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審決分類 審判 全部申し立て   F04C
管理番号 1043375
異議申立番号 異議2000-72555  
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-06-23 
確定日 2001-06-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2602166号「タンデム歯車ポンプ」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2602166号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。
理由 【1】手続きの経緯
本件実用新案登録第2602166号の考案についての出願は、平成4年3月31日に実用新案登録出願されたものであって、その請求項1に係る考案に対して、平成11年10月22日にその実用新案権の設定登録がなされたものである。
そして、その請求項1に係る実用新案登録に対して、伊藤豪より実用新案登録異議の申立てがなされ、その後、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年11月15日に訂正請求がなされ、さらに、平成12年12月11日付けで再度の取消理由通知がなされたものである。

【2】訂正の適否についての判断
ア.訂正の要旨
(1)訂正事項1
実用新案登録請求の範囲の請求項1を、
「単一のボディに内周を軸受穴とする中間隔壁部を一体に設けるとともに、その中間隔壁部により隔てられたボディ両端側にそれぞれめがね穴を形成し、これら両めがね穴に各々独立した吐出ポートを設けた一対のギヤポンプ機構を組み込み、かつ、それぞれのギヤポンプ機構の駆動軸同士をスプライン部を介して同期回転可能に連結することにより、前記中間隔壁部側に漏れた油を、前記スプライン部を強制潤滑させた後にリヤカバーを介して吸込ポート側に還流させることを特徴とするタンデム歯車ポンプ。」と訂正する。
(2)訂正事項2
上記訂正事項1に伴って、願書に添付した明細書の段落【0007】の記載(実用新案登録公報第3欄第25?32行参照)を、「すなわち、本考案に係るタンデム歯車ポンプは、ボディに内周を軸受穴とする中間隔壁部を一体に設けるとともに、その中間隔壁部により隔てられたボディ両端側にそれぞれめがね穴を形成し、これら両めがね穴に各々独立した吐出ポートを設けた一対のギヤポンプ機構を組み込み、かつ、それぞれのギヤポンプ機構の駆動軸同士をスプライン部を介して同期回転可能に連結することにより、前記中間隔壁部側に漏れた油を、前記スプライン部を強制潤滑させた後にリヤカバーを介して吸込ポート側に還流させることを特徴とする。この吐出ポートを独立に設けた点で位相差ポンプと区別される。」に訂正する。
イ.訂正の目的の適否及び拡張・変更の存否
(1)上記訂正事項1は、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当し、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではなく、かつ、新規な事項を含まない。
(2)上記訂正事項2は、上記訂正事項1に伴って、考案の詳細な説明の記載を実用新案登録請求の範囲の記載に整合させるものであって、明りょうでない記載の釈明にあたり、かつ、新規の事項を含まない。
ウ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項で準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

【3】訂正明細書の請求項1に係る考案
訂正明細書の請求項1に係る考案は、訂正請求された訂正明細書及び実用新案登録時の図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された上記のとおりのものである。(【2】ア.の「(1)訂正事項1」参照。)

【4】引用刊行物、及びその記載事項
(引用刊行物)
訂正明細書の請求項1に係る考案に対して、当審が通知した平成12年12月11日付けの再度の取消理由通知で引用した刊行物1?4は以下のとおりである。
刊行物1:特公昭62-20397号公報[登録異議申立人が提出した甲第3号証と同じ]
刊行物2:実願昭57-57831号(実開昭58-161185号)のマイクロフィルム[同じく甲第1号証と同じ]
刊行物3:米国特許第2,965,036号明細書[同じく甲第2号証と同じ]
刊行物4:実願昭60-2103号(実開昭61-118980号)のマイクロフィルム[同じく甲第4号証と同じ]
(各引用刊行物の記載事項)
刊行物1には、その第2頁右欄第33行?第3頁左欄第8行に、「参照符号1により土工機械の液圧回路のための流体ポンプ全体を示す。このポンプ1のポンプの外殻をなすケーシング2を設け、このケーシング内にポンプ1自体のための液圧制御駆動回路を形成する。ケーシング2において回転自在に支持した軸33により第1歯車対3と第2歯車対4とに運動を与える。第1歯車対3には軸33とともに回転しうるよう軸33に固着した歯車3aと被駆動歯車3bとを設ける。第2歯車対4には軸33から同軸上に延在する延長部材33aに剛固に固着した第1歯車対4aと、被駆動歯車4bとを設ける。第1共働歯車対3に対し貯蔵器27から導出する第1流入導管5を開口させる。第1歯車対3から第1出力導管6を延在させ、この出力導管6を液圧分配器(図示せず)に連通させ、この液圧分配器により車輌に担持した工具の運動を制御する。第2流入導管7をやはり貯蔵器27から導出させ、第2共働歯車対4に連通させる。この歯車対4から第2出力導管8を延在させ、この第2出力導管を円筒室9に開口させる。」、第3頁右欄第19?24行に、「このとき円筒室9に対向するシヤツタ15の壁に加わる流体圧によりシヤツタを移動し、室9の導管17に連通させ、従って排出貯蔵器に連通させる。よってこのような状態において共働歯車対4は回路を短絡し、実際上動力を吸収しない。」との記載がある。
そして、第2?4図の記載によれば、「ケーシング2」を構成するものは、(a)共働歯車対と歯車を固着した回転軸を支持する軸受を内蔵する前後二つの円筒状ケース、(b)軸受穴をもたない中間隔壁、及び(c)前後のカバーであり、また、第3図に、共同歯車対の駆動軸同士はスプライン部を介して同期回転可能に連結されるタンデム歯車ポンプが記載されていることは、当業者にとって明らかであるから、上記記載事項及び第1?4図の記載からみて、結局、刊行物1には、
ケーシング2として、前後二つの円筒状ケースと軸受穴をもたない中間隔壁を設けるとともに、その中間隔壁により隔てられた二つの円筒状ケースにそれぞれめがね穴を形成すると共に各めがね穴の前後に軸受を組込み、これら両めがね穴に各々独立した出力導管6、8を設けた一対の共働歯車対3、4を組み込み、かつ、それぞれの共同歯車対3、4の駆動軸同士をスプライン部を介して同期回転可能に連結するタンデム歯車ポンプ、(以下、「刊行物1に記載された考案」という。)が記載されているものと認められる。
また、刊行物2には、その第4頁第6行?第7頁第15行に「第3図および第4図は本実施例における連結式ポンプの詳細を示す。同図において、10は筒状のポンプケースで、これの両開口端にサイドプレート11、12がボルト13により固定されている。前記ポンプケース10は中央部に隔壁14が設けられ、これの上下部に軸受孔15、16が設けられている。前記サイドプレート11、12には、前記軸受孔15、16に対応する位置に軸受穴17、18および軸受孔19、軸受穴20が設けられている。21、22はギヤポンプを構成する主ポンプMの駆動ギヤおよび従動ギヤで、駆動ギヤ21の駆動軸23は軸受孔19に支承され、出力軸としての他方の軸24は軸受孔15に支承されている。また、従動ギヤ22の軸25および出力軸としての軸26はそれぞれ前記軸受穴20および軸受孔16に支承されている。一方、27、28は副ポンプSの駆動ギヤおよび従動ギヤで、駆動ギヤ27の軸29および入力軸としての軸30は前記軸受穴17および軸受孔15に支承され、従動ギヤ28の軸31および入力軸としての軸32は前記軸受穴18および軸受孔16にそれぞれ支承されている。 ……(中略)…… 次に、作用を説明する。 先ず、駆動軸23を介して主ポンプMの駆動ギヤ21が回転され、かつ第2図に示す制御弁7が開かれ制御弁8が閉じられると、ポートコネクタ33から吐出された流体の一部が通路45、46を経て、前記弾性トルクチューブ43、44内に導入される。このため弾性トルクチューブ43、44の内圧が上昇し、弾性トルクチューブ43、44自体が外径方向に拡張し、軸24と軸30および軸26と軸32がそれぞれ弾性トルクチョーブ43、44を介して一体連結される。このため主ポンプMの駆動ギヤ21と副ポンプSの駆動ギヤ27とが連動し、従動ギヤ22と従動ギヤ28とが連動する。」という記載があり、この記載、及び第3?4図の記載からみて、刊行物2には、
単一の筒状のポンプケース10に内周を軸受穴とする隔壁14を一体に設けるとともに、その隔壁14により隔てられたポンプケース10両端側にそれぞれめがね穴を形成し、これら両めがね穴に一対のギヤポンプ機構を組み込んだタンデム歯車ポンプ、
が記載されているものと認められる。
また、刊行物3には、その第2欄第70行?第3欄第7行に「単・多段低-高圧力流体供給装置は二連式ポンプ20として、ハウジング21内にポンプユニット22、23が共通軸24、25に設けられ、図示しない単一の駆動源により軸24、25の一方の軸を通して駆動されるものを備えている。ポンプユニット22は入口224と出口225を備え、ポンプユニット23は入口234と出口235を備えている。」との記載、第3欄第50?74行に「本発明で採用される二連式ギヤポンプ20は図1、2に示されていて、ハウジング21内に2個の独立したギヤポンプ22、23を有し、それぞれは1対のかみ合ったポンプギヤ221、222および231、232を備えている。それぞれの対のポンプギヤ221、222および231、232はハウジング21に形成されたポンプ室223、233内に回転可能に取付けられている。独立した入口と独立した出口は図2に矢印で示され、ポンプ室223、233に連絡している。ポンプギヤ221、231は共通軸24に取付けられ、ポンプギヤ222、232は共通軸25に取付けられている。軸24、25はポンプ室223、233を通して、またハウジング21の中央部では軸穴32、33を通して伸びている。エンドキャップ211、212がハウジング21の両端に設けられ、ポンプ室223、233のエンドカバーとして使用される。エンドキャップ211、212はスタッド210のような手段でハウジング21に止められている。」との記載があり、これらの記載を参照しつつ、第1?2図の記載事項を検討すると、第1?2図に記載される歯車ポンプ20のハウジング21は、単一のボデーに内周を軸受穴とする中間隔壁部を一体に設けたものであるから、刊行物3には、
単一のボディに内周を軸受穴とする中間隔壁部を一体に設けるとともに、その中間隔壁部により隔てられたボディ両端側にそれぞれめがね穴を形成し、これら両めがね穴に一対のギヤポンプ機構を組み込んだタンデム歯車ポンプ、
が記載されているものと認められる。
また、刊行物4には、その第4頁第8?10行に「(7)はカバーであって第二ポンプ(3)のケーシング(5)の外端面(5b)を閉塞する。」、第6頁第8?20行に「(24)は流体の吸入流路であって各ポンプケーシング(4)(5)内部を繰抜いて形成されている。そして各ポンプ(2)(3)のケーシング(4)(5)には吸入流路(24)と各ポンプ(2)(3)内部とを連通する吸入口(25)(26)がそれぞれ形成されている。また、図示省略しているが、各ポンプ(2)(3)内部と外部とを連通する吐出口が各ケーシング(4)(5)に形成されている。なお、(27)…はドレン流路であって、各ポンプ(2)(3)内部と吸入流路(24)を連通するものである。これにより、駆動軸(11)(16)や従動軸(12)(17)とスリーブ(13)…との隙間、スリーブ(13)…とケーシング(4)(5)内面との隙間等に漏出した流体をドレン流路(27)を通して吸入流路(24)に戻すものである。」という記載があり、これらの記載、及び、第1?2図の記載からみて、刊行物4には、
ケーシング4、5内の中間隔壁等からリア側のカバー7へ漏れる油を、該カバー7に設けたドレン流路27を介して吸込流路24側に還流させるタンデム歯車ポンプ、
が記載されているものと認められる。

【5】対比・判断
そこで、訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「訂正考案」という。)と上記刊行物1に記載された考案とを対比すると、刊行物1に記載される「出力導管6、8」、「共働歯車対3、4」は、それぞれ、訂正考案の「吐出ポート」、「ギアポンプ機構」に相当し、訂正考案の「ボデー」は、内周を軸受穴とする中間隔壁を一体に設けた「ケーシング」というべき構成部材であって、刊行物1に記載される「ケーシング2」(但し、前後のカバー部材を除く。)に対応するものであるから、両者は、
ケーシングに中間隔壁を設けるとともに、その中間隔壁により隔てられたケーシング両端側にそれぞれめがね穴を形成し、これら両めがね穴に各々独立した吐出ポートを設けた一対のギヤポンプ機構を組み込み、かつ、それぞれのギヤポンプ機構の駆動軸同士をスプライン部を介して同期回転可能に連結したタンデム歯車ポンプ、
で一致するが、以下の相違点(イ)及び(ロ)で相違するものと認められる。
・相違点(イ):
訂正考案のケーシングが、単一のボディに内周を軸受穴とする中間隔壁部を一体に設けたものであって、一対のギヤポンプ機構は、その中間隔壁部により隔てられたボディ両端側にそれぞれ形成されためがね穴に組み込まれたものであるのに対し、刊行物1に記載された考案のケーシングは、軸受穴をもたない中間隔壁と、この中間隔壁により隔てられそれぞれめがね穴を形成した前後二つの円筒状ケースからなるものであって、一対のギヤポンプ機構は、この各円筒状ケースの各めがね穴に組み込んだ前後二つの軸受に、回転軸を支持されて組み込まれたものである点。
・相違点(ロ):
訂正考案が、中間隔壁部側に漏れた油を、スプライン部を強制潤滑させた後にリヤカバーを介して吸込ポート側に還流させるものであるのに対し、刊行物1に記載された考案は、この点に関し明らかでない点。
そこで、上記各相違点について検討する。
・相違点(イ)について:
刊行物2に記載される「ポンプケース10」、「隔壁14」は、それぞれ、訂正考案の「ボデー」、「中間隔壁部」に相当するから、単一のボディに内周を軸受穴とする中間隔壁部を一体に設けるとともに、その中間隔壁部により隔てられたボディ両端側にそれぞれめがね穴を形成し、これら両めがね穴に一対のギヤポンプ機構を組み込んだタンデム歯車ポンプが、刊行物2及び3に記載されている。
そして、刊行物1に記載された考案も、刊行物2及び3に記載された考案も、共に、タンデム歯車ポンプという同一の技術分野に属するものであるから、刊行物1に記載された考案のケーシングに、刊行物2、3に記載された上記事項を適用し、もって、刊行物1に記載された考案を、相違点(イ)における訂正考案のように構成することは、当業者がきわめて容易になし得るものと認められる。
・相違点(ロ)について:
刊行物4に記載される「リア側のカバー7」、「吸込流路24」は、それぞれ、訂正考案の「リアカバー」、「吸込ポート」に相当するから、中間隔壁等からリアカバー側に漏れた油を、リヤカバーを介して吸込ポート側に還流させるタンデム歯車ポンプが、刊行物4に記載されている。
また、歯車ポンプにおいて、リヤカバーを介して吸込ポート側に還流させる流路を設け、リアカバー側の軸受を強制潤滑させた後にリアカバー側に達した油を吸込ポート側に還流させることは、一例として、実願昭63-90804号(実開平2-14487号)のマイクロフィルム、実願昭60-35648号(実開昭61-152839号)のマイクロフィルム……等に記載されるように、当業者にとって周知の事項である。
そして、刊行物1に記載された考案も、刊行物4に記載された考案も、共に、タンデム歯車ポンプという同一の技術分野に属するものであるから、刊行物1に記載された考案のリアカバーに、刊行物4に記載された上記事項を適用し、もって、刊行物1に記載された考案のリヤカバーに吸込ポート側へ還流させる流路を設けることは、上記周知事項をさらに考慮すれば、当業者がきわめて容易になし得るものと認められる。
しかも、刊行物1に記載された考案のリヤカバーに吸込ポート側へ還流させる流路を設ければ、中間隔壁側に漏れた油は、スプライン部を強制潤滑した後にリヤカバーを介して吸込ポート側に還流されるものとなることは明らかであるから、刊行物1に記載された考案を相違点(ロ)における訂正考案のような構成とすることは、刊行物1、4に記載された考案及び上記周知事項に基づいて、当業者がきわめて容易になし得るものと云うべきである。
また、本件訂正考案の構成によって奏される効果も、刊行物1乃至4に記載された考案に基づいて、当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、訂正明細書の請求項1に係る考案(訂正考案)は、上記刊行物1?4に記載された考案及び上記周知事項に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

【6】結論
以上のとおりであるから、訂正明細書の請求項1に係る考案についての実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない考案に対してなされたものと認める。
したがって、訂正明細書の請求項1に係る考案の実用新案登録は取り消されるべきものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
タンデム歯車ポンプ
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】単一のボディに内周を軸受穴とする中間隔壁部を一体に設けるとともに、その中間隔壁部により隔てられたボディ両端側にそれぞれめがね穴を形成し、これら両めがね穴に各々独立した吐出ポートを設けた一対のギヤポンプ機構を組み込み、かつ、それぞれのギヤポンプ機構の駆動軸同士をスプライン部を介して同期回転可能に連結することにより、前記中間隔壁部側に漏れた油を、前記スプライン部を強制潤滑させた後にリヤカバーを介して吸込ポート側に還流させることを特徴とするタンデム歯車ポンプ。
【考案の詳細な説明】
【産業上の利用分野】本考案は、各種の油圧機器分野などにおいて好適に利用されるタンデム歯車ポンプに関するものである。
【従来の技術】タンデム歯車ポンプは、複数のギヤポンプ機構を一体的に連結して共通の駆動源で駆動し得るように構成されたもので、複数の作動圧が取り扱われる用途や、作動圧が段階的に切換使用される用途、あるいは、2種以上の異なる作動液が取り扱われる用途などに有効に用いられる。
しかして、従来のタンデム歯車ポンプは、例えば実開昭57-8390号公報や実開昭57-10493号公報に示されるように、ボディにめがね穴を貫設し、この穴内に3つの軸受部材を嵌入して、中間軸受部材と左右の軸受部材との間にそれぞれギヤポンプ機構を組み込んで構成される。フロント側のギヤポンプ機構およびリヤ側のギヤポンプ機構は、それぞれ、駆動軸に固着したドライブギヤと従動軸に固着したドリブンギヤとを互いに噛合させてなるもので、駆動軸同士は、中間軸受部内において継手により連結されている。そして、駆動源により両駆動軸を同期回転させた場合に、各ギヤポンプ機構の対応する吸込ポートから吸込んだ圧液を対応する吐出ポートにそれぞれ個別に吐出し得るようになっている。
【考案が解決しようとする諜題】ところが、このような構成のものでは、めがね穴が加工されるボディと、軸受穴が加工される軸受部材とが別体物であるため、めがね穴と軸受穴との位置決めをそれぞれ別途の加工作業工程において調節する必要がある。このため、加工誤差や組付誤差によりそれらの穴の相対位置が狂い易く、各歯車外径とめがね穴との間にギャップを生じて容積効率が低下し易い問題を生じる。また、ボディと軸受部材が互いに別体物であると、両者間に存在する隙間を通じて流体が漏れることによっても容積効率の低下を招き易く、さらに軸受部材の振動が交番荷重として作用した際にめがね穴にフレッティング摩耗を引き起こして上述した漏れを助長し易い問題も抱える。
本考案は、このような課題を有効に解決し、しかも、加工・組立工数を低減化できるタンデム歯車ポンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】本考案は、かかる目的を達成するために、次のような構成を採用したものである。
すなわち、本考案に係るタンデム歯車ポンプは、ボディに内周を軸受穴とする中間隔壁部を一体に設けるとともに、その中間隔壁部により隔てられたボディ両端側にそれぞれめがね穴を形成し、これら両めがね穴に各々独立した吐出ポートを設けた一対のギヤポンプ機構を組み込み、かつ、それぞれのギヤポンプ機構の駆動軸同士をスプライン部を介して同期回転可能に連結することにより、前記中間隔壁部側に漏れた油を、前記スプライン部を強制潤滑させた後にリヤカバーを介して吸込ポート側に還流させることを特徴とする。この吐出ポートを独立に設けた点で位相差ポンプと区別される。
【作用】このような構成のものであれば、ボディを固定した状態で該ボディにめがね穴と軸受穴とを同時に加工することができる。このため、両穴間の加工・組立誤差を解消し、ボディ穴に対する歯車外径の餌付け精度を確実に向上させることができる。また、従来の側板部材に相当する中間隔壁部をボディと一体に設けたので、流体の漏れやフレッティング摩耗などの発生箇所であった隙間を存在させないものとすることができる。
【実施例】以下、本考案の一実施例を、図1?図4を参照して説明する。
このタンデム歯車ポンプは、ボディ1の中央に内周を軸受穴2、3とする中間隔壁部4を一体に設け、その中間隔壁部4によって隔てられたボディ1の両端側にそれぞれめがね穴5、6を形成している。そして、両めがね穴5、6にそれぞれギヤポンプ機構7、8を組み込み、左右のボディ開口端にフロントカバー9およびリヤカバー10を印籠係合により蓋着している。
フロント側のギヤポンプ機構7は、駆動軸11に固着したドライブギヤ12と、従動軸13に固着したドリブンギヤ14とを互いに噛合させ、これらのギヤ12、14の両側面に、側面摺動部の摩耗を防止して圧力を発生させる閉じ込み部を形成する側板15、16を添設させている。両軸11、13は前述したボディ1の軸受穴2、3およびフロントカバー9に設けた軸受穴17、18にそれぞれブッシュ19を介して支持されている。また、カバー9の内方端には3の字ガスケット20が埋設してあり、このガスケット20により囲続される溝からの圧力でフロント側の側板15の圧力バランスを図っている。一方、リヤ側のギヤポンプ機構8は、駆動軸21に固着したドライブギヤ22と、従動軸23に固着したドリブンギヤ24とを互いに噛合させ、これらのギヤ22、24の両側面に、側面摺動部の摩耗を防止して圧力を発生させる閉じ込み部を形成する側板25、26を添設させている。両軸21、23は前述したボディ1の軸受穴2、3およびリヤカバー10に設けた軸受穴27、28にそれぞれブッシュ19を介して支持されている。また、カバー10の内方端には3の字ガスケット30が埋設してあり、このガスゲット30により囲繞される溝からの圧力でリヤ側の側板26の圧力バランスを図っている。そして、駆動軸11、21同士をスプライン部31を介して同期回転可能に連結している。
そして、このポンプは、図3および図4に示すように各ギヤポンプ機構7、8にそれぞれ固有の吸込ポートINおよび吐出ポートOUTを設けている。
なお、このポンプは、両ギヤポンプ機構7、8のうちドライブギヤ12、22の側面からそれぞれ中間隔壁部4側に漏れた油をスプライン部31を強制潤滑させた後にリヤカバー10を介して吸込ポートIN側に還流させ、また、ドリブンギヤ14、24の側面からそれぞれ中間隔壁部4側に漏れた油を従動軸23内に設けた貫通孔23a内を通過させた後にリヤカバー10を介して吸込ボートIN側に還流させるようにしている。
次に、本実施例の作動を説明する。例えば、ギヤポンプ機構7の駆動軸11を図2において時計方向に駆動したとすると、ギヤポンプ機構8の駆動軸21もスプライン部31を介して時計方向に駆動される。そして、図1の紙面表側が吐出側、裏側が吸込側になる。しかして、両ギヤポンプ機構7、8の吐出油はボデイ1の中間隔壁部4で遮断されているので、図3および図4に示す如く、各吸込ポートINから吸込んだ油を各吐出ポートOUTからそれぞれ独自に取り出すことができる。このため、このタンデム歯車ポンプは、複数の作動圧が取り扱われる用途や、作動圧が段階的に切換使用される用途、あるいは、2種以上の異なる作動液が取り扱われる用途などに好適となる。
しかも、このものは従来の中間軸受部材に相当する中間隔壁部4をボディ1と一体をなして設けているため、ボディ1を固定した状態でめがね穴2、3と軸受穴5、6とをマシニング加工などにより同時に加工することができる。このため、加工誤差や組付誤差によってそれらの穴2、3、5、6間に相対的な狂いを生じていた従来の不都合を解消し、ボディ穴5、6に歯車14、24を高い精度で組付けて、容積効率を向上させることが可能になる。また、従来の側板部材に相当する中間隔壁部4がボディ1と一体物であるため、従来より漏れの系路でありフレッティング摩耗により更にその漏れを助長する不具合のあった隙間の存在が無くなり、容積効率が一層向上することになる。
なお、吸込ポートINおよび吐出ボートOUTの設け方は上記に限定されるものではない。例えば、ギヤポンプ機構8の吐出油はボディ1からではなくリヤカバー10から取り出すこともできる。図5はその場合のボディ1の正面を示している。また、一対の吸込ポートINをボディ1内で連結することにより図6に示すように1個の吸込ポートINで共用することもできる。さらに、図4および図6に示す吸込ポートINと、図3および図5に示す吐出ポートOUTとの任意の組み合せも可能である。その他の構成も、本考案の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【考案の効果】
本考案のタンデム歯車ポンプは、以上説明した構成であるから、ボディにめがね穴と軸受穴を加工して歯車を組付ける際の加工、組付精度を高めることができ、その結果、内部漏れを低減化して容積効率を高め、機械効率を向上させることが可能になる。また、部品点数を減少させて工数やコストの低減化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施例を示す全体縦断面図。
【図2】図1におけるII-II線断面図。
【図3】同実施例の正面図。
【図4】同背面図。
【図5】本考案の他の実施例を示す正面図。
【図6】本考案の他の実施例を示す背面図。
【符号の説明】
1・・・ボディ
2、3・・・軸受穴
4・・・中間隔壁部
5、6・・・めがね穴
7、8・・・ギヤポンプ機構
OUT・・・吐出ポート
訂正の要旨 (訂正の要旨)
(1)訂正事項1
実用新案登録請求の範囲の請求項1を、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、「単一のボディに内周を軸受穴とする中間隔壁部を一体に設けるとともに、その中間隔壁部により隔てられたボディ両端側にそれぞれめがね穴を形成し、これら両めがね穴に各々独立した吐出ポートを設けた一対のギヤポンプ機構を組み込み、かつ、それぞれのギヤポンプ機構の駆動軸同士をスプライン部を介して同期回転可能に連結することにより、前記中間隔壁部側に漏れた油を、前記スプライン部を強制潤滑させた後にリヤカバーを介して吸込ポート側に還流させることを特徴とするタンデム歯車ポンプ。」と訂正する。
(2)訂正事項2
上記訂正事項1に伴って、考案の詳細な説明の記載を実用新案登録請求の範囲の記載に整合させるために、明瞭でない記載の釈明を目的として、願書に添付した明細書の段落【0007】の記載を、「すなわち、本考案に係るタンデム歯車ポンプは、ボディに内周を軸受穴とする中間隔壁部を一体に設けるとともに、その中間隔壁部により隔てられたボディ両端側にそれぞれめがね穴を形成し、これら両めがね穴に各々独立した吐出ポートを設けた一対のギヤポンプ機構を組み込み、かつ、それぞれのギヤポンプ機構の駆動軸同士をスプライン部を介して同期回転可能に連結することにより、前記中間隔壁部側に漏れた油を、前記スプライン部を強制潤滑させた後にリヤカバーを介して吸込ポート側に還流させることを特徴とする。この吐出ポートを独立に設けた点で位相差ポンプと区別される。」に訂正する。
異議決定日 2001-04-23 
出願番号 実願平4-18740 
審決分類 U 1 651・ 121- ZA (F04C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 岩崎 晋  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 清田 栄章
清水 信行
登録日 1999-10-22 
登録番号 実用新案登録第2602166号(U2602166) 
権利者 株式会社島津製作所
京都府京都市中京区西ノ京桑原町1番地
考案の名称 タンデム歯車ポンプ  
代理人 喜多 俊文  
代理人 江口 裕之  
代理人 西岡 義明  
代理人 江口 裕之  
代理人 喜多 俊文  
代理人 西岡 義明  
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