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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16B
管理番号 1043360
審判番号 審判1999-1506  
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-03 
確定日 2001-07-18 
事件の表示 平成 4年実用新案登録願第 87814号「窯業系外壁板固定用釘」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 7月15日出願公開、実開平 6- 51517]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願考案
本願は、出願日が平成4年12月22日であって、その請求項1に係る考案(以下、「本願考案」という。)は、平成9年12月25日付、平成10年8月11日付、平成12年8月30日付及び平成12年12月25日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】 窯業系外壁板に形成される釘孔に首部を嵌合し、窯業系外壁板の釘孔を通過した尖端部と胴部を下地材に没入し、頭部を窯業系外壁板の表面に当接して、窯業系外壁板を下地材に固定する鋼製の釘において、
胴部は、リング状の引き抜き抵抗部を設け、首部は、均等径にし、引き抜き抵抗部を設けずに、引き抜き抵抗部付きの胴部より大径に、また、尖端部より大径にし、首部と引き抜き抵抗部付きの胴部は、段部を設けずに、緩斜面で接続したことを特徴とする窯業系外壁板固定用釘。

2.本願考案の出願の日前に頒布された刊行物
刊行物1:実願昭57-97196号(実開昭59-1915)のマイクロフィルム
刊行物2:特開昭51-151450号公報
刊行物3:実願昭58-108078号(実開昭60-16008号)のマイクロフィルム
刊行物1には次の事項が記載されている。
a.「また屋根下地材、野地板等への使用に於いては、特に釘打ち部の耐透水性の優れた効果を発揮することが望まれるけれども、前記した従来釘では板の釘打ち部を通して雨水が浸入し易く、この耐透水性と前記釘保持力を兼備した釘は未だ開発されていない状況にある。そこで本考案は、釘保持力を十分有し且つ釘打ち部の耐透水性にも優れた効果を発揮する釘を提供しようとするものである。」(2頁4行?12行)
b.「本例は、釘軸1の基端に釘頭2を備えた釘3に於いて、釘軸1の基端部4を円形断面に形成し、基端部4に続く釘軸1の中央部5から先端部6にかけて釘軸1の軸直角断面を横長方形7とした先細のくさび状部8に形成し、くさび状部8の巾9を基端部4の直径と略同寸法となし、更にくさび状部8の先端に左右両側を中央に向けて傾斜したV字状先端10を形成している。」(2頁14行?3頁3行)
c.「このようにした本例釘3は、使用時、例えば第2図、第3図に示すように、屋根下地材11に木片セメント板の野地板12を取付ける場合に、野地板12から屋根下地材11に向けて打込む。この打込みに於いては、野地板12及び屋根下地材11の釘打ち部13、14が釘3の中央部5から先端部6にかけて形成されたくさび状部8により釘3の打込みに従って徐々に押拡げられて行くので、釘打ち部13、14における野地板12及び屋根下地材11の破壊を最小限に喰い止められると共に、くさび状部8の断面が横長方形7であるため、同一断面積の円形断面、角形断面のものに比してくさび状部8の表面積が大きく、このため釘打ち部14、13に於ける屋根下地材11、野地板12と釘3との接触面積が大きくて釘保持力を増大している。また、くさび状部8が、通常のくさび状と異なり、左右両側を中央に向けて傾斜したV字状先端10としているため、打込みの際弾性の少ない野地板12に対しても釘3が左右にずれながら打込まれることがなく真直ぐに打込まれることとなる結果、釘打ち部13、14に於ける釘3と野地板12及び屋根下地材11との間に隙間を生じ難く、この結果釘打ち部13、14の釘保持力及び耐透水性が向上する。」(3頁4行?4頁9行)
d.「また本案は第5図に示すように前例同様のくさび状部8′の前後のくさび面に滑り止め用突条15を矢筈状に設けた釘3′としても差支えはなく、この場合くさび状部8′の釘保持力を一層高めることができる。」(4頁12行?16行)
以上の記載事項及び図面の記載からみて、刊行物1には、次の考案(以下、「引用考案」という。)が記載されているものと認めることができる。
「木片セメント板の野地板12に形成される釘孔に基端部4を嵌合し、木片セメント板の野地板12の釘孔を通過したV字状先端10とくさび状部8′を屋根下地材11に没入し、釘頭2を木片セメント板の野地板12の表面に当接して、木片セメント板の野地板12を屋根下地材11に固定する釘において、くさび状部8′は、滑り止め用突条15を設け、基端部は、滑り止め用突条15を設けずに、均等径にした木片セメント板の野地板固定用釘3」
刊行物2には次の事項が記載されている。
a.「金属板(A)と木材(B)との連結固定に於いて、頭部(1)と、前記金属板(A)に形成する孔(2)と略同径でかつ金属板(A)によつて加えられる曲げ応力に十分耐え得る長さ(L)及び太軸(D)を有して木材(B)に適宜深さ分圧入する首部(3)と、該首部(3)から脚部(4)を形成する先端側へ漸次軸細にしたテーパ部(5)を形成してなる連結用固定部材。」(特許請求の範囲)
b.「上記テーパ部(5)は打込みの際の抵抗を少なく圧入を容易にしたものである。」(2頁右上欄3?5行)
刊行物3には次の事項が記載されている。
a.「図示実施例に示すように、上下に頭部(2)と尖端部(3)とを有する軸部(1)の長さ方向の中間より下方部分(A)に、鋸歯状断面を呈する複数の環状突起(4)が形成され、」(3頁6行?10行)
b.「この考案は釘、特にパーティクルボード、セメント製品系ボード等の比較的脆弱な釘保持力に乏しい板材を木製柱等に固着するのに適した釘に関する。」(2頁1行?4行)
3.対比・判断
本願考案と引用考案を対比すると、引用考案の「基端部4」は本願考案の「首部」に、以下同様に、「V字状先端10」は「尖端部」に、「屋根下地材11」は「下地材」に、「釘頭2」は「頭部」に、「滑り止め用突条15」は「引き抜き抵抗部」にそれぞれ相当し、そして、雨水の浸入を防止し、釘打ち部の耐透水性を考慮する必要があるという点で、引用考案の「木片セメント板の野地板12」は本願考案の「窯業系外壁板」に、また、下地材に位置して引き抜き抵抗を与える機能を有するという点で引用考案の「くさび状部8′」は本願考案の「胴部」に、それぞれ共通するものと認められるので、本願考案と引用考案には、下記のとおりの一致点及び相違点があるものと認められる。

[一致点]
窯業系外壁板に形成される釘孔に首部を嵌合し、窯業系外壁板の釘孔を通過した尖端部と胴部を下地材に没入し、頭部を窯業系外壁板の表面に当接して、窯業系外壁板を下地材に固定する釘において、胴部は、引き抜き抵抗部を設け、首部は、引き抜き抵抗部を設けずに、均等径にした窯業系外壁板固定用釘である点。

[相違点]
イ.本願考案では、首部は、引き抜き抵抗部付きの胴部より大径に、また、尖端部より大径にし、首部と引き抜き抵抗部付きの胴部は、段部を設けずに、緩斜面で接続したのに対して、引用考案では、そのような構成を具備しない点。
ロ.本願考案では、引き抜き抵抗部がリング状であるのに対して、引用考案では、リング状となっていない点。
ハ.本願考案では、釘の材質が鋼製であるのに対して、引用考案では材質が不明である点。

そこで、これらの相違点について検討する。
相違点イについては、提示した刊行物2には、首部は、引き抜き抵抗部付きの胴部より大径に、また、尖端部より大径にし、首部と引き抜き抵抗部付きの胴部は、段部を設けずに、緩斜面で接続した連結固定部材が示されており、相違点イで掲げた構成をすべて有しているものであり、一般的にも、釘打ち部における釘先端部によって必要以上に押拡げられないようにするため首部の径を、引き抜き抵抗部付きの胴部及び尖端部より大径にし、首部と胴部を、緩斜面で接続することは、通常実施されている慣用技術(例えば、実願昭52-39435号(実開昭53-133065号)のマイクロフィルム参照)である。
してみると、引用考案に刊行物2に記載された構成あるいは慣用手段を適用し、相違点イに於ける本願考案の構成とすることは、当業者であれば、きわめて容易に想到し得たものと認める。

相違点ロについては、比較的脆弱な板状建材を下地材の木製材に固着する釘において、引き抜き抵抗部として、歯鋸状断面を呈する複数のリング状突起を用いたものが刊行物3に記載されているように、慣用技術に過ぎないので、この相違点ロに係る本願考案の構成は、当業者が引用考案の実施に際し適宜採用できる設計的事項に過ぎない。

相違点ハについては、釘材の材質を耐食性等を考慮し鋼製とすることは、従来周知の技術にすぎない(例えば、実開平3-20710号公報参照)ので、この相違点ハに係る本願考案の構成も、当業者が引用考案の実施に際し適宜採用できる設計的事項に過ぎない。

なお、出願人は、本願考案における釘は高い水密性が要求されるものであることを強く主張するが、引用考案も、前記刊行物1に関する摘示個所aに“従来釘では板の釘打ち部を通して雨水が浸入し易く、この耐透水性と釘保持力を兼備した釘は未だ開発されていない状況にある。そこで、釘保持力を十分有し且つ釘打ち部の耐透水性にも優れた効果を発揮する釘を提供しようとするものである。”と記載されているように耐透水性、すなわち高い水密性に考慮をはらったものである。
すなわち、引用考案は、本願考案が解決しようとする課題と同様の課題を解決するために、釘軸の基端部を円形断面に形成し、基端部に続く釘軸の中央部から先端部にかけて釘軸の軸直角断面を横長方形とした先細のくさび状部に形成し、くさび状部の巾を基端部の直径と略同寸法となし、更にくさび状部の先端に左右両側を中央に向けて傾斜したV字状先端を形成しているので、野地板及び屋根下地材の釘打ち部が釘の中央部から先端部にかけて形成されたくさび状部により釘の打込みに従って徐々に押拡げられて行くので、釘打ち部における野地板及び屋根下地材の破壊を最小限に喰い止められ、釘の基端部が釘孔の周囲に隙間を生じ難く密に嵌合するようにしたものである。
そして、その結果、引用考案は、くさび状部が、通常のくさび状と異なり、左右両側を中央に向けて傾斜したV字状先端としているため、打込みの際弾性の少ない野地板に対しても釘が左右にずれながら打込まれることがなく真直ぐに打込まれることとなる結果、釘打ち部に於ける釘と野地板及び屋根下地材との間に隙間を生じ難く、この結果釘打ち部の釘保持力及び高い水密性が向上するという本願と同様の効果を奏するものと認められる。
してみると、引用考案も、本願考案と同様に高い水密性の向上といった共通の課題解決手段を有するものと言わざるを得ない。

4.むすび
したがつて、本願考案は、この出願前に頒布された刊行物1?3に記載された考案及び従来周知及び慣用技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
審理終結日 2001-05-07 
結審通知日 2001-05-18 
審決日 2001-05-29 
出願番号 実願平4-87814 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (F16B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森藤 淳志原 泰造  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 秋月 均
長屋 陽二郎
考案の名称 窯業系外装材固定用釘  
代理人 水野 桂  
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