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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) A42B
管理番号 1039528
判定請求番号 判定2000-60162  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2001-07-27 
種別 判定 
判定請求日 2000-12-06 
確定日 2001-05-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第2525011号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「ヘルメットのハンモック掛け具」は、登録第2525011号実用新案の技術的範囲に属しない。
理由 1.請求の趣旨
イ号図面及びその図面の説明書に示す「ヘルメットのハンモック掛け具」(以下、「イ号物件」という。)は、登録実用新案第2525011号の技術的範囲に属する。

2.本件登録実用新案
本件登録実用新案は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであって、分説すると、次のとおりである。
【請求項1】
A.ヘルメットの縁部付近の内側の適宜位置に差込みブラケットを一体的に形成し、
B.該ヘルメットに内装される帯状ハンモックの先端部の両側に差込み片を形成して、上記差込みブラケットの差込み溝に差し込むと共に、
C.該ハンモックの先端両側に突設させた掛止め片を上記差込みブラケットの縁側端面に当接させた状態で掛け止めるハンモック掛け具において、
D.上記差込み片を挟んで上記掛止め片の反対側のハンモック両側位置に係止爪を設けると共に、
E.該係止爪とハンモックとの間に、上記掛止め片の方向に開放したスリットを形成して、弾性的に撓むことができるように構成したことを特徴とするヘルメットのハンモック掛け具。

3.イ号物件
(1)判定請求書には、イ号物件の「ヘルメットのハンモック掛け具」を示すイ号図面及びその説明書が添付され、イ号図面の説明書には、次のとおり記載されている。
「イ号物件は、ヘルメットのハンモック掛け具であって、次のように構成されている。
ヘルメット本体1の縁部付近の内側の4箇所には、2条の差込みブラケット3が一体的に突設して形成されている。各差込みブラケット3の内側、すなわち相互に向かい合う側には、差込み溝3aが平行に形成され、かつヘルメット本体1の縁側及び奥側に向けて開放されている。
ヘルメット本体1の内側には帯状のハンモック2が内装されるとともに、該ハンモックの先端部2aの両側に差込み片6が形成され、この差込み片6が上記差込みブラケット3の差込み溝3aに差し込まれる。
ハンモック2の先端から両側に掛止め片4が一体的に突設され、上記掛止めブラケット3の縁側端面に当接して掛け止められる。
係止爪5が、上記差込み片6を挟んで上記掛止め片4の反対側に、かつ上記ハンモックの両側の位置に、掛止め片4から差込み片6の外側を迂回するように延在するアーム5aを介して一体的に形成される。
上記係止爪5は、ハンモック2との間に、開放したスリットをあけた状態で、ハンモック2の両面方向に弾性的に撓むことができる。」

(2)被請求人は、イ号図面の元となっているとして、特許第2968527号明細書に記載された事項を根拠に、イ号物件についての説明を行っている。そこで、イ号図面(図1、図2Aと図2B、図3Aと図3B)と、特許第2968527号明細書の図1、図2、図3とを対比すると、図面に付された参照番号が異なる以外に相違点はなく、被請求人の主張するように、特許第2968527号に記載された「ヘルメットにおけるハンモック係止装置」がイ号物件に相当するものと認められる。
ところで、特許第2968527号明細書には、係止爪について、以下のように記載されている。
ア.「該差込みブラケット3,3を外側より囲繞するごとく上方に弾性的に撓み可能に一対の係止アーム4,4が差込みブラケット3,3の下端縁に当接係止するための係止部4a,4aから上方に伸び上端内方に前記ブラケット3,3の上端縁に当接係止するための係止爪4b,4bを突設して、ブラケットへの係止具が形成され、」(公報第6欄第4?9行)
イ.「左右の係止アーム4,4先端の係止爪4b,4bはブラケット3,3の表面を乗り越えて該アーム4,4の撓みは復元して該係止爪4b,4bの下端縁は微少間隙でブラケット上端縁に略当接状態となる。これにより確実にハンモックの先端をブラケットに係止することができる(図3右図参照)。」(公報第6欄第27?32行)
ウ.「係止アーム4,4はその撓み部分の長さが長いので容易に係止具をブラケットに装着することができる。さらに一対の係止アーム4,4はブラケット3,3の外周を囲んでいることから、ハンモックのブラケットに対する横振れを抑止して着用したヘルメットのぐらつきを防止する。」(公報第6欄第41?46行)

上記記載「ア」、「イ」、「ウ」を参照すれば、イ号物件の係止爪はブラケットの外周を周回するアームの先端に設けられており、アームを介して係止爪が設けられているので、係止爪はハンモックの動きの影響からは完全に遮断され、不用意な外力がハンモックにかかっても係止爪が係止状態から外れることがないものとなっている。そして、撓む部分は、係止爪ではなく、係止爪を支えるアームである。

(3)以上のことから、イ号物件は、次のa?eの構成からなるものと認められる。

a.ヘルメット1の縁部付近の内側4箇所に差込みブラケット3を一体的に形成し、
b.該ヘルメット1に内装される帯状ハンモック2の先端部2aの両側に差込み片6を形成して、上記差込みブラケット3の差込み溝3aに差し込むと共に、
c.該ハンモック2の先端両側に突設させた掛止め片4を上記差込みブラケット3の縁側端面に当接させた状態で掛け止めるハンモック掛け具において、
d.上記差込み片6を挟んで上記掛止め片4の反対側のハンモック両側位置に係止爪5を、掛止め片4から差込み片6の外側を迂回するように延在するアーム5aを介して設けると共に、
e.該係止爪5とハンモック2との間に、係止爪全域にわたって開放したスリットを形成して、アーム5aが弾性的に撓むことができるように構成したことを特徴とするヘルメットのハンモック掛け具。

なお、請求人は、上記構成eに関して、スリットは掛止め片4の方向に開放されており、本件登録実用新案のスリットの配置と同様な構成であると主張している。しかしながら、本件登録実用新案においては、係止爪がハンモックに、掛止め片と反対の方向で直接固着されており、係止爪が撓むことができるよう、ハンモックとの間に掛止め片の方向に開放したスリットを設けているのに対し、イ号物件のものにおいては、係止爪がブラケットを迂回するように周回したアームの先端に設けられているので、係止爪とハンモックの間には、係止爪全域に沿って開放されたスリットが設けられている。また、本件登録実用新案では、係止爪自体が弾性的に撓むものとなっているのに対し、イ号物件においては、弾性的に撓む部分はアーム部分である。
よって、上記構成eのように、イ号物件を認定した。

4.本件登録実用新案とイ号物件のと対比
(1)本件登録実用新案の構成Aについて
本件登録実用新案においては、ブラケットはヘルメットの縁部付近の内側の適宜位置に設けられるものとなっており、その登録実用新案明細書の実施例には、4箇所に設けられたものが記載されている。
したがって、構成Aの「縁部付近の内側の適宜位置」は、ブラケットが4箇所に設けられたものをも含むことは明らかであるので、イ号物件は本件登録実用新案の構成Aを充足する。

(2)本件登録実用新案の構成B及びCについて
イ号物件の構成b及び構成cは、本件登録実用新案の構成B及び構成Cと構成が明らかに一致するので、イ号物件は本件登録実用新案の構成B及び構成Cを充足する。

(3)本件登録実用新案の構成Dについて
本件登録実用新案の係止爪に関し、実用新案登録明細書には、次のように記載されている。
エ.「また、上記係止爪5はハンモック2との間に先端側(上記掛止め片4の方向)に開放したスリット5aをあけた状態で、ハンモック2の両側に一体的に形成され、ハンモック2の両面方向に弾性的に撓むことができるよう構成されている。」(第4欄第16?20行)
オ.「ハンモック2の先端部2aに形成した上記差込み片6を、ヘルメット本体1の内側に形成した掛止めブラケット3の上記差込み溝3aに、ヘルメット本体1の縁側から奥側に向けて矢印のように差し込む。この時、上記係止爪5は、差し込み作用の邪魔にならないように、掛止めブラケット3の上側に弾性的に撓んだ状態にある。
差込み片6が差込み溝3aに完全に差し込まれると、図2に示すように、上記掛止め片4が掛止めブラケット3の縁側端面3bに当接して、ハンモック2をヘルメット本体1に掛け止めると共に、係止爪5が弾性的に復帰して、その先端面5bが掛止めブラケット3の奥側端面3cに当接し、ハンモック2の先端部2aがヘルメット本体1の掛止めブラケット3から外れるのを防止する。」(第4欄第25?39行)
そして、図面には、
カ.「両側に掛止め片4方向に向かって係止爪5、5が設けられた部材の基部が、ハンモック2に直接固着されてハンモックと一体的に形成されており、両側に設けられて爪部だけが弾性的に撓むようになっている」構成が記載されている。

記載「エ」、「オ」及び「カ」からも明らかなように、本件登録実用新案の係止爪は、ハンモックに直接固着された基材の両端に形成され、差込み片を挟んで掛止め片の反対側のハンモック両側位置に設けられている。そして、差込み片がブラケットに完全に差し込まれた状態で、係止爪の先端がブラケットの奥側端面に当接し、ハンモックがブラケットから外れるのを防止するものである。

一方、イ号物件の係止爪も、差込み片を挟んで掛止め片の反対側のハンモック両側位置に設けられている。
被請求人は、本件登録実用新案においてはハンモックに固着された基材の両端に、直接係止爪が形成されているのに対して、イ号物件の係止爪は掛止め片から差込み片の外側を迂回するように延在するアームの先端に設けられており、その結果、係止爪はハンモックの動きの影響からは完全に遮断され、不用意な外力がハンモックにかかっても係止爪が係止状態から外れることがないと主張している(答弁書第3頁第16?27行)。確かに、イ号物件の係止爪は掛止め片から差込み片の外側を迂回するように延在するアームの先端に設けられているが、係止爪がアームの先端に設けられている結果、イ号物件の係止爪も「差込片を挟んで掛止め片の反対側のハンモック両側位置に設けらる」こととなっており、このことは、イ号図面から見ても明らかである。
よって、イ号物件は本件登録実用新案の構成Dを充足する。

(4)本件登録実用新案の構成Eについて
本件登録実用新案の係止爪は、ハンモックに直接固着された基材の両端に形成されており、係止爪が弾性的に撓むようにするために、係止爪とハンモックの間に掛止め片の方向に開放したスリットを形成しているものであり、スリットは係止爪の設置部分と掛止め片との間に設けられている。
一方、イ号物件の係止爪は、係止爪が取り付けられたアームはハンモックの最下端に設置されており、アームが掛止め片から差込み片の外側を迂回して延在しているので、係止爪とハンモックとの間に設けられたスリットは、その設置部分から見れば掛止め片よりも遠い箇所に形成されているので、両者は、スリットの形成箇所と、係止爪の設置個所及び掛止め片との相対的位置が相違している。
よって、イ号物件は本件登録実用新案の構成Eを充足しない。

なお、構成Eは、本件登録実用新案のハンモックがブラケットから簡単に外れないようにするための本質的な部分であり、他の要件を判断するまでもなく、イ号物件は本件登録実用新案の均等の範囲にあるとはいえない。

5.むすび
したがって、イ号物件すなわちイ号図面及びその説明に示す「ヘルメットのハンモック掛け具」は、登録実用新案第2525011号の請求項1に係る登録実用新案の技術的範囲には属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2001-05-11 
出願番号 実願平3-86649 
審決分類 U 1 2・ 1- ZB (A42B)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 鈴木 美知子  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 杉原 進
門前 浩一
登録日 1996-11-07 
登録番号 実用新案登録第2525011号(U2525011) 
考案の名称 ヘルメットのハンモック掛け具  
代理人 藤田 典彦  
代理人 藤田 邦彦  
代理人 福田 進  
代理人 鈴木 征四郎  

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