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審決分類 審判 全部申し立て   A61B
管理番号 1039498
異議申立番号 異議1999-72420  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-06-08 
確定日 2001-01-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2587238号「内視鏡カバー方式の内視鏡」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2587238号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続きの経緯
実用新案登録第2587238号の請求項1に係る考案の手続きの経緯は、以下のとおりである。
出願 平成5年2月12日
設定登録 平成10年10月9日
実用新案登録異議の申立て 平成11年6月8日(旭光学工業株式会社)
取消理由通知 平成11年10月21日
意見書、訂正請求 平成12年1月11日

2.訂正請求について
2-1.請求の趣旨及び訂正事項
訂正請求の趣旨は、実用新案登録第2587238号の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正事項は、以下のとおりのものである。

訂正事項a
実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1を、
「先端構成部と基端構成部とを軟性の管状部材で気密に接続した内視鏡カバーに、内視鏡を装着する内視鏡カバー方式の内視鏡であって、
前記管状部材は、内部に複数の軟性のチャンネル管を備え、
前記複数のチャンネル管を合わせたときの剛性は、前記管状部材の剛性より高い
ことを特徴とする内視鏡カバー方式の内視鏡。」と訂正する。

訂正事項b
実用新案登録明細書の段落番号【0013】の「【課題を解決するための手段および作用】?高くする。」を、
「【課題を解決するための手段および作用】
本考案の内視鏡カバー方式の内視鏡は、先端構成部と基端構成部とを軟性の管状部材で気密に接続した内視鏡カバーに、内視鏡を装着する内視鏡カバー方式の内視鏡であって、前記管状部材は、内部に複数の軟性のチャンネル管を備え、前記複数のチャンネル管を合わせたときの剛性を前記管状部材の剛性より高くする。」と訂正する。
訂正事項c
実用新案登録明細書の段落番号【0046】の「【考案の効果】?効果がある。」を
「【考案の効果】
以上説明したように本考案の内視鏡カバー方式の内視鏡によれば、管状部材は、内部に複数の軟性のチャンネル管を備え、前記複数のチャンネル管を合わせたときの剛性を前記管状部材の剛性より高くしたので、チャンネル付き内視鏡カバーの座屈を防止することができ、安価で、取り扱い性に優れ、挿入部の操作性が向上するという効果がある。」と訂正する。

2-2.訂正要件の適否及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当する。
上記訂正事項b、cは、実用新案登録請求の範囲の減縮に伴う明瞭でない記載の釈明に該当する。
そして、これらの訂正はいずれも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内であり、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

2-3.独立登録要件
2-3-1.訂正明細書の請求項1に係る考案
訂正明細書の請求項1に係る考案は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「先端構成部と基端構成部とを軟性の管状部材で気密に接続した内視鏡カバーに、内視鏡を装着する内視鏡カバー方式の内視鏡であって、
前記管状部材は、内部に複数の軟性のチャンネル管を備え、
前記複数のチャンネル管を合わせたときの剛性は、前記管状部材の剛性より高い
ことを特徴とする内視鏡カバー方式の内視鏡。」

2-3-2.刊行物の記載事項
当審で通知した取消理由において引用した刊行物1である、特開平3-29634号公報(実用新案登録異議申立人 旭光学工業株式会社が提出した甲第1号証)には、以下の技術が記載されているものと認められる。
『先端部と基端部とを有する筒状体(21)により構成されるシース部(20)に、内視鏡を装着するようにした内視鏡用シースにおいて、前記筒状体は、例えばシリコンゴムのように伸縮性のある素材で薄肉に形成されており、かつ、前記筒状体の内部に複数のチャンネル、例えば吸引チャンネル、送気チャンネル、送水チャンネル等を有するチャンネル部(24)を備え、前記チャンネル部は、例えば四フッ化エチレン樹脂から形成されている内視鏡用シース。』

2-3-3.対比・判断
訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)と刊行物1に記載された考案とを対比すると、刊行物1記載の考案の先端部、基端部及びシース部は、それぞれ本件考案の先端構成部、基端構成部及び内視鏡カバーに相当し、また刊行物1記載の考案の筒状体は、例えばシリコンゴムのように伸縮性のある素材で薄肉に形成されていることから、本件考案の管状部材に相当する。

したがって、本件考案と刊行物1記載の考案とは、
「先端構成部と基端構成部とを軟性の管状部材で気密に接続した内視鏡カバーに、内視鏡を装着する内視鏡カバー方式の内視鏡。」
である点で一致し、次の点で相違している。

相違点
本件考案においては、「前記管状部材は、内部に複数の軟性のチャンネル管を備え、前記複数のチャンネル管を合わせたときの剛性が、前記管状部材の剛性より高い」のに対して、
刊行物1記載の考案においては、前記筒状体(本件考案の管状部材に相当する。)は内部に、吸引チャンネル、送気チャンネル、送水チャンネル等の複数のチャンネル(管路)を含むが、複数の管体から構成されるものとは認められず、さらに、このチャンネル部と前記筒状体との間の剛性の高低が明確でない点で相違している。

そして、本件考案は、上記相違点に係る、複数の軟性の管体を前記管状部材内に備え、これら複数の軟性の管体を合わせたときの剛性を、前記管状部材の剛性より高くすることによって、「カバー用内視鏡の挿入部の可撓性バランスを崩すことなく、安価で、挿入部カバー部が座屈しにくい構造にすることができ、操作性及び取り扱い性を向上させることができる。また、カバー外皮の耐性を使い捨て用として必要十分なものに抑えることができるので、製造原価を低減できる。」という訂正明細書(段落番号【0039】参照)記載の特有の効果を奏するものである。

したがって、本件考案は、前記取消理由に引用した刊行物1記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることができない。
したがって、本件考案は実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。

2-3-4.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.実用新案登録異議申立てについて
3-1.異議申立ての理由の概要
異議申立人旭光学工業株式会社は、本件請求項1に係る考案は、甲第1号証(特開平3-29634号公報)に記載された考案から、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができないものであるから、実用新案登録を取り消すべきと主張している。
3-2.判断
本件考案は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められ、上記2-3.で示したとおり、甲第1号証刊行物に記載された考案からきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。
また、他に本件考案についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認めない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
内視鏡カバー方式の内視鏡
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 先端構成部と基端構成部とを軟性の管状部材で気密に接続した内視鏡カバーに、内視鏡を装着する内視鏡カバー方式の内視鏡であって、
前記管状部材は、内部に複数の軟性のチャンネル管を備え、
前記複数のチャンネル管を合わせたときの剛性は、前記管状部材の剛性より高い
ことを特徴とする内視鏡カバー方式の内視鏡。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、内視鏡カバーに内視鏡を装着する内視鏡カバー方式の内視鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、内視鏡は医療分野等において広く用いられるようになった。医療分野に使用される内視鏡は、生体内に挿入させた場合、挿入部の先端部に設けられた観察窓が体液等の付着により、十分に観察できなくなることがある。このため、手元側での操作により、観察窓に流体を吹き付けて観察窓に付着した体液等を除去できるように送気管路とか送水管路が設けてある。また、不用な体液等を吸引して排出する吸引管路が設けられているものもある。
【0003】
また、生検鉗子による組織の採取とか、処置具による治療処置等を行うことができるように鉗子チャンネル(処置具チャンネル)が設けられているものもある。
【0004】
上記送気管路等の管路とか、鉗子チャンネルが設けられた内視鏡では、患者等に使用した場合には、感染症等を確実に防ぐために洗浄とか滅菌処理が施される。しかしながら、完全に洗浄とか滅菌処理を施こすためには時間がかかるため、内視鏡の使用効率が低下するとか、滅菌処理などの作業が面倒である等の問題がある。
【0005】
このため、内視鏡自体を内視鏡カバーで覆った状態で使用することにより、使用後においても内視鏡自体は不潔にならないようにして洗浄とか滅菌処理を施こすことを必要としない内視鏡カバー方式の内視鏡が提案されている。
【0006】
例えば、特開平3-29634号には内視鏡挿入部をカバー(シース)内に挿入して、内視鏡挿入部を覆うようにしたカバーが開示されている。カバー内に内視鏡挿入部を着脱する操作を容易にするために、カバー拡張器から内視鏡挿入部が挿入される挿入部カバー部内に空気を送り込んで、挿入部カバー部内を膨らますことが行われる。
【0007】
これら挿入部カバー部は、単体での取り扱い時にカバー外皮が座屈して穴があいたり、使用中に破れたりしないように使い捨てではあるが、ある程度の強度を持たせるためにポリウレタン等の樹脂からなるチューブで構成されている。また機種によっては鉗子挿通用のチャンネルや、送気送水用の管路を挿入部カバー部内に配している。
【0008】
これらの軟性樹脂によるチューブ類は、カバー内部に挿入されるカバー用内視鏡の可携性のバランスを崩したりしないよう極力柔軟な材料で構成するが、自身の管腔が潰れたり座屈しない程度の剛性が必要とされ、カバー部全体ではある程度の曲げ剛性を有している。
【0009】
つまり、挿入部カバー部は、内視鏡が挿入されていない状態では、潰れたり折れたりし易く、一度折れぐせがつくと、その部分で繰り返し折れて、カバー外皮にピンホールができたりして、使用できなくなる。そこで、耐性を高めるために、カバー外皮の肉厚を上げたり、硬度を高めたりして、折れにくくしていた。
【0010】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、使い捨て用内視鏡カバーにおいては、1症例分の耐性があればよく、カバー外皮の肉厚を必要以上に上げることは材料費のムダとなり、製品の価格をつり上げる原因という問題がある。
【0011】
また、硬度を高めることは、潰れに対しては強くなっても、かえって座屈し易くなったり、対象に合わせて調整した内視鏡の可携性バランスを変えてしまい、挿入性を悪化させる虞がある。
【0012】
本考案は、上述した点に鑑みてなされたもので、チャンネル付き内視鏡カバーの座屈を防止し、安価で、操作性、取り扱い性の優れた内視鏡カバー方式の内視鏡を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段および作用】
本考案の内視鏡カバー方式の内視鏡は、先端構成部と基端構成部とを軟性の管状部材で気密に接続した内視鏡カバーに、内視鏡を装着する内視鏡カバー方式の内視鏡であって、前記管状部材は、内部に複数軸軟性のチャンネル管を備え、前記複数チャンネル管を合わせたときの剛性を前記管状部材の剛性より高くする。
【0014】
【実施例】
図1及至図5は本考案の一実施例に係わり、図1はカバー方式の内視鏡を備えたカバー方式の内視鏡装置の構成を示す全体図、図2はカバー用内視鏡の構成を示す外観図、図3はカバー用内視鏡の先端部の外観を示す外観図、図4は挿入部カバー部の先端部の外観を示す外観図、図5はカバー方式の内視鏡の主要部の構成を示す断面図である。
【0015】
図1に示すように内視鏡カバー方式の内視鏡装置(以下、カバー方式の内視鏡装置と略記する)1は、チャンネル付き内視鏡カバー(以下、カバーと略記する)2A及びこのカバー2Aに装着されるカバー用内視鏡2Bからなるチャンネル付き内視鏡カバー方式の内視鏡(以下、カバー方式の内視鏡と略記する)2と、このカバー用内視鏡2Bに照明光を供給する光源装置3と、カバー用内視鏡2Bに内蔵された撮像手段に対する信号処理を行うビデオプロセッサ4と、カバー2Aのチューブを介して送気・送水などを行う流体制御装置5と、カバー2Aにカバー用内視鏡2Bを装着するために使用されるチャンネル付き内視鏡カバー拡張器(以下、カバー拡張器と略記する)6と、前記ビデオプロセッサ4により信号処理された映像信号を表示するモニタ7とから構成され、光源装置3、ビデオプロセッサ4、流体制御装置5、拡張器6はカート8に収納され、カート8の上面にモニタ7が載置されるようになっている。
【0016】
内視鏡検査が行われる場合、清潔なカバー2Aによって清潔なカバー用内視鏡2Bは覆われ、検査の後にはカバー2Aは廃棄され、一方、カバー用内視鏡2Bは、新しい清潔なカバー2Aによって覆われ、繰り返し使用されることが特徴となる。
【0017】
図2に示すように、上記カバー用内視鏡2Bは、細長で可撓性を有する内視鏡挿入部(以下、挿入部と略記する)11Bと、この挿入部11Bの基端側に形成された内視鏡操作部(以下、操作部と略記する)12Bと、この操作部12Bの側部から延出されたユニバーサルコード13Bとからなり、このユニバーサルコード13Bの末端に設けたコネクタ14を前記光源装置3に着脱自在で接続することができ、この光源装置3に接続することにより、ユニバーサルコード13B内を挿通する図示しないライトガイドの末端には光源装置3内部のランプからの照明光が供給される。また、上記コネクタ14からケーブル16が延出され、このケーブル16の末端の信号コネクタ17をビデオプロセッサ4に着脱自在で接続することができる(図1参照)。さらに、挿入部11Bの外表面には抗菌剤がコーティングされている。尚、挿入部11Bの抗菌剤は、外表面にコーティングしたものに限らず、外表面の材質を抗菌剤入りのものにしたものでもよい。
【0018】
操作部12Bにはユニバーサルコード13Bの基端が突出される側面と反対側に湾曲操作ノブ15が設けられ、この湾曲操作ノブ15を操作することにより、挿入部11Bの先端側に設けた先端部18a湾曲部を湾曲できるようになっている。また、操作部12Bには送気・送水スイッチ12a、吸引スイッチ12b、画像切換スイッチ12c等が設けてあり、それぞれのスイッチを操作することにより、送気・送水、吸引、画像のフリーズ等を行うことができるようになっている。
【0019】
カバー用内視鏡2Bの先端部18aは、図3に示すように、断面が半円状の先端構成部20よりなり、その先端構成部20の端面には照明用光学系20aと観察用光学系20bが設けられている。
【0020】
一方、カバー2Aは、図1に示すように、カバー用内視鏡2Bの挿入部11B、操作部12B、ユニバーサルコード13Bをそれぞれ被覆する挿入部カバー部11A、操作部カバー部12A、ユニバーサルコードカバー部(以下コードカバー)13Aとから構成される。
【0021】
挿入部カバー部11Aの先端部18bは、図4に示すように、先端構成部19よりなり、図3に示したカバー用内視鏡11Bの先端部18aの半円形状に合わせて透明のカバー観察窓21を有し、更にそのカバー観察窓21に向かって開口する送気送水ノズル26、鉗子出口27が設けられている。この先端構成部19にはカバー用内視鏡2Bの挿入部11Bを外部環境から隔離するための挿入部カバー外皮28が気密的に接続されている。
【0022】
図示しないライトガイドの一方の端面に供給された光源装置3からの照明光は、図3に示すように、挿入部11Bの先端構成部20の前記照明光学系20aの端面から、挿入部カバー部11Aの先端部のカバー観察窓21を介して前方の被写体側に出射される。患部等の被写体からの戻り光は、カバー観察窓21を介して照明光学系20aに隣接して設けられた観察用光学系20bの観察窓に入射する。
【0023】
観察用光学系20bは、図5に示すように、カバー観察窓21に対向してその内側に設けられた観察窓22に取り付けられた対物光学系23からなり、この対物光学系23の焦点面に光学像が結ばれる。
【0024】
この焦点面には、CCD24が配置され、結像された光学像は光電変換され、挿入部11B及びユニバーサルコード13B内を挿通された信号ケーブル25と及び信号ケーブル16を経てビデオプロセッサ4に入力され、信号処理された後、標準的な映像信号が生成され、この映像信号はモニタ7に入力され、表示画面に被写体像を表示する。
【0025】
前記挿入部カバー外皮28は、耐薬性に優れかつ比較的可撓性の高いポリウレタン等の軟性樹脂で構成されており(例えば、内径10mm、肉厚0.2mm)、その先端側は先端構成部19の後端側外周のエッジ部分に被嵌して接続されている。この挿入部カバー外皮28の手元側には所定の位置に鉗子挿入口29が設けられ、拡張チューブ32(図1参照)を接続する拡張チューブ口体33、更にはカバー保持具10に接続される接続部34等を有した内視鏡操作部固定用口体部35が気密的に接続されている。
【0026】
この内視鏡操作部固定用口体部35の手元側35aには、挿入部カバー外皮28内部に設けられた内視鏡挿入チャンネル36の開口部37が設けられ、更に、内視鏡操作部固定用口体部35の先端側をカバーの先端構成部19に連結し、送気送水ノズル26にそれぞれ連通した送気管路38(例えば、内径1.2mm、肉厚0.3mm)、送水管路(図示はしないが、例えば、内径1.2mm、肉厚0.3mm)、鉗子出口27に連通したチャンネル39(例えば、内径3.2mm、肉厚0.5mm)等の管路が突出している。ここで、送気管路38、送水管路の手元側端部は、図示しない送気源、送水源に接続されている。これらの管路はPTFE等の、可撓性が低く曲げ剛性の比較的高い軟性樹脂で構成されており、これらの管路を合わせた時の曲げ剛性は、前記挿入部カバー外皮28の曲げ剛性より高い。
【0027】
カバー用内視鏡2Bの挿入部11B先端には、先端構成部20に連接して複数の非円形管状の湾曲駒40をリベット41で連結した湾曲部40aが設けられている。湾曲駒40には内方に突出したワイヤー挿通絞り43が湾曲方向にあわせ設けられている。このワイヤー挿通絞り43内には先端をカバー用内視鏡2Bの先端構成部20に連結した湾曲操作ワイヤー44が挿通され、湾曲操作ワイヤー44の後端は操作部12B内の図示しない湾曲装置に接続されている。
【0028】
次にこれらの組立方法について述べる。
【0029】
第1に、先端構成部19に透明の観察窓21を接合した後、後端部に送気管路38、送水管路(図示せず)、チャンネル39を接続する(PTFE、内径3.2mm、肉厚0.5mm)。チャンネル39の後端部には内視鏡操作部固定用口体部35が接続された時、鉗子挿入口29に対応する位置に合わせて、鉗子挿入口29の内径より十分に長くかつ内視鏡操作部固定用口体部35とチャンネル39の嵌合長より短い側穴42が設けられている。
【0030】
第2に、先端構成部19の後端部外周に、カバー用内視鏡の挿入部長さに合わせて、あらかじめ所定の長さに加工された挿入部カバー外皮28を被嵌し接続する。
【0031】
第3に、内視鏡操作部固定用口体部35内に送気管路38、送水管路(図示せず)、チャンネル39を挿通し、挿入部カバー外皮28の後端部と内視鏡操作部固定用口体部35の前端部を接続すると同時に、各管路と挿入部カバー外皮28を内視鏡操作部固定用口体部35に気密に固定する。
【0032】
従って、挿入部カバー外皮28の1部品の長さだけで、先端構成部19と内視鏡操作部固定用口体部35の距離が定まる組立工程であるため、挿入部カバー部2Aの長さのばらつきが少なくできる。
【0033】
このように構成された内視鏡カバー方式の内視鏡の作用について説明する。
【0034】
一般的な内視鏡カバーの装着方法と同じように、滅菌された内視鏡カバー2Aが梱包された図示しないカバーの保管用パッケージから、挿入部カバー部11Aを取り出す。
【0035】
挿入部カバー部11Aにカバー用内視鏡2Bの挿入部11Bを装着する場合及び挿入部カバー部11Aから挿入部11Bを取り外す場合には、カバー拡張器6が使用される。
【0036】
このカバー拡張器6は基本的には、図示しない送気ポンプと送気管路で構成され、送気管路の開口端部には拡張チューブ32の基端部が接続される口金が設けてある。このカバー拡張器6は通常、送気を行い続けている。このため、カバー拡張器6の機能を使用しない場合には、図1に示すように拡張チューブ32の末端は拡張チューブ口体33とは接続されないで、外気に開口し、空気をリークしている。
【0037】
そして、挿入部カバー部11Aにカバー用内視鏡2Bを挿入する場合及び取り外す場合には、拡張チューブ口体33に拡張チューブ32の末端を押し込む操作を行うことにより気密的に内挿(嵌合)接続され、空気が拡張チューブ口体33を経て内視鏡挿入チャンネル36に送り込まれ、内視鏡挿入チャンネル、36を膨らますことにより、内視鏡挿入部11Bの挿入と抜去を容易に行うことができる。
【0038】
この挿入部カバー部11Aにカバー用内視鏡2Bを挿入する場合には、内視鏡操作部固定用口体部35の上端のフランジ部がカバー保持具10に設けた半円状の保持部10a(図1参照)で保持された状態にして、内視鏡操作部固定用口体部35からカバー用内視鏡2Bの挿入部11Bを挿入する操作を行うことにより容易に装着することができる。
【0039】
このように本実施例のカバー方式の内視鏡装置1によれば、送気管路、送水管路、チャンネル等の管路を合わせた時の曲げ剛性は、挿入部カバー外皮の曲げ剛性より高くしているので、カバー用内視鏡の挿入部の可撓性バランスを崩すことなく、安価で、挿入部カバー部が座屈しにくい構造にすることができ、操作性及び取り扱い性を向上させることができる。また、カバー外皮の耐性を使い捨て用として必要十分なものに抑えることができるので、製造原価を低減できる。
【0040】
さらに、カバー外皮の先端側で、先端構成部19の後端側外周のエッジ部分を被嵌して覆っているため、エッジ部分が外部に露出せず、体腔内を傷つけることがない。
【0041】 次に第2実施例について説明する。図6は本考案の第2実施例に係るカバー方式の内視鏡の主要部の構成を示す断面図である。
【0042】
第2実施例は、第1実施例と殆ど同じであるので、異なる構成のみ説明し、同一の構成には同じ符号を付け、説明は省略する。
【0043】
図6に示すように、第2実施例の挿入部カバー部の先端部18bは、先端構成部19に接続された第1の送気管路38a、送水管路(図示せず)、チャンネル39aはその後端部を内視鏡操作部固定用口体部35aに接続している。チャンネル39aの外周面には、螺旋上に溝50が設けられている。更に第2の送気管路38b、送水管路(図示せず)、チャンネル39bが、内視鏡操作部固定用口体部35aの後端部から突出している。ここで、先端構成部19の後端面51と内視鏡操作部固定用口体部35aの前端面52との間の第1の送気管路38a、送水管路(図示せず)、チャンネル39aの各管路の距離L1に対し、カバー外皮28の距離L2は若干長く設定されている。その他の構成、作用は第1実施例と同じである。
【0044】
このように構成された第2実施例のカバー方式の内視鏡装置によれば、挿入部カバー部内のチャンネルに螺旋上の溝を設けたので、カバー部の座屈耐性を向上させるためチャンネルの剛性を高めても、カバー部全体の可携性を低くすることがなく、ひいては装着時カバー用内視鏡の可撓性バランスを崩して、挿入性を悪化させることがない。
【0045】
また、チャンネル等の管路の距離L1より、カバー外皮の距離L2を長くしたためチャンネル等の管路が、カバー部内で弛んでカバー用内視鏡の装着性を悪くすることがない。
【0046】
【考案の効果】
以上説明したように本考案の内視鏡カバー方式の内視鏡によれば、管状部材は、内部に複数の軟性のチャンネル管を備え、前記複数のチャンネル管を合わせたときの剛性を前記管状部材の剛性より高くしたので、チャンネル付き内視鏡カバーの座屈を防止することができ、安価で、取り扱い性に優れ、挿入部の操作性が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案の第1実施例に係るカバー方式の内視鏡を備えたカバー方式の内視鏡装置の構成を示す全体図である。
【図2】
本考案の第1実施例に係るカバー用内視鏡の構成を示す外観図である。
【図3】
本考案の第1実施例に係るカバー用内視鏡の先端部の外観を示す外観図である。
【図4】
本考案の第1実施例に係る挿入部カバー部の先端部の外観を示す外観図である。
【図5】
本考案の第1実施例に係るカバー方式の内視鏡の主要部の構成を示す断面図である。
【図6】
本考案の第2実施例に係るカバー方式の内視鏡の主要部の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1…カバー方式の内視鏡装置
2…カバー方式の内視鏡
2A…カバー
2B…カバー用内視鏡
3…光源装置
4…ビデオプロセッッサ
5…流体制御装置
6…カバー拡張器
7…モニタ
8…カート
10…カバー保持具
11A…挿入部カバー部
11B…挿入部
12A…操作部カバー部
12B…操作部
13A…ユニバーサルコードカバー部
13B…ユニバーサルコード
14…コネクタ
15…湾曲操作ノブ
19…挿入部カバー部の先端構成部
20…カバー用内視鏡の先端構成部
21…カバー観察窓
22…観察窓
23…対物光学系
24…CCD
27…鉗子出口
28…挿入部カバー外皮
29…鉗子挿入口
33…拡張チューブ口体
35…内視鏡操作部固定用口体部
36…内視鏡挿入チャンネル
37…開口部
38…送気管路
39…チャンネル
40…湾曲駒
41…リベット
40a…湾曲部
43…ワイヤー挿通絞り
44…湾曲操作ワイヤー
訂正の要旨 〔訂正の要旨〕
実用新案登録第2587238号考案の明細書を、本件実用新案登録異議申立てに関連してなされた訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正する。
すなわち、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として下記(1)のとおり、また、明瞭でない記載の釈明を目的として下記(2)、(3)のとおり訂正する。
(1)実用新案登録請求の範囲の請求項1を、
「先端構成部と基端構成部とを軟性の管状部材で気密に接続した内視鏡カバーに、内視鏡を装着する内視鏡カバー方式の内視鏡であって、
前記管状部材は、内部に複数の軟性のチャンネル管を備え、
前記複数のチャンネル管を合わせたときの剛性は、前記管状部材の剛性より高い
ことを特徴とする内視鏡カバー方式の内視鏡。」と訂正する。
(2)明細書段落番号【0013】(本件実用新案登録公報3欄49行?4欄4行)を、
「【課題を解決するための手段および作用】
本考案の内視鏡カバー方式の内視鏡は、先端構成部と基端構成部とを軟性の管状部材で気密に接続した内視鏡カバーに、内視鏡を装着する内視鏡カバー方式の内視鏡であって、前記管状部材は、内部に複数の軟性のチャンネル管を備え、前記複数のチャンネル管を合わせたときの剛性を前記管状部材の剛性より高くする。」と訂正する。
(3)同段落番号【0046】(同8欄36?41行)を、
「【考案の効果】
以上説明したように本考案の内視鏡カバー方式の内視鏡によれば、管状部材は、内部に複数の軟性のチャンネル管を備え、前記複数のチャンネル管を合わせたときの剛性を前記管状部材の剛性より高くしたので、チャンネル付き内視鏡カバーの座屈を防止することができ、安価で、取り扱い性に優れ、挿入部の操作性が向上するという効果がある。」と訂正する。
異議決定日 2000-12-22 
出願番号 実願平5-4277 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (A61B)
最終処分 維持    
前審関与審査官 小田倉 直人  
特許庁審判長 伊坪 公一
特許庁審判官 阿部 綽勝
住田 秀弘
登録日 1998-10-09 
登録番号 実用新案登録第2587238号(U2587238) 
権利者 オリンパス光学工業株式会社
東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号
考案の名称 内視鏡カバー方式の内視鏡  
代理人 伊藤 進  
代理人 伊藤 進  
代理人 三井 和彦  

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