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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1041538
審判番号 審判1999-19450  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-12-03 
確定日 2001-06-21 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 63115号「サーマルラインプリンタ」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 5月23日出願公開、実開平 7- 27848]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続きの経緯
本願は平成5年10月30日の出願であって、その請求項1乃至2に係る考案は、平成11年3月23日付け、平成11年12月3日付けおよび平成12年12月20日付け手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1乃至2に記載された次のとおりのものである。(以下、それぞれ「本願考案1」、「本願考案2」という。)
「[請求項1]内蔵バッテリを電源とする携帯型バッテリ駆動式サーマルラインプリンタであって、
線状に配列された複数の発熱体を備えるサーマルラインヘッドと、前記発熱体が所定のエネルギーを発生するよう、所定のパルス幅のストローブ信号を前記サーマルラインヘッドに印加する駆動手段と、印字初期の最初の所定数の印字行の印字を行う際に前記発熱体が前記所定のエネルギーより大きいエネルギーを発生するよう、前記駆動手段を制御して前記ストローブ信号のパルス幅を前記所定のパルス幅より長くする制御手段と、
印字中は、前記ストローブ信号による前記発熱体の駆動の終了に同期させて記録紙の搬送を行う記録紙搬送手段と、
印字中に、前記バッテリの電圧を検知する電圧検知手段と、
印字中に前記バッテリの電圧が所定の下限値を下回った場合には、印字を中止する制御手段と、
を有することを特徴とするサーマルラインプリンタ。
[請求項2]前記駆動手段は、前記複数の発熱体を4つのグループに分割して、グループ毎に異なるタイミングでストローブ信号を印加し、
前記記録紙搬送手段は、前記4つのグループ中2つのグループの発熱体が駆動される毎に、前記記録紙を1/2行分搬送することを特徴とする請求項1に記載のサーマルラインプリンタ。」

2.当審の拒絶理由の概略
本願の請求項1に係る考案は、引用例1(特開平4-197659号公報)、引用例2(特開平3-286883号公報)および引用例3(特開昭64-61267号公報)記載の考案に基づいて、請求項2に係る考案は引用例1,引用例2および引用例4(特開平4-128060号公報)記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
また、明細書の考案の詳細な説明の記載に不備があり、本件実用新案登録出願が実用新案法第5条第4項および5項に規定する要件を満たしていない。

3.引用刊行物記載の考案および周知技術
[引用例1(特開平4-197659号公報)記載の考案]
a.「1.印字ドットに対応して複数個配列された発熱抵抗体に対し、印字データに応じて駆動パルス電圧を印加して印字を行なうサーマルヘッドにおいて、印字開始時、およびある一定の期間以上印字を停止した後再度印字を行なう場合に、書き始めから所定の期間だけ通常の駆動パルスより長いパルス幅の電圧を印加するように構成されたことを特徴とするサーマルヘッド。
2.請求項1記載のサーマルヘッドにおいて、駆動パルス幅を制御するパルス幅制御回路が設けられ、該パルス幅制御回路は、通常の駆動パルスより長いパルスの幅を決定するパルス幅決定手段と、通常の駆動パルス幅より長いパルス幅にて駆動を行なう期間を決定する駆動期間決定手段と、該パルス幅決定手段および駆動期間決定手段による駆動パルス制御を有効にするため、印字停止期間を決定する印字停止期間決定手段とを備え、印字開始時、および前記印字停止期間決定手段にて決定された期間以上印字を停止した後再度印字を行なう場合に、前記駆動期間決定手段にて決定された期間だけ、前記パルス幅決定手段により決定された通常の駆動パルス幅より長いパルス幅にて発熱抵抗体を駆動するように構成されたことを特徴とするサーマルヘッド。」(公報特許請求の範囲の項)
b.「そうすると、マイクロコンピュータ9は、このデジタル温度データに応じた駆動パルス幅データをROMテーブル10から読みだし、この駆動パルス幅にて発熱抵抗体2を駆動するように、駆動回路3に対して駆動パルス幅制御信号(ストローブ信号)を送り、サーマルヘッドの温度変化に対して印字濃度を一定に維持するようにしている。」(公報第2頁右上欄第12行?18行)
以上の記載を対比のためにまとめると、引用例1には次のような考案が記載されている。
「複数の発熱体を備えるサーマルヘッドと、前記発熱体が所定のエネルギーを発生するよう、所定のパルス幅のストローブ信号を前記サーマルヘッドに印加する駆動手段と、印字初期の最初の期間の印字を行う際に前記発熱体が前記所定のエネルギーより大きいエネルギーを発生するよう、前記駆動手段を制御して前記ストローブ信号のパルス幅を前記所定のパルス幅より長くするパルス幅制御回路と、を有するサーマルヘッド。」

[引用例2(特開平3-286883号公報)記載の考案]
a.「(2)基板上に配列した発熱体に一定の周期で通電し、バインダー中に昇華性染料を分散させたインクが基材上に塗布してあるインクシートを加熱して染料を受像紙に昇華転写し、受像紙の最上層に設けた顕色層で染料を受容して発色させ記録を行なうサーマルヘッドと、外部から取り込んだテレビ信号などの映像信号を前記サーマルヘッドへの入力信号に変換する信号処理回路と、前記サーマルヘッドを駆動するヘッド駆動回路と、発熱体への通電周期に対応して受像紙をステップ搬送する紙搬送手段と、前記紙搬送手段に駆動パルスを伝達しステップ動作を行なわせる紙駆動回路とを備え、ひとつのドットを形成するための前記発熱体への1回の通電時間の最大値を6msec以下とし、前記紙駆動回路からの駆動パルスを前記発熱体への通電終了直後に発生させることを特徴とする昇華型熱転写記録装置。」(公報の特許請求の範囲(2)の項)
b.「第2図はヘッド駆動回路11による発熱体3aへの通電時間と紙駆動回路13によるパルスモータ12の駆動パルスとの時間的関係を表わすタイミングチャートである。図中τはひとつのドットを形成するための発熱体3aへの印加パルス幅で、階調記録を行なう際には記録すべき濃度に対応してこのτを最大値τ_(L)(τ_(L)≦6msec)までの間で変化させる。またτ_(0)は発熱体3aの1ライン全体の通電周期(以下ライン周期と呼ぶ)であり、印加パルス幅τは、ライン周期τ_(0)の中でその通電終了時点が一定であり通電開始点のみが変化する。また、受像紙1の駆動パルスPは印加パルス幅τの終了直後にライン周期τ_(0)と同じ周期で発生する。」(公報第2頁右下欄第17行?第3頁左上欄第9行)
c.「また、本実施例では1ライン分の全発熱体3aを同時に発熱させるとしたが、全発熱体3aを例えば4つのブロックに分割し、1ライン周期の間に4つのブロックが1つづつ順次記録を行なうとし、同時に発熱させる発熱体3aの数を1/4にして電気容量を減らすことも可能である。この場合はまた受像紙の搬送ステップも1ラインについて4パルスずつ発生させ、1ステップで1/4ラインずつ搬送するとしてもよい。」(公報第4頁右上欄第13行?左下欄1行)

[周知技術1(特開平1-166979号公報)]
バッテリ内蔵型の文書作成装置において、自動給紙装置とこの自動給紙装置の給紙時に上記バッテリの電圧を検出する検出手段と、この検出手段によって上記バッテリの許容値以下の電圧が検出されたとき、印字処理を中止する印字処理制御手段とを具備してなることを特徴とする文書作成装置。(公報特許請求の範囲の項)

[周知技術2(特開平1-190471号公報)]
キーボード等により外部より入力されたデータあるいは、外部記憶装置より転送されたデータ(以下、データと記す)を電気光学的にデジタル表示する手段と、前記データをサーマルヘッドを用いて、手動で移動することにより印字する手段とを有するハンディプリンタにおいて、
a)電池電圧を検出するための検出手段
b)前記、検出結果を表示するための表示手段
c)前記、検出結果により回路の電源をオフするための電源回路を有することを特徴とするハンディプリンタ。(公報の特許請求の範囲の項)

[周知技術3(特開平4-205122号公報)]
更に、印字中において主電池6の電圧レベルが、レベルL_(3)(6.0V)以下かどうかの検知が行なわれて、電圧がレベルL_(3)(6.0V)以下であれば、印字禁止のメッセージがLCD14に画面表示されて、印字実行中のプリンタ2の印字は停止され、以後の印字は禁止される。(公報第3頁右下欄15行?末行)

4.対比
本願考案1を引用例1記載の考案と対比すると、
a.引用例1記載の考案の「複数の発熱体を備えるサーマルヘッド」は複数の発熱体が線状に配列されているとみることができ、本件考案1の「線状に配列された複数の発熱体を備えるサーマルラインヘッド」に相当するということができ、
b.引用例1記載の考案の「印字初期の最初の期間の印字を行う際」と本件考案1の「印字初期の最初の所定数の印字行の印字を行う際」とは、「印字初期の最初の期間の印字を行う際」である点で共通し、
c.引用例1記載の考案の「パルス幅を所定のパルス幅より長くするパルス幅制御回路」は、本件考案1の「パルス幅を所定のパルス幅より長くする制御手段」に相当し、
d.引用例1記載のサーマルヘッドがサーマルラインプリンタに使用されるものであるということができ、
以上のことから、両者間には次のような一致点、相違点がある。
(一致点)
線状に配列された複数の発熱体を備えるサーマルラインヘッドと、前記発熱体が所定のエネルギーを発生するよう、所定のパルス幅のストローブ信号を前記サーマルラインヘッドに印加する駆動手段と、印字初期の最初の期間の印字を行う際に前記発熱体が前記所定のエネルギーより大きいエネルギーを発生するよう、前記駆動手段を制御して前記ストローブ信号のパルス幅を前記所定のパルス幅より長くする制御手段とを有することを特徴とするサーマルラインプリンタ。
(相違点)
(1)サーマルラインプリンタが、本願考案1が内蔵バッテリを電源とする携帯型バッテリ駆動式であって、印字中に、バッテリの電圧を検知する電圧検知手段と、印字中にバッテリの電圧が所定の下限値を下回った場合には、印字を中止する制御手段を有しているのに対して、引用例1記載の考案は電源について特に言及していない点。
(2)印字初期の最初の期間の印字を行う際が、本件考案1は「印字初期の最初の所定数の印字行の印字を行う際」であるのに対して、引用例1記載の考案は「印字初期の最初の期間の印字を行う際」である点。
(3)本願考案1が、印字中はストローブ信号による発熱体の駆動の終了に同期させて記録紙の搬送を行う記録紙搬送手段を有しているのに対して、引用例1記載の考案は記録紙の搬送について特に言及していない点。

5.当審の判断
相違点(1)については、内蔵バッテリを電源とする携帯型バッテリ駆動式サーマルプリンタであって、印字中にバッテリの電圧を検知する電圧検知手段と、印字中にバッテリの電圧が所定の下限値を下回った場合には、印字を中止する制御手段を有しているサーマルプリンタは上記周知技術1乃至3に記載されているように周知技術であり、引用例1記載のサーマルヘッドが使用されるサーマルラインプリンタにおいて、上記周知技術を組み合わせることに阻害要因もないから、この点は当業者ならばきわめて容易に考えつくことができた構成の変更である。
相違点(2)については、印字初期の最初の期間を、印字初期の最初の所定数の印字行の印字を行う期間とすることは、サーマルラインヘッドは行単位で印字するものであり、行途中から変化させる理由もないから、この点は当業者ならばきわめて容易に考えつくことができた構成の変更である。
相違点(3)については、発熱体の駆動が終了した後に記録紙の搬送を行なうことは自然であるし、また印字中にストローブ信号による発熱体の駆動の終了に同期させて記録紙の搬送を行う記録紙搬送手段を有するサーマルプリンタも引用例2に記載されているように公知技術であることからことから、この点は当業者がきわめて容易に考えつくことができた構成の変更である。

6.むすび
したがって、本願考案1は、引用例1および2記載の考案と周知技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-03-26 
結審通知日 2001-04-06 
審決日 2001-04-17 
出願番号 実願平5-63115 
審決分類 U 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 菅藤 政明  
特許庁審判長 石川 昇治
特許庁審判官 小泉 順彦
小沢 和英
考案の名称 サーマルラインプリンタ  
代理人 松岡 修平  

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