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審決分類 審判 全部申し立て   B42D
審判 全部申し立て   B42D
審判 全部申し立て   B42D
審判 全部申し立て   B42D
管理番号 1039507
異議申立番号 異議2000-73152  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-08-07 
確定日 2001-03-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2602958号「隠蔽情報用の重ね合わせ用シート 」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2602958号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続きの経緯
本件実用新案登録第2602958号の請求項1に係る考案についての出願は、平成2年12月31日に出願され、平成11年12月3日にその実用新案権の設定登録がなされ、その後平成12年8月7日に芝町子により異議の申立てがなされ、次いで平成12年11月6日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成13年1月10日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否について
2-1.訂正の内容
ア.訂正事項a
実用新案権設定登録時の明細書(以下、「登録明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲の請求項1において、「一定条件」を「圧力」と訂正し、「接着力調整用の印刷が前記他の所定部分の接着剤上に施されてなる」を「接着力調整用の印刷が前記他の所定部分の接着剤上にその集合面積を前記重ね合わせ面の75パーセント以下で施されてなる」と訂正する。
イ.訂正事項b
段落【0004】において、「一定条件」を「圧力」と訂正し、「接着力調整用の印刷が前記他の所定部分の接着剤上に施されてなる」を「接着力調整用の印刷が前記他の所定部分の接着剤上にその集合面積を前記重ね合わせ面の75パーセント以下で施されてなる」と訂正する。
2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、実用新案登録請求の範囲の請求項1において、構成を限定するものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、
上記訂正事項bは、上記訂正事項aと整合をはかるものであるから、明りようでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
そして、上記訂正事項a、bは、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
2-3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについて
3-1.異議申立ての理由の概要
異議申立人は、甲第1?5号証を提出し、
登録明細書の請求項1に係る考案は、
甲第1号証に記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号の規定により、
甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明と同一であるから、実用新案法第3条の2第1項の規定により、
甲第4号証及び甲第5号証に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に想到し得たものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により、
実用新案登録を取り消すべきものである、と主張している。
また、登録明細書は、当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されていないから、登録明細書の請求項1に係る考案は、実用新案法第5条第4項の規定(平成2年12月1日施行の改正法)により、
実用新案登録を取り消すべきものである、と主張している。
3-2.本件考案
本件請求項1に係る考案(以下「本件考案」という。)は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 重ね合わせ面の所定部分に隠蔽情報を設けるとともに、この重ね合わせ面を剥離可能に接着することにより重ね合わせシートとする隠蔽情報用の重ね合わせ用シートであって、重ね合わせ面の所定部分に、隠蔽情報を印刷あるいは印字可能で、かつ、通常では接着せず、圧力が付与されると接着可能となり、接着後には印刷あるいは印字された隠蔽情報を損なわずに剥離可能とすべく、一旦接着すると再剥離困難な非剥離性接着剤基材に、この接着剤基材に対して非親和性を示す微粒状充てん剤を配合して接着力を調整した剥離可能な接着剤が設けられてなると共に、シート周縁の所定部分の接着力を他の所定部分の接着力よりも高めるための接着力調整用の印刷が前記他の所定部分の接着剤上にその集合面積を前記重ね合わせ面の75パーセント以下で施されてなることを特徴とする隠蔽情報用の重ね合わせ用シート。」
3-3.刊行物等
・甲第1号証:特開平2-289393号公報(以下、「刊行物1」という。)
・甲第2号証:特願平2-337349号の明細書又は図面(以下、「先願明細書1」という。)(特開平4-126299号公報)
・甲第3号証:特願平1-313049号の明細書又は図面(以下、「先願明細書2」という。)(特開平3-169596号公報)
・甲第4号証:実願平1-40764号(実開平2-148371号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)
・甲第5号証:実願昭63-42150号(実開平1-145475号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)
《刊行物1(甲第1号証)に記載の事項》
「(1)シートを重ねて加圧することにより接合出来、且つ接合面を剥離するとこ(「こと」の誤記。)によって再び接合面上の情報を読むことが出来るように設計された再剥離性の感圧接着性葉書において、接合部のエッジ部分の全域或いは一部分が非エッジ部分より大きな剥離力を有することを特徴とする再剥離性の感圧接着性葉書。
(2)接合部のエッジ部分の全域或いは一部分が非剥離性である請求項(1)記載の再剥離性の感圧接着性葉書。
(中略)
(4)該シートが支持体上に設けられた接着剤含有層上の一部分に接着抑制インキ層を設けたものである請求項(1)?(3)記載の再剥離性の感圧接着性葉書。」(特許請求の範囲)、
「本発明は、再剥離性の感圧接着性葉書を設計するにあたって、接合部のエッジ部分の全域或いは一部分を非エッジ部分より強く接着させることによって意図せぬ時の剥離の危険性を抑え、しかも必要とする時に安定した剥離が得られるようにしたものである。中でも意図せぬ時の剥離の危険性が全く無い点で接合部のエッジ部分の全域或いは一部分を非剥離性に設定するのが最も好ましい。
本発明の葉書を形成する手段としては、・・・具体的には、印刷等の手段で情報を・・・記録しようとする接着剤含有層上の一部分に接着抑制インキ層を設けることによって得ることが出来る。」(2頁右上欄9行?同頁左下欄3行)、
「本発明のシートとしては、例えば第1図に示すものが挙げられる。これは、接着剤含有層に情報の印刷・・・を施した後、その上から接着抑制インキをエッジ部を除いた部分に印刷し、更にミシン目を図の如く入れたもので、中央のミシン目を線対称の軸として左右を対向させた後、加圧ロール等により接合して葉書となる。(尚、情報の印刷は接着抑制インキの印刷後も必要に応じて行うことが出来る。)・・・.第3図に示すものは、第1図に示すシートを接合させて得られる葉書を示したものである。この形態では接合されていて見ることが出来ない内部の情報は、ミシン目部分を切り取り、接合している互いのシートを剥離することによって見ることが出来る。」(2頁左下欄4?19行)、
「本発明の感圧接着性シートの接着剤含有層の形成に用いられる接着剤としては、例えばエチレン-酢酸ビニル系樹脂、・・・天然ゴム系樹脂等が挙げられる。・・・接着剤含有層には、通常顔料が添加され、具体的にはシリカ、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタ ン・・・澱粉粒子等が例示出来る。」(3頁左上欄3?15行)、
「本発明において接着抑制物質層は、通常接着抑制インキを・・・接着剤含有層上に印刷して形成される」(3頁右上欄下から5?3行)、
「実施例-1
接着剤としてエチレン/酢酸ビニル系共重合体エマルジョン・・・を100部(乾燥重量)、顔料として合成シリカ・・・150部を混合して・・・接着剤組成物を得た。この組成物を・・・上質紙に・・・塗布し、感圧接着性シートを得た。
続いて、・・・上記感圧接着性シートの塗布面上に・・・情報を印刷した後、・・・接着抑制インキ・・・を印刷された情報上の・・・四角形部分に・・・印刷し、更にミシン目を第1図の如く入れて2折り加工した。
次に、上記シートの接着抑制インキ層上・・・に・・・情報を印刷した後、ミシン目を対称軸として接着剤面同士を対向させて・・・圧力を掛け、第3図の如き葉書を得た。
この葉書はミシン目の所で切り放された後、接合している互いのシートを容易に剥離することが出来、内面の情報を読むことが出来た。」(4頁右上欄9行?下から6行)、
「比較例
接着抑制インキを印刷しなかった以外、実施例1と同様にして葉書を得たが、接合した面を剥離することが出来ず、内面の情報を確認することが出来なかった。」(4頁右下欄2?6行)、
「支持体1の表面に接着剤含有層2を有し、接着剤含有層2の非エッジ部分に接着抑制インキ層9を有し、その上に情報7を印刷した」点(図面第2図)、
「シートのエッジ部分の全域あるいは一部に、ミシン目5を入れる点」(図面第1?12図)が、記載されている。
《先願明細書1(甲第2号証)に記載の事項》
「(1)基材の密着予定面のほぼ全面に加圧により粘着する粘着層を形成したことを特徴とする粘着層付き帳票。
(2)前記粘着層上に印刷層を形成したことを特徴とする請求項(1)記載の粘着層付き帳票。
(3)前記粘着層または前記印刷層上に印字層を形成し、前記基材を折り返しまたは積層して、対向する面を密着させた後に、密着面の間から剥離するように構成した請求項(1)または(2)記載の粘着層付き帳票。」(特許請求の範囲)、
「粘着層12は、樹脂分としてSBR(スチレン・ブタジエン・ゴム)、揮発分として水、顔料分としてマイクロシリ力などを主成分とする粘着剤を使用することができる。なお、粘着層同士の密着性を向上させるために、微量のNR(天然ゴム)やPMMA(ポリメチルメタクリレート)などを添加してもよい。」(3頁右下欄4?10行)、
「トナーによる印字層13が重なるように密着させると、その部分の粘着力が弱くなるので、印字のレイアウトにより、重なり合わないようにすることが望ましい。」(4頁左上欄15?19行)、
「受取人は、粘着層12間を剥離することにより、秘密情報を毀損することなく開くことができ、その秘密情報を読むことができる。」(4頁左下欄9?11行)、
「第4図、第5図は、本発明による粘着層付き帳票の第2、第3の実施例を示した図である。帳票1Aは、基材11に第2図で示したのと同様に、粘着層12を塗布したものに、印刷層14Aとして地紋模様を印刷し、帳票1Bは、基材11に粘着層12を塗布したものに、印刷層14Bとして、見当合わせの必要な罫線を含むものを印刷した形態である。」(4頁左下欄14?19行)、
「粘着層12として、NRを主成分とするものに変えて、同様の方法で確認したところ、同様の結果を得た。」(4頁右下欄下から2行?5頁左上欄1行)、
「むやみに開封されないように、周縁部の全部または一部に、印字予定部分にかからないようにして、強粘着剤(NRベース等)を設けてもよい。・・・粘着層上にベタ柄や網目柄などの印刷でインキを塗布することにより、積極的かつ部分的に粘着力をコントロールしてもよい。」(5頁右上欄12?末行)、
「帳票1Aには地紋模様が、帳票1Bには罫線等が、それぞれ印刷されている」点(図面第4、5図)が、記載されている。
《先願明細書2(甲第3号証)に記載の事項》
「(1)lkg/cm^(2)の圧力を掛けた場合においては実質的な接着性を示さない三枚以上の多重シートを50kg/cm^(2)以上の圧力下で処理して接合した状態をなし、且つ接合面の情報を読むことが出来るように各接合面が再剥離できることを特徴とする多重接合タイプの再剥離性感圧接着性葉書。
(2)接合するシートの少なくとも一枚が支持体上に接着剤含有層を設けたシート或いは支持体上に接着剤含有層と接着抑制物質層を順次積層したシートである請求項(1)記載の再剥離性の感圧接着性葉書。
(3)接合部のエッジの全域或いは一部分が非剥離性である請求項(1)乃至(2)記載の再剥離性の感圧接着性葉書。
(4)支持体上に接着剤含有層を設けたシートが接着剤含有層の面同士を対向して重ねてlkg/cm^(2)の圧力を掛けて接合した場合にJIS K 6833-1980に基づく測定で10g/25mm以下のT型剥離力を示し、又、接着剤含有層の面同士を対向して重ねて300kg/cm^(2)の圧力をかけて接合した場合に50g/25mm以下のT型剥離力を示すように設定された請求項(1)?(3)記載の再剥離性の感圧接着性葉書。」(特許請求の範囲)、
「具体的には、例えば第1図の側面図と第2図の斜視図で示される三枚或いはそれ以上のシートを上下から加圧して多重接合シートに加工した葉書が挙げられる。これは、支持体(a)の下面に接着剤含有層(b)を設けたシートAと支持体(a)の上下面に接着剤含有層(b)を設け、更に上面の接着剤含有層上のエッジを除く部分に接着抑制物質層(c)を設けたシートBと支持体(a)の上面に接着剤含有層(b)を設け、更にその層上のエッジを除く部分に接着抑制物質層(c)を設けたシートCからなり、加圧接合後の葉書は非剥離性であるエッジ部分をミシン目(d)から切り取った後に再剥離出来、その面上の情報を見ることが出来る。」(2頁右上欄下から6行?左下欄7行)、
「第5図に示すシートは、・・・支持体(a)の上下面の全面に接着剤含有層(b)を設け、更にその上に図に示す如く接着抑制物質(c)を部分的に設けたものである。このシートを図の如き形態で加圧接合して得た葉書はミシン目(d)でエッジ部分を切り離した後に再剥離してその面上の情報を見ることが出来る。」(2頁左下欄下から4行?右下欄6行)、
「本発明の接着剤含有層の形成に用い得る接着剤としては、例えばエチレン-酢酸ビニル系樹脂・・・天然ゴム系樹脂等が挙げられ、」(2頁右下欄14?18行)、
「本発明の接着剤含有層には、通常、・・・顔料が添加され、・・・顔料としては、例えばシリカ、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン・・・澱粉粒子等が例示される。」(3頁左上欄1?10行)、「接着抑制物質含有のインキ・・・は、接着剤含有層上に・・・印刷機・・・で塗布される。」(4頁右上欄13?16行)、
「情報の印刷はシート・・・に必要に応じて行われるが、印刷方式としては、・・・が用いられる。・・・塗工、印刷の完了したシートには更にミシン目加工が施された後、必要によっては更に情報を印刷した後、シート面を対向させて・・・強圧で加圧され、葉書が形成される。」(4頁右上欄最下行?左下欄7行)、
「支持体aの表面に接着剤含有層bを積層し、接着剤含有層bのエッジを除く部分に接着抑制物質層cを積層し、その上に情報eを印刷した」点(図面第1図)が、記載されている。
《刊行物2(甲第4号証)に記載の事項》
「1)基紙と、該基紙の一方の面に設けられた顔料を含有した熱可塑性樹脂層とから成るシートの前記熱可塑性樹脂層上に情報を記録した後、該熱可塑性樹脂層同士を重合し熱圧着せしめて成ることを特徴とする情報書き込み量の大きい葉書。」(実用新案登録請求の範囲)、
「このような顔料は、例えば2酸化チタン、炭化カルシウム等の公知のものの中から適宜選択して使用することができるが、特に取り扱い性、耐候性等の面から2酸化チタンが好ましい。」(7頁13?17行)、
「本考案の葉書は、例えば葉書サイズの2倍の大きさのシート(1)の熱可塑性樹脂層(3)の上に情報を記録した後、2つ折りにして熱可塑性樹脂層(3)同士が密着するように重合し熱圧着して製造するか(第2図参照)、又は、葉書サイズの2枚のシート(1)の熱可塑性樹脂層(3)の上に情報を記録した後、2枚の熱可塑性樹脂層(3)同士が密着するように重合し熱圧着して製造する(第3図参照)何れの方法によっても良い。熱可塑性樹脂の種類、顔料の添加量又は情報記録方法、記録インク等を適宜選択し組み合わせることにより、このように熱圧着した葉書を剥がしても内部の情報を破壊することがない。」(8頁2?15行)、
「疑似接着層の表面に、印刷適正、熱転写インキ適正、鉛筆、ボールペン、油性ペン等の筆記特性を付与せしめることができる。」(9頁9?11行)、
「熱可塑性樹脂層の表面には、その周縁部を除いた箇所に書き込み情報が記録されている」点(図面第2、3図)が、記載されている。
《刊行物3(甲第5号証)に記載の事項》
「折り部を介して上片部、中片部、下片部が連接された所持体が、前記折り部で前記中片部の同一面側に対して前記下片部、前記上片部の順に折り重ねられた三つ折り状態に折り畳まれ、・・・前記下片部の上面側と前記上片部の下面側とは、少なくとも前記上片部に隣接する折り部と反対側に沿った辺部分で、通常では接着せず所定の条件が付与されると接着可能となり、接着後は剥離不能な状態で接着されるとともに、この剥離不能な接着部分の内側は、通常では接着せず前記剥離不能な接着部分と略同1条件が付与されると接着可能となり、接着後に剥離可能な状態で接着されることにより、全面的に接着される一方、・・・これら各接着部分のうち剥離可能な接着部分には秘匿すべき情報が表示された秘匿情報表示部が設けられたことを特徴とするカード状の隠蔽情報所持体。」(実用新案登録請求の範囲)、
「第4図に示したように、上片部5の下面側には、折り用ミシン目2を除く三辺に沿って各切り用ミシン目8a,8bの外側に位置するよう、通常では接着せず、熱が付与されると、例えば90℃で加熱されると接着可能となる感熱性接着剤で、一旦接着した後は剥離不能な強接着性接着剤12aが塗布されている。一方、前記上片部6の下面側における前記強接着性接着剤12a塗布部分の内側に対応する部分には、透明で、通常では接着せず、前記強接着性接着剤12aと同1条件で接着可能となる感熱性接着剤であり、一旦接着した後にも剥離可能な弱接着性接着剤13が塗布されている。なお、前記弱接着性接着剤13と前記強接着性接着剤12aとの接着強度は、塗布厚に差をつけて調整したり、接着力を低下あるいは増強させる接着調整剤を添加して調整すればよい。この接着調整剤としては、微小硬質物質、例えば粒子が8ミクロン?10ミクロンのシリカゲルやコーンスターチ、あるいは油性物質、例えばシリコンを挙げることができる。」(8頁2行?9頁2行)、
「各切り用ミシン目7a,7b,7c,8a,8bを切り取ると、葉書14の折り用ミシン目3側を除いた三辺に沿った剥離不能部分が除去され、」(11頁10?13行)、
「各接着剤12a,12b,13の接着条件は熱のほか、圧、・・によってもよく、」(13頁13?15行)が、記載されている。
3-4.当審の判断
3-4-1.実用新案法第3条第1項第3号について
本件考案と、当審で通知した取消理由で引用した上記刊行物1に記載された発明とを対比すると、
上記刊行物1に記載された発明における「接着剤含有層」を構成する「接着剤」及び「顔料」には、それぞれ「天然ゴム系樹脂」及び「シリカ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、澱粉粒子」が用いられ、これらは、本件考案における「剥離可能な接着剤」を構成する「非剥離性接着剤基材」及び「微粒状充てん剤」にそれぞれ使用される物質と同じである(本件登録明細書段落【0009】、【0010】参照。)が、上記刊行物1には、接着剤含有層同士が重なり合うシートの周縁(エッジ部分)をミシン目から切り取る実施例のみが記載され、接着剤含有層同士の重ね合わせ面が剥離可能であるものは記載されていないことから、上記刊行物1に記載された「接着剤含有層」は、剥離可能であるとはいえない。
したがって、本件考案の構成要件である「重ね合わせ面を剥離可能に接着することにより重ね合わせシートとする隠蔽情報用の重ね合わせ用シートであって、剥離可能な接着剤が設けられてなると共に、シート周縁の所定部分の接着力を他の所定部分の接着力よりも高めるための接着力調整用の印刷が前記他の所定部分の接着剤上にその集合面積を前記重ね合わせ面の75パーセント以下で施されてなる」点は、上記刊行物1に記載されておらず、示唆もされていない。
そして、本件考案は、上記構成要件により、登録明細書記載の効果を奏するものである。
よって、本件考案は、上記刊行物1に記載された考案であるとはいえない。
3-4-2.実用新案法第3条の2第1項について
(先願明細書1に記載された発明との対比)
本件考案と、上記先願明細書1に記載された発明を対比すると、
上記先願明細書1には、「粘着層上にベタ柄や網目柄などの印刷でインキを塗布することにより、積極的かつ部分的に粘着力をコントロールしてもよい。」と記載され、該記載における「ベタ柄や網目柄などの印刷」は、本件考案の「接着力調整用の印刷」に相当するものと認められるが、「接着力調整用の印刷」をどこに施すかは特定されておらず、上記先願明細書1に記載の「帳票1A及び帳票1Bに、それぞれ印刷された地紋模様及び罫線等」は、上記「ベタ柄や網目柄などの印刷」とは区別して記載されていることから、本件考案の「接着力調整用の印刷」に相当するものと認められず、
本件考案の構成要件である「重ね合わせ面を剥離可能に接着することにより重ね合わせシートとする隠蔽情報用の重ね合わせ用シートであって、剥離可能な接着剤が設けられてなると共に、シート周縁の所定部分の接着力を他の所定部分の接着力よりも高めるための接着力調整用の印刷が前記他の所定部分の接着剤上にその集合面積を前記重ね合わせ面の75パーセント以下で施されてなる」点は、上記先願明細書1に記載されていない。
そして、本件考案は、上記構成要件により、登録明細書記載の効果を奏するものである。
したがって、本件考案は、上記先願明細書1に記載された発明と同一であるとはいえない。
(先願明細書2に記載された発明との対比)
本件考案と、当審で通知した取消理由で引用した上記先願明細書2に記載された発明を対比すると、
上記先願明細書2に記載された発明における「接着剤含有層」を構成する「接着剤」及び「顔料」には、それぞれ「天然ゴム系樹脂」及び「シリカ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、澱粉粒子」が用いられ、これらは、本件考案における「剥離可能な接着剤」を構成する「非剥離性接着剤基材」及び「微粒状充てん剤」にそれぞれ使用される物質と同じである(本件登録明細書段落【0009】、【0010】参照。)が、上記先願明細書2に記載の、接着剤含有層を設けたシートの周縁(エッジ部分)を除く部分に接着抑制物質層を設けたものにおいては、接着剤含有層同士が重なり合う周縁(エッジ部分)をミシン目から切り取って剥離するものであり、接着剤含有層同士の重ね合わせ面が剥離可能であるものは記載されていないことから、上記先願明細書2に記載された「接着剤含有層」は、剥離可能であるとはいえない。
したがって、本件考案の構成要件である「重ね合わせ面を剥離可能に接着することにより重ね合わせシートとする隠蔽情報用の重ね合わせ用シートであって、剥離可能な接着剤が設けられてなると共に、シート周縁の所定部分の接着力を他の所定部分の接着力よりも高めるための接着力調整用の印刷が前記他の所定部分の接着剤上にその集合面積を前記重ね合わせ面の75パーセント以下で施されてなる」点は、上記先願明細書2に記載されていない。
そして、本件考案は、上記構成要件により、登録明細書記載の効果を奏するものである。
よって、本件考案は、上記先願明細書2に記載された発明と同一であるとはいえない。
3-4-3.実用新案法第3条第2項について
本件考案と、上記刊行物2、3に記載された考案とを対比すると、
上記刊行物2に記載の「シート」は、重ね合わせ面が剥離可能である重ね合わせシートであるが、上記刊行物2に記載の「記録した情報」は、本件考案の「隠蔽情報」に相当するものであり、上記刊行物に記載された考案には、本件考案の「接着力調整用の印刷」に相当するものは存在せず、
上記刊行物3に記載された考案は、シート(用紙)の重ね合わせ面の周縁(強接着性接着剤12aを塗布した三辺)は剥離不能であり、上記刊行物3の「弱接着性接着剤13と前記強接着性接着剤12aとの接着強度は、塗布厚に差をつけて調整したり、接着力を低下あるいは増強させる接着調整剤を添加して調整すればよい。」との記載は、本件考案における「剥離可能な接着剤上に接着力調整用の印刷を施すこと」を意味するとは認められないから、
上記刊行物2に記載された考案と上記刊行物3に記載された考案を組み合わせても、本件考案の構成要件である「重ね合わせ面を剥離可能に接着することにより重ね合わせシートとする隠蔽情報用の重ね合わせ用シートであって、剥離可能な接着剤が設けられてなると共に、シート周縁の所定部分の接着力を他の所定部分の接着力よりも高めるための接着力調整用の印刷が前記他の所定部分の接着剤上にその集合面積を前記重ね合わせ面の75パーセント以下で施されてなる」点を導き出すことはできない。
そして、本件考案は、上記構成要件により、登録明細書記載の効果を奏するものである。
したがって、本件考案は、上記刊行物2、3に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとはいえない。
3-4-4.記載不備について
異議申立人は、
「本件考案では、接着剤基剤に対して非親和性を示す微粒状充てん剤を用いるとしているが、接着剤基剤に対して非親和性を示すとはどういう事なのか不明瞭である。この点について本件公報では、『接着剤基剤との親和力が小さいもの(4欄48行)』と説明しているが、そもそも「接着剤基剤との親和力」が意味不明であるし、「小さい」といった非客観的な概念をクレームに持ち込むことは本来許されないはずである。
このように、本件考案は、接着剤基剤に対して非親和性の微粒状充てん剤と親和性の充てん剤との区別を付けることができず、本件考案とそれ以外の考案とを区別して実施することができない。」と主張している。
しかるに、本件登録明細書の考案の詳細な説明に、
「微粒状充てん剤としては、前記接着剤基剤との親和力が小さいもの、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、活性白土、球状アルミナ、小麦デンプン、シリカ、ガラス粉末、シラスバルーン等が用いられる。」(段落【0010】)と、微粒状充てん剤として使用される物質が具体的に記載されているので、本件登録明細書の考案の詳細な説明は、当業者が容易に実施し得る程度に本件考案の構成が記載されており、記載不備はないものと認められる。
3-5.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る考案の実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
隠蔽情報用の重ね合わせ用シート
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】重ね合わせ面の所定部分に隠蔽情報を設けるとともに、この重ね合わせ面を剥離可能に接着することにより重ね合わせシートとする隠蔽情報用の重ね合わせ用シートであって、重ね合わせ面の所定部分に、隠蔽情報を印刷あるいは印字可能で、かつ、通常では接着せず、圧力が付与されると接着可能となり、接着後には印刷あるいは印字された隠蔽情報を損なわずに剥離可能とすべく、一旦接着すると再剥離困難な非剥離性接着剤基材に、この接着剤基材に対して非親和性を示す微粒状充てん剤を配合して接着力を調整した剥離可能な接着剤が設けられてなると共に、シート周縁の所定部分の接着力を他の所定部分の接着力よりも高めるための接着力調整用の印刷が前記他の所定部分の接着剤上にその集合面積を前記重ね合わせ面の75パーセント以下で施されてなることを特徴とする隠蔽情報用の重ね合わせ用シート。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、三つ折り、二つ折り、切り重ね等の各種の態様で重ね合わせ、重ね合わせ面を剥離可能に接着することにより、重ね合わせシートとなす重ね合わせ用シートに関し、特に、隠蔽情報を有する重ね合わせシートとなすのに適した重ね合わせ用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、この種の重ね合わせ用シートは種々知られているが、一般的には、剥離可能に接着する重ね合わせ面を、シートの重ね合わせ面に接着力を調整した接着剤を設けて形成している。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
ところが、従来のシート面に接着力を調整した接着剤を設けて接着する重ね合わせ面を形成したものは、接着力の調整が困難であり、接着力が強すぎると、重ね合わせシートの剥離の際に隠蔽情報も接着した重ね合わせ面から剥落する等により損傷されてその視認が困難になるしまう反面、接着力が弱すぎると重ね合わせシートの接着した重ね合わせ面が容易に離反してしまい隠蔽情報を確実に隠蔽して伝達できないという欠点がある。
本考案は、このような欠点を解消した重ね合わせ用シートを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために本考案は、重ね合わせ面の所定部分に隠蔽情報を設けるとともに、この重ね合わせ面を剥離可能に接着することにより重ね合わせシートとする隠蔽情報用の重ね合わせ用シートであって、重ね合わせ面の所定部分に、隠蔽情報を印刷あるいは印字可能で、かつ、通常では接着せず、圧力が付与されると接着可能となり、接着後には印刷あるいは印字された隠蔽情報を損なわずに剥離可能とすべく、一旦接着すると再剥離困難な非剥離性接着剤基材に、この接着剤基材に対して非親和性を示す微粒状充てん剤を配合して接着力を調整した剥離可能な接着剤が設けられてなると共に、シート周縁の所定部分の接着力を他の所定部分の接着力よりも高めるための接着力調整用の印刷が前記他の所定部分の接着剤上にその集合面積を前記重ね合わせ面の75パーセント以下で施されていることを特徴とする。
【0005】
【作用】
重ね合わせ面を接着するための接着剤は、通常では接着せず、一定条件が付与されると接着可能となり、接着後には接着剤上に印字等の手段で設けられた隠蔽情報を損なわないように剥離可能なので、所定状態に重ね合わせたうえ、一定の接着条件を付与すると、接着面が剥離可能な重ね合わせシートとなる。一方、この重ね合わせシートの接着面を剥離した時に、隠蔽情報は損傷されず、確実に視認される。
【0006】
【実施例】
以下、本考案を葉書を作成するための重ね合わせ用シートに適用した場合の好適な実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。
ここにおいて、図1は作成された葉書の一実施例を示す概略的断面図、図2は同葉書を作成するための重ね合わせ用シートたる葉書用シートの表面側を示す平面図、図3はその裏面側を示す平面図、図4は葉書の第2実施例を示す概略的断面図、図5は同葉書を作成するための葉書用シートの表面側を示す平面図、図6は葉書用シートの第3実施例を示す表面側の平面図、図7は同シートから作成された葉書を示す平面図、図8は葉書用シートから葉書を作成する工程を示すフロー図である。
【0007】
はじめに、図1?図3に基づき本考案の第1実施例を説明する。
本実施例は、重ね合わせ用シートたる葉書シートを幅方向に2区画に分けた例である。図2及び図3に示すように、葉書用シート1は、葉書作成時に宛名が記入される宛名記入部2を表面側に有し、裏面側は接着剤3が塗布されて接着される重ね合わせ面となり、この接着剤上に隠蔽情報記入部4が印刷で形成された葉書上紙片5と、この葉書上紙片5に折り用ミシン目6から折り重ねて接着される前記葉書上紙片5よりは横幅の狭い葉書下紙片7とからなる。前記葉書下紙片7は、図3で明らかなように、裏面側に前記葉書上紙片5と同一の接着剤3が塗布されて接着される重ね合わせ面となり、この接着される重ね合わせ面上に隠蔽情報記入部8が印刷で形成されている。すなわち、葉書用シート1は折り用ミシン目6によって2区画に分けられ、図3に示す裏面側が接着される重ね合わせ面となっている。そして、各隠蔽情報記入部4,8の内側部分には、網点状の印刷14(図では斜線で表示)が淡色のインキでなされている。接着剤3の確実な接着力を維持するためには、点、線、ベタの印刷の集合面積が接着される重ね合わせ面の75%以下がよく、好ましくは50%以下がよく、いわゆるベタ印刷の前記印刷面積に占める割合は25%以下が好ましい。この印刷14を施すことによって、葉書上紙片5と葉書下紙片7の各隠蔽情報記入部4,8の外側部分の接着力が、内側部分の接着力よりも高くなる。
【0008】
前記接着剤3は、印刷あるいは印字が可能で、かつ、通常では接着せず、一定条件が付与されると接着可能となり、接着後には印字等の手段で設けられた隠蔽情報が損なわれないように剥離可能なものであればよいが、例えば、感圧性で一旦接着すると再剥離不能な非剥離性接着剤基剤に、この接着剤基剤に対して非親和性を示す微粒状充てん剤を配合してなるものが好適である。感圧性接着剤の場合には、1cm^(2)あたり50Kg以上、好ましくは80Kg以上の圧力で接着するものがよい。
【0009】
前記接着剤基剤としては、従来用いられている通常の感圧性接着剤でよいが、特に挙げれば、天然ゴムにスチレンとメタクリル酸メチルとをグラフト共重合させて得られた天然ゴムラテックスが、耐ブロッキング性、耐熱性、耐摩耗性等の点で好適である。なお、接着剤基剤としては、感圧性のほか、従来用いられている通常の感熱性あるいは再湿性の接着剤を用いることもでき、感熱性の接着基剤としては、特に酢酸ビニル系重合体が好適であり、また、再湿性の接着基剤としては、ポリビニルアルコールやポリエチレンオキシドなどが好適である。
【0010】
一方、前記微粒状充てん剤としては、前記接着剤基剤との親和力が小さいもの、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、活性白土、球状アルミナ、小麦デンプン、シリカ、ガラス粉末、シラスバルーン等が用いられる。これらの材料は、単独でも、複数組み合わせてもよいが、特に、シリカと他の適宜な充てん剤との組み合わせが好適である。また、粒径の異なる2種類以上を組み合わせると、接着剤塗布面を凹凸状に形成しやすいので、剥離性能が向上する。シリカを添加すると、接着剤の塗膜を強化しうるとともに、その多孔質性により、接着剤が表面に付着しやすいので、接着力や剥離力を調整しやすいという利点がある。また、シリコーンオイルを用いているプリンタにより、ノンインパクト方式で印字した場合でも、シリカがシリコーンオイルを吸収するので、接着剤がシリコーンオイルにより接着しなくなることもない。なお、微粒状充てん剤の平均粒子径は、10mμm?30μm、好ましくは1μm?20μm、さらに好ましくは2μm?15μmの範囲が好適である。
【0011】
上述した微粒状充てん剤は、感圧性、感熱性、再湿性のいずれの接着剤基剤に対しても使用可能であるが、感圧性及び再湿性の接着剤基剤に対しては、接着剤基剤100重量部に対して微粒状充てん剤を100?400重量部、好ましくは130?300重量部、最も好ましくは150?250重量部の割合で配合することが望ましい。感熱性の接着剤基剤に対しては、接着剤基剤100重量部に対して微粒状充てん剤を45?100重量部、好ましくは55?90重量部、最も好ましくは60?80重量部の割合で配合することが望ましい。この微粒状充てん剤の配合割合が前記範囲よりも少ないと、耐ブロッキング性に劣り、かつ接着力が強すぎる一方、前記範囲よりも多い場合には、接着力が低下し過ぎて容易に剥離してしまう。
【0012】
また、葉書用シート1は接着剤3を塗布した状態において、平滑度がJISPー8119に準拠して20?120秒、好ましくは30?70秒、さらに好ましくは40?60秒の範囲にあり、透気度がJISPー8117に準拠して100秒以下であることが好ましい。剥離強度は1Kg/cm^(2)の荷重をかけ、常温で30分放置後に25mm幅で10g以下であるものである。一般にシート上に接着剤を塗布すると表面に凹凸が生じ、印刷工程やプリント工程あるいは保存時等に、接着剤表面の前記凹凸がこすれ等により脱落したり、紙粉の発生源となったりする。また、印刷やプリントにおけるインキの定着不均一、ムラを生ずる。そこで、キャレンダーがけ等の処理により平滑度を上記範囲にすると、前記不都合が解消され、印刷適性及び印字適性の双方に優れたものとなる。また、透気度が上記範囲にあると吸気作用のある移送装置等を利用した葉書用シート1の移送も円滑になされ、水分の蒸発が十分になされるから葉書用シート1がカールすることがなく、剥離強度が上記範囲にあると葉書用シート1の確実な接着を確保する一方で、接着した重ね合わせ面に印刷あるいは印字された隠蔽情報を損なわずに剥離可能となる。なお、本実施例では、微粒状充てん剤の配合割合で、平滑度、透気度及び剥離強度の調整ができるが、微粒状充てん剤を配合しない接着剤の場合には、網点状に塗布したり、微小孔を形成したり、塗布厚を調整することにより、それぞれ調整可能である。
【0013】
葉書用シート1は、宛名記入欄2に、図示していないプリンタによって宛名11が印字される一方、隠蔽情報記入欄4,8に、同じく図示していないプリンタによって隠蔽情報9,10が印字され、この隠蔽情報印字面が折り用ミシン目6で折り重ねられ、接着剤3の接着条件である圧力が付与されることにより、剥離可能に接着されて、図1に示すような葉書上紙片5の反綴じ合わせ縁が葉書下紙片7よりも突出して指掛け部13となった葉書12となる。そして、この葉書12は四周縁が他の部分よりも強く接着された状態となり、その取り扱い中に四周縁が剥離することはない。
【0014】
このように、前記葉書12は、図8に示すように、葉書用シート1に対して、その重ね合わせ面に接着剤3を塗布する接着剤塗布工程、接着剤3上に隠蔽情報記入欄4,8を印刷する印刷工程、隠蔽情報記入欄4,8に隠蔽情報9,10を印字する情報印字工程、葉書用シート1の重ね合わせ面どうしを折り重ねる重ね合わせ工程、接着剤3の接着条件を付与して重ね合わせ面どうしを剥離可能に接着する接着工程を順次施すことにより作成されるものである。
【0015】
作成された葉書12は、隠蔽情報9,10が外部から見えない状態となる一方、通常の葉書と同様に投函することが可能となる。また、上述した作成過程では説明しておらず、また図示してもいないが、葉書下紙片7の表面には、隠蔽情報9,10を見るための説明文があらかじめ表示されている。したがって、葉書12を受領した宛名人は、指掛け部13を摘んで葉書上紙片5と葉書下紙片7とを一定以上の力を与えて剥離し見開き状態とすれば、隠蔽情報9,10を見ることができるものである。この剥離に際しては、接着剤3の接着力が、接着された重ね合わせ面に印字された隠蔽情報9,10を損うことなく剥離可能に設定されているから、前記隠蔽情報9,10が剥がれて、視認できない事態を生じる恐れはなく、また、指掛け部13によって剥離動作も容易である。
【0016】
次に、第4図及び第5図に基づき本考案の第2実施例を説明する。
本実施例は葉書用シート21を幅方向に3区画に分けた例である。図5に示すように、葉書用シート21は、葉書作成時に宛名が記入される宛名記入部22を表面側に有し、裏面側には接着剤23(第4図参照)が塗布された葉書上紙片24と、この葉書上紙片24と同一大で前記葉書上紙片24に折り用ミシン目25を介して連接され、表裏両面に接着剤26,23(第4図参照)が塗布された葉書中紙片27と、この葉書中紙片27及び前記葉書上紙片24よりは幅広で前記葉書中紙片27に折り用ミシン目28を介して連接され、表面に接着剤26(第4図参照)が塗布された葉書下紙片29とからなる。前記葉書中紙片27と前記葉書下紙片29の前記接着剤26が塗布された表面側が第1の接着される重ね合わせ面となり、また、前記葉書上紙片24と前記葉書中紙片27の前記接着剤23が塗布された裏面側が第2の接着される重ね合わせ面となる。そして、これら重ね合わせ面が、各折り用ミシン目25,28で折り重ねられる。すなわち、葉書用シート21は、前記折り用ミシン目25,28で3区画に分けられたものである。前記第1の接着される重ね合わせ面には、周縁部に単位面積あたり50%程度の密度で接着剤26上に適宜な模様が淡色のインキで印刷された粗印刷部30と、この粗印刷部30の内側に適宜な模様が同じく淡色のインキでいわゆるベタ印刷された密印刷部31が設けられている。前記粗印刷部30は、スクリーン印刷を施したり、縞状にベタ印刷することにより形成すればよい。これによって、葉書中紙片27と葉書下紙片29の重ね合わせ面における前記粗印刷部30部分の接着力が、前記密印刷部31部分の接着力よりも高くなる。
【0017】
接着剤26は、印刷あるいは印字が可能でかつ、通常では接着せず、一定条件が付与されると接着可能となり、接着後には印字等の手段で設けられた隠蔽情報を損なわずに剥離可能なものであり、第1実施例の接着剤3と同一のものである。一方、接着剤23は、隠蔽情報が印字されず、接着後に剥離されない重ね合わせ面に設けられるので、通常では接着せず、一定条件を付与されると接着可能となる接着剤であれば足り、印刷あるいは印字が可能である必要はなく、また、剥離可能である必要もない。この接着剤23としては、通常の感圧性、感熱性、再湿性の非剥離性接着剤を用いればよいが、接着条件は前記接着剤26と同一なものがよい。したがって、本実施例では感圧性接着剤が採用される。
【0018】
次に、図5に示す葉書シート21から図4に示す葉書35を作成する手順について説明する。
葉書用シート21は、宛名記入欄22に、図示していないプリンタによって宛名36が印字される一方、葉書中紙片27と葉書下紙片29の重ね合わせ面に同じく図示していないプリンタによって隠蔽情報32,33が印字される。続いて、この葉書中紙片27と葉書下紙片29の隠蔽情報印字面が折り用ミシン目28で折り重ねられ、また、葉書上紙片24と葉書中紙片27の重ね合わせ面である裏面どうしが折り用ミシン目25で折り重ねられて、Z字状に三つ折りされる。さらに、接着剤26,23の接着条件である圧力が付与されることにより、剥離可能に接着されて、図4に示すような葉書下紙片29の反折り曲げ縁が他の各葉書紙片24,27よりも突出して指掛け部34となった葉書35となる。そして、この葉書35の周縁部に設けた粗印刷部30は、密印刷部31よりも強い接着力で接着され、この粗印刷部30が前記葉書35の取り扱い中に剥離することはない。
【0019】
本実施例においても、第1実施例同様、指掛け部34に指を掛けて葉書中紙片27と葉書下紙片29とを剥離し、見開き状態とすれば隠蔽されていた各隠蔽情報32,33を視認することができる。なお、本実施例における他の構成及び作用は第1実施例と同一であるからその説明は省略する。
【0020】
続いて、図6及び図7に基づき本考案の第3実施例を説明する。
本実施例は、重ね合わせ用シートたる葉書用シートを幅方向に2区画に分けた例である。図6に示すように、葉書用シート41は、折り用ミシン目42によって2区画に分けられて、葉書上紙片43と葉書下紙片44とからなり、その両側には切り用ミシン目45をそれぞれ境として等間隔にマージナル孔46が透設されたマージナル部47が設けられている。そして、図示してはいないが、図6上、上下方向に多数連接された連続シートとなっている。前記葉書上紙片43は前記葉書下紙片44の約4倍の大きさであり、葉書作成時に宛名が記入される宛名記入部48を表面側に有している。前記葉書上紙片43と前記葉書下紙片44の前記表面側には、前記葉書下紙片44の全面と、前記葉書上紙片43の折り用ミシン目42で前記葉書下紙片44が折り重ねられる部分に、接着剤49が塗布されて接着される重ね合わせ面となり、前記葉書上紙片43のこの重ね合わせ面上に隠蔽情報記入部50が印刷で形成されている。前記接着剤49は、印刷あるいは印字が可能で、かつ、通常では接着せず、一定条件が付与されると接着可能となり、接着後には印字等の手段で設けられた隠蔽情報を損なわずに剥離可能なものであって、第1実施例の接着剤3と同一のものである。なお、図7に示すように、前記葉書下紙片44の裏面側には、葉書51の使用説明文52があらかじめ印刷されている。
【0021】
次に、図6に示す葉書シート41から図7に示す葉書51を作成する手順について説明する。
葉書用シート41は、マージナル孔46を利用してトラクタ(図示せず)により所定方向に移送されつつ、宛名記入欄48に、図示していないプリンタによって宛名53が印字される一方、隠蔽情報記入欄50に、同じく図示していないプリンタによって隠蔽情報54が印字され、マージナル部47を切り用ミシン目45から破断除去した後、葉書上紙片43の隠蔽情報印字面に葉書下紙片44が折り用ミシン目42から折り重ねられ、接着剤49の接着条件である圧力が付与されることにより、剥離可能に接着されて、図7に示すような一部分のみが重ね合わされた二つ折りの葉書51となる。
【0022】
本実施例においても、使用説明文52の説明にしたがって、第1実施例同様、葉書上紙片43と葉書下紙片44とを剥離し、見開き状態とすれば隠蔽されていた各隠蔽情報54を視認することができる(図6参照)。なお、本実施例における他の構成及び作用は第1実施例と同一であるからその説明は省略する。
【0023】
なお、本考案は、上述した各実施例に限定されるものではなく、接着剤3,26,49をシート面に設ける方法としては、シートを抄く工程で含浸させ、シート面に表出させるものでもよい。また、接着面に施す印刷14,30,31は、指掛け部に対応する部分を特に密とすることにより、除去動作を伴う前記指掛け部の機能をさらに向上しうる。またさらに、前記指掛け部は、上述した構成のほか、ミシン目から破断して除去することにより対応する他の葉書片の一部を露出させたり、切欠部を設けて対応する他の葉書片の一部を当初から露出させたり、あるいは摘み片を設けることにより構成してもよい。さらに、接着剤3,26,49を設ける部分は、重ね合わせ面全体に限らず、その一部でもよい。本考案の接着剤は、一定の条件を付与しないと接着しないので、シートの表裏全面に塗布されていても取り扱いに支障をきたさず、便利である。また、本考案は折り重ねのほか、切り重ねする重ね合わせ用シート、あるいは別体で同一大もしくはサイズの相違する複数のシートを重ね合わせるものにも適用でき、さらに作成すべき重ね合わせシートとしては、葉書のほか、各種カード類や各種帳票類にも適用できることはもちろんである。またさらに、葉書用シート1,21,41の材質は、通常の紙のほか、合成紙、樹脂フィルム等適宜選択可能である。加えて、本考案の隠蔽情報9,10,32,33,54は特に秘匿性が要求されるものでなくても、例えば印刷面積を多く必要とする見開きの宣伝広告情報でもよく、この場合には隠蔽情報所持体を開いてその見開き両面に情報内容を見るので受領人の興味を引き、ダイレクトメール等として用いれば、宣伝効果の一層の向上を図ることができる。
【0024】
【考案の効果】
以上説明したところで明らかなように、本考案によれば、印刷あるいは印字が可能で、かつ、通常では接着せず、一定条件が付与されると接着可能となり、接着後には印字等の手段で設けられた隠蔽情報を損なうことなく剥離可能な接着剤を用いて重ね合わせ面を剥離可能に接着するので、この接着面に印刷あるいは印字によって隠蔽情報を設けることができることはもちろん、作成した重ね合わせシートにおいては周縁所定部分の接着力が他の部分よりも高いので、周縁部から取り扱い中に不用意に剥離することがなく、隠蔽情報を確実に隠蔽し、かつ、剥離にあたっては隠蔽情報が損なわれることなく、確実に視認できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案に係る重ね合わせ用シートで作成される葉書の一実施例を示す概略的断面図。
【図2】
同葉書を作成するための重ね合わせ用シートたる葉書用シートの表面側を示す平面図。
【図3】
同葉書用シートの裏面側を示す平面図。
【図4】
葉書の第2実施例を示す概略的断面図。
【図5】
同葉書を作成するための葉書用シートの表面側を示す平面図。
【図6】
葉書用シートの第3実施例における表面側を示す平面図。
【図7】
同葉書用シートから作成した葉書を示す平面図。
【図8】
葉書用シートから葉書を作成する工程を示すフロー図。
【符号の説明】
1,21,41葉書用シート
3,26,49接着剤
5,24,43葉書上紙片
6,25,28,42折り用ミシン目
7,29,44葉書下紙片
9,10,32,33,54隠蔽情報
12,35,51葉書
27葉書中紙片
訂正の要旨 本件実用新案登録第2602958号の訂正事項は、以下のとおりである。
ア.訂正事項a
実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、
実用新案登録請求の範囲の請求項1において、
「一定条件」を「圧力」と訂正し、 「接着力調整用の印刷が前記他の所定部分の接着剤上に施されてなる」を「接着力調整用の印刷が前記他の所定部分の接着剤上にその集合面積を前記重ね合わせ面の75パーセント以下で施されてなる」と訂正する。
イ.訂正事項b
明りょうでない記載の釈明を目的として、
段落【0004】において、
「一定条件」を「圧力」と訂正し、「接着力調整用の印刷が前記他の所定部分の接着剤上に施されてなる」を「接着力調整用の印刷が前記他の所定部分の接着剤上にその集合面積を前記重ね合わせ面の75パーセント以下で施されてなる」と訂正する。
異議決定日 2001-02-28 
出願番号 実願平2-405686 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (B42D)
U 1 651・ 531- YA (B42D)
U 1 651・ 161- YA (B42D)
U 1 651・ 113- YA (B42D)
最終処分 維持    
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 白樫 泰子
鈴木 寛治
登録日 1999-12-03 
登録番号 実用新案登録第2602958号(U2602958) 
権利者 トッパン・フォームズ株式会社
東京都千代田区神田駿河台1丁目6番地
考案の名称 隠蔽情報用の重ね合わせ用シート  
代理人 高橋 寛  
代理人 高橋 寛  

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