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審決分類 審判 全部申し立て   B32B
審判 全部申し立て   B32B
管理番号 1041572
異議申立番号 異議2000-72958  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-24 
確定日 2001-06-27 
異議申立件数
事件の表示 登録第2602664号「容器」の請求項1ないし4に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2602664号の請求項1、3に係る実用新案登録を取り消す。 同請求項2、4に係る実用新案登録を維持する。
理由 1、本件考案
本件実用新案登録第2602664号の請求項1?4に係る考案(平成5年4月23日出願、平成11年11月19日設定登録。)は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1?4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】ポリスチレン系樹脂層、発泡ポリスチレン層、ハイインパクトポリスチレン層、接着剤層、バリヤー層の順に積層されたシートの成形品で、外表面がポリスチレン系樹脂層、内表面がバリヤー層となっていることを特徴とする容器。
【請求項2】ポリスチレン系樹脂層が2層のポリスチレン系樹脂層に分かれており、両ポリスチレン系樹脂層間に印刷層が設けられていることを特徴とする請求項1の容器。
【請求項3】バリヤー層の内表面側に、ポリオレフイン系樹脂層が設けられていることを特徴とする請求項1の容器。
【請求項4】バリヤー層の両面に、ポリオレフイン系樹脂層が設けられていることを特徴とする請求項1の容器。

2、請求項1及び3に係る実用新案登録に関して
当審において、本件請求項1及び3に係る実用新案登録に対して、平成12年12月14日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたけれども、実用新案登録権者からは何らの応答もない。
そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件請求項1及び3に係る実用新案登録は、この取消理由によって取り消すべきものである。

3、請求項2及び請求項4に係る実用新案登録に関して
本件請求項1?4の考案のうち、請求項1及び3の考案に係る実用新案登録は、上記のとおり取り消すべきものであるから、本件実用新案登録異議申立てについては、請求項2及び請求項4に係る実用新案登録について判断する。
(1)実用新案登録異議申立ての理由の概要
実用新案登録異議申立人 野村和生(以下、申立人という)は、本件請求項2及び請求項4の考案は本件出願前公知の甲第1?5号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案し得た程度のものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件請求項2及び請求項4に係る実用新案登録は取り消されるべきものである旨の主張をしている。
(2)甲各号証記載の考案
甲第1号証:実公平4-15605号公報
a.「ベースフイルム1、ステンレス系樹脂(合議体注:「ステンレス系樹脂」は、正しくは「スチレン系樹脂」と認められる)と接着性を有する樹脂層2、該樹脂層2と後述する発泡スチレン系樹脂層4とを接着するフイルム状の溶融ポリスチレン系樹脂よりなる接着剤層3、発泡スチレン系樹脂シート4及び非発泡ポリスチレン系樹脂が順次に積層された積層シートを、該非発泡ポリスチレン樹脂層を外面にして熱成形してなる容器。」(実用新案登録請求項の範囲)
甲第2号証:実公昭62-13784号公報
b.「全体が合成樹脂積層シートにて形成された容器であって、上記積層シートが容器内面側よりポリプロピレンフイルム、バインダー、ハイインパクトポリスチレンフイルム、発泡ポリスチレンシート、ハイインパクトポリスチレンフイルムの各層を積層した積層シートからなることを特徴とする合成樹脂積層シート製容器。」(実用新案登録請求項の範囲)
甲第3号証:実願昭52-25965号(実開昭54-38172号公報)のマイクロフィルム
c.「着色層と着色部分とからなる模様を有する合成樹脂積層体において着色層1と着色部分2との間に白色部分3を設けてなる模様を有することを特徴とする合成脂積層体。」(実用新案登録請求項の範囲)
d.「また透明な合成樹脂製フィルムまたはシート(5)の表面に印刷などの方法により着色部分(2)をまず形成し、次にこの着色部分の上に白色部分(3)を印刷などの方法によって形成し、この合成樹脂製フィルムまたはシート(5)の着色部分(2)を有する面を合成樹脂製シート(4)の着色層(1)を有する面と接着させることによって・・・模様(6)を有する合成樹脂積層体を得ることが可能である。」(第4頁3?13行)
e.「本願考案に係る合成樹脂積層体はシート、食品容器その他の包装容器に使用することが可能である」(第5頁12?14行)
甲第4号証:実願昭58-118246号(実開昭60-26833号公報)のマイクロフィルム
f.「1 発泡倍率2?50倍、厚み1?6mmのポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、ガラス転移点が100℃以上の熱可塑性樹脂フイルムまたは同フイルムを含む合成樹脂の被層フイルムを積層した複合シートから一体に成形されてなる食品容器。
2 ガラス転移点100℃以上の熱可塑性樹脂フィルムが4,4'-ジオキシジアリルアルカン重合体からなる実用新案登録請求の範囲第1項記載の食品容器。
3 複層シートは、容器内面側表面層として、ポリオレフイン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂のうちのいずれか一の樹脂フイルム層が設けられてなる実用新案登録請求の範囲第1項または第2項記載の食品容器。」(実用新案登録請求項の範囲)
甲第5号証:実願昭52-70504号(実開昭53-164548号公報)のマイクロフィルム
g.「1.発泡されているかもしくは発泡されていないスチレン樹脂又は紙からなる容器本体の内面に、結晶性ポリエチレン樹脂と結晶性ポリプロピレン樹脂からなる層、及び結晶性ポリエチレン樹脂からなる層が形成され、該結晶性ポリエチレン樹脂からなる層により容器の内壁面が形成されてなる食品包装用容器。
5.容器本体の内面と、結晶性ポリエチレン樹脂と結晶性ポリプロピレン樹脂からなる層の間に、気体不透過性の合成樹脂からなる層が形成されてなる、実用新案登録請求の範囲第1項から第4項のいずれか記載の食品包装用容器。
6.結晶性ポリエチレン樹脂と結晶性ポリプロピレン樹脂からなる層と、結晶性ポリエチレン樹脂からなる層の間に、気体不透過性の合成樹脂からなる層が形成されてなる、実用新案登録請求の範囲第1項から第5項のいずれか記載の食品包装用容器。(実用新案登録請求項の範囲第1、5及び6項)
h.「そして層2が結晶性ポリエチレン樹脂と結晶性ポリプロピレン樹脂から形成されることにより、積層シートの真空成型、圧空成型の場合の溶融温度範囲が単独で使用した場合よりも広がり成形性が良好になり、全体に亘り均一な肉厚で深絞りされたものが得られるのである。」(第7頁11?16行)
(3)対比・判断
(請求項2の考案)
本件請求項2の考案(以下、本件考案2という)と甲各号証記載の考案を対比すると、本件考案2は、「ポリスチレン系樹脂層が2層のポリスチレン系樹脂層に分かれており(合議体注:本件考案2においては、ポリスチレン層と発泡ポリスチレン層とを区別して記載しているので、これらのポリスチレン系樹脂層は非発泡の層であると認められる)、両ポリスチレン系樹脂層間に印刷層が設けられている」点を構成要件の一つとしているが、甲各号証記載の考案においてはかかる要件については記載されていない点で、本件考案2は甲各号証記載の考案と相違している。
申立人は、「甲第3号証には、本件考案に係る「積層されたシート」の全体としての多層構成について記載するところはない。しかし、本件実用新案登録に係る「請求項1」に記載された「容器」が、公知の刊行物である甲第1号証または甲第2号証に記載された考案と同一であるところから、これら公知の刊行物に記載された考案に甲第3号証に記載された「2層のポリスチレン系樹脂層の間に印刷層を設ける」という知見を加味することによって、本件実用新案登録に係る「請求項2」に記載された考案は当業者が容易に考案することができるものである。」と主張している(申立書第17頁10?16行)ので検討する。
そもそも、甲第3号証記載の考案に係る合成樹脂積層体は、当該積層体だけで包装容器を形成するものであって(上記eの記載参照)、当該積層体を他の積層包装容器の表面層として用いることについては記載されておらず、それを示唆する記載もないから、甲第1号証または甲第2号証の考案に甲第3号証の考案を組み合わせることが、当業者がきわめて容易になし得ることであるとはいえない。
さらに、甲第1号証の考案に係る積層容器または甲第2号証の考案に係る積層容器に対して、甲第3号証の考案における「2層のポリスチレン系樹脂層の間に印刷層を設ける」という知見を加味したとしても、どちらの積層容器においても「印刷層」は非発泡ポリスチレン系樹脂と発泡スチレン系樹脂シートとの間に設けられることになるから、本件考案2における「2層の非発泡ポリスチレン系樹脂層間に印刷層が設けられる」ということにはならず、結局甲第1号証の考案または甲第2号証の考案に、甲第3号証の考案における知見を加味したとしても本件考案2が直ちに構成されるものでもない。
したがって、上記申立人の主張は採用できない。
そして、本件考案2は、上記要件を含めた請求項2記載の構成をとることにより、本件明細書記載のとおりの効果を奏し得ているものと認められる。
よって、本件考案2は、甲各号証記載の考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとすることはできない。
(請求項4の考案)
本件請求項4の考案(以下、本件考案4という)と甲各号証記載の考案を対比すると、本件考案4は、「バリヤー層の両面に、ポリオレフイン系樹脂層が設けられている」点を要件の一つとしているが、甲各号証記載の考案においてはかかる要件については記載されていない点で、本件考案4は甲各号証記載の考案と相違している。
この相違点に関して、申立人は、「甲第5号証には、本件考案に係る「積層されたシート」の全体としての多層構成について記載するところはない。しかし、本件実用新案登録に係る「請求項1」に記載された「容器」が、公知の刊行物である甲第1号証または甲第2号証に記された考案と同一であるところから、これら公知の刊行物に記載された考案に甲第5号証に記載された「バリヤー層の両面にポリオレフイン系樹脂層を形成する」という知見を加味することによって、本件実用新案登録に係る「請求項4」に記載された考案は当業者が容易に考案することができるものである。」と主張している(申立書第18頁15?21行)。
しかしながら、本件考案4の「バリヤー層の両面に設けられるポリオレフイン系樹脂層における内側の層」は、バリヤー層とハイインパクトポリスチレン層3との間の接着性を向上させるもの(本件明細書段落【0029】参照)であるのに対して、甲第5号証の考案における「気体不透過性の合成樹脂からなる層」と「結晶性ポリエチレン樹脂から成る層」の間に設けられている結晶性ポリエチレン樹脂と結晶性ポリプロピレン樹脂からなる層(この層は本件考案4の「バリヤー層の両面に設けられるポリオレフイン系樹脂層における内側の層」に対応する層である)は、「積層シートの真空成型、圧空成型の場合の溶融温度範囲を単独で使用した場合よりも広げて成形性を良好とし、全体に亘り均一な肉厚で深絞りされたものを得るため」に設けられるもの(上記hの記載参照)であり、両者における当該層の作用効果は全く相違しているから、甲第5号証の考案における「結晶性ポリエチレン樹脂と結晶性ポリプロピレン樹脂からなる層」を甲第1号証または甲第2号証考案の積層容器に適用して本件考案4とすることは当業者がきわめて容易になし得ることであるとはいえず、上記申立人の主張は採用できない。
そして、本件考案4は、上記要件を含めた請求項4記載の構成をとることにより、本件明細書記載のとおりの効果を奏し得ているものと認められる。
したがって、本件考案4は、甲各号証記載の考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとすることはできない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項2及び請求項4に係る実用新案登録を取り消すことはできない。
また、本件請求項2及び請求項4に係る実用新案登録については、他に取消理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2001-05-07 
出願番号 実願平5-26556 
審決分類 U 1 651・ 113- ZC (B32B)
U 1 651・ 121- ZC (B32B)
最終処分 一部取消    
前審関与審査官 鴨野 研一  
特許庁審判長 藤井 彰
特許庁審判官 喜納 稔
加藤 志麻子
登録日 1999-11-19 
登録番号 実用新案登録第2602664号(U2602664) 
権利者 旭化成株式会社
大阪府大阪市北区堂島浜1丁目2番6号
考案の名称 容器  

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