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審決分類 審判 全部申し立て   E04F
管理番号 1039504
異議申立番号 異議2000-70174  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-01-11 
確定日 2001-01-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2597837号「床構造」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2597837号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。
理由 【1】.手続の経緯
本件実用新案登録第2597837号の請求項1に係る考案は、平成5年10月27日に実用新案登録出願され、平成11年5月21日にその実用新案権の設定の登録がなされ、その後、藤田 肇より請求項1(全請求項)に係る考案の実用新案登録について実用新案登録異議の申立がなされ、当審において、請求項1に係る考案の実用新案登録について取消理由通知がなされたところ、その指定期間内である平成12年10月10日に訂正請求がなされたものである。
【2】.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
実用新案権者が求める訂正の内容は、次の(1)?(3)のとおりである。
(1)実用新案登録明細書(登録査定時の明細書)の実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載を、次のように訂正する。
【請求項1】根太上に固定される下地板の上面に、比重が1.5g/cm3以上であって合成樹脂シートに重質物質粉を混入させてなる遮音シート、および緩衝シートを介して床基板が積層接着一体化され、かつ、下地板の下面の根太間には、繊維マットまたは合成樹脂発泡体からなる板状またはシート状の吸音材が敷設されてなることを特徴とする床構造。
(2)実用新案登録明細書の段落番号0006の記載を、次のように訂正する。
「この目的を達成するため、本考案による床構造は、根太上に固定される下地板の上面に、比重が1.5g /cm3以上であって合成樹脂シートに重質物質粉を混入させてなる遮音シート、および緩衝シートを介して床基板が積層接着一体化され、かつ、下地板の下面の根太間には、繊維マットまたは合成樹脂発泡体からなる板状またはシート状の吸音材が敷設されてなることを特徴とする床構造。」
(3)実用新案登録明細書の段落番号0009の記載を、次のように訂正する。
「下地板4の表面側には遮音シート3が配される。遮音シート3は、階上で発生した伝搬音を遮断する機能を有するものであり、比重が1.5g/cm3以上であって合成樹脂シートに重質物質粉を混入させてなるものが用いられる。また、遮音シート3の表面および/または裏面に凹凸加工を施したものを用いることにより、音のエネルギーを伝搬する方向をランダムにし、防音性能を更に向上させることができる。」
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、および拡張・変更の存否
(1)上記(1)の実用新案登録請求の範囲の請求項1の訂正は、遮音シートの構成を、「比重が1.5g/cm3以上であって合成樹脂シートに重質物質粉を混入させてなる遮音シート」と限定したもので、実用新案登録請求の範囲の減縮に相当し、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正である。
(2)上記1.(2)及び1.(3)の訂正は、実用新案登録請求の範囲の請求項1の訂正に伴って、それとの整合を図るために考案の詳細な説明を訂正したもので明りょうでない記載の釈明に相当する。
そして、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号。以下、「平成11年法」という。)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下、「平成6年改正法」という。)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、
特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
【3】.実用新案登録異議申立についての判断
1.本件考案
本件実用新案登録第2597837号の請求項1に係る考案は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、「本件考案」という。)である。
【請求項1】根太上に固定される下地板の上面に、比重が1.5g/cm3以上であって合成樹脂シートに重質物質粉を混入させてなる遮音シート、および緩衝シートを介して床基板が積層接着一体化され、かつ、下地板の下面の根太間には、繊維マットまたは合成樹脂発泡体からなる板状またはシート状の吸音材が敷設されてなることを特徴とする床構造。
2.取消理由通知
当審では、刊行物として、
刊行物1(「音響技術」、1984 vol.13 no.4、社団法人 日本音響材料協会、1984年12月20日発行、第48?6 3頁、=異議申立人提出の甲第1号証)
刊行物2(特開昭62-90466号公報、=異議申立人提出の甲第2号 証)、及び
刊行物3(特開平1-312158号公報、=異議申立人提出の甲第3号 証)を引用し、
本件実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、周知慣用の技術を考慮すれば、刊行物1?刊行物3に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきであるという取消理由を通知した。
3.刊行物の記載事項
先の取消理由通知で引用した上記刊行物1には、
第52頁の右欄中段に「4.音響設計事例」として、軟質繊維板製品を使用して室内音響調整を行った実施例2件が紹介され、そのうちの「(2)一般住宅ピアノ室」の項に、「室内仕様と各部構成断面を図7・・・に示す」と記載されている。
その図7が第53頁中段以降に記載され、右下方の「(4)床」の構成断面図からみて、刊行物1には床構造に関して次のような考案が記載されているものと認められる。
「根太上の合板の上面に、ダイケン遮音シートおよびダイケンビルボードを介してダイケンフロアーが積層され、かつ、合板の下面の根太間には、グラスウールからなる板状またはシート状の吸音材が敷設されてなる床構造」
(なお、図7の右下方の床の構成断面図と実質的に同じ床構造が、第54頁の「B(ベーシック)防音構造」に、「1階床」の構造として記載されている。)
ここで上記「ダイケンビルボード」についてみてみると、第51頁の「2.3 床材」の項に、
「軟質繊維板の床への応用としては、その耐衝撃吸収性、及び床材の振動防止(制振性)の効果から床下地材として数多く用いられている。・・・A級インシュレーションボード(商品名ダイケンビルボード、・・・)がカーペット下地材として使用されており、特に断熱、防音の機能が評価を受けている。最近は2階の床衝撃音対策の一つとして、安価で効果の上がる製品としての位置づけが進んでおり、床衝撃音で問題の多い2×4住宅の床下地にも多く使用されている」と記載され、
第49頁の左欄上段に、密度0.4g/cm3未満のものを軟質繊維板(インシュレーションボード)と分類し、その軟質繊維板はその低密度の性格から、断熱性,吸音性、弾力性に富み、主として住宅向けの断熱材、吸音材、クッション材として製品展開が図られてきたことが記載され、
第49頁の「表1 軟質繊維板の品質及び主な用途による区分」には、A級インシュレーションボードは密度(g/cm3)が0.30未満で、曲げ強さ、熱伝導率等が所定の数値のものであることが記載されている。
以上の記載からみて、「ダイケンビルボード」(商品名)とは、衝撃吸収性、防音性、弾力性等に優れた軟質繊維板のことと認められる。
同じく引用した上記刊行物2には、遮音床材に関して、
「木質化粧床板において、木質化粧単板と木質基材との間に、高密度シート材と低密度シート材とを配置することを特徴とする遮音床材」(特許請求の範囲の第1項)と記載され、
「即ち、床面に与えられた衝撃音は高密度シート材料で減衰され、更に低密度シート材料によって吸音または乱反射して分散されるために低減されるものと思われる」(公報2頁左上欄13?16行)と記載され、
「比重0.1の2mm厚み発泡ポリエチレンシートからなる低密度シート材3と、比重2.0の塩ビに金属粉を混入した2mmシートからなる高密度シート材とをエポキシ系接着剤で冷圧接着し・・・」(公報2頁左下欄6?10行)と記載されている。
同じく引用した上記刊行物3には、遮音性木質系床材に関して、
「木質板の裏面に遮音性、制振性または緩衝性を有するシート、中間木質板、発泡シート・・・が順次貼着されていることを特徴とする遮音性木質系床材」(特許請求の範囲の請求項2)と記載され、
「木質板1と発泡シート2の間に遮音性、制振性または緩衝性を有するシート6と中間木質板7を挟み入れてもよい」(公報2頁右上欄11?13行)と記載され、
「上記木質板1の裏面に貼り合わせる遮音または制振シートとしては、粉末鉛入塩ビシート、無機粉末充填ゴムシート、・・・また、緩衝性シートとしては天然ゴム発泡シートやオレフィン系発泡シート等の緩衝性のあるシートであればよく、厚みは1?2mmが好ましい」(公報2頁右上欄19行?左下欄5行)と記載されている。
4.対比、判断
本件明細書の考案の詳細な説明には、下地板が合板からなると記載(段落番号0008)され、吸音材がグラスウールからなると記載(段落番号0013)されているから、
本件考案と、刊行物1に記載の考案とを対比すると、刊行物1に記載の考案の「合板」、「ダイケン遮音シート」、「ダイケンフロアー」、及び 「グラスウール」は、それぞれ、本件考案の「下地板」、「遮音シート」、「床基板」、及び「吸音材」に相当し、
さらに、刊行物1に記載の考案の「ダイケンビルボード」は、衝撃吸収性、防音性、弾力性等に優れた軟質繊維板であって、本件考案の「緩衝シート」とは、緩衝材という点で共通しているから、両考案は、
「根太上の下地板の上面に、遮音シートおよび緩衝材を介して床基板が積層され、かつ、下地板の下面の根太間には、繊維マットからなる板状またはシート状の吸音材が敷設されてなることを特徴とする床構造。」
の点で構成が一致し、次の(イ)?(ニ)の点で相違しているものと認められる。
(イ)下地板が、本件考案では根太上に固定されるのに対して、刊行物1の考案ではその点が明記されていない点。
(ロ)遮音シートが、本件考案では比重が1.5g/cm3以上であって合成樹脂シートに重質物質粉を混入させた遮音シートであるのに対して、刊行物1の考案では、ダイケン遮音シートについてその点が明記されていない点。
(ハ)緩衝材が、本件考案では緩衝シートであるのに対して、刊行物1の考案では軟質繊維板である点。
(ニ)本件考案では、下地板の上面に、遮音シートおよび緩衝シートを介して床基板が積層接着一体化されているのに対して、刊行物1の考案では、合板の上面に、ダイケン遮音シートおよびダイケンビルボードを介してダイケンフロアーが積層されてはいるが、それらが積層接着一体化されているのか否かについては明記されていない点。
そこで、これら相違点を検討する。
(イ)の点について
根太上に下地板を固定することは、木造住宅の床構造において周知慣用の技術であって、上記(イ)の本件考案の構成は、この周知慣用の技術をそのまま採用したにすぎないものである。
(ロ)の点について
上記刊行物2には、木質化粧単板と木質基材との間に、高密度シート材と低密度シート材とを配置した遮音床材が記載され、床面に与えられた衝撃音は比重2.0の塩ビに金属粉を混入した高密度シート材で減衰されることが記載されている。そして、この比重2.0の塩ビに金属粉を混入した高密度シート材が、遮音シートとして機能することは当業者にとって明らかである。
また、上記刊行物3には、木質板の裏面に遮音性シート、中間木質板、発泡シート・・・が順次貼着されている遮音性木質系床材が記載され、その木質板の裏面に貼り合わせる遮音性シートとして、粉末鉛入塩ビシートを使用することが記載されている。
したがって、上記(ロ)の本件考案の構成は、刊行物1の考案のダイケン遮音シートに、刊行物2、3に記載の技術を適用して当業者がきわめて容易に思いつくことと認められる。
(ハ)の点について
上記刊行物2には、床面に与えられた衝撃音は低密度シート材料によって吸音または乱反射して分散され、その低密度シート材料は発泡ポリエチレンシートからなることが記載されている。そして、この発泡ポリエチレンシートが緩衝シートとして機能することは当業者にとって明らかである。
また、上記刊行物3には、木質板の裏面に緩衝性シートが貼着された遮音性木質系床材が記載されている。
したがって、緩衝材をシートとすることは刊行物2、3に記載のように周知慣用の技術であって、上記(ハ)の本件考案の構成は、刊行物1の考案の
軟質繊維板を緩衝シートに代えて当業者がきわめて容易に思いつくことと認められる。
(ニ)の点について
床材において、床材を構成する各積層体を接着一体化することは、上記刊行物2、3にも記載のように周知慣用の技術であって、上記(ニ)の本件考案の構成は、この周知慣用の技術を床構造へ適用して当業者がきわめて容易に思いつくことと認められる。
そして、本件考案の作用効果は、刊行物1?刊行物3、及び周知慣用の技術から予測しうる範囲のものである。
以上のとおり、本件考案は、刊行物1に記載の考案に、刊行物2、3に記載の技術及び周知慣用の技術を適用して当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められる。
5.むすび
以上のとおりであるから、本件考案は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
したがって、本件考案についての実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してなされたものと認められる。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116条)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
床構造
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】根太上に固定される下地板の上面に、比重が1.5g/cm^(3)以上であって合成樹脂シートに重質物質粉を混入させてなる遮音シート、および緩衝シートを介して床基板が積層接着一体化され、かつ、下地板の下面の根太間には、繊維マットまたは合成樹脂発泡体からなる板状またはシート状の吸音材が敷設されてなることを特徴とする床構造
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本考案は床構造に関し、特に、木造住宅の家屋の階上部分に使用して床面の衝撃による固体音の階下への伝搬を防止することのできる床構造に関する。
【0002】
【従来技術】近年、コンクリート下地材上に直接床材を貼着するいわゆる直貼工法が行われている。マンション等の共同住宅においては、階上の生活音の階下への伝搬を防止するために、床材の裏面に種々の緩衝材を貼着することにより防音性能を付与した防音床材を用いて直貼工法がなされている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】ところが木造住宅の家屋では、1階と2階との境面において階上および階下で発生した音の伝搬を防止する性能がコンクリートスラブに比べて著しく劣る。加えて、床材を施工する場合は構造下地に釘打ち施工されることにより床材と下地とが一体化されてしまい、階上では床材表面に与えられた衝撃は、この釘打ち部から直接的に裏面に伝搬され、防音性能は非常に劣ったものとなってしまう。
【0004】また、床材の釘打ち施工は一般に雄実の上方から斜め下方に向けて釘を打ち込むことによって行われるため、釘打ちにより雄実上面に膨らみが生じたり、雄実下部に破損が生じることがあり、これらにより隣接する床材の雌実との嵌合が困難となり、また接合部に目すきが生ずる等の問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】したがって、本考案は、上記従来技術の問題点を解消し、木造家屋においても優れた防音性能を発揮することのできる新規な床構造を提供することを目的とする。
【0006】この目的を達成するため、本考案による床構造は、根太上に固定される下地板の上面に、比重が1.5g/cm^(3)以上であって合成樹脂シートに重質物質粉を混入させてなる遮音シート、および緩衝シートを介して床基板が積層接着一体化され、かつ、下地板の下面の根太間には、繊維マットまたは合成樹脂発泡体からなる板状またはシート状の吸音材が敷設されてなることを特徴とする床構造。
【0007】
【作用】床基板の表面に加えられる衝撃エネルギーは、床基板自体の有する弾性と遮音性能により、緩衝シートの伸縮変形により、また遮音シートの遮音性能により順次吸収され、これらによってもなお吸収しきれない伝搬音はさらに吸音材によって吸収されるので、階下への音の伝搬が防止される。階下の生活音が階上に伝搬することも、これら各層の作用によって同様に防止される。
【0008】
【実施例】図1は本考案による床構造の一例を示す。根太6の上面には合板、木質繊維板、木削片板、単板積層板、挽板等よりなる下地板4が密接され、釘7で根太6に釘着固定されている。
【0009】下地板4の表面側には遮音シート3が配される。遮音シート3は、階上で発生した伝搬音を遮断する機能を有するものであり、比重が1.5g/cm^(3)以上であって合成樹脂シートに重質物質粉を混入させてなるものが用いられる。また、遮音シート3の表面および/または裏面に凹凸加工を施したものを用いることにより、音のエネルギーを伝搬する方向をランダムにし、防音性能を更に向上させることができる。
【0010】遮音シート3の表面側には緩衝シート2が配される。緩衝シート2は、適度の弾性を有する材料からなり、床材表面に与えられた衝撃をそれ自体の伸縮変形を通じて吸収する機能を有するものであり、具体的に例示すれば、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アセテート、塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリル等の合成樹脂またはそれらの発泡体、あるいはゴム、合成ゴムまたはそれらの発泡体等が好適に用いられる。
【0011】緩衝シート2の表面側には床基板1が積層され、これが実質的に床構造の最表面をなしている。床基板1は、合板、木質繊維板、木削片板、単板積層板、挽板等からなり、側面には必要に応じて実が形成される。また、表面に化粧単板、化粧紙、化粧合成樹脂シート等の化粧シートが貼着され、あるいは柄模様や着色塗装等によって任意化粧が施されたものを用いることができる。
【0012】図示されないが、床基板1の裏面に複数本の溝を刻設したものを用いることができる。溝は、床材の長手方向と平行、直交あるいは斜め方向に適宜間隔で床基板1の裏面側から切り込んで形成することができる。このように床基板1の裏面に溝を形成することにより、床基板の有する剛性を低下させ、表面に加わった衝撃エネルギーを床基板で吸収することが可能となる。また、溝により床基板の一部が分割されることにより音の伝搬が阻止され、遮音効果を更に向上させることができる。
【0013】下地板4の下方において根太6、6間には吸音材5が敷設される。吸音材5としては、粗な表面を持つものや、内部に気泡空隙の多いものを用いることが好適であり、たとえばグラスウール、ロックウール、フェルト等の繊維マット、あるいはポリエステル系、ポリウレタン系等の合成樹脂発泡体からなる板状またはシート状の吸音材が用いられる。合成樹脂発泡体を用いる場合は、独立気泡質よりも連続気泡質の方が吸音率に優れるのでより好ましい吸音材となる。吸音材5は、緩衝シート2および遮音シート3で吸収しきれなかった伝搬音を吸収し、階下への伝搬を抑制する。
【0014】以上に述べた床構造の形成方法について説明すると、まず、根太6、6間にあって根太を支える梁上に渡して吸音材5を敷設する。このときに用いる吸音材5の厚さは、根太6の高さと同じであっても良いが、好ましくは根太の高さ寸法よりも若干厚いものを用い、下地板4を釘着固定することによって吸音材5が表面側から押さえ付けられて結果的に根太6と面一状態に敷設されるように施工することが好ましい。また、吸音材5として自己保形性の弱い柔軟なものを用いる場合は、たとえば梁間に吸音材保持用の板材、糸またはネット等を渡し、この保持材の上に吸音材を敷設することが好ましい。
【0015】次いで、根太6の上に下地板4を相互に隣接するように密接し、根太6上にて釘着固定する。この下地板4の上に、遮音シート3、緩衝シート2および床基板1を順次積層し、各々接着剤により接着固定することにより、図1に示す床構造が得られる。
【0016】これら下地板4、遮音シート3、緩衝シート2および床基板1は、各々別個に用意して順次積層接着してもよいが、これらを任意にあらかじめ積層接着して一体化させたものを用いることにより、現場での接着作業を省力化し、施工時間の短縮を図ることができる。たとえば、下地板4に遮音シート3をあらかじめ貼着したものを根太6上に固定することができる。また、遮音シート3と緩衝シート2とをあらかじめ積層接着して一体化されたものを下地板4に貼着した後に床基板1を貼着することができる。また、下地板4に遮音シート3を貼着した後に床基板1の裏面にあらかじめ緩衝シート2を貼着したものを貼着し、あるいは床基板1の裏面にあるいは緩衝シート2および遮音シート3を貼着したものを下地板4上に貼着してもよい。
【0017】
【考案の効果】本考案の床構造によれば、根太に固定される下地板に対して、遮音シート、緩衝シートおよび床基板の3層は接着剤により積層接着されており、
各層の物理的特性が釘着等により抑制されない。したがって、床基板の表面に加えられた衝撃エネルギーは、床基材の有する弾性と遮音性能により吸収されると共に床基板全体に分散され、その裏面側に配される緩衝シートの伸縮変形を通じてそのほとんどが吸収される。緩衝シートにより、吸収されなかった伝搬音も、次いで遮音シートにより遮断され、さらに吸音材5により吸収されるので、階下への伝搬を実質的に回避することができる。
【0018】また、コンクリートスラブ上に直貼施工される床構造においてはほとんど問題とならないが、木造住宅においては、階下の生活音が階上に伝わることが問題となる。これは、階下と階上の境面に直接衝撃が加わるものではなく、生活音が境面部分で遮断されることなく階上に伝搬されてしまうことによるものであるが、本考案の床構造によれば、根太間に敷設される吸音材によって階下の生活音のほとんどが吸収される。根太部分においては階上への伝搬経路が残っているが、境面全体に対する根太部分の面積はきわめて小さく、またその上面に配される遮音シートによる遮断および緩衝シートによる吸収を受けることにより、
階下から階上への音の伝搬も有効に防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案による床構造の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 床基板
2 緩衝シート
3 遮音シート
4 下地板
5 吸音材
6 根太
7 釘
訂正の要旨 本件訂正は、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明、誤記の訂正を目的として、願書に添付した明細書の記載を下記の(1)ないし(3)のように訂正するものである。
(1)特許請求の範囲の請求項の記載を、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項に記載のとおり、
「【請求項1】根太上に固定される下地板の上面に、比重が1.5g/cm^(3)以上であって合成樹脂シートに重質物質粉を混入させてなる遮音シート、および緩衝シートを介して床基板が積層接着一体化され、かつ、下地板の下面の根太間には、繊維マットまたは合成樹脂発泡体からなる板状またはシート状の吸音材が敷設されてなることを特徴とする床構造。」と訂正する。
(2)明細書段落【0006】を
「この目的を達成するため、本考案による床構造は、根太上に固定される下地板の上面に、比重が1.5g /cm^(3)以上であって合成樹脂シートに重質物質粉を混入させてなる遮音シート、および緩衝シートを介して床基板が積層接着一体化され、かつ、下地板の下面の根太間には、繊維マットまたは合成樹脂発泡体からなる板状またはシート状の吸音材が敷設されてなることを特徴とする床構造。」と訂正する。
(3)明細書段落【0009】を
「下地板4の表面側には遮音シート3が配される。遮音シート3は、階上で発生した伝搬音を遮断する機能を有するものであり、比重が1.5g/cm^(3)以上であって合成樹脂シートに重質物質粉を混入させてなるものが用いられる。また、遮音シート3の表面および/または裏面に凹凸加工を施したものを用いることにより、音のエネルギーを伝搬する方向をランダムにし、防音性能を更に向上させることができる。」と訂正する。
異議決定日 2000-12-08 
出願番号 実願平5-62225 
審決分類 U 1 651・ 121- ZA (E04F)
最終処分 取消    
前審関与審査官 井上 博之  
特許庁審判長 佐田 洋一郎
特許庁審判官 鈴木 憲子
斎藤 利久
登録日 1999-05-21 
登録番号 実用新案登録第2597837号(U2597837) 
権利者 株式会社ノダ
東京都台東区浅草橋5丁目13番6号
考案の名称 床構造  
代理人 ▲桑▼原 史生  
代理人 ▲桑▼原 史生  

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