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審決分類 審判 判定  属さない(申立て不成立) B29C
管理番号 1045203
判定請求番号 判定2001-60030  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2001-10-26 
種別 判定 
判定請求日 2001-03-14 
確定日 2001-09-03 
事件の表示 登録第2149899号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「樹脂成形機」は、登録第2149899号実用新案の技術的範囲に属しない。
理由 1.請求の趣旨
本件判定請求は、被請求人がいない判定請求であって、イ号図面に示す「樹脂成形機」(イ号物件)は、本件判定請求人の所有するものである実用新案登録第2149899号考案(以下、「本件考案」という)の技術的範囲に属する、との判定を求めたものである。
2.本件考案
本件考案は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたところによって特定されるものと認められるが、これを構成要件毎に、A.?E.の符号を付して分節すると、その構成(以下、「構成要件A.」などという)は、次のとおりのものである。
(1)本件考案の構成
A.樹脂成形機の長手方向および幅方向に延びる軌道に沿って成形品取出チャック部を往復移動させる成形品取出装置が当該樹脂成形機の固定金型ホルダに搭載された樹脂成形機において、
B.該樹脂成形機の前記長手方向の中心軸線より前記幅方向の一方側と他方側から選択されたいずれかに変位し、
C.かつ前記固定金型ホルダの金型取付面より射出装置側に偏った位置に設定して
D.電動サーボモータ用ドライバーボックスが前記成形品取出装置に取付けられている
E.ことを特徴とする樹脂成形機。
3.イ号物件
本件判定請求書に添付されたイ号図面及びイ号図面の説明から、該イ号図面に示す装置は、その「イ号図面の説明」に記載された事項を含む本件判定請求書の主張の全趣旨に照らしてみて、イ号物件を示すものと認められる。
(1)イ号物件の樹脂成形機
イ号物件は、イ号図面の説明において「甲第3号証に示す成形品取出装置を固定金型ホルダに、架台を介して搭載した状態の樹脂成形機の図面であって、図中の黒色で記載した部分の装置が成形品取出装置であって、赤色で記載した部分の装置と合わせて全体で樹脂成形機を成している。」と記載しているとおりの樹脂成形機(以下、「イ号樹脂成形機」という)であって、かつ、「イ号図面に示す樹脂成形機を本件登録実用新案に即して記載すると、次の通りである。(1).樹脂成形機の長手方向および・・・(5).ことを特徴とする樹脂成形機。」と記載されたとおりの構成が、イ号図面に記載されているから、その構成は下記のとおりの構成を具備するものと認められる。なお、本件登録実用新案との対比を行うため、イ号樹脂成形機は、その構成を分節して符号a.ないしe.を付して記載した(以下、「構成a.」などという)。
a.樹脂成形機の長手方向および幅方向に延びる軌道に沿って成形品取出チャック部を往復移動させる成形品取出装置が当該樹脂成形機の固定金型ホルダに搭載された樹脂成形機において、
b.該樹脂成形機の前記長手方向の中心軸線より前記幅方向の一方側と他方側から選択されたいずれかに変位し、
c.かつ前記固定金型ホルダの金型取付面を基準として、金型側に若干飛び出しているが、おおむね射出装置側に偏った位置に設定して
d.電動サーボモータ用ドライバーボックスが前記成形品取出装置に取付けられている
e.ことを特徴とする樹脂成形機。
4.本件考案とイ号物件との対比・判断
本件考案は、実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりのものであって、その構成は上記2.(1)「本件考案の構成」の項に記載されたとおりであり、
また、イ号物件は、本件判定請求人が提出したイ号図面に示されるとおりのものであって、その構成は、3.(1)「イ号物件の樹脂成形機」の項に記載されたとおりであるから、
本件考案の構成要件A.ないし構成要件E.及びイ号樹脂成形機の構成a.ないし構成e.とを対比すると、イ号樹脂成形機の前記構成a.、構成b.、構成d.、構成e.の各構成は、それぞれ、本件考案の構成要件A.、構成要件B.、構成要件D.、構成要件E.の各構成要件に相当しており、これらの互いに対応する構成要件の間には相違するところはなく、イ号物件は、本件考案の構成要件A.、構成要件B、構成要件D.及び、構成要件E.を充足する。
一方、電動サーボモータ用ドライバーボックスが、本件考案では構成要件C.「金型取付面より射出装置側に偏った位置に設定して」取付けられているのに対し、イ号物件では構成c.「金型取付面を基準として、金型側に若干飛び出しているが、おおむね射出装置側に偏った位置に設定して」取付けられている点で相違している。
(1)相違点の検討
実用新案登録請求の範囲の記載に拠れば、「電動サーボモータ用ドライバーボックス」という対象物体が、金型取付面より射出装置側に偏った位置に設定して取り付けられていると記載しており、文言上、本件考案における電動サーボモータ用ドライバーボックスという一定の容積を占有するボックスの取付位置は、まず、金型取付ホルダの金型取付面という「面」を基準として表現するということを言っており、その基準とする金型取付面という平面を境界面とし、金型側と射出装置側とに「区画」することを意味し、「その面より射出装置側に偏って設定される」ということから、電動サーボモータ用ドライバーボックスという対象物が射出装置側区画に偏って設定され、取り付けられるということを表現しているものと解される、すなわち、電動サーボモータ用ドライバーボックス全体が金型取付面という面より射出装置側に位置しているものと解さざるを得ない。ところで、「偏った」という用語の意味は、文言上は一方に偏っていればよいので、ある容積を有する物体が偏るとは、ある基準より一方側にその物体の位置する割合が多ければよいと言えるが、本件考案の場合は、電動サーボモータ用ドライバーボックスという対象物が金型取付面「より」射出装置側に偏った位置と記載するものであるから、金型取付面より金型側に、電動サーボモータ用ドライバーボックスという対象物の一部が若干飛び出している場合に記載する、『「金型取付面を基準として」あるいは「金型取付面からその一部が」』金型側に若干飛び出すように射出装置側に偏ったという表現などとは明らかに相違しており、イ号物件のように金型取付面より金型側に一部が若干飛び出している場合をも包含するものと解することはできない。
考案の詳細な説明においては、実用新案登録請求の範囲に記載されているのと同様な記載があるのみであり、かつ、そのように取付け、配置したことの作用・効果について触れるところはなく、上記のような解釈を変更する必要が生じるような記載はない。
また、「電動サーボモータ用ドライバーボックス」の位置がわかる図1、2、4の図では、電動サーボモータ用ドライバーボックスはその全体が金型取付面より完全に射出装置側に偏って設けられていることから、図面上は、「電動サーボモータ用ドライバーボックス」全体が金型取付面より射出装置側に位置するものと解する外はない。
さらに、当庁の審査手続きにおいて、審査官が拒絶理由通知をした際に、本件考案の権利者である出願人は、出願当初の明細書中には文言上記載されていなかった事項である当該「金型取付面より射出装置側に偏った位置に設定して」取付けられているという構成を、手続補正により追記することにより、「電動サーボモータ用ドライバーボックス」の位置を特定したものであり、当該位置特定の根拠は、図1、2、4に基づいたものと認められるから、やはり、「電動サーボモータ用ドライバーボックス」全体が金型取付面より射出装置側に位置するものと解する外はない。
以上のことから、本件考案における「金型取付ホルダの金型取付面より射出装置側に位置して設定」という記載の意味するところは、文言上からも、図面上からも、さらに審査手続きの経緯からも、電動サーボモータ用ドライバーボックス全体が金型取付面の射出装置側に偏って位置することのみに解するのが妥当であり、その他の解釈を入れる余地はないものと認められる。
してみると、イ号物件の構成c.は、金型側に若干飛び出して「電動サーボモータ用ドライバーボックス」が取り付けられていて、「電動サーボモータ用ドライバーボックス」全体のおおかたの部分が射出装置側に位置するように設定して取付けられているもので、「電動サーボモータ用ドライバーボックス」全体が射出装置側に位置するのではないから、構成上、イ号物件は本件考案の構成要件C.を充足しない。
5.むすび
以上のとおりであるから、イ号図面及びその説明に示すイ号物件は、本件考案の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 判定2001-60030 イ号図面の説明
イ号図面の説明
イ号図面は、樹脂成形機の正面図、平面図、及び右側面図からなるものであり、甲第3号証に示す成形品取出装置を固定金型ホルダに、架台を介して搭載した状態の樹脂成形機の図面であって、図中の黒色で記載した部分の装置が成形品取出装置であって、赤色で記載した部分の装置と合わせて全体で樹脂成形機を成している。
そして、イ号図面、及び甲第3号証において斜線で塗りつぶした部分が「電動サーボモータ用ドライバーボックス」である。
尚、イ号図面の成形品取出装置は架台によって金型取付面より80ミリ射出装置側へオフセットして固定金型ホルダに取り付けられており、甲第3号証に示す成形品取出装置には架台は明記されていないが、その正面図、及び右側面図に見えるとおり、正面図には架台が仮想線で表されており、右側面図には金型取付面からのオフセット量80ミリが記載されている。
また、イ号図面中の赤色で記載した部分の装置に関しては、金型取付面の位置を確認し易いように、簡略化して記載しているので、図同士は整合性がない箇所もある。
イ号図面に示す樹脂成形機を本件登録実用新案に即して記載すると、次の通りである。
(1)樹脂成形機の長手方向および幅方向に延びる軌道に沿って成形品取出チャック部を往復移動させる成形品取出装置が当該樹脂成形機の固定金型ホルダに搭載された樹脂成形機において、
(2)該樹脂成形機の前記長手方向の中心軸線より前記幅方向の一方側と他方側から選択されたいすれかに変位し、
(3)かつ前記固定金型ホルダの金型取付面を基準として、金型側に若干飛び出しているが、おおむね射出装置側に偏った位置に設定して
(4)電動サーボモータ用ドライバーボックスが前記成形品取出装置に取付けられている
(5)ことを特徴とする樹脂成形機。

判定日 2001-08-21 
出願番号 実願平2-56792 
審決分類 U 1 2・ 081- ZB (B29C)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 多喜 鉄雄野村 康秀  
特許庁審判長 石井 淑久
特許庁審判官 小林 正巳
喜納 稔
登録日 1998-07-17 
登録番号 実用新案登録第2149899号(U2149899) 
考案の名称 樹脂成形機  
代理人 玉田 修三  

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