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審決分類 審判    A61B
管理番号 1041561
審判番号 無効2000-40015  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-07-07 
確定日 2001-06-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第3064714号実用新案「体脂肪率測定シェ?プアップマシンの計測表示器」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3064714号の請求項1?3に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 手続の経緯
本件登録第3064714号実用新案の請求項1?3に係る考案についての出願は、平成11年6月9日に出願され、平成11年9月29日にその考案について実用新案登録されたものである。
請求人は、本件請求項1?3に係る考案は、甲第1号証?甲第3号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件請求項1?3に係る考案についての実用新案登録は実用新案法3条2項の規定に違反してなされたと主張し、証拠方法として甲第1?3号証を提出している。
平成12年8月8日付けで請求書の副本を被請求人に送達し、期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが、被請求人からは何らの応答もない。

2 本件考案
本件請求項1?3に係る考案は、実用新案登録された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】シェープアップマシンの上方に固定され、少なくとも速度、走行距離、回転数及び回数の計測を行うためのスイッチと計測機能とを有する体脂肪率測定シェープアップマシンの計測表示器であって、
前記計測表示器には、
内部に回路板が内設され、該回路板に金属の感知プレートが電気接続される基体と、
前記基体と係合することによって、前記回路板の該基体側の面の反対面をカバーし、表面に該回路板における液晶ディスプレイに示すパターンを表示する表示窓が設けられ、該表示窓の下方に電源ボタン及び体脂肪の測定をするための計測ボタンが設置され、該計測ボタンの隣側に入力条件を示す複数の選択ボタンが設けられ、該各ボタンが該回路板と連通している表板と、
を有することを特徴とする体脂肪率測定シェープアップマシンの計測表示器。
【請求項2】前記計測表示器がシェープアップマシンにおける中空状のハンドルの上部に設けられ、前記回路板と接続している二本の導線は外部に延出し、該導線を該ハンドルにおける自由端の開口に露出させ、該導線の末端に前記感知プレートが半田付けされ、該感知プレートが該ハンドルにおける自由端の端面に密着されることを特徴とする請求項1に記載の体脂肪率測定シェープアップマシンの計測表示器。
【請求項3】前記選択ボタンの隣側に設定値の数字を増加させるためのプラスボタンが設けられ、該プラスボタンの隣側に設定値の数字を減少させるためのマイナスボタンが設けられることを特徴とする請求項1に記載の体脂肪率測定シェープアップマシンの計測表示器。」

3 甲第1号証?甲第3号証
これに対して、請求人の提出した甲第1?3号証には、以下の事項が記載されている。
[甲第1号証:実公平6‐36839号公報]
(運動器具と体脂肪率の測定)
「この考案によるエアロビック運動器具では、使用者の性別、年齢、身長、体重等の基礎個人データを入力し、エアロ・サイクルのハンドル部分に配設した電極により、運動開始前に身体状態値である心拍数と体内脂肪を推定する体内インピーダンスを測定し,測定した身体状態値を表示すると同時にそれ等の測定値に基づき、使用者に対して最適な運動プログラムを決定できる。」(3欄50行?4欄6行)

(ハンドルに配設された制御装置と電極)
「ハンドル16には、種々の電子回路を内蔵した制御装置20が配設してある。この装置の表面パネルには、各種キー、スイッチ類、表示装置、アラーム用ブザー及び必要に応じて音声出力用スビーカ等が配設されている。更に、このハンドル16には体内脂肪を推定できる体内インピーダンス測定用の電極21が配設してある。」(4欄27?33行)
「第2図には、この考案によるエアロ・サイクルの制御装置20のブロック図が示してある。この制御装置20には、中央処理装置(以下CPUとする)30があり、このCPU30には操作キーボード31、インターフェース32、入出力変換装置33、LCD等のデイスプレー34、音声出力用スビーカ35、記憶装置36及びプリンタ装置37が接続してある。」(4欄35?40行)
「また、図示していないが、ペダル軸の総回転数(走行距離)、回転速度、所要踏力等を電気信号として出力するセンサが、このペダル軸に配設してある。これ等のセンサは、公知の力・電気変換器、回転計、速度計等で構成できるため説明を省略するが、この入出力変換装置33から上記制御装置を駆動させる出力信号が端子群39’を経由してエアロ・サイクル10の本体14に供給され、センサの検出信号は端子群39” を経由して入出力変換装置33に導入される。
これら各入力デ-夕に従ってCPU30は演算を行い、所定事項をデイスプレー34に表示し、スビーカ35から音声出力し、また必要に応じてプリンタ装置37から印字出力する。」(5欄4?16行)

(運動器具のエアロ・サイクル〈測定モード〉)
「この考案によるエアロビック運動器具では、使用開始にあたり使用者の体内脂肪割合を測定し、その測定結果を基礎として適切な運動量等のデータを含むメニューを決定し、このメニューに従って・トレーニングを行うことができる。この場合、体内脂肪は人体の脂肪分と他の組織との電気抵抗、あるいはインピーダンスの特性が異なることを利用して、人体の両腕の間のインピーダンス測定によって算定される。」(5欄17?24行)
「この考案によるエアロビック運動器具としてのエアロ・サイクルは、第3図のフロー図のように操作される。
運動のスタートに従って、ステップS1で利用者のデ-タNoを入力する。次いでステップS2で内蔵メモリ又は磁気カードに記憶させた個人データの入力を行い、必要であれば、付属キーボード31を用いて変更する。上記個人データは、例えば利用者の年齢、性別、身長、体重等である。」(5欄28?35行)
「個人データの入力が完了すると、ステップS3で利用モードの選択を行う。(略)上記の選択が〈測定モード〉である場合、ステップS4で人体インピーダンスを測定する。(略)
一方、ステップS5で心拍数テスト不要を表すN0の場合には、ステップS10の体内インピーダンスの結果のみをグラフィック表示し、その結果に従い、ステップS11でお勧めコースのエアロビック運動を実施する。」(5欄37行?6欄24行)
(運動プログラムを実施している間)「更に,プログラムされた速度、距離換算回転数等についても標準値との比較を行い、運動中もその結果を適宜表示及び音声出力することができる。」(6欄50行?7欄3行)

[甲第2号証:特公平7-38885号公報]
「図2はコントロール・ボックス8およびプリンタ9を詳細に示すものである。
図2においてコントロール・ボックス8の上面には「筋持久力」、「脈拍」、ペダル「回転数」、「負荷」の状態、「年齢」および「性別」を表示する表示部8a?8hが設けられ、また「負荷」の状態、「年齢」および「性別」を選択するスイッチ8i?8oが設けられている。」(【0008】)と記載され、図2を参照すると、年齢表示部に隣接して上下の三角形が表示されたスイッチ8l,8mが記載され、数値の増減を行うスイッチであることが認められる。

[甲第3号証:特許第2667337号公報(平成9年10月27日発行)]
「図1には、この発明による測定プローブの側面が示してある。このプローブは両手で電極を握り、両手の間で体インピーダンスを測定するために使用される。
図1のようにこの測定プローブは二つの部分に分けることができる。即ち、それぞれ右手および左手で握ることのできる右手把持部ARと左手把持部ALにそれぞれ二つの独立した電極EL1,EL2およびEL3,EL4が設けてある。(略)電極EL1,EL2,EL3,EL4にそれぞれ電気接続する1本の導線は、図3に示すように電極の内部に溶接、またはハンダ付けされていて、他端をセンターブロックCTにあるケーブル固定部に集められ、そこからケーブルLを介してコネクターCNに接続されている。このコネクタCNは、図示していない体インピーダンス測定装置に接続できる。」(【0008】)
「その場合、大切なことは、異なった二つの電極を右手と左手でそれぞれ掴める把持部を設けている点にある。従って、このような電極配置はスポーツ用の自転車あるいは有酸素運動に使用する固定設置されている自転車ないしは類似の装置のハンドルに設けることもでき、運動の都度、身体インピーダンスを測定して、その変化を知ることができる。」【0010】

4 対比・判断
(1)請求項1に記載された考案について
本件請求項1に記載された考案(以下、「請求項1考案」という。)と甲第1号証に記載された考案(以下、「甲第1号証考案」という。)とを対比すると、甲第1号証考案の「エアロ・サイクル」、「制御装置20」、「電極21」は本件考案の「シェープアップマシン」、「計測表示器」、「感知プレート」に相当し、甲第1号証考案の制御装置は、「ハンドル16に配設」され、「ペダル軸の総回転数(走行距離)、回転速度」を「電気信号として出力するセンサ」及び「LCD等のデイスプレー34」を備え、制御装置の内部には当然電子回路を搭載する基板が備えられていると認められるから、
請求項1考案と甲第1号証考案とは、
「シェープアップマシンの上方に固定され、少なくとも速度、走行距離、回転数の計測を行うためのスイッチと計測機能とを有する体脂肪率測定シェープアップマシンの計測表示器であって、
前記計測表示器には、内部に回路板が内設され、該回路板に金属の感知プレートが電気接続される基体と、
前記基体と係合することによって、前記回路板の該基体側の面の反対面をカバーし、表面に該回路板における液晶ディスプレイに示すパターンを表示する表示窓が設けられている表板と、
を有することを特徴とする体脂肪率測定シェープアップマシンの計測表示器。」で一致し、
請求項1考案が、(ア)計測表示器が回数の計測をも行うのに対して、甲第1号証考案は、この構成を備えていない点、(イ)請求項1考案の表板は、その表示窓の下方に電源ボタン及び体脂肪の測定をするための計測ボタンが設置され、該計測ボタンの隣側に入力条件を示す複数の選択ボタンが設けられ、該各ボタンが該回路板と連通しているのに対して、甲第1号証考案は、計測のためのボタン及び表示窓と該ボタンとの関係構成が明示されていない点、で相違する。
しかしながら、相違点(ア)については、マシンの使用回数を表示することは、シェープアップマシンの使用実績を使用者に明示するために、当業者が適宜採用しうることにすぎない。
相違点(イ)については、甲第1号証考案の計測表示器の表面パネルには、各種キー、スイッチ類が配設されているから、通常電源ボタンも設けられているものであり、電源ボタンを表示窓の下方に設けることは、当業者が適宜配置し得ることと認められる。
また、甲第1号証考案では計測ボタンの存在が明確でないが、甲第1号証考案も測定モードを選択した場合体脂肪率を測定表示しており、測定開始のための計測ボタンを制御装置に設けることも、当業者が必要に応じてなし得ることであり、さらに甲第1号証考案においても個人データである利用者の年齢、性別、身長、体重等が付属キーボード等で入力可能であるから、入力手段を複数の選択ボタンで構成することも、当業者にとってはきわめて容易になし得ることと認められる。表示窓と該選択ボタンとの配置関係も、当業者の設計上の事項にすぎない。

(2)請求項2に係る考案について
本件請求項2に係る考案(以下、「請求項2考案」という。)と甲第1号証考案とを対比すると、請求項1考案と甲第1号証との相違点に加え、(ウ)請求項2考案の計測表示器がシェープアップマシンにおける中空状のハンドルの上部に設けられているのに対し、甲第1号証考案の計測表示器はハンドル前面に設けられている点、(エ)請求項2考案では、前記回路板と接続している二本の導線は外部に延出し、該導線を該ハンドルにおける自由端の開口に露出させ、該導線の末端に前記感知プレートが半田付けされ、該感知プレートが該ハンドルにおける自由端の端面に密着されるのに対して、甲第1号証考案では、感知プレート(電極21)はハンドル16表面に設けられ、回路板との具体的接続構造は不明である点で相違する。
そこで相違点(ウ)、(エ)について検討する。
相違点(ウ)については、ハンドルに対して計測表示器をどのように配置するかは、ハンドルや計測表示器の形状構造ないし操作性等により、当業者が適宜設計しうる事項にすぎない。
また、相違点(エ)については、シェープアップマシンのハンドルは種々の形のものが用いられ、自由端を有するハンドルは周知である。そして、甲第1号証考案における感知プレートは左右のハンドル表面に設けられ、両手で同時に触れることにより体脂肪率を測定するものであり、このようにハンドルに設けられた感知プレートは両手で触れることができ、電気的な閉回路を構成するものであれば足りるから、自由端の開口端面に密着して感知プレートを設けることは、当業者がきわめて容易に想到しうることと認められる。また、「有酸素運動に使用する固定設置されている自転車ないしは類似の装置のハンドル」に設けられる体脂肪率測定のための感知プレートからの導線がハンドル内部を通して延びているものが甲第3号証に記載されているから、「回路板と接続している二本の導線は外部に延出し、該導線を該ハンドルにおける自由端の開口に露出させ、該導線の末端に前記感知プレートが半田付け」することも、当業者がきわめて容易になし得ることと認められる。
そして、請求項2考案の相違点(エ)に係る構成による作用効果について検討しても、明細書に何らの記載もなく、従来のものと比較して格別の作用効果を奏するものとは認められない。

(3)請求項3に係る考案について
本件請求項3に係る考案(以下、「請求項3考案」という。)と甲第1号証考案とを対比すると、請求項1考案と甲第1号証との相違点に加え、(オ)請求項3考案では、選択ボタンの隣側に設定値の数字を増加させるためのプラスボタンが設けられ、該プラスボタンの隣側に設定値の数字を減少させるためのマイナスボタンが設けられるのに対して、甲第1号証考案はこの構成を備えていない点で相違する。
しかしながら、相違点(オ)については、甲第2号証図2にも記載されているように、数値を入力するために、数値の増減を行うプラスボタンとマイナスボタンとを用いることは周知であり、プラスボタン及びマイナスボタンについてはその機能等を考慮して適宜配置し得るものであるから、選択ボタンの隣側にプラスボタンを配置し、その隣側にマイナスボタンを配置することは、当業者がきわめて容易に採用し得ることと認められる。

5 むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1?3に係る考案は、甲第1号証?甲第3号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件請求項1?3に係る考案についての実用新案登録は実用新案法3条2項の規定に違反してされたものであり、同法37条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案法41条の規定で準用する特許法169条2項の規定でさらに準用する民事訴訟法61条の規定により被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-01-04 
結審通知日 2001-01-19 
審決日 2001-01-31 
出願番号 実願平11-4091 
審決分類 U 1 111・ 121- Z (A61B)
最終処分 成立    
特許庁審判長 伊坪 公一
特許庁審判官 後藤 千恵子
志村 博
登録日 1999-09-29 
登録番号 実用新案登録第3064714号(U3064714) 
考案の名称 体脂肪率測定シェ?プアップマシンの計測表示器  
代理人 菊谷 公男  
代理人 牧 哲郎  
代理人 大塚 武史  
代理人 廣江 武典  
代理人 牧 レイ子  

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