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審決分類 審判 全部申し立て   H01F
審判 全部申し立て   H01F
管理番号 1043366
異議申立番号 異議2000-73962  
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-10-16 
確定日 2001-04-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2604103号「トランス」の請求項1ないし4に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2604103号の請求項1ないし4に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第2604103号の請求項1ないし請求項4に係る考案についての出願は、平成4年5月12日に実用新案登録出願され、平成12年2月10日にその考案について実用新案権の設定登録がなされ、その後、大平章より登録異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年3月2日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否
2-1.訂正の内容
1)請求項1に「・・・厚さt3が長手方向と直交する幅w3よりも薄い扁平状のコイルボビンとを有し、・・・」とあるのを「・・・厚さt3が長手方向と直交する幅w3よりも薄く、各端子を前記長手方向に沿って設けた扁平状のコイルボビンとを有し、・・・」と訂正する。
2)考案の詳細な説明の【課題を解決するための手段】の欄の記載を請求項1の訂正に整合させる。

2-2.訂正の目的の適否及び拡張・変更の存否
上記訂正1)は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とし、上記訂正2)は明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、また上記訂正事項は、願書に添付した図面に記載された事項であり、かつ、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

2-3.「訂正の適否」のむすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号。以下「平成11年法」という)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.登録異議申立てについて
3-1.本件考案
本件請求項1ないし請求項4に係る考案は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 長手方向の断面形状が長方形で、厚さt1が前記長手方向と直交する幅w1よりも薄い板状I形のコイル巻線部磁気回路コアと、
そのコイル巻線部磁気回路コアの両端部と対応する位置にフラットな底面と側面を有する凹み部を設けた1つの外部磁気回路コアと、
コイルを巻回し、端面に前記厚さt1のコイル巻線部磁気回路コアを挿入するコア挿入口を形成して、厚さt3が長手方向と直交する幅w3よりも薄く、各端子を前記長手方向に沿って設けた扁平状のコイルボビンとを有し、
前記コイル巻線部磁気回路コアの厚さt1が前記外部磁気回路コアの厚さt2より薄く形成され、
前記コイルボビンのコア挿入口からコイル巻線部磁気回路コアを挿入して、コイル巻線部磁気回路コアの両端部をコイル巻線部分より突出して、
そのコイル巻線部磁気回路コアの両端部を前記外部磁気回路コアの凹み部にそれぞれ載置して、コイル巻線部磁気回路コアの両端部の下面をスペーサを介して外部磁気回路コアの凹み部の底面と対向させ、コイル巻線部磁気回路コアの両端部の側面を外部磁気回路コアの凹み部の側面と対向させるとともに、
前記コイルボビンのコイル巻線部分を外部磁気回路コアの内側に挿入したことを特徴とするトランス。
【請求項2】 請求項1記載において、前記凹み部が外部磁気回路コアの内側端から外側端まで貫通していることを特徴とするトランス。
【請求項3】 請求項1記載において、前記凹み部内でコイル巻線部磁気回路コアの端部が接着剤により外部磁気回路コアに固定されていることを特徴とするトランス。
【請求項4】 請求項1記載において、前記トランスがインバータ用トランスであることを特徴とするトランス。」

3-2.申立ての理由の概要
申立人は、
(1)本件請求項1ないし請求項4に係る考案は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものである旨(2)本件請求項1および請求項3に係る考案は、本件実用新案登録出願の日前の特許出願であって、本件実用新案登録出願後に出願公開された甲第4号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書または図面に記載された発明と同一であるから、実用新案法第3条の2の規定に違反してなされたものである旨
主張し、本件請求項1ないし請求項4に係る実用新案登録を取り消すべきであると主張している。(なお、申立人は、前記(2)に関して、例えば「本件の請求項1、3に係る登録実用新案は、甲第4号証に係る実用新案登録出願の出願当初の明細書または図面に記載された発明と同一であるから、・・」(登録異議申立書第9頁第7?9行)等としているが、甲第4号証は特許出願に係る公開公報であるので前記のとおり整理した。)

3-3.申立人が提出した甲各号証の記載事項
申立人の提出した甲第1号証(実願昭59-170129号(実開昭61-85109号)のマイクロフィルム)には、
・「巻枠部の両端に複数の端子を植設したフランジ部を形成し棒状の磁性体挿入孔を形成した巻枠と、棒状磁性体と、磁性体部材からなり対向辺の中央に凹部を設けた枠形コアとからなり、前記巻枠に棒状磁性帯(「棒状磁性体」の誤記と認められる)を挿入し両端を巻枠から突出せしめ、前記巻枠部を前記枠形コアに嵌入するようにしたことを特徴とする変成器の構造。」(実用新案登録請求の範囲)
・「上記構成の変成器の構造にあっては、構成部品が多く、しかも形状が複雑なために自動組立等に適さない等の問題があり、したがって、多大の組立工数を要しコスト高になる等それぞれの問題点があった。」(明細書第2頁第12?16行、「考案が解決しようとする問題点」の欄)
・「合成樹脂成型品からなり、両端にフランジ6、6’を形成して複数の端子4を植設し、磁性体挿入孔51を設けた巻枠5に図示しないコイルを所定回数巻回した状態で、磁性体挿入孔51に磁性体材料例えばフェライト等からなる棒状磁性体7を、その両端が突出するように挿入する。このように棒状磁性体7を挿入した巻枠5を、第1図(b)に示す磁性体材料例えばフェライト等からなり、対向辺の中央に凹部9、9’を形成した枠形コア8に嵌め込めば、棒状磁性体7の巻枠5からの突出部10、10’が枠形コア8に形成した凹部9、9’に当接し、この当接部を接着剤で接着するようにした変成器の構造である。
なお、棒状磁性体7は丸棒について説明したが、丸棒に限らず角棒等その他の形状であっても構わない、したがって、磁性体挿入孔51は棒状磁性体7に対応する孔にする必要がある。」(明細書第4頁第2?18行)
が記載され、また、その図面第1図によると、枠形コア8の対向辺の中央の凹部9、9’は枠形コア8の内側端から外側端まで貫通している様子が示され、また巻枠5の両端のフランジ6、6’には、磁性体挿入孔51の長手方向とは直交する方向に端子4が引き出される様子が示されている。
申立人の提出した甲第2号証(実願昭61-87335号(実開昭62-197825号)のマイクロフィルム)には、
・「巻線を施す巻胴部とつばを有し、つばの外周にコア保持部を備え、コア保持部に溝を設け、コア保持部の一方には、巻胴部のコア挿入穴と連接する切欠き部を設け、さらにコア保持部に端子を埋設したボビンを有し、前記コア保持部の溝にO形コアを挿入し、切欠き部から巻胴部のコア挿入穴にI形コアを挿入した薄型トランス。」(実用新案登録請求の範囲)
・「本考案は、各種電気機器に用いる薄型トランスに関するものである。」(明細書第1頁第14?15行)
・「切欠き部20からはI形コアを挿入し、コア保持部16、16’の溝19、19’にはギャップ紙と共にO形コア11を挿入する。O形コア11、I形コア15の固定は、例えば接着剤を用いて固定する。」(明細書第4頁第1?5行)
・「本考案によれば、端子を挿入しているコア保持部の位置が、つば外周の上側に位置するため、従来例のような義足が不要であり、その分薄型のトランスとすることができる。」(明細書第4頁第15?18行)
が記載され、また、その図面第1図、第2図によると、コア保持部16、16’に設けた溝19、19’に、ギャップ紙14およびO形コア11が挿入され、コア保持部に設けた切欠き部20からI形コア15が挿入されることにより、O形コアとI形コアの端部とがギャップ紙を介して対向する様子が示され、またコア保持部16、16’には、I形コア15が挿入される方向とは直交する方向に端子17、17’が引き出される様子が示されている。
申立人の提出した甲第3号証(実願昭60-23735号(実開昭61-140522号)のマイクロフィルム)には、
・「本考案は、例えば放電灯などに用いられるインバータトランスに関する。」(明細書第1頁第17?18行)
・「この種のインバータトランスにおいて、磁気の一部を漏洩させるためにコアの脚部4aの互いの突合わせ部分にギャップ5を確保することが行われている。このギャップ5には制磁材料からなるスペーサ6が挟み込まれる。」(明細書第2頁第9?13行)
が記載され、また、その図面第5図には、2つのE形コアの脚部4aの互いの突合わせ部分にスペーサ6が挟み込まれる様子が示され、また端子は示されていない。
申立人の提出した甲第4号証(特願平3-12025号(特開平4-246810号公報))には次の事項が記載されている。
・「I形棒体でなる内コア1aと該内コア1aに直に巻かれた巻線1bと該巻線1bの引出タップを接続する接続端子1c-1を備える端子板1cとで構成し、前記巻線1bを樹脂封止体1dで封着してなる巻線構体1と、該巻線構体1の内コア1aの両端を嵌入する凹部2aを対向辺の中央に備える四角枠形の外コア2とで構成し、該外コア2の凹部2aに前記内コア1aを嵌入し固定してなることを特徴とするトランス。」(特許請求の範囲の請求項1)
・「従来のトランスは7図の組立斜視図に示すように、巻線12を巻くボビン部11aと巻線12の引出しタップを接続するリードを備える端子台11bとを合成樹脂で一体モールドしたボビン体11と、一対のE形コア13とからなり、ボビン体11の中央孔11a-1に両側からE形コア13に挿入し端面を互いに衝接し、外周に係着したバネバンド14で固定している。」(発明の詳細な説明の【0002】の【従来の技術】の欄)
・「巻線を樹脂封止体で封着することにより、樹脂封止体が巻線の表面及び巻線周辺の内コア表面を気密に覆うため巻線内に洗浄液が侵入することなく全面洗浄することができる。また、内コアに巻線を直に巻くことにより、従来のボビン巻きに比べトランスの厚さをより薄くすることができる。」(発明の詳細な説明の【0006】の【作用】の欄)
・「・・・外コアの凹部に2aに内コア1aの両端を嵌入した後、図2のように上からばねバンド3で押さえ込み固定する。(あるいは接着剤で固着してもよい。)・・・」(発明の詳細な説明の【0007】の欄)

3-4.判断
3-4-1.申立人の主張(1)について
本件請求項1に係る考案と、甲第1号証に記載された考案とを対比すると、甲第1号証には、本件請求項1に係る考案の「コイル巻線部磁気回路コアの両端部を前記外部磁気回路コアの凹み部にそれぞれ載置して、コイル巻線部磁気回路コアの両端部の下面をスペーサを介して外部磁気回路コアの凹み部の底面と対向させ、コイル巻線部磁気回路コアの両端部の側面を外部磁気回路コアの凹み部の側面と対向させる」点について記載がなく、また示唆もない。甲第2号証には、スペーサに相当するギャップ紙の記載があり、外部磁気回路コアに相当するO形コアとコイル巻線部磁気回路コアに相当するI形コアの端部がギャップ紙を介して対向しているが、コア部の厚みは、O形コア、I形コアおよびギャップ紙の各厚みの総和となっている。また、甲第3号証に記載されたトランスは、2つのE形コアを突合わせてコアを構成するもので、本件請求項1に係る考案の前記摘記した構成に関する記載も示唆もない。本件請求項1に係る考案は、コイル巻線部磁気回路コアの両端部の下面をスペーサを介して外部磁気回路コアの凹み部の底面と対向させることにより、スペーサの厚みを吸収して、コア部の厚さを薄くすることができ、各端子をコイル巻線部磁気回路コアの長手方向に沿って設けた(この点について、甲第1号証ないし甲第3号証にはいずれも記載がない)ことと相俟って、トランスの高さを低くすることができる、という効果を奏すると認められる。したがって、本件請求項1に係る考案は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとは認められない。
本件請求項2ないし請求項4はいずれも請求項1を引用する請求項であるから、本件請求項1に係る考案について検討したと同様の理由により、本件請求項2ないし請求項4に係る考案は、いずれも甲第1号証ないし甲第3号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとは認められない。

3-4-2.申立人の主張(2)について
本件請求項1に係る考案と、甲第4号証に記載された発明とを対比すると、甲第4号証に記載された発明は、ボビンに巻線を巻かず、内コアに巻線を直に巻きさらに樹脂封止体で封着するようにしたもので、コイルボビンを構成としておらず、本件請求項1に係る考案の構成を備えているとはいえない。したがって、その他の構成について対比するまでもなく、本件請求項1に係る考案は、甲第4号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書または図面に記載された発明と同一であるとは認められない。
本件請求項2ないし請求項4はいずれも請求項1を引用する請求項であるから、本件請求項1に係る考案について検討したと同様の理由により、本件請求項2ないし請求項4に係る考案は、いずれも甲第4号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書または図面に記載された発明と同一であるとは認められない。

4.むすび
以上のとおりであるから、登録異議申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1ないし請求項4に係る実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1にないし請求項4係る実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
トランス
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 長手方向の断面形状か長方形で、厚さt1が前記長手方向と直交する幅w1よりも薄い板状I形のコイル巻線部磁気回路コアと、
そのコイル巻線部磁気回路コアの両端部と対応する位置にフラットな底面と側面を有する凹み部を設けた1つの外部磁気回路コアと、
コイルを巻回し、端面に前記厚さt1のコイル巻線部磁気回路コアを挿入するコア挿入口を形成して、厚さt3が長手方向と直交する幅w3よりも薄く、各端子を前記長手方向に沿って設けた扁平状のコイルボビンとを有し、
前記コイル巻線部磁気回路コアの厚さt1が前記外部磁気回路コアの厚さt2より薄く形成され、
前記コイルボビンのコア挿入口からコイル巻線部磁気回路コアを挿入して、コイル巻線部磁気回路コアの両端部をコイル巻線部分より突出して、
そのコイル巻線部磁気回路コアの両端部を前記外部磁気回路コアの凹み部にそれぞれ載置して、コイル巻線部磁気回路コアの両端部の下面をスペーサを介して外部磁気回路コアの凹み部の底面と対向させ、コイル巻線部磁気回路コアの両端部の側面を外部磁気回路コアの凹み部の側面と対向させるとともに、
前記コイルボビンのコイル巻線部分を外部磁気回路コアの内側に挿入したことを特徴とするトランス。
【請求項2】 請求項1記載において、前記凹み部が外部磁気回路コアの内側端から外側端まで貫通していることを特徴とするトランス。
【請求項3】 請求項1記載において、前記凹み部内でコイル巻線部磁気回路コアの端部が接着剤により外部磁気回路コアに固定されていることを特徴とするトランス。
【請求項4】 請求項1記載において、前記トランスがインバータ用トランスであることを特徴とするトランス。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案はトランスに係り、特に液晶デイスプレイのバツクライト光源用陰極管のインバータ電源に使用するに好適なトランスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ラツプトツプ型、ノートブツク型、パームトツプ型ワープロ,パソコンのSTN液晶デイスプレイユニツトなどは側光方式バツクライトを使用し、液晶パネル・導光板の薄型化、陰極管の細管化を図り、薄さの特徴を出そうとしている。
【0003】
これに対応すべくインバータ電源の薄型化にトランスの薄型化が必要不可欠である。また、駆動電源に電池が使用されるので、インバータ電源の高効率化の要求も強く出ている。インバータ電源は面実装によつて薄型化が図れており、トランスも面実装構造によって薄型化に対応していた。
【0004】
図9にEEフエライトコアを用いた分割面実装構造のトランスを示す。トランスの薄型化には、コイル巻線部分の断面積を小さく、薄くする必要がある。
【0005】
図中の26は分割巻ボビン、27は一次コイル、28は二次コイル、29は絶縁シート、30はEEコア、31は絶縁テープである。
【0006】
【考案が解決しようとする課題】
ところで従来のトランスは、図9に示すようにボビンのコイル巻線部分に挿入される中央コア部分の厚さが、そのコイル巻線部分の外側に配置される外枠コア部分の厚さと同じであるから、必然的にコイル巻線部分も大きくなり、トランスの薄型化には対応できない。
【0007】
実開昭2-102710号公報には、両端部に傾斜面を形成した長手方向の断面形状が台形のI形コアと、そのI形コアの両端部と対応する位置に傾斜状凹部を形成した平面形状が枠形の枠形コアとを備え、前記I形コアの両端部を枠形コアの傾斜状凹部に挿入して傾斜面どうしをそれぞれ面接触する構造のインダクタンス素子が記載されている。しかしこのインダクタンス素子は、前記I形コアの厚さが枠形コアの厚さと同じであるから、コイル巻線部分がまだ大きく、コイル巻線部分がコアの上下面から突出した形になり、この突出した部分が薄型化の障害となる。またI形コアと枠形コアの各傾斜面の角度が全て同じであれば、I形コアと枠形コアが適正に面接触くするが、傾斜面の角度がばらつくとI形コアと枠形コアが線接触または点接触することになり、そのため磁気抵抗の増大を招く。さらにI形コアの両端部が尖っているため、そのI形コアの製作時や取扱時などに尖端部が欠損し易く、不良品の増加や磁気特性のばらつきを生じるなどの欠点を有している。
【0008】
本考案の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、性能的に安定しており、しかも薄型化が可能なトランスを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、請求項1記載の本考案は、長手方向の断面形状が長方形で、厚さt1が前記長手方向と直交する幅w1よりも薄い板状のI形コアなどのコイル巻線部磁気回路コアと、そのコイル巻線部磁気回路コアの両端部と対応する位置にフラットな底面と側面を有する凹部などの凹み部を設けた1つの枠形コア(□形コア)あるいはコ形コアなどの外部磁気回路コアと、コイルを巻回し、端面に前記厚さt1のコイル巻線部磁気回路コアを挿入するコア挿入口を形成して、厚さt3が長手方向と直交する幅w3よりも薄く、各端子を前記長手方向に沿って設けた扁平状のコイルボビンとを有している。そして前記コイル巻線部磁気回路コアの厚さt1が前記外部磁気回路コアの厚さt2より薄く形成され、前記コイルボビンのコア挿入口からコイル巻線部磁気回路コアを挿入して、コイル巻線部磁気回路コアの両端部をコイル巻線部分より突出して、そのコイル巻線部磁気回路コアの両端部を前記外部磁気回路コアの凹み部にそれぞれ載置して、コイル巻線部磁気回路コアの両端部の下面をスペーサを介して外部磁気回路コアの凹み部の底面と対向させ、コイル巻線部磁気回路コアの両端部の側面を外部磁気回路コアの凹み部の側面と対向させるとともに、前記コイルボビンのコイル巻線部分を外部磁気回路コアの内側に挿入したことを特徴とするものである。
【0010】
また請求項2記載の本考案は、前記請求項1記載において、前記凹み部が外部磁気回路コアの内側端から外側端まで貫通していることを特徴とするものである。
また請求項3記載の本考案は、前記請求項1記載において、前記凹み部内でコイル巻線部磁気回路コアの端部が接着剤により外部磁気回路コアに固定されていることを特徴とするものである。
また請求項4記載の本考案は、前記請求項1記載において、前記トランスがインバータ用トランスであることを特徴とするものである。
【0011】
【作用】
請求項1記載の本考案は前述のような構成になっており、厚さt1が幅w1よりも薄い板状のコイル巻線部磁気回路コアと、厚さt3が幅w3よりも薄い扁平状のコイルボビンとを用い、前記コイル巻線部磁気回路コアの厚さt1を外部磁気回路コアの厚さt2より薄くし、しかもコイル巻線部磁気回路コアの両端部を外部磁気回路コアの凹み部にそれぞれ載置して、コイルボビンのコイル巻線部分を外部磁気回路コアの内側に挿入・配置して、また凹み部の形成でスペーサの厚みも吸収することができるから、確実にトランスの総高を低くして薄型化を図ることができる。またコイル巻線部磁気回路コアの両端部の下面と側面を外部磁気回路コアの凹み部の底面と側面とに対向させることにより、コイル巻線部磁気回路コアの両端部からの漏洩磁束が少なくなり、トランス性能の向上が図れる。さらに長手方向の断面形状が長方形のコイル巻線部磁気回路コアは、両端部に傾斜面を有する断面形状が台形のコアに比べて外部磁気回路コアとの面接触が確実で、しかもコイル巻線部磁気回路コアの製作時や取扱時などに尖端部が欠損して不良品の増加や磁気特性のばらつきを生じることがない。
【0012】
請求項2記載の本考案は、凹み部が外部磁気回路コアの内側端から外側端まで貫通している。このようにすれば外部磁気回路コア上でのコイル巻線部磁気回路コアの長手方向の位置調整が可能で、外部磁気回路コアとコイル巻線部磁気回路コアの組み立てが容易である。
請求項3記載の本考案は、外部磁気回路コアの凹み部でコイル巻線部磁気回路コアの端部を接着固定している。このように接着剤を用いるときに前記凹み部が接着剤溜めとなるから、接着剤が外部磁気回路コア上の他の部分に流出してコイル巻線部磁気回路コアの接着固定が不確実になったりすることがなく、少量の接着剤でコイル巻線部磁気回路コアを確実に接着することができる。
請求項4記載の本考案は、トランスをインバータ用に特定している。このことによりインバータ電源の薄型化を図ることができる。
【0013】
【実施例】
以下、本考案の実施例を図面によつて説明する。
【0014】
図1は分割巻ボビンの上方からの斜視図、図2は分割巻ボビンの下方からの斜視図、図3はトランスの分解斜視図、図4はトランスの上方からの斜視図、図5はトランスの下方からの斜視図、図6はI形コアと枠形コアの接合状態を示す斜視図である。図7は他の例に係る枠形コアの斜視図、図8はその枠形コアとI形コアの接合状態を示す斜視図である。
【0015】
図1、図2に示した分割巻ボビン1は一次コイル巻溝2の両サイドに仕切鍔5で分離して、二次コイル-(I)巻溝3と二次コイルー(II)巻溝4が設けてある。図中の6は端面に設けられたコア挿入口である。図3に示す如く厚さt3は長手方向と直交する幅w3よりも薄く形成され(t3<w3)、全体が扁平状をしている。
【0016】
図3には、一次コイル7,二次コイル-(I)8,二次コイル-(II)9を巻いた分割巻ボビン1が示されている。始めに二次コイル-(I)8を二次コイル-(I)巻溝3に巻き、端子15,16にリード線をからげて引き出す。次に一次コイル7を一次コイル巻溝2に巻き、端子10?14にリード線をからげて引き出す。最後に二次コイル-(II)9を二次コイル-(II)巻溝4に巻き、端子17,20等にリード線をからげて引き出す。コイルの巻線は二次コイル-(II)9,一次コイル7,二次コイル-(I)8の順に巻いてもよい。
【0017】
一次コイル7,二次コイル-(I)8,二次コイル-(II)9を巻いた分割巻ボビン1に絶縁ホルダー21に嵌合する。図1に示すように分割巻ボビン1に設けられた仕切鍔5の角部にそれぞれ丸みなどの嵌合案内部を設けておけば、絶縁ホルダー21を分割巻ボビン1の巻線部分に嵌めるときにスムーズでかつ確実である。
【0018】
絶縁ホルダー21は同図に示すように、分割巻ボビン1の巻線部分の両側面と対向するように平行に伸びた2つの垂直壁21a,21aと、各垂直壁21aの下端部から水平方向外側に突出した水平部21b,21bと、前記2つの垂直壁21a,21aの対向する端部どうしを連結する2つの連結部21c,21cと、一方の垂直壁21aの内側に立設された挿入片部21dとを一体に形成した枠形成形体より構成されている。前記垂直壁21aとそれと連設した水平部21bにより、一次コイル7,二次コイル-(I)8,二次コイルー(II)9と枠形コア25の間の絶縁が、また連結部21cにより、端子10?20と枠形コア25の間の絶縁が、さらに前記挿入片部21dを一次コイル7のリード線と二次コイル-(I)8の間に挿入することにより両者間の絶縁が、同時に図れる。
【0019】
絶縁ホルダー21に挿入した分割巻ボビン1のコア挿入口6より、例えば高飽和磁束密度を有する磁性材よりなり長手方向の断面形状が長方形のI形コア22を挿入する。図3に示すようにこのI形コア22の厚さt1は、長手方向と直交する幅w1よりも薄い板状をしており(t1<w1)、しかも枠形コア25の厚さt2よりも薄くなっており(t1<t2)、従ってこのI形コア22が挿入される分割巻ボビン1の巻線部分も薄くなっている。枠形コア25は図3に示すように中空部30を有し、平面形状が長方形の枠形をしており、前記I形コア22の両端部23a,23bと対応する位置に底面がフラットで段状をしている凹部26a,26bが形成されている。この凹26a,26bには、スペーサ24a,24bが取り付けられている。
【0020】
前述のように分割巻ボビン1の巻線部分にI形コア22を挿入して、I形コア22の両端部23a,23bをその巻線部分より突出して、その両端部23a,23bをスペーサ24a,24bを介して凹部26a,26b内に挿入するとともに、枠形コア25の中空部30内に分割巻ボビン1の巻線部分を配置する(図4参照)。
【0021】
図6は分割巻ボビン1と絶縁ホルダー21を削除してI形コア22と枠形コア25の接合状態を示した図であり、I形コア22の両端部23a,23bを枠形コア25の凹部26a,26b内に挿入して接着剤で固定することにより、I形コア22と枠形コア25が接合されて閉磁路が形成される。同図に示すように、I形コア22の両端部23a,23bは枠形コア25の凹部26a,26b内にほぼ完全に収納された形になっており、両端部23a,23bの下面ならびに両側面の3面が凹部26a,26bの底面ならびに両側面の3面と対向している。
【0022】
図4ならびに図5は、トランスの斜視図である。端子10?14を一次コイル7の端子とし、端子15,16をそれぞれ二次コイル-(I)8の低電圧端子、高電圧端子とし、端子17,20をそれぞれ二次コイル-(II)9の低電圧端子、高電圧端子としている。
【0023】
端子16と端子17を外付けのリード線あるいはトランスを基板に搭載時、基板に設けてあるパターンで接続することにより、二次コイル-(I)8と二次コイルー(II)9は直列に接続され、端子20より二次出力が取り出される。二次コイル-(I)8と二次コイル-(II)9を直列接続しなければ、2つの二次出力が取り出せる。
【0024】
図7ならびに図8は他の例を示す斜視図であり、この例に係る枠形コア25bは、I形コア22bの両端部と対応する短辺部のほぼ中央部分に、内側端から外側端まで貫通した溝状の凹部33a,33bが形成されている。このような凹部33a,33bを形成することにより、I形コア22bを挿入したときの長手方向の位置調整が可能で、I形コア22bと枠形コア25bの組み立てが容易になる。
【0025】
【考案の効果】
請求項1記載の本考案は前述のような構成になっており、厚さt1が幅w1よりも薄い板状のコイル巻線部磁気回路コアと、厚さt3が幅w3よりも薄い扁平状のコイルボビンとを用い、前記コイル巻線部磁気回路コアの厚さt1を外部磁気回路コアの厚さt2より薄くし、しかもコイル巻線部磁気回路コアの両端部を外部磁気回路コアの凹み部にそれぞれ載置して、コイルボビンのコイル巻線部分を外部磁気回路コアの内側に挿入・配置して、また凹み部の形成でスペーサの厚みも吸収することができるから、確実にトランスの総高を低くして薄型化を図ることがてきる。またコイル巻線部磁気回路コアの両端部の下面と側面を外部磁気回路コアの凹み部の底面と側面とに対向させることにより、コイル巻線部磁気回路コアの両端部からの漏洩磁束が少なくなり、トランス性能の向上が図れる。さらに長手方向の断面形状が長方形のコイル巻線部磁気回路コアは、両端部に傾斜面を有する断面形状が台形のコアに比べて外部磁気回路コアとの面接触が確実で、しかもコイル巻線部磁気回路コアの製作時や取扱時などに尖端部が欠損して不良品の増加や磁気特性のばらつきを生じることがない。
【0026】
請求項2記載の本考案は、凹み部が外部磁気回路コアの内側端から外側端まで貫通している。このようにすれば外部磁気回路コア上でのコイル巻線部磁気回路コアの長手方向の位置調整が可能で、外部磁気回路コアとコイル巻線部磁気回路コアの組み立てが容易である。
請求項3記載の本考案は、外部磁気回路コアの凹み部でコイル巻線部磁気回路コアの端部を接着固定している。このように接着剤を用いるときに前記凹み部が接着剤溜めとなるから、接着剤が外部磁気回路コア上の他の部分に流出してコイル巻線部磁気回路コアの接着固定が不確実になったりすることがなく、少量の接着剤でコイル巻線部磁気回路コアを確実に接着することができる。
請求項4記載の本考案は、トランスをインバータ用に特定している。このことによりインバータ電源の薄型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案の実施例に係るトランスに用いる分割巻ボビンの上方からの斜視図である。
【図2】
その分割巻ボビンの下方からの斜視図である。
【図3】
本考案の実施例に係るトランスの分解斜視図である。
【図4】
そのトランスの上方からの斜視図である。
【図5】
そのトランスの下方からの斜視図である。
【図6】
そのトランスにおけるI形コアと枠形コアの接合状態を示す斜視図である。
【図7】
本考案の他の例に係る枠形コアの斜視図である。
【図8】
その枠形コアとI形コアの接合状態を示す斜視図図である。
【図9】
従来のEEコアを使用したトランスの分解ならびに完成した斜視図である。
【符号の説明】
1 分割巻ボビン
2 一次コイル巻溝
3 二次コイル-(I)巻溝
4 二次コイル-(II)巻溝
5 仕切鍔
6 コア挿入口
7 一次コイル
8 二次コイル-(I)
9 二次イコル-(II)
21 絶縁ホルダー
21a 垂直部
21b 水平部
21c 連結部
21d 挿入片部
22,22b I形コア
23a,23b I形コアの両端部
25,25b 枠形コア
26a,26b,33a,33b 凹部
30 中空部
t1 I形コアの厚さ
t2 枠形コアの厚さ
t3 分割巻ボビンの厚さ
w1 I形コアの幅
w3 分割巻ボビンの幅
訂正の要旨 訂正の要旨
・実用新案登録第2604103号の明細書中
1)請求項1に「・・・厚さt3が長手方向と直交する幅w3よりも薄い扁平状のコイルボビンとを有し、・・・」とあるのを実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、「・・・厚さt3が長手方向と直交する幅w3よりも薄く、各端子を前記長手方向に沿って設けた扁平状のコイルボビンとを有し、・・・」と訂正する。
2)考案の詳細な説明の【課題を解決するための手段】の欄の記載を明りょうでない記載の釈明を目的として請求項1の訂正に整合させる。
異議決定日 2001-03-15 
出願番号 実願平4-31019 
審決分類 U 1 651・ 16- YA (H01F)
U 1 651・ 121- YA (H01F)
最終処分 維持    
前審関与審査官 朽名 一夫瀧 廣往  
特許庁審判長 下野 和行
特許庁審判官 田口 英雄
治田 義孝
登録日 2000-02-10 
登録番号 実用新案登録第2604103号(U2604103) 
権利者 株式会社日立メディアエレクトロニクス
岩手県水沢市真城字北野1番地
考案の名称 トランス  
代理人 武 顕次郎  
代理人 武 顕次郎  

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