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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04F
管理番号 1043353
審判番号 審判1999-20856  
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-12-24 
確定日 2001-07-18 
事件の表示 平成 4年実用新案登録願第 20383号「サイディングボードの目地用シーリング構造」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年10月26日出願公開、実開平 5- 78773]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続きの経緯・本願考案
本願は、平成4年3月4日の出願であって、その請求項1および2に係る考案は、平成13年2月13日付け手続補正書により補正された明細書及び平成10年12月7日付け手続補正書により補正された図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1および2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 隣接配置されるサイディングボードの対向端面相互間に画成される目地用空隙部内にその嵌着部を配置させて胴縁材の表側に定置されるジョイナー材と、このジョイナー材の嵌着部に保持させて目地用空隙部をシールするために装着される目地用ガスケット材とで形成されるサイディングボードの目地用シーリング構造において、ジョイナー材は、前記胴縁材への当接面を背側に有する基台部と、この基台部の長さ方向に沿わせて平行に立設され、かつ、その先端縁のそれぞれを内方へと折曲して係止部とした一対の支持板部からなる嵌着部とで形成し、目地用ガスケットは、前記支持板部の対向する各内側面に対しその挿脱方向へと添わせた状態で前記係止部に各別に係着させるべく撓曲可能に翼設された一対のアンカーリップ部をその底部に有し、かつ、底面を含む前記底部の全体を嵌着部内に密着させて位置固定されながら前記目地用空隙部内に収容される基体部と、この目地用空隙部をシールするために基体部の上縁部に翼設されてその表側に化粧用の表出部を有するシーリングリップ部と、このシーリングリップ部の下方に位置する基体部にシーリングリップ部よりその長さを長くして翼設されたアンダーリップ部とで形成するとともに、ジョイナー材に嵌合保持させた目地用ガスケットにおける前記シーリングリップ部とアンダーリップ部とを目地用空隙部を画成している前記対向端面のそれぞれに圧接配置して形成される簡易目地により目地用空隙部のシールを可能としたことを特徴とするサイディングボードの目地用シーリング構造。」
「【請求項2】 ジョイナー材の基台部の表側には、その長さ方向に沿わせた隆状部または溝穴部を設けて導水路を形成したことを特徴とする請求項1記載のサイディングボードの目地用シーリング構造。」

2.引用例
これに対して、当審において平成12年12月1日付けで通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された実願昭63-108154号(実開平2-30408号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、次のような記載がある。
a.「(1)互いに突き合わされる両壁板にわたる幅を有した帯状基板の表面中央帯に、前記両壁板の目地間隔を隔てて一対の対向板が立設され、かつ、該対向板の内面には断面鈎状をなす溝が多段に形成された取付基板と、断面形状の基部が前記対向板間に嵌入され、前記鈎状溝と係合可能な係合突起を有し、対向板より上部側面には、前記両壁板の端面に弾力的に圧接可能な翼状片を一体に形成したゴム状弾性を有する長尺のシール体とから成ることを特徴とする壁板ジョイナー。」(実用新案登録請求の範囲)
b.「この考案の壁板ジョイナー1は取付基板1Aと、壁板A,B間のシールを行なうシール材1Bとから構成され、取付基板1Aは、互いに突き合わされる両壁板A,Bにわたる幅bを有した帯状基板2の表面中央帯に、両壁板A,Bの目地間隔dを隔てて一対の対向板3,3が立設され、この対向板3,3の内面には断面鈎状をなす溝4・・・4が多段に形成されて成り、一方シール材1Bは断面形状の基部5が前記対向板3,3間に嵌入される幅d’とされ、対向板3,3内面の溝4・・・4と係合可能な係合用突起6・・・6を有し、対向板3,3の高さhより上部側面には、両壁板A,Bの端面A’,B’に弾力的に圧接可能な翼状片7・・・7を一体に形成した、全体がゴム状弾性を有する長尺体とされて構成されている。
〔作用〕
この考案の壁板ジョイナー1は第2図,第3図に示すように両者を嵌合させて一体化することにより使用されるが、壁板A,Bの厚さが第2図に示すようにシール材1Bの高さに略等しい場合は、取付基板1Aを両壁板A,B裏面にかけわたして配置し、目地間隔dを対向板3,3で規制しておき、そこにシール材1Bの基部を嵌挿していく。このとき、シール材1Bの基部は対向板3,3内面の鈎状突起4・・・4と係合突起6・・・6との係合により両者は弾性的に係合し、脱出しなくなり、さらにシール材1Bの側面の翼状片7・・・7が壁板A,B両端面に圧接介入される結果、シール性が達成される。」(第3頁第13行から第5頁第1行)
これらの記載及び第1,2図の記載を参照すると、引用例1には、「隣接配置される壁板の対向端面相互間に画成される目地用空隙部内に対向板を配置させる取付基板と、この取付基板の対向板間に嵌入されて目地用空隙部をシールするために装着されるシール材とで形成される壁板ジョイナーにおいて、取付基板は、帯状基板と、帯状基板の表面中央帯に壁板の目地間隔を隔てて立設され、かつ、内面に断面鈎状をなす溝が多段に形成された一対の対向板とで形成し、シール材は、前記目地用空隙部内に収容される断面形状で、前記鈎状溝と弾性的に係合可能な係合突起を両側に有し、底面を含む全体を対向板間に嵌入し密着させて位置固定される断面形状の基部と、対向板より上部両側面には両壁板の端面に弾力的に圧接可能な翼状片を上下に形成した壁板ジョイナー」が記載されているものと認められる。
また、本願の出願日前に頒布された刊行物である、実願昭63-170060号(実開平2-89106号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、次のような記載がある。
a.「1.目地(8)を覆う平板状の表面部(1)、その表面部(1)の裏面中央から直角に突出した脚部(2)、該脚部(2)から対称に左右に延びる主副止水リップ部(3a,3b)、前記脚部(2)の先端からハ字状に延びて枠材(6)に接触する2枚のリップ片(5,5)、表面部(1)外面及び主止水リップ部(3a)の先端近傍に設けた同一色の高分子材料装飾体(1a)及び装飾部(3d)よりなる水密目地材。」(実用新案登録請求の範囲)
b.「本考案は以上のように構成されるため、水密目地材7を目地8に装入した場合、脚部2先端に結合したリップ片5,5が、目地8奥の枠材6に押し付けられ、2枚のリップ片5,5が両側に広がって、水密目地材7が装入方向に対して傾斜しようとする傾向を抑制する力が働き、しかも表面部1及び止水リップ部3a,3bが装入方向の脚部2に対して対称に位置し、且つ各止水リップ部3a,3bの先端がいずれも外壁パネル4端面に弾接し、外観・水密機能共に損なわれることはない。また、目地幅Xのバラツキから表面部1に最も近い主止水リップ部3aが外側から見えることがあっても、表面部1の外面及び主止水リップ部3aの先端に外壁パネル4と同一色(白色系)の高分子材料装飾体1a及び装飾部3cを設けてあるため、外観に異和感を与えることはない。」(第3頁第14行から第4頁第9行)
これらの記載及び第1、2図を参照すると、引用例2には、「水密目地材において、目地を覆い外面に高分子材料装飾体を設けた平板状の表面部と、その裏面中央から直角に突出し外壁パネル間の目地内に収容される脚部と、該脚部から対称に左右に表面部先端よりさらに長く延び外壁パネル端面に弾接する止水リップ部を有する」ことが記載されているものと認められる。
さらに、本願の出願日前に頒布された刊行物である、実願昭61-79033号(実開昭62-190045号)のマイクロフィルムには、次のような記載がある。
a.「(1)壁下地材の前面に縦長の目地水切り金具を配設し、目地水切り金具の左右両側の表面側に長手方向の全長にわたって水切り突条を設け、目地水切り金具の両側部の前面側にそれぞれ隣り合う外装材の端部を配設し、縦片の両側にそれぞれ弾性ひれ片を前後に複数列設けた縦長のガスケットを隣り合う外装材の端部間に形成される目地溝内に弾性的にはめ込んで各弾性ひれ片をそれぞれ外装材の側端面部に弾接して成る外装材の目地部分の水仕舞い構造。」(実用新案登録請求の範囲)
b.「目地水切り金具2は上下方向に長い固定板部9の前面中央部に2条の上下方向に長い当たり片10を平行に突設して構成してある。ここで、図面に示す実施例では目地水切り金具2は一枚の金属板を折り曲げて形成してある。目地水切り金具2の固定板部9の両端部にはそれぞれ水切り突条3が表面側に折り返して形成してある。また前記折り返して形成した水切り突条3の付近に突起状の他の水切り突条3が形成してある。2条の当たり片10間は溝状部11となっている。外装材4はセメント系板のような窯業系材料により形成してある。ガスケット7はゴムや合成樹脂等の弾性を有する材料により縦に長く形成してあり、縦長の縦片5の両側にそれぞれ縦長の弾性ひれ片6を前後に複数列設けて形成してある。しかして、柱、間柱、下地板、下地パネル等の壁下地材1の前面側に目地水切り金具2の固定板部9をビス、釘等の固着具により固着して目地水切り金具2を取り付ける。そして目地水切り金具2の両側の前面部にそれぞれ隣り合う外装材4の端部を配置し、この状態で外装材4を釘、ビス等の固着具やあるいは取り付け金具等により固着する。そして隣り合う外装材4間に形成される目地溝8内にガスケット7を弾性的にはめ込み、ガスケット7の両側にそれぞれ複数個設けた弾性ひれ片6の先端部をそれぞれ外装材4の側端面部に弾接するものである。この場合後端部に位置する弾接ひれ片6は目地水切り金具2の溝条部11内に弾入してはめ込まれるものである。」(第4頁第2行から第5頁第10行)
これらの記載及び第1図の記載を参照すると、「壁下地材の前面に配設される固定板部の前面中央部に平行に突設した2条の上下方向に長い当たり片を配置した目地水切り金具の両側部の前面側にそれぞれ隣り合う外装材の端部を配設し、縦片の両側にそれぞれ弾性ひれ片を前後に複数列設けた縦長のガスケットを隣り合う外装材の端面間に形成される目地溝内に、かつ、後端部の弾性ひれ片は目地水切り金具の溝状部内に弾性的にはめ込んで各弾性ひれ片をそれぞれ外装材の側端面部に弾接して成る外装材の目地部分の水仕舞い構造において、目地水切り金具の固定板部の左右両側の表面側に、長手方向の全長に亘って水切り突条を設けた」ことが記載されているものと認められる。

3.対比・判断
A.請求項1に係る考案について
請求項1に係る考案と、上記引用例1記載の考案を比較すると、引用例1記載の考案の「壁板」、「対向板」、「対向板間」、「取付基板」、「シール材」、「帯状基板」、「係合突起」、「基部」、「翼状片」及び「壁板ジョイナー」は、それぞれの機能に照らし、各々請求項1に係る考案の「サイディングボード」、「支持板部」、「嵌着部」、「ジョイナー材」、「目地用ガスケット」、「基台部」、「アンカーリップ部」、「底部」、「シーリングリップ部及びアンダーリップ部」及び「サイディングボードの目地用シーリング構造」に相当し、引用例1記載の考案の「鈎状溝」は、請求項1に係る考案の「係止部」に対応し、引用例1記載の考案において、対向板の内面の多段の鈎状溝にシール材の係合突起が弾性的に嵌入し密着するということは、請求項1に係る考案の、支持板部の対向する各内側面に対しその挿脱方向へと添わせた状態で係止部に目地用ガスケットの撓曲可能に翼設されたアンカーリップ部を各別に係着させるということに対応するから、両者は、下記の点で相違しその余の点では一致している。
a.ジョイナー材が、請求項1に係る考案では胴縁材の表側に定置されているのに対し、引用例1記載の考案ではどこに取り付けられるのか明記されていない点。
b.目地用ガスケットが、請求項1に係る考案では、基体部上縁部に翼設されたシーリングリップ部はその表側に化粧用の表出部を有しており、また、その下方に位置するアンダーリップ部はシーリングリップ部より長く翼設されているのに対し、引用例1記載の考案における上下の両翼状片は、そのような構成を有していない点。
まず、上記相違点aについて検討すると、一般的に壁板の裏面には壁下地が配置されており、壁板ジョイナーは当然壁下地表側に定置されるはずであり、かつ、壁下地として胴縁材は例をあげるまでもなく周知であるから、引用例1記載の考案においても、壁板ジョイナーを胴縁材の表側に定置することは、当業者が適宜なしうることにすぎない。
一方、引用例2記載の考案の「水密目地材」、「目地を覆い外面に高分子材料装飾体を設けその裏面中央から脚部が突出する平板状の表面部」、「脚部」及び「脚部から対称に左右に表面部先端よりさらに長く延び外壁パネル端面に弾接する止水リップ部」は、それぞれの機能に照らし、各々請求項1に係る考案の「目地用ガスケット」、「基体部」及び「上縁部に翼設されその表側に化粧用の表出部を有するシーリングリップ部」に相当するから、引用例2には、上記相違点bにおける請求項1に係る考案の目地用ガスケットと同様な構成のものが記載されていることになり、これを、引用例1のシール材として用いることは、当業者がきわめて容易に想到しうる程度のことである。
B.請求項2に係る考案について
請求項2に係る考案は、請求項1を引用し、さらに「ジョイナー材の基台部の表側には、その長さ方向に沿わせた隆状部または溝穴部を設けて導水路を形成した」という構成を限定したものであるが、この点は、引用例3に記載されており、これを、引用例1の取付基板の帯状基板として用いることは、当業者がきわめて容易に想到しうる程度のことである。
C.対比・判断のむすび
したがって、本願請求項1および2に係る考案はいずれも、引用例1、2記載の考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願請求項1および2に係る考案はいずれも、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-04-18 
結審通知日 2001-05-08 
審決日 2001-05-21 
出願番号 実願平4-20383 
審決分類 U 1 8・ 121- WZ (E04F)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 山田 忠夫長島 和子井上 博之  
特許庁審判長 幸長 保次郎
特許庁審判官 鈴木 憲子
伊波 猛
考案の名称 サイディングボードの目地用シーリング構造  
代理人 熊谷 浩明  
代理人 熊谷 浩明  

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