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審決分類 審判    E04F
審判    E04F
管理番号 1045188
審判番号 無効2000-40027  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-11-21 
確定日 2001-08-31 
事件の表示 上記当事者間の登録第3031971号実用新案「収納庫付き建築物」(請求項の数:7)の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3031971号の請求項1ないし7に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
イ)本件実用新案登録第3031971号の請求項1ないし7に係る考案の出願は、平成8年(1996年)3月29日に実用新案登録出願され、平成8年9月25日に設定登録がなされた。

ロ)これに対して、請求人により平成12年11月21日に本件無効審判の請求がなされ、請求人は、本件実用新案登録の請求項1?4,7に係る考案は、甲第1号証のもの及び甲第2号証のものとそれぞれ同一であって、実用新案法第3条第1項第3号の規定により実用新案登録を受けることが出来ず、また請求項5,6に係る考案は、甲第2号証のものと同一であって、実用新案法第3条第1頃第3号の規定により実用新案登録を受けることが出来ないものであり、従って同法第37条第1項第2号により無効とすべきであると主張し、証拠方法として甲第1?2号証を提出している。
甲第1号証: 特開平7-269005号公報
甲第2号証: 雑誌「週間賃貸スペシャル1995年8月16・23号合併号」第13頁

ハ)被請求人に審判請求書の副本を送達し、答弁書を提出する機会を与えたが、被請求人からは何らの応答もなく、その後、無効理由の通知がなされたが、被請求人からは何らの応答もなかった。

ニ)なお、被請求人が放棄書を提出したことにより、平成13年4月24日付けで本件実用新案登録は抹消された。

2.無効理由通知
当審が通知した無効理由は、次のとおりである。
『 理 由
請求項1ないし7に対して
1.引用刊行物
刊行物1 特開平7-269005号公報
刊行物2 住宅情報別冊「週間賃貸スペシャル」1995年8月16・23号合併号(株)リクルート発行、第13頁

2.本件実用新案登録考案
本件実用新案登録第2506049号の請求項1ないし7に係る考案は、平成8年6月21日付け手続補正書により補正された実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次のとおりのものである。(以下、各請求項に係る考案をそれぞれ「本件考案1」、「本件考案2」・・・「本件考案7」という。)
「【請求項1】
床下部分に、間口の広い開口部を有する大容量の収納庫が設けられている収納庫付き建築物であって、収納庫が、一部屋の床下全体に設けられ、且つ開口部が一部屋の床面全体であることを特徴とする収納庫付き建築物。
【請求項2】
開口部が、一部屋の床面全体を水平方向に移動させることによって開閉可能に構成されている請求項1に記載の収納庫付き建築物。
【請求項3】
床下部分に、間口の広い開口部を有する大容量の収納庫が設けられている収納庫付き建築物であって、収納庫が、1段低くなっているスキップフロアの床面部分と通常の床面部分との間の側壁に開口部が設けられている複数の引出し式の収納庫であることを特徴とする収納庫付き建築物。
【請求項4】
引出し式の収納庫が、奥行き50cm?240cm、幅50cm?150cm、高さ20cm?80cmである請求項3に記載の収納庫付き建築物。
【請求項5】
床下部分に、大容量の収納庫が設けられている収納庫付き建築物であって、収納庫が、床下部分に略一杯に設けられた水平方向に回転可能に構成されている上部が開口された円筒状の筒体からなり、且つ床面に該筒体に収納されている物品を順次取り出すのに十分な間口を有する開口部が設けられていることを特徴とする収納庫付き建築物。
【請求項6】
筒体が、半径150cm?250cm、高さ20cm?50cmの範囲の大きさを有する請求項5に記載の収納庫付き建築物。
【請求項7】
床下部分に、大容量の収納庫が設けられている収納庫付き建築物であって、収納庫が、一部屋の床下全体に設けられ、且つ開口部が一部屋の床面全体である収納庫と、1段低くなっているスキップフロアの床面部分と通常の床面部分との間の側壁に開口部が設けられている複数の引出し式の収納庫の少なくとも2種類の収納庫が1つの建築物に設けられていることを特徴とする収納庫付き建築物。

3.引用刊行物の記載事項
(1)刊行物1
刊行物1には、逆梁構造を採用した住宅の床下空間を物品収納空間として十分に活用した住宅について記載され、次の記載がある。
(1a)床下全体の物品収納空間と開口部(同公報4欄【0019】?【0023】、図3、図4参照)
「【0019】次に図3及び図4を参照して前記第2居住空間10の構造を説明する。
【0020】第2居住空間10は周囲よりも一段高い可動フロア15を備える。可動フロア15は正方形の枠状に形成されたカマチ16と、カマチ16の内側に嵌合するように固定された金属ハニカム構造の基板17と、基板17の上面に載置された複数枚の畳18…とを備える。可動フロア15の下方には、逆大梁1及び逆小梁2…によって画成された床下空間3をそのまま利用した、高さが約50cmの物品収納部19が形成される。・・・
【0021】可動フロア15のカマチ16の下面両側縁には床面を転動する各7個のローラ23…が設けられるとともに、下面前縁には床面を転動する2個のローラ23,23が設けられる。また、基板17の下面後部両側縁には、物品収納部19の側壁191 ,191 を転動する各3個のローラ24…がブラケットを介して設けられる。
【0022】而して、可動フロア15は通常は図1に実線で示す位置にあって押入れ21及び床の間22に接続しており、第2居住空間10としての和室の床面として使用される。物品収納部19に物品を出し入れすべく可動フロア15を人力で押して図1に鎖線で示す位置までスライドさせて固定フロア11の上面に重ね合わせると、可動フロア15の下方に物品収納部19が大きく開放される。可動フロア15は・・・位置ずれを規制される。
【0023】このように、可動フロア15を固定フロア11の上面に重なる位置までスライドさせることにより物品収納部19を大きく開放することができるので、大容積の物品収納部19の内部空間を有効に利用するとともに物品の出し入れを容易に行うことが可能になる。」

(1b)第1居住空間9と引出し(同公報3欄【0017】?4欄【0018】、図1、図2参照))
「【0017】 居住部分には、第1居住空間9を構成するリビングルームと、第2居住空間10を構成する和室とが隣接して形成される。第1居住空間9のフロアを構成する固定フロア11は所謂スキップフロアであり、その中央に形成された凹部111 は高さ約30cmの段状の壁部112 を介して外周部113 よりも低くなっている。即ち、固定フロア11の凹部111 は前記床下空間3の内部に下向きに突出するように形成される。固定フロア11は、逆大梁1及び逆小梁2の互いに対向する側面間に架設した複数の大引12…の上面に支持される。
【0018】 固定フロア11の壁部112 には、ダイニングルーム13の下方の床下空間3から固定フロア11の凹部111 に向けて引き出される3個の引出し14…が設けられており、これにより床下空間3の有効利用が図られる。」

(2)刊行物2
刊行物2には、次の記載がある。(なお、丸数字はカッコ付き数字で書き換えてある。)
(2a)逆梁工法採用と床下収納(右上部分)
「 あーら不思議 床下に押入れ10個分の収納付きマンション
従来は天井に出ていた梁を上階の床下に押し上げる逆梁工法を賃貸住宅に採用したのが丸西ルネスだ。これによりフラットな天井と床下に広大な収納スペースをもつ居住空間が生まれるわけだ。その収納力は、標準的な3LDKで押入れ約10個分にもなる。しかも、床全体をスライドさせれば6畳の和室が約10畳の広間に変身。騒音面でのメリットもある。この工法を採用した小泉ルネスマンションが、まもなく完成する。」と、マンションの説明が記載されている。

(2b)和室床下全面の収納部と開口部((1)の説明記載、及び左上、左中の写真参照)
「(1)←↑和室の状態(左)から、右方向へ畳をスライドさせると、床下に4.5畳大の収納スペースが現れる。深さは約60cm。」と記載され、和室の床下略全体に設けられ、しかもその収納スペースの開□部が、該部屋の床面全体に有って、該床面全体を形成する畳を水平方向に移動させることによって開閉可能に構成されている収納庫付き建築物が記載されている。

(2c)フローリング部屋と引出し収納(右上、右中の写真、(2)の説明記載および左下の間取り図参照)
また、「(2)↑←畳を右の部屋に収納すれば約5.8畳のフローリングに。高さに変化のある空間だ。収納は3方向に引き出しがあり、スキー板なども楽々収納可能」と記載され、床下部分の一段低くなっているスキップフロア(前記フローリング)と通常の床面部分との間の側壁に、複数の引出しの開ロ部を設けた収納庫付き建築物が記載(特に右中写真参照)されている。

(2d)円筒状回転収納部((3)の説明記載、左下写真および左下の間取り図参照)
更に、「(3)洋室の床下には回転式の収納スペースが。直径が2.2mあり、見た目より収納力がある。」と記載され、左下の写真には、上部が開口された円筒状の収納体の一部が覗いている方形状の開口部が示されている。そして、左下の間取り図には、玄関脇の洋室には、その部屋略一杯の直径を有する円が描かれており、「床下部分に設けた収納庫が、床下部分に略一杯に設けられた水平方向に回転可能に構成されている上部が開□された円筒状の筒体からなり、且つ床面に該筒体に収納されている物品を順次取り出すのに十分な間口を有する開□部が設けられた収納庫付き建築物」が記載されているものと認められる。

4. 本件考案1について
(1)本件考案1と刊行物1記載の考案とを対比すると、
後者の「物品収納部19」は、前者の「収納庫」に、
後者の「第2居住空間10」を構成する和室は、前者の「一部屋」に、
それぞれ相当するものと認められ(前記(1a)参照)、そうすると、本件考案1と刊行物1に記載の考案とは、その構成及び効果上、相違するところがない。
従って、本件考案1は、刊行物1に記載された考案と同一であるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。

(2)また本件考案1と刊行物2記載の考案とを対比すると、
後者の「収納スペース」は、前者の「収納庫」に、
後者のスライド可能な畳面を有する和室は、前者の「一部屋」に、
それぞれ相当するものと認められ(前記(2a)、(2b)参照)、そうすると、本件考案1と刊行物2に記載の考案とは、その構成及び効果上、相違するところがない。
従って、本件考案1は、刊行物2に記載された考案と同一であるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。

5. 本件考案2について
(1)本件考案2と刊行物1記載の考案とを対比すると、
後者の「物品収納部19」は前者の「収納庫」に、
後者の「第2居住空間10」を構成する和室は前者の「一部屋」に、
後者の「可動フロア15」は、前者の「一部屋の床面全体」に、
それぞれ相当するものと認められ(前記(1a)参照)、そうすると、本件考案2と刊行物1に記載の考案とは、その構成及び効果上、相違するところがない。
従って、本件考案2は、刊行物1に記載された考案と同一であるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。

(2)また本件考案2と刊行物2記載の考案とを対比すると、
後者の「収納スペース」は前者の「収納庫」に、
後者のスライド可能な畳面を有する和室は、前者の「一部屋」に、
後者の「スライド可能な畳面」は、前者の「一部屋の床面全体」に、
それぞれ相当するものと認められ(前記(2a)、(2b)参照)、そうすると、本件考案2と刊行物2に記載の考案とは、その構成及び効果上、相違するところがない。
従って、本件考案2は、刊行物2に記載された考案と同一であるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。

6. 本件考案3について
(1)本件考案3と刊行物1記載の考案とを対比すると、
後者の「引出し14」は、前者の「引出し式収納庫」に、
後者の「第1居住空間9の固定フロア11」は、前者の「スキップフロア」に、
それぞれ相当するものと認められ(前記(1b)参照)、そうすると、本件考案3と刊行物1に記載の考案とは構成及び効果上、相違するところがない。
従って、本件考案3は、刊行物1に記載された考案と同一であるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。

(2)本件考案3と刊行物2記載の考案とを対比すると、
後者の「引き出し」は、前者の「引出し式収納庫」に、
後者の「約5.8畳のフローリング」は、前者の「スキップフロア」に、
それぞれ相当するものと認められ(前記(2c)参照)、そうすると、本件考案3と刊行物2に記載の考案とは構成及び効果上、相違するところがない。
従って、本件考案3は、刊行物2に記載された考案と同一であるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。

7. 本件考案4について
本件考案4と刊行物2記載の考案とを対比すると、
後者の「引き出し」は、前者の「引出し式収納庫」に、
後者の「約5.8畳のフローリング」は、前者の「スキップフロア」に、
それぞれ相当するものと認められる(前記(2c)参照)。
そして、刊行物2には、「引き出し」の奥行き、幅、高さについて具体な数値は記載されていないが、図示された間取り図におけるダイニング室の引き出しの奥行きおよび幅の大きさ、そして和室床下の収納スペースの深さが60cmであることからして、刊行物2に記載された引き出しの寸法が、「奥行き50cm?240cm、幅50cm?150cm、高さ20cm?80cm」の範囲内に含まれない寸法のものであるとは認められない。
そうすると、本件考案4と刊行物2に記載の考案とは構成及び効果上、相違するところがない。
従って、本件考案4は、刊行物2に記載された考案と同一であるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。

8. 本件考案5について
本件考案5と刊行物2記載の考案とを対比すると、
後者の洋室(3)の床下に設けられている直径2.2 mの「回転式収納スペー
ス」は、前者の「床下部分に略一杯に設けられた水平方向に回転可能に構成されている上部が開口された円筒状の筒体」 に、後者の洋室(3)の床下に設けられる「方形状の開口部」は、前者の「該筒体に収納されている物品を順次取り出すのに十分な間口を有する開□部」に、それぞれ相当するものと認められ(前記(2d)参照)、そうすると、本件考案5と刊行物2に記載の考案とは構成及び効果上、相違するところがない。
従って、本件考案5は、刊行物2に記載された考案と同一であるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。

9. 本件考案6について
本件考案5における筒体の半径、高さについて具体的に数値限定をしたものである本件考案6と刊行物2記載の考案とを対比すると、
筒体の半径、高さが、前者は「半径150cm?250cm、高さ20cm?50cmの範囲の大きさを有する」ものであるのに対し、後者の円筒状の筒体の直径は2.2m、即ち半径110cmであり、高さについては寸法が明記されていない点で相違している。
しかしながら、床下部分に略一杯に設けられた水平方向に回転可能に構成されている上部が開口された円筒状の筒体収納庫の筒体の半径や高さについては、設置される部屋や床下寸法の大きさに応じて適宜設計可能なものであり、また高さについては、後者における具体例で、筒体とその上方の開口部との間が離間しており、隣接の和室床下の収納スペースの深さが60cmであることからみても、そのような収納庫の筒体の半径および高さを、半径150cm?250cm、高さ20cm?50cmの範囲の大きさにする程度のことが、格別な創意工夫を要するものとは認められない。
そうすると、本件考案6は、刊行物2に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。

10. 本件考案7について
本件考案7と刊行物1記載の考案とを対比すると、本件考案7は、本件考案1及び本件考案3の収納庫の双方を設けた構造であるから、上記4.及び5.で検討したように、刊行物1に記載された考案及び刊行物2に記載された考案と同一であるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。 』

そして、この無効理由の通知に対して被請求人は何らの応答もしておらず、この無効理由は妥当なものと認められる。

3.むすび
以上のとおり、本件登録実用新案の請求項1ないし3,7に係る考案は、甲第1号証に記載された考案と同一であり、また請求項1ないし5,7に係る考案は、甲第2号証に記載された考案と同一であり、それぞれ実用新案法第3条第1項第3号に該当し実用新案登録を受けることが出来ず、そして、本件登録実用新案の請求項6に係る考案は、甲第2号証に記載された考案に基づき当業者が極めて容易に考案をすることができたものであるから実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることが出来ないものであるので、本件請求項1ないし7に係る考案の実用新案登録は、実用新案法第3条の規定に違反してなされたものであり、実用新案法第37条第1項第2号に該当し、その実用新案登録を無効とすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-07-02 
結審通知日 2001-07-05 
審決日 2001-07-17 
出願番号 実願平8-3246 
審決分類 U 1 111・ 113- Z (E04F)
U 1 111・ 121- Z (E04F)
最終処分 成立    
特許庁審判長 後藤 千恵子
特許庁審判官 幸長 保次郎
伊坪 公一
登録日 1996-09-25 
登録番号 実用新案登録第3031971号(U3031971) 
考案の名称 収納庫付き建築物  
代理人 吉田 勝廣  
代理人 落合 健  
代理人 近藤 利英子  
代理人 仁木 一明  

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