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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) A61M
管理番号 1041576
判定請求番号 判定2000-60142  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2001-08-31 
種別 判定 
判定請求日 2000-11-01 
確定日 2001-06-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第2545856号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 イ号図面及びその説明書に示す「カテーテルイントロジューサ」は、請求項1及び2に係る登録第2545856号実用新案の技術的範囲に属しない。
理由 1、請求の趣旨
本件2000年判定請求第60142号の請求の趣旨は、イ号図面及びその説明書に記載したカテーテルイントロジューサが実用新案登録第2545856号の請求項1及び2に係る考案の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

2、本件考案
本件の請求項1及び2に係る登録実用新案は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】 断面が円形状のシースハブ及びシースからなるシース部とダイレータハブ及びダイレータからなるダイレータ部とによって構成されるカテーテルイントロジューサにおいて、
上記シースハブの端部に冠着するように上記ダイレータ部の端部に設けられたフランジの内周部または上記シースハブの外周部のいずれかに、その内周または外周に沿って形成されたリング状の溝部と、
上記シースハブの外周部または上記フランジの内周部のいずれかに、上記溝部に係合するリング状の凸部とを設け、上記フランジの弾性変形を利用して、上記リング状の溝部と上記リング状の凸部とを相対的に回転させることなく、押圧のみで容易に着脱可能にしたことを特徴とするカテーテルイントロジューサ。
【請求項2】 上記凸部はシースハブの外周部またはフランジの内周部の全周に亘って形成されていることを特徴とする請求項1記載のカテーテルイントロジューサ。

3、イ号物件
イ号物件説明書には下記のとおり記載されている。
「(1)イ号図面(図1?図3)は、川澄化学工業株式会社が製造・販売しているカテーテルイントロジユーサ(品番:DS5010JE)を表した図面である。
(2)図1は全体の構成を示した平面図、図2はシースハブ及びダイレータハブの拡大図、図3はシースハブとダイレータハブとの係合後の状態を示した図である。
(3)このカテーテルイントロジューサは、断面が円形状のシースハブ及びシースからなるシース部と、ダイレータハブ及びダイレータからなるダイレータ部とから構成される。そして、このカテーテルイントロジューサにおいては、上記シースハブの端部に冠着するように上記ダイレータ部の端部に設けられたフランジの内周部に沿って形成されたリング状の溝部と、上記シースハブの外周部の全周に亘って形成され、上記溝部に係合するリング状の凸部とが設けられており、また、上記のフランジには切欠きが形成されている。
(4)上記のフランジはポリプロピレンから構成されており、上記シースハブは低密度ポリエチレンから構成されている。
(5)このカテーテルイントロジューサのフランジの溝部及びシースハブの凸部(凸部の直径>溝部の直径)はそれぞれ上記のプラスチックから構成されており、フランジの切欠き及び弾性変形を利用して、上記のリング状の溝部と上記リング状の凸部とを相対的に回転させることなく、押圧のみで容易に着脱自在になっている。
(6)この係合について更に詳細に観察すると、ダイレータハブをシースハブに対してその軸方向に押すと、フランジの内壁がシースハブの傾斜部及び上記リング状の凸部により拡張され、上記リングの溝部と上記リング状の凸部とが係合して、ダイレータ部とシースハブ部とが一体化する。」

また、イ号図面は、判定請求書に図1ないし図3として添付され、口頭審理の後に請求人が提出した上申書に図4、5として添付されているものであって、図1はイ号物件に係るカテーテルイントロジューサの全体概要図、図2はカテーテルイントロジューサのダイレータハブとシースハブの着脱部の係合前の状態を示す一部断面図、図3はカテーテルイントロジューサのダイレータハブとシースハブの着脱部の係合した状態を示す外観図、図4はカテーテルイントロジューサのダイレータハブとシースハブの着脱部の係合した状態における断面図、図5はカテーテルイントロジューサのダイレータハブとシースハブの着脱部の係合前の状態を示す一部断面図である。

上記イ号物件説明書及びイ号図面図1ないし図5の記載からみて、イ号物件のカテーテルイントロジューサは、次のとおりのものと認める。

「断面が円形状のシースハブ及びシースからなるシース部とダイレータハブ及びダイレータからなるダイレータ部とによって構成されるカテーテルイントロジューサにおいて、
上記シースハブの端部に冠着するように上記ダイレータ部の端部に設けられたフランジの内周部に、その内周に形成されたリング状の内周テーパ部と、
上記シースハブの外周部に、上記テーパ部に係合するリング状の外周テーパ部とを設け、上記フランジの弾性変形を利用して、上記リング状の内周のテーパ部と上記リング状の外周テーパ部とを相対的に回転させることなく、着脱可能にしたことを特徴とするカテーテルイントロジューサ。」

4、対比
本件の請求項1に係る考案とイ号物件を対比すると、両者は、
「断面が円形状のシースハブ及びシースからなるシース部とダイレータハブ及びダイレータからなるダイレータ部とによって構成されるカテーテルイントロジューサ」
である点では一致し、この点で一致していることについては請求人・被請求人の間に争いはない。

そこで、請求項1に係る考案の、
「A,シースハブの端部に冠着するようにダイレータ部の端部に設けられたフランジの内周部またはシースハブの外周部のいずれかに、その内周または外周に沿って形成されたリング状の溝部と、
B,シースハブの外周部またはフランジの内周部のいずれかに、溝部に係合するリング状の凸部とを設け、
C,フランジの弾性変形を利用して、リング状の溝部とリング状の凸部とを相対的に回転させることなく、押圧のみで容易に着脱可能にした」
点と、
イ号物件の、
「a,シースハブの端部に冠着するようにダイレータ部の端部に設けられたフランジの内周部に、その内周に沿って形成されたリング状の内周テーパ部と、
b,シースハブの外周部に、テーパ部に係合するリング状の外周テーパ部とを設け、
c,フランジの弾性変形を利用して、リング状の内周のテーパ部とリング状の外周テーパ部とを相対的に回転させることなく、着脱可能にした」
点とを対比・検討する。(Aないしcは便宜上付した符号である。また、「上記」との文言は省略した。)

(1)構成Aとaについて
上記構成Aにおいて、リング状の溝部が設けられる部位は、「フランジの内周部またはシースハブの外周部のいずれかに、その内周または外周に沿って形成されたリング状の溝部」との記載からみて、フランジの内周部またはシースハブの外周部のいずれかであることは明らかである。
また、シース部とダイレータ部は、「断面が円形状のシースハブ及びシースからなるシース部とダイレータハブ及びダイレータからなるダイレータ部とによって構成されるカテーテルイントロジューサ」との記載からみてその断面は円形である。
すると、断面が円形であるフランジの内周部またはシースハブの外周部に、「リング状の溝部」が「形成」されているものであるから、「リング状の溝部」が形成されていない部分が存在し、それは円筒形状のものとしか解し得ない。
したがって、請求項1に係る考案の、「リング状の溝部」は、円筒状であるフランジの内周部またはシースハブの外周部に設けられたものであり、しかも、外周部全部にではなく一部に設けられたものである。
そして、円筒状であるフランジの内周部またはシースハブの外周部に設けられた「リング状の溝部」は、後述する「溝部に係合するリング状の凸部」とぴったり嵌合するものと認められ、そのように解せば本件に係る特許明細書の【0013】欄の「なお上記溝部40は環状凸部39のどの部分とも嵌合するように形成されていることが必要である。」との記載とも整合する。

これに対し、イ号物件の上記構成aの内周テーパ部は、シースハブとダイレータハブの係合のためのテーパ部そのものであって、それによって円錐面同士が係合するテーパ係合を行うものである。
そして、この内周テーパ部は、請求項1に係る考案のように円筒形状の一部に設けられたものではなく、フランジの内周部またはシースハブの外周部の全ての部分がテーパ部とされているものである。
しかも、このイ号物件における係合の態様は、イ号図面の図4から明らかなようにシースハブの外周面の二つの円錐面が全体として凸状となるテーパ面(外周テーパ部)と、ダイレータハブのフランジの内周面の二つの円錐面が全体として凹状となるテーパ面(内周テーパ部)とがぴったり嵌合するものではなく、外周テーパ部のシース側のテーパ面と内周テーパ部の先端側のテーパ面のみが係止作用を行うものである。
そして、テーパ面の係止作用は斜面の滑りによって軸長手方向に自動的に安定し、しかも芯ずれが生じないで係止できるという請求項1に係る考案には存在しない効果が得られるものである。
したがって、請求人の主張する、イ号図面の図2の「溝部」は、フランジ内周のテーパ部の一部を指しているものではあるが、円錐面同士が係合するテーパ係合の機能からみて、イ号図面の図2の「溝部」は係合の主要部ということはできず、したがって、請求項1に係る考案の、「リング状の溝部」に相当するものとは言えない。

(2)構成Bとbについて
上記構成Bにおいて、リング状の凸部が設けられる部位は、「シースハブの外周部またはフランジの内周部のいずれかに、溝部に係合するリング状の凸部とを設け、」との記載からみて、シースハブの外周部またはフランジの内周部のいずれかであることは明らかである。
また、シース部とダイレータ部は、「断面が円形状のシースハブ及びシースからなるシース部とダイレータハブ及びダイレータからなるダイレータ部とによって構成されるカテーテルイントロジューサ」との記載からみてその断面は円形である。
すると、断面が円形であるシースハブの外周部またはフランジの内周部に、「溝部に係合するリング状の凸部」が設けられており、着脱可能である点からみると、この凸部は、上記構成Aに係る溝部に対応する凸部であると認められる。
すると、断面が円形であるフランジの内周部またはシースハブの外周部に、「リング状の凸部」が設けられているものであるから、「リング状の凸部」が形成されていない部分が存在し、それは円筒形状のものとしか解し得ない。
したがって、請求項1に係る考案の、「リング状の凸部」は、円筒状であるフランジの内周部またはシースハブの外周部に設けられたものであり、しかも、外周部全部にではなく一部に設けられたものである。
そして、円筒状であるフランジの内周部またはシースハブの外周部に設けられた「溝部に係合するリング状の凸部」は、上述の「リング状の溝部」とぴったり嵌合するものと認められ、本件に係る特許明細書の【0013】欄の「なお上記溝部40は環状凸部39のどの部分とも嵌合するように形成されていることが必要である。」との記載とも整合する。

これに対し、イ号物件の上記構成bの外周テーパ部は、シースハブとダイレータハブの係合のための上記外周テーパ部そのものであって、円錐面同士が係合するテーパ係合を行うものである。
そして、この外周テーパ部は、請求項1に係る考案のように円筒形状の一部に設けられたものではなく、シースハブの外周部の全ての部分がテーパ部とされているものである。
そして、テーパ面の係止作用は斜面の滑りによって軸長手方向に自動的に安定し、しかも芯ずれが生じないで係止できるという請求項1に係る考案には存在しない効果が得られるものである。
したがって、請求人の主張する、イ号図面の図2の「凸部」は、シースハブ外周のテーパ部の一部を指しているものではあるが、円錐面同士が係合するテーパ係合の機能からみて、イ号図面の図2の「凸部」は係合の主要部ということはできず、したがって、請求項1に係る考案の、「リング状の凸部」に相当するものとは言えない。

(3)構成Cとcについて
上記構成Cにおける、「押圧のみで容易に着脱可能にした」とは、「押圧のみで容易に装着可能にした」との意味と考えられる。
なぜなら、前提となる、「断面が円形状のシースハブ及びシースからなるシース部とダイレータハブ及びダイレータからなるダイレータ部とによって構成されるカテーテルイントロジューサ」の通常の機能からみて、「押圧のみで容易に離脱可能」にするようなことは、「押圧」に特段の定義がなされていない以上、考えられない機能である。
すると、請求項1に係る考案のカテーテルイントロジューサは、「押圧のみで容易に装着可能にした」ものであって、シース部とダイレータ部とを離脱する場合については、「容易」とは限定されていないものと解されるものである。
そして、この「容易」ではないとは、本件登録実用新案に係る明細書の【0012】欄の、「ダイレータ部をシース部から離脱させる場合は、ダイレータハブを少し傾けて両者の係合をはずし、ダイレータハブを引っ張れば両者は互いに相対的な回転をすることなく簡単に離脱する。」との記載からみて離脱に際して傾けることを要することを意味していると解され、その余の解釈をする理由は見出せない。
したがって、上記構成Cにおける、「押圧のみで容易に着脱可能にした」とは、「押圧のみで容易に装着可能にした」ものであって、離脱については何ら限定を付していないものと認められる。

しかしながら、イ号物件に係る上記構成cにおいても、「フランジの弾性変形を利用して、リング状の内周のテーパ部とリング状の外周テーパ部とを相対的に回転させることなく、着脱可能にした」ものであり、装着も離脱も格別の困難があるものとは認められないから、構成cは、請求項1に係る構成Cの、「相対的に回転させることなく、押圧のみで容易に着脱可能にした」点は作用に関してのみは充足する。
しかし、構成cにかかる「リング状の内周のテーパ部とリング状の外周テーパ部」は、構成Cに係る「リング状の溝部とリング状の凸部」とは上記(1)、(2)において述べたとおり、考案の構成上相違しているものであるから、機能的な記載による「相対的に回転させることなく、押圧のみで容易に着脱可能にした」点が充足していても、結局、構成Cが構成cを充足しているものとは認められない。

5、判断
以上のとおり、本件の請求項1に係る考案は、上記4、(1)ないし(3)で検討したとおり、請求項1に記載された構成中のイ号物件と異なる部分(「溝部・凸部と内周テーパ部・外周テーパ部の相違)が考案のシースハブとダイレータハブの係合、離脱という作用を得るための構成上の本質的な部分であり、上記構成A,B,Cを具備しないイ号物件は、本件の請求項1に係る登録実用新案の技術的範囲に属するとすることはできない。

そして、請求項2に係る登録実用新案は請求項1を引用して技術的限定を加えたものであることは明らかであるから、同じ理由で、イ号物件は請求項2に係る登録実用新案の技術的範囲に属するとすることはできない。

なお、請求人は、平成13年3月16日付けの上申書において、新たに、「イ号図面の図5に示される溝部(2)及び凸部(2)は本件考案の溝部及び凸部を形成しており、この点からも、イ号製品は本件考案の技術的範囲に属するといえる。」と主張しているが、その主張について検討しても、本件の請求項1及び2に係る考案が円筒状の部分に形成された溝部及び凸部を要件としているのに対し、イ号物件は内周テーパ部と外周テーパ部とによる係合を行っている点で、上記の理由と同じ理由で、イ号物件は請求項1及び2に係る登録実用新案の技術的範囲に属するとすることはできない。

6、むすび
したがって、イ号は、本件の請求項1及び2に係る登録実用新案の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 イ号図面の説明書
(1)イ号図面(図1?図3)は、川澄化学工業株式会社が製造・販売しているカテーテルイントロジユーサ(品番:DS5010JE)を表した図面である。
(2)図1は全体の構成を示した平面図、図2はシースハブ及びダイレータハブの拡大図、図3はシースハブとダイレータハブとの係台後の状態を示した図である。
(3)このカテーテルイントロジューサは、断面が円形状のシースハブ及びシースからなるシース部と、ダイレータハブ及びダイレータからなるダイレータ部とから構成される。そして、このカテーテルイントロジューサにおいては、上記シースハブの端部に冠着するように上記ダイレータ部の端部に設けられたフランジの内周部に沿って形成されたリング状の溝部と、上記シースハブの外周部の全周に亘って形成され、上記溝部に係合するリング状の凸部とが設けられており、また、上記のフランジには切欠きが形成されている。
(4)上記のフランジはポリプロピレンから構成されており、上記シースハブは低密度ポリエチレンから構成されている。
(5)このカテーテルイントロジューサのフランジの溝部及びシースハブの凸部(凸部の直径>溝部の直径)はそれぞれ上記のプラスチックから構成されており、フランジの切欠き及び弾性変形を利用して、上記のリング状の溝部と上記リング状の凸部とを相対的に回転させることなく、押圧のみで容易に着脱自在になっている。
(6)この係合について更に詳細に観察すると、ダイレータハブをシースハブに対してその軸方向に押すと、フランジの内壁がシースハブの傾斜部及び上記リング状の凸部により拡張され、上記リングの溝部と上記リング状の凸部とが係合して、ダイレータ部とシースハブ部とが一体化する。
イ号図面

判定日 2001-06-15 
出願番号 実願平4-161 
審決分類 U 1 2・ 1- ZB (A61M)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 山中 真  
特許庁審判長 佐藤 洋
特許庁審判官 和泉 等
岡田 和加子
登録日 1997-05-09 
登録番号 実用新案登録第2545856号(U2545856) 
考案の名称 カテーテルイントロジューサ  
代理人 佐々木 宗治  
代理人 小池 信夫  
代理人 小林 久夫  

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