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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62D
管理番号 1045167
審判番号 不服2000-1745  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-02-14 
確定日 2001-08-16 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 43899号「クローラ走行装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 2月 3日出願公開、実開平 7- 8176]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願考案
本願は、平成5年7月16日の出願であって、本願の請求項1に係る考案は、平成12年2月14日付けの手続補正書によって全文補正された明細書及び願書に添付した図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、「本願考案」という。)と認める。
「クローラの接地部内周面を案内すべくトラツクフレームの外側方に配設され、かつクローラ内面に形成の突部に係止して横方向の抜止めがなされる可動転輪を、上下揺動自在で、かつ下方付勢状態の揺動アームを介してトラツクフレームに連結してなるクローラ走行装置において、該クローラ装置に前記揺動アームの下降を所定の揺動位置で規制する下限ストツパを設けるにあたり、該下限ストツパは、揺動アームが支点越えしない範囲で、かつ通常走行時は揺動アームと接当することがなく、クローラの弛みが最大になつた場合でも前記突部から可動転輪が外れないアーム揺動位置に設定されていることを特徴とするクローラ走行装置。」

2.引用刊行物及びその記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である平成2年3月14日に日本国内において頒布された実願昭63-116489号(実開平2-38289号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、クローラ走行装置に関して、次の事項が記載されている。
a)「複数の接地転輪(12)群のうちの前後略中間のものを、トラックフレーム(14)に対して上下動可能な可動転輪(12a)に構成し、それ以外の他の転輪(12)群はトラックフレーム(14)に枢支して、位置固定状態に設けてある。
前記可動転輪(12a)は、突曲部乗り越え走行時に、上方に退避してクローラベルト(13)の接地部を突曲部に沿わせて屈曲可能にし、機体重心の急激な移動による衝撃を緩和する・・・」(第6頁18行?第7頁7行)
b)「トラックフレーム(14)の上面に固定した軸受ボス部材(17)に回動自在に内嵌支持した支軸(18)の機体外方側に揺動部材(19)を固着するとともに、この揺動部材(19)の揺動端の機体外方側に可動転輪(12a)を配置させて支承してある。」(第7頁9?14行)
c)「支持フレーム(21)の上面に沿って線材からなるバネ(20)の枢支部(20a)を載置し、上方側から支持部材(22)により取付支持するよう構成してある。」(第8頁4?7行)
d)「バネ(20)は、前記枢支部(20a)の外側端から側面視略U字形状のバネ作用部(20b)を延設して成り、片持ち状に取付支持され、前記バネ作用部(20b)の先端付近が、揺動部材(19)の内方側面から突設した係止部(23)に接当係合するよう構成してある。」(第8頁11?16行)
e)「トラックフレーム(14)の外方側面には、前記係止部(23)の下方側が接当係合して、可動転輪(12a)の下方揺動限界規制を行う下限ストッパ(24)を突設してある。」(第8頁20行?第9頁3行)
f)第2図には、可動転輪(12a)がクローラベルト(13)の内面に形成された突部に係止していることが記載されている。
可動転輪(12a)がクローラベルト(13)の内面に形成された突部に係止していれば、横方向の抜止めがなされることは明かである。
したがって、上記a)?f)の記載から、上記引用例には、
「クローラベルト(13)の接地部内周面を案内すべくトラツクフレーム(14)の外側方に配設され、かつクローラベルト(13)内面に形成の突部に係止して横方向の抜止めがなされる可動転輪(12a)を、上下揺動自在で、かつ下方付勢状態の揺動部材(19)を介してトラツクフレーム(14)に連結してなるクローラ走行装置において、該クローラ装置に前記揺動部材(19)の下降を所定の揺動位置で規制する下限ストツパ(24)を設けたクローラ走行装置」
の考案が、記載されているものと認める。

3.本願考案と引用例に記載された考案の対比
本願考案と、引用例に記載された考案とを対比すると、引用例に記載された考案の「クローラベルト(13)」、「揺動部材(19)」は、それぞれ、本願考案の「クローラ」、「揺動アーム」 に相当するから、本願考案は、引用例に記載された考案と、
「クローラの接地部内周面を案内すべくトラツクフレームの外側方に配設され、かつクローラ内面に形成の突部に係止して横方向の抜止めがなされる可動転輪を、上下揺動自在で、かつ下方付勢状態の揺動アームを介してトラツクフレームに連結してなるクローラ走行装置において、該クローラ装置に前記揺動アームの下降を所定の揺動位置で規制する下限ストツパを設けたクローラ走行装置。」
である点で一致し、以下の相違点で相違している。
<相違点>
本願考案の下限ストツパは、揺動アームが支点越えしない範囲で、かつ通常走行時は揺動アームと接当することがなく、クローラの弛みが最大になつた場合でも前記突部から可動転輪が外れないアーム揺動位置に設定されているのに対し、引用例に記載された考案の下限ストツパ(24)は、揺動アームが支点越えしない範囲で形成されてはいるものの、下限ストツパ(24)は通常走行時は揺動アームと接当しており、クローラの弛みが最大になつた場合でも前記突部から可動転輪が外れないアーム揺動位置に設定されているかどうかも明らかでない点。

4.相違点の検討
下方付勢された可動転輪の移動を規制する部材を有するクローラ装置において、クローラが弛みを生じた場合でも可動転輪がクローラに追従移動してクローラから外れないようにするために、可動転輪の下動を規制する部材を通常走行時は揺動アームと接当することがないようにしておくことは周知技術(例えば、実願昭51-85958号(実開昭53-4549号)のマイクロフィルム参照)である。そして、この技術を引用例に記載された考案のクローラ走行装置に適用することに格別な困難性はなく、その場合、クローラの弛みが最大になつた場合でも前記突部から可動転輪が外れないように可動転輪の移動量を設定しておくことは上記技術の目的からみて当然である。
また、可動転輪の下動を規制する部材を通常走行時は揺動アームと接当することがないようにしておく場合、揺動アームが支点越えしてしまうと揺動アームの付勢方向が逆になり、揺動アームをバネ付勢できなくなることは自明であるから、揺動アームを支点越えしないようにすることは、当業者が設計に当たって当然考慮する単なる設計事項である。
してみれば、引用例に記載された考案で、下限ストツパを、揺動アームが支点越えしない範囲で、かつ通常走行時は揺動アームと接当することがなく、クローラの弛みが最大になつた場合でも前記突部から可動転輪が外れないアーム揺動位置に設定した点は、上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。
そして、本願考案の効果も、上記引用例に記載された考案と上記周知技術から、当業者が容易に予測しうる程度のものでしかない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に記載された考案は、上記引用例に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-05-25 
結審通知日 2001-06-05 
審決日 2001-06-22 
出願番号 実願平5-43899 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (B62D)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 岡田 孝博川本 真裕  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 刈間 宏信
ぬで島 慎二
考案の名称 クローラ走行装置  

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