この考案に係る配線用床タイルを室内の床タイルとして利用すれば床は隠ぺい配線溝が縦横に連結されるので、室内の任意の個所から配線が容易に引出すことが可能となり、露出配線は皆無となる。そのほか室内の美観上と、配線作業が容易になる等効果的な利点がある。」(同3頁20行?4頁5行参照)
(5) 第2図
の記載があり、上記(1)?(5)の記載からみて、
「略方形下部タイルを配線溝が直交して形成されるように設け、上部タイルを蓋として組合せて配線溝の上面開□を覆うことによって上面を平らに構成し、配線溝幅方向略中央近傍であって、配線溝を二経路に略区分するように、前記下部タイルと一体成形により衝立状に、セパレータを配置した配線用床タイル」
が記載されているものと認める。

2 甲第2号証(実願昭61-16504号[実開昭62-131037号]の願書に添付した明細書又は図面の内容を撮影したマイクロフィルム)
甲第2号証には、
(1) 「方形ボードの上面に直交する複数本の配線溝を有し、その配線溝の上面開口を覆ってボード上面を平らに構成する配線用ユニットフロアパネルを布設し、各配線用ユニットフロアパネルの配線溝の連続によって形成された格子状配線溝に、配線の種類別の表示を施したフロアパネル装置。」(同明細書1頁5?10行、実用新案登録請求の範囲参照)
(2) 「第1図は本考案フロアパネル装置に用いる配線用ユニットフロアパネルP1の一実施例を示すカバー板および隔離部材を外した状態の斜視図である。一辺が例えば50cmの正方形ボード1の上面に、その中央で直交させた十字状の配線溝2が設けらもれている。・・・・・上記十字状配線溝2を覆うカバー板3は、その配線溝2を一度に覆うように十字形をしていて、溝2の開口縁に形成した段部4に落し込み式にはめることにより、十字形カバー板3の上面がボード1の上面と一致するように構成されている。十字形カバー板3に代えてボード1の上面と同形同大の平板カバーで覆ってボード1の上面を平らにしてもよい。」(同3頁20行?4頁18行参照)
(3) 第1図及び第2図
の記載があり、上記(1)?(3)の記載からみて、
「正方形ボードを配線溝が直交して形成されるように設け、該配線溝の直線部分と交差部分の上面開□縁に設けた段部に直線部カバー板及び交差部カバー板を落とし込み式に嵌めて配線溝の上面開□を覆うことによって上面を平らに構成した配線用ユニットフロアパネル」
が記載されているものと認める。

3 甲第3号証(特開昭62-284854号公報)
甲第3号証には、
(1) 「所定の間隔を置いて配置した配線溝形成用ブロック相互を可撓性シートで結合して、ブロックとブロックの間に可撓性シートを底とする配線溝を形成し、その配線溝の上面開口をカバー板で覆って上面を平らに構成したフロアパネル装置。」(同明細書1頁下段左欄5?9行、特許請求の範囲第1項参照)
(2) 「(作用)本発明のフロアパネル装置を床に敷設すると、床面に連続した配線溝3が形成されるもので、その配線溝3に電力線・電話線・信号線等を収めてカバー板4で覆う。そして設置された負荷機器の最寄りの配線から分岐線を引出して負荷機器と接続する。床がコンクリートの打放し等で多少不陸(凹凸)があっても、配線溝3の底の部分でシート2が自由にたわむのでフロアパネル装置は床に密着する。」(同3頁上段左欄1?11行参照)
(3) 「(実施例)所定の間隔を置いて配置した配線溝形成用ブロック1・1相互を可撓性シート2で結合して、そのブロック1とブロック1の間に可撓性シート2を底とする配線溝3を形成したパネル基体は、例えば一辺が40?60cmの正方形、あるいは長方形、その他一定の幅を有する長尺状のもの、またあらかじめ広い面積に作られ、多数の配線溝を持ったものなど任意である。」(同3頁下段左欄4?12行参照)
(4) 「可撓性シート2は合成樹脂シート、ゴムシート、極薄の鋼板・アルミニウム板・硬質合成樹脂板など任意で、要するに床面の凹凸に倣ってたわむ性質を持ったものを用いる。」(同3頁下段右欄1?4行参照)
(5) 「カバー板4の形状としては、次の各種のものを採用できる。・・・・・d.1個のユニットパネルの配線溝の上面開口のみを一度に覆うカバー板(第1図・第12図示の十字形および井桁形・格子形等)。・・・・・また上記d・e項記載の配線溝3の上面開口のみを覆う一体または分割式のカバー板の場合は、配線溝3の開口縁に形成したカバー板の厚さと等しい高さの段部1D(第2図示)に落し込み式にはめるものである。」(同4頁上段右欄13行?同下段右欄18行参照)
(6) 「敷設によって床に連続した配線溝3を容易に形成することができ、その配線溝3に各種配線を上方から収めるので配線および分岐接続等の作業が簡単で楽である。敷設後の配線変更その他点検などに際しては、必要箇所のカバー板4を除去することにより、上記の作業を迅速容易に行うことができる。敷設する床面に多少の凹凸があってもフロアパネル装置はその凹凸になじんで密着するので、がたつきがなくて歩行感覚に優れ、また負荷機器も安定する。」(同6頁下段右欄20行?7頁上段左欄10行参照)
(7) 第1?6図及び第12図
の記載があり、上記(1)?(7)の記載からみて、
「略方形可撓性シートを配線溝が直交して形成されるように設け、その配線溝の底に床面不陸に追従する不陸追従部を有し、該配線溝の直線部分と交差部分の上面開□縁に設けた段部に直線部カバー板および交差部カバー板を落とし込み式に嵌めて配線溝の上面開□を覆うことによって上面を平らに構成した配線用フロアパネル装置」
が記載されているものと認める。

4 甲第4号証(特開平1-185117号公報)
甲第4号証は床配線用ダクトに関し、その特許請求の範囲には以下のとおりの記載がある。
「1)分電盤、情報盤等から床面に敷設される床配線用ダクトへ引き込まれたケーブルを、床面に敷設される配線ビットを備えた配線用床材へ分岐配線するため、前記配線ビットの側面開口に側壁が面するよう敷設される床配線用ダクトであって、前記配線ビットの側面開口に面する側壁に折溝を設けたことを特徴とする床配線用ダクト。
2)分電盤、情報盤等から床面に敷設される床配線用ダクトへ引き込まれたケーブルを、床面に敷設される配線ビットを備えた配線用床材へ分岐配線するため、前記配線ビットの側面開口に側壁が面するよう敷設される床配線用ダクトであって、その略中央に強電用配線通路と弱電用配線通路とに分ける仕切壁を設けると共に、当該仕切壁及び前記配線ビットの側面開口に面する側壁に折溝を設けたことを特徴とする床配線用ダクト。」

5 甲第5号証(実願平1-130841号[実開平3-74735号]の願書に添付した明細書又は図面の内容を撮影したマイクロフィルム)
甲第5号証には、
(1) 「〔実施例〕次に実施例について説明すると、符号1は平面視矩形状の床パネル、2は断面下向きコ字型の長手のカバ一体、3は断面上向きコ学型の部材から成る枠体ユニットを各々示す。」(同明細書4頁15?19行参照)
(2) 「枠体ユニット3は、前記平面視矩形状の床パネル1に対応する平面視矩形の環状の内周枠部8と、該内周枠部8の4角部から平面視で互いに90度違えて外向きに突出する8本の枝枠部9とから成り、内周枠部8は底板10と該底板10の左右両側から上向きに屈曲させた左右一対の側板11a、11bにて構成され、同様に枝枠部9は底板10と該底板10の左右両側から上向きに屈曲させた左右一対の側板12a、12bにて構成され、底板10は一体的に延設されている。」(同5頁4?13行参照)
(3) 「床パネル1の周縁に沿って配設する配線コード用の断面下向きコ字型のカバ一体2は、図示するように、枠体ユニット3における内周枠部8及び枝枠部9の各底板10上に載置され、且つ隣接する床パネル1、1の周側板5、5との間に嵌挿される。符号13は、内周枠部8の各角部と枝枠部9との連接個所の底板10から上向きに突設する支柱で、前記連接個所に集まるカバー体2の端部下面を支持するようにするものである。」(同6頁17行?7頁6行参照)
(4) 第1?4図
の記載があり、上記(1)?(4)の記載からみて、
「枠体ユニットを溝通路が直交して形成されるように設け、該溝通路の直線部分と交差部分の上面開□にカバー体を落とし込み式に嵌めて溝通路の上面開□を覆うことによって上面を平らに構成し、カバー体の裏側を支える支柱を溝通路の交差部分の底板に有し、且つ、支柱の頂部は、前記カバー体の裏側を一定の面積で支える略平坦面に形成されている床パネル装置」
が記載されているものと認める。

6 甲第6号証(実願平2-9327号[実開平3-99142号]の願書に添付した明細書又は図面の内容を撮影したマイクロフィルム)
甲第6号証には、
(1) 「本考案は、コンクリート等の床基盤上に多数個の床用ブロックを整列して載置するようにした床装置に関するものである。」(同明細書1頁19行?2頁1行参照)
(2) 「例えば、第10図に示すように、縦横両コード挿通構2、3の側面に段部13を形成する一方、縦横のコード挿連溝2、3で囲われた突起部lbを前記段部13と同じ高さ寸法に形成することにより、各コード挿通溝2、3を1枚のカバー体14にて覆うとか、或いは、板体にて床用ブロックと同じ平面形状に形成して、単に床用ブロックの上面に載置するなど、種々の形態を採用できることは云うまでもない。」(同10頁1?9行参照)
(3) 第10図
の記載があり、上記(1)?(3)の記載からみて、
「略方形床用ブロックをコード挿通溝が直交して形成されるように設け、該コード挿通溝の直線部分と交差部分の上面開□縁に設けた段部にカバー体を落とし込み式に嵌めてコード挿通溝の上面開□を覆うことによって上面を平らに構成し、カバー体の裏側を支える突起部をコード挿通溝の交差部分の底面に有し、且つ、突起部の頂部は、前記カバー体の裏側を一定の面積で支える略平坦面に形成されている床装置」
が記載されているものと認める。

二 対比、検討
1 本件考案と甲第3号証に記載されたものとの対比
本件考案と、甲第3号証に記載されたものとを対比すると、本件考案における、「パネル」、「配線経路」、「フロアパネル」は、甲第3号証に記載されたものにおける、「可撓性シート」、「配線溝」、「フロアパネル装置」に対応し、両者の一致点、相違点は、下記のとおりとなる。
一致点
「略方形パネルを配線経路が直交して形成されるように設け、その配線経路の底に床面不陸に追従する不陸追従部を有し、該配線経路の直線部分と交差部分の上面開□縁に設けた段部に直線部カバー板および交差部カバー板を落とし込み式に嵌めて配線経路の上面開□を覆うことによって上面を平らに構成した配線用フロアパネル」である点。
相違点1
本件考案においては、「交差部カバー板(4B)の裏側を支える第1の支持部(7)を配線経路の交差部分の底に有」するのに対し、甲第3号証のものにおいては、このような構成を有していない点。
相違点2
本件考案においては、「直線部カバー板(4A)の裏側を支える第2の支持部(7)を、不陸追従部(2)の配線経路幅方向略中央近傍であって、前記第1の支持部(7)と並んで配線経路を二経路に略区分するように、前記パネル(P)と一体成形により小柱状、または衝立状に、配線横切り可能な一定間隔をあけて複数個連続配置」するのに対し、甲第3号証のものにおいては、このような構成を有していない点。
相違点3
上記相違点1及び2に関連して、本件考案においては、「第1および第2の支持部(7)の頂部(7B)は、前記直線部カバー板(4A)および交差部カバー板(4B)の裏側を一定の面積で支える略平坦面に形成されている」のに対し、甲第3号証のものにいては、第1および第2の支持部そのものの構成がないことから、当然のこととしてこのような構成を有していない点。

2 相違点に対する判断
(1) 相違点1について
甲第5号証には、「枠体ユニットを溝通路が直交して形成されるように設け、該溝通路の直線部分と交差部分の上面開□にカバー体を落とし込み式に嵌めて溝通路の上面開□を覆うことによって上面を平らに構成し、カバー体の裏側を支える支柱を溝通路の交差部分の底板に有し、且つ、支柱の頂部は、前記カバー体の裏側を一定の面積で支える略平坦面に形成されている床パネル装置」が記載され、又甲第6号証には、「略方形床用ブロックをコード挿通溝が直交して形成されるように設け、該コード挿通溝の直線部分と交差部分の上面開□縁に設けた段部にカバー体を落とし込み式に嵌めてコード挿通溝の上面開□を覆うことによって上面を平らに構成し、カバー体の裏側を支える突起部をコード挿通溝の交差部分の底面に有し、且つ、突起部の頂部は、前記カバー体の裏側を一定の面積で支える略平坦面に形成されている床装置」が記載されている。
これらの「支柱」及び「突起部」は、「連接個所に集まるカバー体2の端部下面を支持するようにするもの」であり、又、「突起部lbを前記段部13と同じ高さ寸法に形成することにより、各コード挿通溝2、3を1枚のカバー体14にて覆う」ものであって、何れも本件考案における、「配線経路の交差部分の底に」構成された「交差部カバー板の裏側を支える第1の支持部」に相当するものが開示されていると認められる。
そして、これら甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証及び本件考案は、何れもこの種の配線用フロアパネル等に関するものであり、同じ技術分野に属するものである。
してみると、上記甲第3号証に記載された配線用フロアパネル装置に、上記甲第5号証あるいは甲第6号証において開示されているような「支柱」及び「突起部」を適用することに格別の困難性はなく、このようなことは当業者であれば必要に応じてきわめて容易になし得た程度のことである。

(2) 相違点2について
甲第1号証によると、「略方形下部タイルを配線溝が直交して形成されるように設け、上部タイルを蓋として組合せて配線溝の上面開□を覆うことによって上面を平らに構成し、配線溝幅方向略中央近傍であって、配線溝を二経路に略区分するように、前記下部タイルと一体成形により衝立状に、セパレータを配置した配線用床タイル」が記載されている。
上記甲第1号証における「セパレータ」は、「2条の配線溝3を持った構造」、及び「上部タイル1は下部タイル2の蓋として組合せて構成する」との記載によると、上部タイルの裏側を支えるものであり、「配線溝を二経路に略区分する」ものであることが認められる。
しかしながら、上記甲第1号証における「セパレータ」は、「下部タイルと一体成形により衝立状に」形成されるものであり、相違点2における、特に「第1の支持部(7)と並んで配線経路を二経路に略区分するように、前記パネル(P)と一体成形により小柱状、または衝立状に、配線横切り可能な一定間隔をあけて複数個連続配置」するとの点については、甲第1号証を検討しても、何ら記載されてなく、示唆するところもない。
甲第4号証によると、分電盤、情報盤等から床面に敷設される床配線用ダクトへ引き込まれたケーブルを、床面に敷設される配線ビットを備えた配線用床材へ分岐配線するため、前記配線ビットの側面開口に側壁が面するよう敷設される床配線用ダクトにおいて、その略中央に強電用配線通路と弱電用配線通路とに分ける仕切壁を設ける点が開示されているが、上記相違点2については何ら記載されてなく、示唆するところもない。
その他、各証拠方法を検討しても、上記相違点2については何ら記載されてなく、示唆するところもない。
そして、本件考案は、特に「第1の支持部(7)と並んで配線経路を二経路に略区分するように、前記パネル(P)と一体成形により小柱状、または衝立状に、配線横切り可能な一定間隔をあけて複数個連続配置」するとの構成により、「必要があれば、支持部の一側に通っている配線を支持部相互の間隔があいている所を通して反対側に移し替えることができる。」(本件実用新案登録公報2頁4欄22?24行)、「支持部7の破線状設置によって生じた隣合う支持部7・7間の空所を通して支持部7の右側に通っている電線を左側に替えることができる。」(同3頁5欄26?28行)、及び「支持部の一側に通っている配線を支持部相互間を通して反対側に移し替えることができて、配線の区分整理とともに配線敷設経路変更にも容易に対応できるもので、配線管理が向上する効果がある。」(同3頁6欄13?17行)との作用効果を奏するものである。

(3) 相違点3について
さきの「(1) 相違点1について」で検討したように、甲第5号証の「支柱」あるいは甲第6号証の「突起部」において、本件考案における「交差部カバー板(4B)の裏側を支える第1の支持部(7)を配線経路の交差部分の底に有」する点が開示されており、それら「支柱」及び「突起部」の「頂部」は、カバー体の裏側を支える略平坦面に形成されているものの、「(2) 相違点2について」で検討したように、上記相違点2については、各証拠方法何れにおいても何ら記載されてなく、示唆するところもない。
してみると、第1の支持部の頂部についての断片的な開示はあるものの、各証拠方法何れにおいても、上記相違点3における点は何ら記載されてなく、示唆するところもない。

(4) まとめ
そして、本件考案は、上記各相違点を含めた、その全体の構成により、明細書記載の効果を奏するものである。
以上、本件考案は、甲第1号証?甲第6号証に記載されたものに基いて、当業者がきわめて容易になし得たものとすることはできない。

第五 結び
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件考案の登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-03-08 
結審通知日 2001-03-21 
審決日 2001-04-03 
出願番号 実願平3-107231 
審決分類 U 1 122・ 121- Y (E04F)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 山口 由木住田 秀弘  
特許庁審判長 幸長 保次郎
特許庁審判官 宮崎 恭
鈴木 憲子
登録日 1997-02-13 
登録番号 実用新案登録第2534671号(U2534671) 
考案の名称 配線用フロアパネル  
代理人 牛木 理一  
代理人 高橋 隆二  
代理人 元井 成幸  
代理人 菅 直人  

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